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2025年1月

2025年1月26日 (日)

島根県津和野町の「黒いいなり寿司」-割子そば・いなりずし・おみやげいなり-

島根県津和野町の紹介

 島根県津和野町を訪問しました。

 津和野駅前広場には、蒸気機関車が設置されています。

(蒸気機関車D51 194(津和野のデゴイチ))
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 この蒸気機関車は「津和野のデゴイチ(D51)」と呼ばれています。

 新山口駅-津和野駅間を走る「SLやまぐち号」の蒸気機関車も、現在は主に「デゴイチ」が使われています。

 津和野町の中心街を歩いていると、山口県の観光案内板を見つけました。

(山口県観光案内板)
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 案内板の横には、
「この案内板は、島根県と山口県の広域観光振興を目的として、山口県が、津和野町(島根県)に設置したものです。」
と記載されています。

 この一文は、津和野町は山口県だと誤解されないために記載されたものですが、「津和野町あるある」だなとクスっと笑ってしまいました。

(鷺舞の像)
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 こちらは「鷺舞(さぎまい)」の像です。

 白鷺が舞う姿を表現する芸能神事で、国の重要無形文化財に指定されています。

(津和野の鯉)
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 中心街のお堀では、たくさんの鯉(錦鯉)が泳いでいる姿を見ることができます。

 もともとは救荒食(非常食)用として飼育されていたようです。

(津和野大橋から眺めた津和野川)
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 こちらは津和野川です。

 この写真の右側(山側)に「太皷谷稲成神社(たいこだにいなりじんじゃ)」があります。

(太皷谷稲成神社・鳥居)
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 太皷谷稲成神社は日本五大稲荷のひとつで、参道に続く朱塗りの鳥居は壮観です。


美松食堂のいなりずしと割子そば(割子そば定食)

 太皷谷稲成神社参道入口のすぐ近くにある「美松食堂(みまつしょくどう)」を訪問しました。

(美松食堂)
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 美松食堂は、いなり寿司で有名なお店です。

 メニューを見ると、うどん・そばに「いなりずし」がセットになった定食があったので、私はその中の1つ「割子そば定食」を注文しました。

 島根は「出雲そば」の「割子そば(わりごそば)」が有名です。

 割子そばは、冷たいそばを丸い朱塗りの割子(わりご)に入れ、ねぎ、海苔、大根おろしなどの薬味をのせ、その上につゆをかけて食べるそばです。

 そば猪口(ちょこ)のつゆに薬味を入れ、そのつゆにそばをつけて食べる「ざるそば」や「もりそば」とは逆の食べ方になります。

 割子そばは、他のうどん・そばに比べて少し手間がかかるようで、奥の厨房でそばを一皿ずつ丁寧に盛り付けておられる様子が伺えました。

 しばらくして、私のテーブル席に「割子そば定食」が運ばれてきました。

(割子そば定食)
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 割子そば、山菜、いなりずし(3個)、漬物の定食です。

(いなりずし(美松食堂))
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 こちらが美松食堂の「いなりずし」です。

 よく炊かれた黒い油揚げが食欲をそそります。

 中に包まれている「すし飯」を確認してみましょう。

(いなりずし(中身))
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 すし飯にも濃く甘辛い煮汁が加えられていて、人参、椎茸、タケノコが入っていました。

 一般的ないなり寿司に比べて油揚げがかなり黒いので、お店の方に「もしかして黒砂糖(黒糖)を使われていますか」とお尋ねしたところ、「ずっと昔から砂糖のみで炊いているのですよ」と教えていただきました。

 つまりこの黒っぽさは、砂糖をよく加熱することで起きる「メイラード反応(褐変反応)」により、カラメル化させたものなのです。

 黒い油揚げは煮汁がよく浸み込んでおり、甘みと深いコク、そしてほろ苦さを感じる大人の味でした。

 すし飯はコクのある甘みと酢のさわやかな酸味があり、黒い油揚げとよく調和していました。

 続いて「割子そば」をいただきました。

(割子そば)
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 そばが丸く平べったい割子に盛られ、刻みねぎ、刻みのり、もみじおろしがのせられています。

 その割子がお重のように三段に積み重ねられていました。

 写真は積み重ねられていた割子をテーブルの上に広げたものですが、通常は積み重ねたままの状態で一番上のそばから順にいただきます。

 写真右上の朱塗りの容器には「そばつゆ」が入っており、これを割子そばにかけていただきます。

 まずは一番上の割子そばに「そばつゆ」をかけていただきました。

 シャキッと弾力のあるそばに、濃く甘辛いそばつゆがよく合いました。

 食べ終えたら、空になった割子を一番下の段へ重ね直し、二段目にある割子そばをいただきます。

 この際、食べ終えた割子に残ったそばつゆを次の割子のそばにかけて食べるのが正しい食べ方とされています。

(割子そばとつゆ)
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 こんな感じに、残ったそばつゆを次の割子のそばにかけていただくのです。

 これを繰り返し、そばつゆが薄くなったら、そばつゆ入れのそばつゆを足します。

 無駄なく、効率的な方法ですね(笑)

 こうした方法でそばが食べられるため、出雲そば(割子そば)のそばつゆは濃い(甘辛い)のが特徴です。


美松食堂の「おみやげいなり」

 このお店で、手土産用の「おみやげいなり」も購入しました。

(おみやげいなり(包装))
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 きつねや鳥居のイラストが描かれた、味のある包装紙です。

(おみやげいなり)
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 この油揚げの黒さは並大抵ではありません(笑)

 津和野の黒い「いなりずし」を堪能しました。


 津和野のいなり寿司は、この美松食堂のほか、道の駅「津和野温泉なごみの里」や「津和野駅売店(毎週土・日・祝に営業)」などでも食事や購入することができます。

 津和野町は、いなり寿司のほかにも、「源氏巻(げんじまき、あんこをカステラ生地で巻いたお菓子)」、「うずめ飯(ごはんに様々な具をうずめた雑炊のような郷土料理)」、「まめ茶(カワラケツメイのお茶)」、わさび、里芋、栗、山菜など、様々なお菓子・料理・食材に恵まれています。

 歴史・文化・食がコンパクトに凝縮された津和野は、自分の興味・関心に合わせた楽しみ方が出来る魅力的な街です。


<関連サイト>
 「津和野町観光協会・ゆ~にしんさい」(島根県鹿足郡津和野町後田イ66-1)
 「美松食堂」(島根県鹿足郡津和野町後田ロ59-13)

2025年1月19日 (日)

関東の「長命寺桜もち」と長命寺 -東京都墨田区向島-

長命寺桜餅と道明寺桜餅

 和菓子の桜餅は、小麦粉の生地で作られた関東風の「長命寺桜餅(ちょうめいじさくらもち)」と、もち米(道明寺粉)で作られた関西風の「道明寺桜餅(どうみょうじさくらもち)」の2種類に分類できます。

 桜の香りがする生地であんこを包み、桜の葉でくるんだお菓子と言えば共通しているのですが、小麦粉で作られたクレープ状の生地と、もち米で作られたもち生地とでは、見た目や食感はかなり異なるお菓子となります。

 今回は関東風の桜餅をテーマに、東京都墨田区向島の「長命寺桜もち」と長命寺を御紹介します。

 当ブログの関連記事(文末の<関連記事>参照)と合わせてお読みいただければ、関東風桜餅と関西風桜餅の違いがわかり、それぞれの発祥地を旅した気分になっていただけるかと思います。


桜の名所・隅田川と東京スカイツリー

 江戸時代、8代将軍の徳川吉宗が隅田川の土手に100本の桜を植樹し、隅田川は花見の名所となりました。

 台東区側から隅田川に架かる歩行者専用橋「桜橋」を渡って、墨田区向島へ向かいました。

(桜橋から眺めた東京スカイツリー)
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 桜橋では、間近に東京スカイツリーを眺めることが出来ました。


長命寺桜もちと正岡子規

 桜橋を渡って、隅田川の上流方向にしばらく歩いたところに、「長命寺桜もち」のお店と長命寺があります。

 「長命寺桜もち」のお店の手前に、「正岡子規仮寓(かぐう)の地」の碑がありました。

(「正岡子規仮寓の地」の碑)
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 俳人の正岡子規は、大学予備門の学生時代、長命寺桜もち「山本や」の2階を3か月ほど借り、自ら月香楼と名付けて滞在し、次の句を詠んだそうです。

 「花の香を 若葉にこめて かぐはしき 桜の餅 家つとにせよ」

 「家つと」は家に持ち帰るお土産という意味で、全体で「とても良い香りがする桜葉に包まれた桜餅をぜひお土産に」といった感じの意味になります。

 お店の2階に住まわせてもらっている以上、正岡子規も積極的にお店の宣伝をする必要があったのでしょう。

 これに関連し、長命寺のウェブサイト「長命寺と桜もち」には、次のような紹介文があります。

 「明治二十年頃には「お陸さん」という娘が美人で名高く、正岡子規が当家の二階に下宿していたのもその頃である。子規とお陸さんとの恋物語もあったとかいわれる。」

 当家とは「長命寺桜もち」の山本家のことです。

 正岡子規が長命寺桜もちの2階に下宿した一番の理由は、隅田川の自然や桜の魅力か、桜もちか、それともお陸さんか…真相は桜もちの葉のごとく謎に包まれています。


長命寺桜もちを味わう

 長命寺桜もちのお店に着きました。

(長命寺桜もち店舗)
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 「桜毛ち」と書かれた立派なのれんをくぐり、お店に入りました。

 店内を見渡すと、桜もちの購入だけでなく、お店でいただくこともできるとわかったので、「召し上がり」(喫茶・イートイン)をお願いしました。

 テーブル席に座り、しばらくすると、煎茶と一緒に桜もちが運ばれてきました。

(召し上がり(煎茶付))
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 桜もちは紙で包んだ状態で提供されます。

 桜もちを取り出してみました。

(長命寺桜もち(葉で包まれた状態))
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 塩漬けされた桜の葉が、くるんだ状態ではなく、桜もちにそのまま貼り付ける感じで3枚も使用されています。

 静岡県松崎町の「大島桜」の葉が使われています。

 「大島桜」の葉は、ほかの桜と比べて大きく、桜独特の甘い香りがあることが特長です。

 葉っぱをめくって、めくって、めくって、やっと桜もちと出会えました。

(長命寺桜もち)
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 小麦粉の生地を薄いクレープのように焼き、あんこ(こしあん)を巻いた桜もちです。

 桜餅の生地は、関東風(小麦粉生地)と関西風(餅生地)いずれも、ピンク色(桜色)と白色(無着色)のものがありますが、こちらのお店では白い生地で仕上げられています。

 この桜もちをいただく際、ふと考え込んでしまいました。

 「桜の葉は桜もちと一緒に食べるべきか、外して食べた方がよいか…」

 子どもの頃は桜の葉を外して食べていましたが、桜の葉も食べられることを知ってからは「何となく」桜餅と一緒に食べるようになりました。

 それに、今回のように大きな桜の葉を贅沢に3枚も使われていると、貧乏性の私は、これらの葉をすべて残すことがもったいないように思われました。

 そこで、桜の葉を外すことなく、そのまま桜もちと一緒にいただきました。

 最初に桜の甘くさわやかな香りを強烈に感じました。

 さらに噛み進めると、パリパリという音とともに、中の桜もちに到達し、桜の葉のしょっぱさとあんこの甘さが口の中いっぱいに広がりました。

 さらりとして上品な甘さのこしあんと、それを包むもっちりとした生地、そして甘く香り高い桜の葉のハーモニーが素晴らしく、満開の桜が目に浮かぶようでした。

 熱く濃いめの緑茶と一緒にいただくと、心がほっと和みました。

 正岡子規がこのお店の桜もちを宣伝したくなる気持ちもわかりました。

 会計の際、お店の方に「桜の葉がたくさん巻かれていましたが、一緒に食べた方がいいのでしょうか」とお尋ねしました。

 すると、お店の方から「外して召し上がることをおすすめしています」というお返事があったので、びっくりしました。

 私が「ええっ、桜の葉が3枚も巻かれていたので、てっきり一緒に食べるものかと…」とお話しすると、お店の方は「桜の葉をすべて外して召し上がる方、1枚で召し上がる方、2枚で召し上がる方…皆さんお好みの食べ方があるようです。ただ、3枚だと塩辛いと思います。」とおっしゃっていました。

 確かに若干しょっぱかったことは否めませんが、桜の葉と一緒に食べるのが「通(ツウ)の食べ方」、「大人の食べ方」だと信じていた私は少なからずショックを受けました。

 「長命寺桜もち」の桜の葉は香り付けと餅の乾燥を防ぐためのもので、半年以上塩漬けにしているのでしょっぱく、ごわごわしているとのことでした。

 「今度来た時は桜の葉1枚で食べてみよう」と思いましたが、おそらく残した桜の葉も後でペロンと食べてしまうことでしょう(笑)


長命寺と長命寺桜もち

 長命寺桜もちとお茶をいただいた後、お店のすぐ近くの長命寺を散策しました。

 長命寺は天台宗のお寺です。

(長命寺山門と言問幼稚園)
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 お寺の中に言問(こととい)幼稚園が併設されています。

(長命寺)
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 もともとは「常泉寺」という名のお寺でしたが、江戸幕府3代将軍・徳川家光がこの地に鷹狩りに来られた際、腹痛を起こし、住職の加持した庭中の般若水(井戸水)で薬をのんだら痛みが止まったので、以後「長命寺」と呼ばれるようになったそうです。

(長命水(井戸跡))
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 現在、この地で長命寺桜もちを味わえるのは、3代将軍・徳川家光が鷹狩りをし、8代将軍・徳川吉宗が桜を植樹し、正岡子規が滞在したおかげなのかもしれませんね。


<関連サイト>
 「長命寺桜もち」(東京都墨田区向島5-1-14)

<関連記事>
 「関東の和菓子と関西の和菓子 -和菓子の比較検証-
 「菅原道真ゆかりの地(大阪府藤井寺市道明寺)で道明寺粉と道明寺桜餅について学ぶ

2025年1月12日 (日)

カナダ料理の特徴と主な料理 -ブルーベリーパンケーキ・プーティン・チーズカード・ピーミールベーコン・プディングショムール-

 東京で世界の朝食が味わえるお店「TASTE THE WORLD(テイスト・ザ・ワールド)」。

 以前は「World Breakfast Allday(ワールド・ブレックファースト・オールデイ)」という店名でしたが、2024年11月に名称変更されました。

 年末の朝、いつもどおり外苑前店へ伺うと、外苑前店だけ一足早く年末年始の休業期間に入っておられました。

 そこで近くの新宿店へ行くこととしました。

 外苑前店と原宿店(現在は閉店)しか利用したことのない私は、「どんなお店なのだろう」と思いながら訪問しました。

(TASTE THE WORLD 新宿店)
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 2024年11月にオープンした「TASTE THE WORLD 新宿店」です。

 外苑前店と比べて店内が広いですが、隣の席との間隔は外苑前店と同じにされているのが面白いところです。
 (外苑前店の縦長のテーブルが2つ置かれていました。)


カナダの食文化

 「TASTE THE WORLD」の2024年12月・2025年1月限定の朝ごはんは「カナダの朝ごはん」です。

 北アメリカ大陸の北部に位置するカナダは、国土面積がロシアに次ぐ世界第2位で、海岸線の長さでは世界一です。

 カナダは世界中から多くの移民を受け入れてきた歴史があり、大西洋岸や五大湖畔にイギリス系、ケベック地方にフランス系、太平洋岸に中国系、その中間に北欧系や東欧系の人々が住んでおられます。

 こうした背景から、カナダの食文化は、先住民の料理のほか、イギリス料理、アメリカ料理、フランス料理、中国料理、北欧料理、東欧料理など様々な国・地域の料理が存在しています。

 そのため、ベジタリアン・ヴィーガン向けの料理やハラルフードなども充実しています。

 カナダの代表的な食材・飲料としては、メープルシロップ、穀物(トウモロコシ・小麦・大麦など)、豆類(大豆、エンドウ豆など)、シーフード(ロブスター、タラ、ホタテ)、鮭(サーモン)、アルバータ牛、ポーク、ジビエ(鹿、トナカイ、アザラシなど)、チーズ、ベリー(ブルーベリー、クランベリーなど)、キノコ類、アイスワイン・アイスシードル(ぶどうやりんごを凍結させ、糖度を高めた酒)などが挙げられます。

 また、日本でもよく知られている「キャノーラ油」は、1978年にカナダで生み出された「キャノーラ」と呼ばれる品種のアブラナ(ナタネ)を原料とする油で、「キャノーラ」という名称は「Canadian Oil Low Acid(酸の少ないカナダの油)」に由来します。


カナダの朝ごはん

 今回「TASTE THE WORLD」で御用意いただいたカナダの朝ごはんプレートがこちらです。

(カナダの朝ごはんプレート)
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 ブルーベリーパンケーキ、プーティン(スコッチエッグ、チーズカード)、ピーミールベーコン、焼きトマトが盛り付けられたプレートです。

 それでは順に料理を御紹介します。


【ブルーベリーパンケーキ】

 カナダでは食卓にブルーベリーがよく登場します。

 「ブルーベリーパンケーキ」は、ほんのり甘いパンケーキにブルーベリーソースがかけられた料理です。

(ブルーベリーパンケーキ)
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 ブルーベリーソースは、お店で生のワイルドブルーベリーを煮詰めて作られたそうです。

(ブルーベリーパンケーキ(中身))
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 パンケーキを切ってみると、パンケーキの中にもワイルドブルーベリーの果実がゴロゴロ入っていました。

 パンケーキに加え、カナダの人気食材・ブルーベリーもたっぷりと堪能することができました。


【プーティン・スコッチエッグ・チーズカード】

 「プーティン」はケベック州発祥のフライドポテトにチーズカード(※)とグレービーソースをかけた料理で、カナダの代表的な料理の1つです。
 ※チーズカード:熟成させる前のフレッシュチーズ。「カード」は、乳が固まって豆腐状になったものの名称で、「凝乳(ぎょうにゅう)」とも呼ばれている。

(プーティン・スコッチエッグ・チーズカード)
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 今回のプーティンは、フライドポテトにチーズカードを混ぜ、スコッチエッグをのせて、仕上げにオランデーズソース(卵黄、バター、レモン汁などを混ぜたソース)をかけたものが提供されました。

 厚切りのフライドポテトは熱々で、表面はサクサク、中はホクホクでした。

 オランデーズソースをまぶすとコクと酸味が増し、いくらでも食べられるほどの美味しさになりました。

 角切りのチーズカードは、やわらかくてほどよい塩気があり、油で揚げたフライドポテトとの相性が抜群でした。

 中盤に差し掛かったところで、スコッチエッグの黄身をくずしました。

(プーティンと半熟の黄身)
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 フライドポテトに半熟の黄身をまぶすと、その美味しさは頂点に達しました。

【ピーミールベーコン・焼きトマト】

 「ピーミールベーコン」は、豚ロースから脂身を取り除き、スパイス入りの塩水で熟成させ、仕上げにコーンミール(粗挽きトウモロコシ粉)を肉の表面にまぶした食肉加工品です。

 カナダの代表的な食べものの1つです。

 このピーミールベーコンを焼き、焼きトマトを添えたものが提供されました。

(ピーミールベーコン・焼きトマト)
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 豚肉の旨みが凝縮されており、ベーコンというよりステーキに似た味わいでした。

 お店の方から「パンケーキのブルーベリーソースをピーミールベーコンにかけていただくのもおすすめです」とお話がありました。

 確かに、デンマークの「フリカデラ(挽き肉ハンバーグ)」とラズベリー風味のピクルス,オーストリアの「ウィンナーシュニッツエル(薄切り肉のカツレツ)」とベリーソース,アメリカの「ローストターキー」とクランベリーソースなど,肉料理と甘いベリーソースの組合せは世界各地で見受けられ、好まれています。

 そこで、ピーミールベーコンにもブルーベリーソースを添えてみました。

(ピーミールベーコン ブルーベリーソース添え)
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 これはこれで美味しくなりましたが、ピーミールベーコンにブルーベリーソースの甘みがダイレクトに伝わるので、ブルーベリーソースは少量でよいことに気付きました。

 このあと、別の試みとして、ピーミールベーコンに(プーティンの)オランデーズソースや半熟の黄身をつけていただいたのですが、こちらも美味でした。


プディング・ショムール

 デザートとして「プディング・ショムール」をいただきました。

 「プディング・ショムール」は、「失業者のプディング(プリン)」という意味のお菓子です。

 世界大恐慌で多くの人々が職を失い、シンプルな材料(小麦粉や砂糖など)しか手に入らなかった時に生まれた、ケベック州(フランス系カナダ人)の伝統的なお菓子です。

(プディング・ショムール)
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 蒸しパンのようなしっとり感・ふわふわ感がある温かいプディング(ケーキ)にメープルシロップがかけられ、ローズマリーがのせられています。

 プレートには、バニラアイスとラズベリーが添えられています。

 プディング(ケーキ)生地は、シンプルな材料で空気を多く含ませて焼き上げられているため、メープルシロップをかけるとよく染み込み、プディングのジュワッとした食感とメープルシロップの深い甘みを楽しむことが出来ました。


<関連サイト>
 「TASTE THE WORLD」(東京都新宿区新宿4-3-15-103(新宿店)ほか)

<関連記事>
 「広島市植物公園・人の暮らしを支える「植物と油」展-「植物油の栄養と機能」講演会-」(キャノーラ油の紹介)
 世界の料理については,当ブログ「食文化関連記事一覧表・索引」の「各国料理の特徴と主な料理」も御参照ください。

<参考文献>
 「TASTE THE WORLD」カナダ料理紹介リーフレット
 佐原秋生・大岩昌子「食と文化の世界地図」名古屋外国語大学出版会
 地球の歩き方編集室「世界のグルメ図鑑」Gakken

2025年1月11日 (土)

宇都宮餃子の耳かき -栃木県宇都宮市-

 宇都宮市にある、宇都宮餃子の名店の味が一堂に会するフードテーマパーク 「来らっせ(きらっせ)」のお土産コーナーに、宇都宮餃子の耳かきが販売されていました。

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 1本643円(※)と、餃子1人前より高価ですが、それだけの価値がある珍しい耳かきです。
 ※2024年12月現在の価格

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 耳かきの頭に付いている「宇都宮餃子」は、長さ約1.5cmで、とても小さいものです。

 訪問時は、年末でお昼時(12時半)ということもあってか、予想をはるかに超える大勢のお客さんがおられ(約90分待ち)、せっかく宇都宮まで行ったにもかかわらず、宇都宮餃子を食べることはできませんでした。


 でもこの宇都宮餃子の耳かきをゲットできたことで、本物の餃子を食べる以上の感動と喜びがありました。

2025年1月 5日 (日)

栃木の食文化探訪 -宇都宮の黒カレー・かりまん・揚げたてあげあんパン・チャット-

宇都宮の市街地を歩く

 2024年の年末に栃木県宇都宮市を訪問しました。

 私はこれまで栃木県真岡市、足利市、栃木市、そして日光市を訪問したことがありますが、宇都宮市は訪問したことがありませんでした。

 また、宇都宮市は魚柄仁之助先生(食文化研究家)が住んでおられた地でもあるため、いつか訪問してみたい街の1つでした。

 東京・上野駅からJR宇都宮線(途中久喜駅で湘南新宿ライン(快速)に乗り換え)で宇都宮駅に到着しました。

(宇都宮線(湘南新宿ライン)・E231系・宇都宮駅)
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 湘南色(オレンジと緑のツートンカラー)の列車です。

 宇都宮駅東口からは、2023年夏に開業した「宇都宮ライトレール(LRT)」が走っています。

(宇都宮ライトレール(LRT)・宇都宮駅東口)
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 新幹線のように先がとんがった、次世代型路面電車です。

(宇都宮駅)
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 こちらは、宇都宮駅西口の様子です。

 宇都宮駅西口から延びる大通りを西へ向かって歩きました。

(宇都宮大通りから眺めた宇都宮駅)
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 さらに歩くと、宇都宮二荒山(ふたあらやま)神社の大鳥居が見えました。

(宇都宮二荒山神社・大鳥居)
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 宇都宮二荒山神社はかつて下野国(しもつけのくに)で最も格式が高い神社「一之宮(いちのみや)」とされ、その「一之宮」が転じて「宇都宮」という地名となったという説もあります。

 宇都宮は餃子の街としても有名ですが、確かに駅前や大通り沿いを少し歩くだけでも、餃子のお店をたくさん見かけました。

 私はこの「宇都宮餃子」を味わうべく、宇都宮二荒山神社近くの「来らっせ(きらっせ)本店」を訪問しました。

(「来らっせ本店」(MEGAドン・キホーテ))
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 「来らっせ本店」は宇都宮餃子の名店の味が一堂に会するフードテーマパークで、「MEGAドン・キホーテ宇都宮店」の地下にあります。

 ドン・キホーテの店内に入り、「来らっせ本店」を目指して「♪ドンドンドン」と進んでいくと、大勢の人で賑わう「来らっせ本店」に着きました。

 年末でお昼時(12時半)ということもあってか、予想をはるかに超える大勢のお客さんがおられ、驚きました。

 お店の案内板には「約90分待ち」と表示されていました。

 入口にお店の利用方法が説明されており、スマートフォンのLINEで友だち登録を行い、そのメニューから入場整理券を入手する必要があったので、急いで手続きをしました。

 手続きを完了し、スマートフォンで待ち状況を確認すると「116組待ち」と表示されました。

 タイトなスケジュールを組んでいた私は、宇都宮市内での滞在時間を2時間半程度しか取っておらず(だからこそ宇都宮餃子を一度に味わえるフードテーマパークを選んだわけですが…)、これではぎりぎり間に合うかどうかという感じでした。

 その後しばらく待ちましたが、待ち人数は逆にドンドン増え続け、いつになるかわからず、順番が来てもゆっくり食べる時間がないことを悟った私は、やむを得ずキャンセルしました。


春木屋・AKAI TORIの「黒カレー」

 再び宇都宮二荒山神社の前を歩いていると、交差点の角にある老舗喫茶店がありました。

(黒カレー・CAFE 春木屋)
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 「黒カレー」が有名なお店のようです。

(春木屋・AKAITORI)
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 お店の前のメニューボードには、「黒カレー」について、「戦後、進駐軍のコックからレシピを習った最初のカレーから78年。粉からオリジナル調合の昔タイプのカレーです」と説明がありました。

(昔の写真(春木屋))
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 創業当時(昭和23年)からずっと、この地で営業されているようです。

 餃子と同様、この「黒カレー」も宇都宮の味だと思い、興味を持ってお店に入りました。

 テーブル席に案内され、黒カレーを注文すると、店主さんから「1人でやっているので20分ぐらいかかりますが、よろしいですか」とお話があったので、「はい、いいですよ」とお返事して待つことにしました。

 結局は20分も経たずに黒カレーが提供されました。

(黒カレー(スープ付))
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 昔ながらのステンレス製カレー皿にカレーライスが盛られ、漬物が添えられています。

 スープは、味噌汁(ねぎ、豆腐、巻き麩、わかめ入り)がカップで提供されました。

 黒カレーをいただくと、最初にハヤシライスのような熟成された甘みとコクを感じ、後からカレーの風味とほどよい辛さが追いかけてくる、マイルドな欧風カレーでした。

 この甘みは、大量に使われている玉ねぎの甘みだと思います。

(黒カレー(拡大))
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 具は、大きめにカットされた玉ねぎと角切りの鶏肉が中心で、具だくさんのカレーです。

 食べ進めるうちに、豚肉の脂身による旨味とコクも感じました。

 そこで店主さんに「このカレーは鶏肉だけでなく、豚肉も入れておられるのでは」と尋ねてみると、「そのとおりです」と教えていただきました。

 テーブル近くの棚に、店名の由来や黒カレーの歴史についてまとめられた冊子があったので読んでみました。

 内容は、
・レストラン「春木屋」の喫茶部門が「赤い鳥(AKAITORI)」
・「赤い鳥(AKAITORI)」の名称は、鈴木三重吉の童話童謡雑誌「赤い鳥」から
・「黒カレー」は初代店主が進駐軍のコックさんから教わったもの
・当初は「黒カレー」ではなく「印度カレー」という名でメニューに載せていた
・実際は英国式洋食カレーで、お客さんの誤解も多かったため、「黒カレー」という名称にした
・材料は豚肉、鶏肉、玉ねぎ、生姜、にんにくが中心で、塩は赤穂の塩を使用している
・鶏肉をオーブンでローストし、皮をパリッとさせてから煮込んでいる
・炒めた豚肉と大量の玉ねぎ、ローストした鶏肉にスパイス、調味料、自家製ルーを加えて作る

 鶏肉と豚肉と玉ねぎが織りなすハーモニーと、長年受け継がれ熟練された味を堪能することができました。


高林堂の「かりまん」と「揚げたてあげあんパン」

 馬場通りを宇都宮駅に向かって歩いていると、和菓子店がありました。

(高林堂本店)
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 「高林堂(こうりんどう)」という宇都宮の和菓子店です。

 私の目が釘付けになったのは、お店に掲げられていた「あげあんパン」の写真です。

(あげあんパン)
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 (高林堂ウェブサイトの写真を引用)

 湧き上がる衝動を抑えることができず、お店に入りました。

(「KORINDO CAFE」メニュー)
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 店内のカフェコーナー(「KORINDO CAFE」)で揚げたてをいただけることを知り、「揚げたてあげあんパンドリンクセット」と、お店の看板商品の1つ「かりまん」を注文しました。

 「かりまん」は単品での注文をお願いしましたが、お店の方は「かりまんも温めて一緒にお出しします」と快く注文に応じてくださいました。

 注文を終え、店内を見渡すと、豪華客船「クイーンエリザベス」に高林堂の和菓子が提供されたことが紹介されていました。

 馬場通り沿いのテーブル席に座り、宇都宮の街を眺めながら待っていると、注文の品が運ばれてきました。

(揚げたてあげあんパンドリンクセット・かりまん(包装))
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 食べやすいように紙で包装した状態で提供されます。

 ワクワクしながら包みを開けました。

(揚げたてあげあんパンドリンクセット・かりまん)
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 「あげあんパン」も「かりまん」もアツアツで、写真を撮る時間さえもったいないと思いました。

(かりまん(中身))
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 「かりまん」は「かりんとう饅頭」の名称で、香ばしい「かりんとう」生地の中に「こしあん」が詰められています。

 いただいてみると、黒糖のかりんとうの皮が「サクッ」と音が鳴るほどカリカリで香ばしく、なめらかでほどよい甘みのこしあんとの相性が抜群でした。

 「かりまん」の「かり」は、「かりんとう」という意味だけでなく、「カリカリ」という意味も込められているように思いました。

(揚げたてあげあんパン(こしあん))
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 「揚げたてあげあんパン」は、小豆あんをサンドした揚げパンで、仕上げにきな粉がまぶされています。

 小豆あん(あんこ)は注文時に「こしあん」か「つぶあん」を選べるようになっています。

 パンは「パニーニ」のような平べったい形をしており、油で揚げることで全体がサクッとした食感になるよう工夫されています。

 あんこをサンドした平べったい形のパンを揚げることにより、パンとあんこの一体感が増し、「かりまん」にも似た美味しさを味わうことが出来ました。

 仕上げにコーヒーをいただきながら、至福のひとときを過ごしました。


うさぎやの「チャット」

 宇都宮駅に隣接する「宇都宮PASEO」で、「うさぎや」の「チャット」を購入しました。

(うさぎや「チャット」(包装))
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 お菓子の名称「チャット」は詩人書家・相田みつをさんの命名で、「心のとけあった人たちが、気兼ねなく気楽なおしゃべりをしながら、楽しいひとときを過ごす」という意味が込められているそうです。

 コミュニケーションツールの1つ「チャット」にも通じる、時代を先取りしたような名前です。

(うさぎや「チャット」)
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 愛媛の「母恵夢(ポエム)」や福島の「ままどおる」、博多の「博多通りもん」に似た乳菓です。

 「チャット」の特徴は、皮や白あんがとてもやわらかいことです。

 口に含むとホロリと溶けるような、やさしい食感・風味のお菓子です。

 「チャット」をいただけば、心がとけあい、気兼ねなく気楽なおしゃべり(チャット)で盛り上がることでしょう。


<関連サイト>
 「来らっせ」(本店 栃木県宇都宮市馬場通り2-3-12ほか)
 「春木屋・AKAI TORI」(栃木県宇都宮市馬場通り2-3-10)
 「高林堂」(本店 栃木県宇都宮市馬場通り3-4-7 ほか)
 「うさぎや」(本店 栃木県宇都宮市伝馬町4-5ほか)

2025年1月 1日 (水)

新年明けましておめでとうございます -開設11周年を迎えて-

 新年明けましておめでとうございます。

 読者の皆様も,新たなお気持ちで新年を迎えられたことと思います。

(飛行機の窓から眺めた富士山)
20241229-nh672

 おかげさまで,本日,ブログ開設11周年(ブログ開設日2014年1月1日)を迎えることが出来ました。

 当ブログは「食」を主なテーマとして、様々なお話を御紹介しています。

 ブログの執筆や取材を通じて、読者の皆様をはじめ、いろんな方とのつながりができ、それが私の生きがいとなっています。

 近年の物価上昇の影響で、食費や旅行費用の捻出が大変な状況となっていますが、「いろんな方との出会い・つながりは、時間あれば得られるものでも、お金を積めば得られるものではない」との考えで、何とか工夫しながら、今後も活動を続けていきたいと思っております。

 また、食に限らずどんなジャンルにおいてもそうですが,興味を持ち,ちょっとの勇気と行動力でその世界に踏み込めば,その先には思わぬ喜びや感動,新たな出会いや発見が待っているような気がします。

 そして、この「ちょっとした勇気と行動力」を与えてくださっているのは、実は今こうしてお読みいただいている読者の皆様なのです。

 読者の皆様からの見えない大きな力に支えられていると思うからこそ、ここまで何とか継続出来ました。

 その分、私が得た喜びや感動,新たな出会いや発見を皆様と共有することで、お返しができたらと思います。


 食文化やご当地耳かきの探訪を通じて,今年はどんな出会い・発見があるでしょうか。

 全ては偶然が積み重なった結果ですので,私自身も未知の世界で、どういう展開になるのか今からワクワクしています。

 今後も,当ブログにお越しいただいた皆様に,できるだけ真実をお伝えし,記事をお読みいただくことで何か1つでも御参考になることがあればとの思いで,ブログの作成に取り組みたいと思います。

 引き続き御愛顧の程,よろしくお願い申し上げます。


 2025年 元旦

 コウジ菌

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