島根県津和野町の「黒いいなり寿司」-割子そば・いなりずし・おみやげいなり-
島根県津和野町の紹介
島根県津和野町を訪問しました。
津和野駅前広場には、蒸気機関車が設置されています。
(蒸気機関車D51 194(津和野のデゴイチ))
この蒸気機関車は「津和野のデゴイチ(D51)」と呼ばれています。
新山口駅-津和野駅間を走る「SLやまぐち号」の蒸気機関車も、現在は主に「デゴイチ」が使われています。
津和野町の中心街を歩いていると、山口県の観光案内板を見つけました。
(山口県観光案内板)
案内板の横には、
「この案内板は、島根県と山口県の広域観光振興を目的として、山口県が、津和野町(島根県)に設置したものです。」
と記載されています。
この一文は、津和野町は山口県だと誤解されないために記載されたものですが、「津和野町あるある」だなとクスっと笑ってしまいました。
(鷺舞の像)
こちらは「鷺舞(さぎまい)」の像です。
白鷺が舞う姿を表現する芸能神事で、国の重要無形文化財に指定されています。
(津和野の鯉)
中心街のお堀では、たくさんの鯉(錦鯉)が泳いでいる姿を見ることができます。
もともとは救荒食(非常食)用として飼育されていたようです。
(津和野大橋から眺めた津和野川)
こちらは津和野川です。
この写真の右側(山側)に「太皷谷稲成神社(たいこだにいなりじんじゃ)」があります。
(太皷谷稲成神社・鳥居)
太皷谷稲成神社は日本五大稲荷のひとつで、参道に続く朱塗りの鳥居は壮観です。
美松食堂のいなりずしと割子そば(割子そば定食)
太皷谷稲成神社参道入口のすぐ近くにある「美松食堂(みまつしょくどう)」を訪問しました。
(美松食堂)
美松食堂は、いなり寿司で有名なお店です。
メニューを見ると、うどん・そばに「いなりずし」がセットになった定食があったので、私はその中の1つ「割子そば定食」を注文しました。
島根は「出雲そば」の「割子そば(わりごそば)」が有名です。
割子そばは、冷たいそばを丸い朱塗りの割子(わりご)に入れ、ねぎ、海苔、大根おろしなどの薬味をのせ、その上につゆをかけて食べるそばです。
そば猪口(ちょこ)のつゆに薬味を入れ、そのつゆにそばをつけて食べる「ざるそば」や「もりそば」とは逆の食べ方になります。
割子そばは、他のうどん・そばに比べて少し手間がかかるようで、奥の厨房でそばを一皿ずつ丁寧に盛り付けておられる様子が伺えました。
しばらくして、私のテーブル席に「割子そば定食」が運ばれてきました。
(割子そば定食)
割子そば、山菜、いなりずし(3個)、漬物の定食です。
(いなりずし(美松食堂))
こちらが美松食堂の「いなりずし」です。
よく炊かれた黒い油揚げが食欲をそそります。
中に包まれている「すし飯」を確認してみましょう。
(いなりずし(中身))
すし飯にも濃く甘辛い煮汁が加えられていて、人参、椎茸、タケノコが入っていました。
一般的ないなり寿司に比べて油揚げがかなり黒いので、お店の方に「もしかして黒砂糖(黒糖)を使われていますか」とお尋ねしたところ、「ずっと昔から砂糖のみで炊いているのですよ」と教えていただきました。
つまりこの黒っぽさは、砂糖をよく加熱することで起きる「メイラード反応(褐変反応)」により、カラメル化させたものなのです。
黒い油揚げは煮汁がよく浸み込んでおり、甘みと深いコク、そしてほろ苦さを感じる大人の味でした。
すし飯はコクのある甘みと酢のさわやかな酸味があり、黒い油揚げとよく調和していました。
続いて「割子そば」をいただきました。
(割子そば)
そばが丸く平べったい割子に盛られ、刻みねぎ、刻みのり、もみじおろしがのせられています。
その割子がお重のように三段に積み重ねられていました。
写真は積み重ねられていた割子をテーブルの上に広げたものですが、通常は積み重ねたままの状態で一番上のそばから順にいただきます。
写真右上の朱塗りの容器には「そばつゆ」が入っており、これを割子そばにかけていただきます。
まずは一番上の割子そばに「そばつゆ」をかけていただきました。
シャキッと弾力のあるそばに、濃く甘辛いそばつゆがよく合いました。
食べ終えたら、空になった割子を一番下の段へ重ね直し、二段目にある割子そばをいただきます。
この際、食べ終えた割子に残ったそばつゆを次の割子のそばにかけて食べるのが正しい食べ方とされています。
(割子そばとつゆ)
こんな感じに、残ったそばつゆを次の割子のそばにかけていただくのです。
これを繰り返し、そばつゆが薄くなったら、そばつゆ入れのそばつゆを足します。
無駄なく、効率的な方法ですね(笑)
こうした方法でそばが食べられるため、出雲そば(割子そば)のそばつゆは濃い(甘辛い)のが特徴です。
美松食堂の「おみやげいなり」
このお店で、手土産用の「おみやげいなり」も購入しました。
(おみやげいなり(包装))
きつねや鳥居のイラストが描かれた、味のある包装紙です。
(おみやげいなり)
この油揚げの黒さは並大抵ではありません(笑)
津和野の黒い「いなりずし」を堪能しました。
津和野のいなり寿司は、この美松食堂のほか、道の駅「津和野温泉なごみの里」や「津和野駅売店(毎週土・日・祝に営業)」などでも食事や購入することができます。
津和野町は、いなり寿司のほかにも、「源氏巻(げんじまき、あんこをカステラ生地で巻いたお菓子)」、「うずめ飯(ごはんに様々な具をうずめた雑炊のような郷土料理)」、「まめ茶(カワラケツメイのお茶)」、わさび、里芋、栗、山菜など、様々なお菓子・料理・食材に恵まれています。
歴史・文化・食がコンパクトに凝縮された津和野は、自分の興味・関心に合わせた楽しみ方が出来る魅力的な街です。
<関連サイト>
「津和野町観光協会・ゆ~にしんさい」(島根県鹿足郡津和野町後田イ66-1)
「美松食堂」(島根県鹿足郡津和野町後田ロ59-13)
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コメント
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旅行ガイドなどでは“ 萩津和野”とセットで扱われる事が多いですから、津和野を山口県と思っている人も多いでしょうか?
そうかと思ったら石見空港の別名が萩・石見空港だったりして(^.^)
出雲と石見では言語も違う様ですから、いっそ長門と石見が合併、出雲と伯耆が合併した方が良いのでは?
なんてよそ者の分際で考えています(^_^;)
黒カレーの次は黒いなり?
関東のいなりは濃口醤油、関西以西は淡口(うすくち)醤油で味付けするので色が薄いと理解していましたが・・・
西日本の食文化について見識を深められた様な気がしますm(_ _)m
投稿: なーまん | 2025年1月26日 (日) 16時18分
確かに津和野は山口県のイメージが強いかもしれません。
JR山口線にSLやまぐち号と、何かと山口が出てくるし(笑)
そのそば、何かつい最近TVで見たような…としばらく考えて思い出しました。
孤独のグルメに出てたんでした。
https://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/sz0706.html
美松食堂のいなり寿司、食べてみたいものです。
物産展とかに出てきたりしないのかな~?
…と書いてから思ったけど、山陰地方の物産展ってみたことがないような気が…(^^;)
投稿: chibiaya | 2025年1月26日 (日) 21時37分
なーまん 様
なーまんさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
言われてみれば、萩・津和野でセットになったガイドブックよく見かけますね。
いずれの地も一大観光地であり、幕末から明治期に活躍した人物も多く輩出されているからでしょうね。
そして石見空港(萩・石見空港)って、よく御存知ですね!
島根県は横に長いので、出雲と石見では文化や方言が異なることも多いことと思います。
ただ出雲と伯耆が合併したら、全国的にますます島根と鳥取がわからなくなりそうです(笑)
宇都宮の黒カレーに続き、津和野の黒いなりを御紹介しましたが、これはたまたまです(笑)
おっしゃるように、関西・西日本のうどん(そば)だしや、いなりの油揚げは関東に比べて見た目は薄いです。
今回御紹介したお店の「いなりずし」は、砂糖(ザラメだと思います)が褐色になるまでよく煮詰めたものを使われていますが、こうした黒いいなり寿司は、西日本では珍しいです。
対照的に、白くあっさりしたいなり寿司と言えば、沖縄のいなり寿司を思い出します。
様々なお気付きのことをお話くださり、ありがとうございました。
投稿: コウジ菌 | 2025年1月26日 (日) 22時47分
chibiaya 様
chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
津和野は広島県からも比較的近いのですが、その広島県民でも津和野は山口県だと誤解している人がおられます。
山口市と津和野町は隣同士で、SLやまぐち号もそうですが、セットで観光される方が多いことも誤解される理由の1つでしょう。
割子そば、「孤独のグルメ」で紹介されたのですね!
テレビ東京系は広島も島根も放送されてないので、観ることはできませんが(笑)
出雲そばは、「割子そば」と並んで有名な「釜揚げそば」も紹介されたようですね。
私も孤独のグルメに先を越されないよう頑張ります(笑)
美松食堂のいなりずし(黒いいなり寿司)は珍しいですよね。
個人店なので、物産展への出店は難しいと思いますが、物産展で「おみやげいなり」を販売すれば、人気商品になることでしょう。
全国うまいもの市とか、御当地弁当大会などで「おみやげいなり」が販売されていたらいいなと私も思います。
投稿: コウジ菌 | 2025年1月26日 (日) 23時07分
お堀で飼われてる鯉の姿に、日常が平穏のあかしですね。
そんな鯉は水質に左右されず生息できるみたいですけれど、お写真からは
お堀の水にとても清い映りで、だからその地を流れる川にもそうあって、
なので津和野のお水から生まれたお蕎麦にも安寧をおぼえます。。。
投稿: サウスジャンプ | 2025年2月 9日 (日) 21時57分
サウスジャンプ 様
サウスさん、こんばんは。
お久しぶりです!コメントいただき、ありがとうございます。
お堀で優雅に泳ぐ鯉、その鯉にエサをやる観光客、その光景が日常の津和野町民…微笑ましい平穏な一コマですよね。
このお堀は、津和野川の水を引いているようです。
ということは、津和野川の水がきれいだということになりますね。
お店の割子そばは、厨房で水をたっぷり使っておられる様子が伺えましたが、美味しい水があるからこそ、美味しい蕎麦が味わえたということですね!
投稿: コウジ菌 | 2025年2月 9日 (日) 22時32分