« 2025年1月 | トップページ | 2025年3月 »

2025年2月

2025年2月23日 (日)

チリ料理の特徴と主な料理 -ぺブレ・エンパナーダ・セビッチェ・カスエラ デ マリスコス・パステル デ チョクロ・モテ コン ウエシージョ-

神戸のチリ料理店「グラン ミカエラ イ ダゴ」

 全国的にも珍しい「チリ料理」のお店が神戸にあります。

 神戸市の中心街・三宮から北方向へ歩いた、ハンター坂沿いにある「グラン ミカエラ イ ダゴ」というお店です。

 ディナータイムにお店に伺いました。

(グラン ミカエラ イ ダゴ 店舗)
Photo_20250223113801

 お店はレンガ造りの建物の2階にあります。

 写真の2階正面、角のチリの国旗が掲げられているところが「グラン ミカエラ イ ダゴ」です。

 1階の入口に、チリの位置を示した南米の地図がありました。

(チリの位置(南米地図))
Photo_20250223114401

 チリは南米大陸にあるアンデス山脈の西側にある、南北に細長い形をした国です。

 階段を上がり、お店の玄関にたどり着きました。

(グラン ミカエラ イ ダゴ)
Photo_20250223114501

 カラフルでワクワクするようなお店です。

 少し緊張気味にお店に入ると、オーナーシェフのクリスティアン・メリリャン一色さんが温かく迎えてくださいました。

 店内には、チリにまつわる装飾のほか、国内外のサッカーユニフォームなど、サッカー関連のグッズも数多く展示されていました。

 これらの装飾・展示品は、クリスティアンさんがヴィッセル神戸をはじめとするJリーグのサッカーチームの通訳をされてきたことによるものです。

 私は壁に展示されているサンフレッチェ広島のユニフォームを指差し、クリスティアンさんに「今日はここから来ました」とお話ししました。

 するとクリスティアンさんから、サンフレッチェ広島の通訳として広島市内に住んでおられた時のお話や、広島でよく通われたお店のお話などをしていただき、場が和みました。

 常連客のように親しく会話してくださるクリスティアンさんに、お人柄の良さを感じました。


チリ料理

 メニュー表を眺め、しばらく考えて、チリの代表的な料理が味わえる「チリカジュアルコース」を注文しました。


【ベリージンジャー】

 コースとは別に、「ベリージンジャー」というドリンクをいただきました。

(ベリージンジャー)
Photo_20250223114701

 ジンジャーエールにブルーベリー、ブラックベリー、ラズベリーなど様々なベリーを浮かべたドリンクです。

 ジンジャーエールにベリーの酸味とフレーバーが加わり、さわやかなテイストが楽しめました。


【ぺブレ】

 コース料理の一皿目として、「ぺブレ」を御用意いただきました。

 「ぺブレ」は、トマトのサルサ(トマト、玉ねぎ、唐辛子などを刻んだソース)です。

(ぺブレ・パン・自家製ローズヒップバター)
Photo_20250223114901

 写真左がぺブレ、右が自家製ローズヒップバター、奥がパンです。

 チリのサルサ(ぺブレ)の特徴は、コリアンダーを入れることです。

 チリ(唐辛子)も入っていますが辛さは控えめで、むしろトマトの甘みやコリアンダーのさわやかな香りを強く感じました。

 ホカホカに温められたパンと一緒にいただきました。

 ローズヒップバターは、バターに細かく刻んだローズヒップを加えたものです。

 ローズヒップは、乾燥ナツメやレーズンの味に近いと思いました。

 ローズヒップのほのかな甘さを感じるバターは、ぺブレと同様、温かいパンとよく合いました。

 ぺブレもローズヒップバターも存分に味わいたかったので、パンをおかわりしました。


【エンパナーダ】

「エンパナーダ」は、パイ包み料理で、チリの代表的な料理の1つです。

(エンパナーダ)
Photo_20250223115201

 牛肉のエンパナーダ(オーブン焼き)をいただきました。
(パイ包みを油で揚げたエンパナーダのフライもあるようです。)

(エンパナーダ(中身))
Photo_20250223115301

 パイをガブリとかぶりつくと、中には角切りの牛肉、玉ねぎ、ゆで卵、オリーブ、レーズンなどがぎっしり詰められており、大満足でした。

 ぺブレ(サルサ)を添えていただくのもおすすめです。


【セビッチェ】

 「セビッチェ(セビーチェ)」は、魚介の切り身(刺身)に玉ねぎなどの野菜を加え、レモンやライムなどでしめた(マリネした)料理で、環太平洋一帯で食されている料理です。

(セビッチェ)
Photo_20250223115601

 鯛(白身魚)・タコ・イカなどの魚介類と、紫玉ねぎ・ベビーリーフ・プチトマトなどの野菜にレモン果汁を加えてマリネし、刻んだコリアンダーと輪切りのレモンをのせたセビッチェを御用意いただきました。

 中に酸味が効いた魚介類がたっぷりと入っていて、いくらでも食べられそうな美味しさでした。

 クリスティアンさんに、ビネガー(酢)も入っているのではないかと伺ったところ、レモン果汁のみ(酢は使っていない)とのことでした。


【カスエラ デ マリスコス】

 「カスエラ デ マリスコス」は、チリの具だくさん魚介スープです。

 海鮮(マリスコス)、の(デ)、鍋(カスエラ)を意味しています。

(カスエラ デ マリスコス)
Photo_20250223115801

 土鍋に大きな海老やムール貝などがのせられており、見た目にインパクトがありました。

 具は、魚介類が海老、鯛(白身魚)、アサリ、イカ、ムール貝、野菜類が玉ねぎ、トマトなどです。

 フランスのブイヤベースに似た、魚介の旨みたっぷりのスープです。

 レモンを絞ったり、刻んだコリアンダーをかけたりしながら美味しくいただきました。


【パステル デ チョクロ】

 コース料理を食べ終え、「パステル デ チョクロ」を追加注文しました。

 「パステル デ チョクロ」は、「トウモロコシのグラタン風オーブン焼き」です。

 トウモロコシ(チョクロ)のケーキ(パステル)を意味しています。

(パステル デ チョクロ)
Photo_20250223120001

 粗挽きトウモロコシがオーブンで焼かれ、鮮やかな黄色と美味しそうな焦げ色に変化しています。

 中身を確かめてみましょう。

(パステル デ チョクロ(挽き肉・玉ねぎ・ゆで卵))
Photo_20250223131001

 中には挽き肉、玉ねぎ、ゆで卵が入っていました。

 さらに食べ進めると…

(パステル デ チョクロ(鶏肉・黒オリーブ・レーズン))
Photo_20250223131002

 鶏肉や黒オリーブ、レーズンまで登場しました。

 「挽き肉などの具がたっぷり入ったオーブン重ね焼き」という意味では、イタリアの「ラザニア」やギリシャの「ムサカ」とよく似ています。

 ラザニアやムサカに使われる「チーズ」を「粗挽きトウモロコシ」に変えると、「パステル デ チョクロ」に近い味になりそうです。

 粗挽きトウモロコシがとても甘くて香ばしく、挽き肉やゆで卵などの具とよく合いました。

 「クリスティアンさん監修で、食品メーカーや飲食チェーン店がこの料理を商品化すればブレイクするのでは」と思えるほどの美味しさでした。

 クリスティアンさんに「この料理は日本人向けにアレンジされているのですか」と尋ねたところ、「本場の味です。だからチリ出身の方もお店にいらっしゃるのです」と教えてくださいました。


【モテ コン ウエシージョ】

 とても楽しいひとときだったので、単品のデザートも注文させていただきました。

 クリスティアンさんに「何かおすすめのデザートがありますか」と尋ねると、「お任せください」と御用意いただいたのが「モテ コン ウエシージョ」です。

(モテ コン ウエシージョ)
Photo_20250223131401

 「モテ コン ウエシージョ」は、麦と桃入りのデザートです。

 麦(モテ)、~と一緒に(コン)、桃(ウエシージョ)を意味しています。

 茹でてやわらかくした麦に、シナモンを効かせた甘く冷たいシロップがかけられ、中心に桃がのせられています。

 スッキリした甘さで食べやすく、甘酸っぱい桃と交互にいただきました。

 和食のデザートのような感じもしました。

 チリの独立記念日(9月18日)のお祝いなどでも食べられるデザートなのだそうです。


まとめ

 食後にコロンビアのコーヒーをいただきながら、しばらくの間、クリスティアンさんと会話を楽しみました。

(コーヒー)
Photo_20250223131801

 私からクリスティアンさんに「広島はハワイや中南米への移民が多かったので、チリへ行かれた方も多かったのでは」と伺ったところ、予想に反して、「日本人移民は少なく、東欧・ドイツなどヨーロッパからの移民が多い」とのことでした。

 また、チリの地理についても教えていただきました。

 チリはニューヨークのほぼ真下(真南)に位置し、日本から空路でチリへ行くには、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリアのどの経由でも所要時間は大体同じになるそうです。

 クリスティアンさんから私に「チリで有名なものと言えば何をイメージしますか」と尋ねられたので、私は「うーん、やはりチリワインですかね」とお答えすると、クリスティアンさんもチリワインの輸入・普及に御尽力されているのだとお話がありました。

 続けて、「チリは銅や鮭(サーモン)も有名ですよ」と教えていただきました。

 私は「あっ、言われてみれば、確かにスーパーマーケットなどで売られている鮭(サーモン)はチリ産が多いですね!」と気付きました。

 その後もしばらく会話を楽しませていただき、「また機会があればお店に伺いたい」と思いつつ、お店を後にしました。


<関連サイト>
 「グラン ミカエラ イ ダゴ」(神戸市中央区中山手通二丁目13-8 エール山手2階)

2025年2月16日 (日)

広島市植物公園「バレンタインフェスティバル2025」 -絵本の朗読とチョコレート作り体験・テンパリングとココアバターの結晶化について-

広島市植物公園のバレンタインフェスティバル

 今年も広島市植物公園でバレンタインイベントが開催されました。

(「バレンタインフェスティバル2025」チラシ)
Photo_20250215220701

 私は2025年2月9日に広島市植物公園を訪問しました。

(広島市植物公園・ハート形の花の鉢植え)
Photo_20250215220801

 広島市植物公園です。

 バレンタインフェスティバルにちなみ、花の鉢植えがハート形に並べられていました。

 奥の建物は大温室です。

 この大温室では,全国でも珍しいカカオが栽培されています。


カカオの木・カカオの実とチョコレートの香りがするランの花

 大温室の「くだものと暮らしのコーナー」エリアにカカオの木があります。

 このカカオの木を見に行くと…

(カカオの木・バレンタインフェスティバル装飾)
Photo_20250215221001

 カカオの木に、バレンタインデーにちなんだハート形や星形の装飾が施されていました。

 カカオの実がどこになっているかわからない状態になっています(笑)

 カカオの木に近づいて、カカオの実を探しました。

(カカオの木・カカオの実)
Photo_20250215221101

 褐色のカカオの実がなっていました。

 次に「チョコレートの香りがするラン」を探しました。

(オンシジウム シャリー ベイビー)
Photo_20250215221102

 チョコレートの香りがするランは、「オンシジウム シャリー ベイビー」という名で知られています。

 色はワインレッド・薄ピンク・白で構成され、見た目にもチョコレートの香りがしそうな花です。

 花に近づいて香りを確かめると、本当にチョコレート(ローストカカオ)の香りがしました。

 チョコレート好きにはたまらない花です。


ベゴニア温室と「カカオとチョコの秘密」展示

 続いて、ベゴニア温室へ行ってみました。

(ベゴニア温室入口・バレンタイン装飾)
Photo_20250215221401

 ハート形のカラフルなアーチが設置されていました。

 室内には色とりどりのベゴニアが並び、「カカオとチョコの秘密」についての説明書きもありました。

(ベゴニアと「カカオとチョコの秘密」展示)
Photo_20250215221402

 また、同じ室内で「99本のバラと記念撮影」イベントも開催されており、家族連れやカップルなどで賑わっていました。


森のカフェでランチ

 次に、ベゴニア温室の向かいにある「森のカフェ(ログハウス)」へ行きました。

 こちらのお店で昼食をいただきました。

 私の目当ては、カツカレーです。

(「森のカフェ」のカツカレー)
Photo_20250215221701

 このお店のカツカレーは、これで3回目の注文となります。

 お腹も満足したところで、ふと窓から外を眺めると、展示資料館の建物が見えました。

(「森のカフェ」から眺めた展示資料館)
Photo_20250215221801

 この展示資料館2階の講堂で、チョコレートの専門家・佐藤清隆先生(広島大学名誉教授)によるバレンタインフェスティバル関連イベント「絵本の朗読とチョコレート作りの体験」が開催されます。

 イベント開始時刻が近づいたため、お店を後にし、展示資料館へ向かいました。


世界のチョコレート販売

 展示資料館1階のロビーで、世界のチョコレートが販売されていました。

 イタリア、ドイツ、トルコなどのチョコレートが用意されていました。

 私がひときわ興味を持ったのは、スプーンの形をしたチョコレートです。

(エリート チョコレートスプーン)
Photo_20250215222001

 ミルクチョコレートのスプーンが3本、ダークチョコレートのスプーンが3本、計6本のセットです。

 スプーンとして使ったあとでバリバリ食べるのが楽しそうです。


絵本「ひと粒のチョコレートに」の朗読とチョコレート作り体験イベント

 買い物を済ませ、展示資料館の2階へ行こうとしたところ、講演開始の30分以上前にもかかわらず、あっという間に参加希望者の列ができ、私は1階の階段付近で待つこととなりました。

 列にならんで待っていると、佐藤清隆先生が登場しました。

 佐藤先生は私を見つけ、「おっ、毎年1回会うね!」と声をかけてくださいました。

 私は「今年は初めてだけど、去年は3回お会いしてますよ!」と心の中でつぶやきながら受付開始を待ちました。

 受付を済ませ、私は前の席に座りました。

 私の入場整理券は31番で、この日、100名の定員は埋まったようでした。

 講演会開始までの間、佐藤先生と少しお話しすることもできました。

 受付で、植物公園の職員さんから紙皿にのせたローストカカオ豆や砂糖などをいただきました。

(ローストカカオ豆・砂糖・水・フラワーバレンタインチラシ・入場整理券)
Photo_20250215223701

 御用意いただいたカカオ豆はフィリピン産で、佐藤先生がフィリピンの農園から直接入手されたそうです。

 やがて講演会開始時刻を迎えました。

 講演会は、佐藤先生が書かれた絵本「ひと粒のチョコレートに」(福音館書店)をもとに、「ぐるんぱ」の皆さんがその絵本を朗読し、佐藤先生がその朗読に合わせて絵本やチョコレート研究のスライドを紹介する方法で進められました。

 その朗読の合間にチョコレートに関するクイズが出されたり、チョコレート製造工程の一部を体験できたりと、盛りだくさんの内容でした。

 絵本の朗読の途中、佐藤先生から会場の皆さんへ、
「カカオ豆の殻を割って中の実(胚乳・カカオニブ)を取り出してみてください」
「その際、カカオニブの中に小さく細長い棒(胚芽)があるので取り出してください」
とお話がありました。

(スライド・カカオ豆の皮むき体験)
Photo_20250215224001

 私も爪を使ってカカオ豆の硬い殻を取り除いてみました。

(カカオ豆・カカオニブ・カカオ豆の皮)
Photo_20250215224101

 写真左上が殻を割った「カカオニブ(カカオの胚乳)」、右上がそれを細かく砕いたもの、それらの間(時計の12時の方向)にある小さい茶柱のような形をしたものが胚芽(ジャーム、チュニブ)、写真下側の茶色いものがカカオの殻(外皮の「カカオシェル」と薄皮の「カカオハスク」)です。

 カカオの胚芽は5mm前後と小さく、探し出すのが難しいのですが、豆の状態のカカオニブをよく観察すると、豆の先端部に丸い穴が開いている箇所があります。

(カカオニブの胚芽の位置)
Photo_20250215224201

 この穴(写真の赤い矢印の箇所)の中にカカオの胚芽があります。

 この胚芽はやがてカカオの木へと成長するものですが、これを食べてもジャリジャリして苦いだけなので、チョコレートを作る際には取り除く必要があります。

 胚芽を取り除いたカカオニブを、まずはそのままいただきました。

 ローストしたアーモンドのような食感で、味はカカオ100%の苦いチョコレートでした。

 次に手のひらの上にカカオニブをのせ、その上から砂糖(グラニュー糖)をたっぷりかけたものをいただきました。

(砂糖を加えたカカオニブ)
Photo_20250215224401

 このように砂糖と一緒にカカオニブを食べると、甘くて食べやすいチョコレートに一変します。

 写真の手のひらにすり傷が見えますが、これは当日、急いで広島市植物公園へ向かおうと走っていた際、つまずいて転んでできた傷です。

 右手の手のひらや左足のひざは、傷が深く、皮膚がめくれてしまいました。

(ケガをした右手)
Photo_20250215224601

 カカオニブの試食をするのも大変でした(笑)

 絵本の朗読が進む中、チョコレート作り体験も行われました。

 ボウルには、すでにテンパリング(温度調整・結晶化)済みの液状のカカオニブ(チョコレートリカー)が用意されていました。

(液状のカカオニブと温度計)
Photo_20250215224701

 液状のカカオニブを金属トレーに移し替えると、すぐにトレーを机にバンバン打ち付け、中の空気を抜く作業(タッピング)がなされました。

 最初に佐藤先生が実演されたのですが、「バシャン、バシャン」と会場に大きく鳴り響くレベルでトレーを机に叩きつけられました。

 続いて会場の子供たちもタッピング作業を体験しました。

 トレーを叩き過ぎてカカオニブをこぼす子供もいて(笑)、会場は大変な盛り上がりでした。

 タッピングを終えたカカオニブは、すぐに冷蔵庫に入れて冷やし固められました。

 絵本の朗読が終わる頃、植物公園の職員の方が完成した板チョコレートを持って来られました。

(冷やし固めたチョコレート)
Photo_20250215225401

 滑らかで光沢のあるチョコレートに仕上がりました。

 最後にこの板チョコレートを一口サイズに割る作業の体験がありました。

 これも子供たちが担当しました。

(冷やし固めたチョコレートを割る様子)
Photo_20250215225501

 みんな楽しそうに板チョコレートを割っていました。

 このあと、完成したチョコレートを参加者全員で試食しました。

(チョコレート(試食用))
Photo_20250215225601

 フィリピン産カカオ豆70%のチョコレートです。

 カカオニブをかじっているような、純粋な美味しさを味わえるビターチョコレートでした。


テンパリングとココアバターの結晶化

 ここからは、少し専門的なチョコレートのお話をしようと思います。

 このイベントが開催されているちょうどその時に、NHK総合テレビで「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」という番組が再放送されました。

 この番組に佐藤清隆先生が「チョコレート博士」として登場されました。

 テーマは簡単に作れる手作りチョコレートの「トリセツ(取扱説明書)」です。

 そこで、今回の講演会とこの番組にちなんだ「テンパリングとココアバターの結晶化」について御紹介します。


 手作りチョコレートを作る時、細心の注意を払う必要があるのが「テンパリング」です。

 テンパリングは、温めて溶かしたチョコレートをモールド(型)に入れて冷やし固める際に、「冷却→昇温→再冷却」と温度調整するなどの方法で、ベタベタ・ザラツキがなく、口どけのよいチョコレートに仕上げることを言います。

 単純に「溶かしたチョコレートをモールドに入れて冷やし固めればよいのでは」と思うのですが、こうするとその多くは失敗してしまう(チョコレートがベタベタ、ザラザラ、口どけが悪くなってしまう)のです。

 この現象は、ココアバターの結晶を最適な状態にして固められなかったことが原因です。

 そこで「ココアバターの結晶を最適化させる」ためにテンパリングがなされます。

 ココアバターの結晶はⅠ型(1型)からⅥ型(6型)まで6種類あります。

 このうち、Ⅳ型(4型)から下だと指で触るだけでチョコレートが溶けてしまい,逆にⅥ型だと固すぎて口の中でチョコレートが溶けないため,一般的なチョコレートにはⅤ型(5型)が適しています。

 まとめると、「テンパリング」は「ココアバターの結晶を最適化させる」ことであり、言い換えれば「ココアバターの結晶をⅤ型にさせる」ことだと言えます。

(市販のチョコレートに存在する「口溶け結晶(Ⅴ型)」)
Photo_20250216054301
 NHK「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」の映像の一部を引用

 市販のチョコレートには「Ⅴ型」の美しい結晶が並んでいます。

 Ⅴ型とそれ以外の型では、炭素の「ダイヤモンド(宝石)」と「黒鉛(鉛筆の芯)」、炭酸カルシウムの「アラゴナイト(真珠)」と「カルサイト(貝殻)」ぐらい大きな違いがあります。

(Ⅴ型結晶)
Photo_20250216054302
 NHK「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」のウェブサイトの一部を引用

 チョコレートをⅤ型にするためには、一旦冷却させてⅣ型を作った後、昇温させてⅤ型を作り、再冷却してⅤ型で固めるというプロセスが求められます。

(テンパリングのメカニズム)
Photo_20250216054601
 佐藤清隆「チョコレートを極める12章」幸書房・p227 図11.5を引用

 単に冷却してⅤ型を作ろうとすると、18時間以上かけて冷ます(固める)必要があり、そうやって固めたⅤ型も粗大な結晶の塊となり、微細なⅤ型の結晶にはならないのです。

(ココアバターの結晶化プロセス)
Photo_20250216054801
 佐藤清隆「チョコレートを極める12章」幸書房・p229 図11.6を引用・一部加工

 図の左上から右下に向かった一点鎖線が温度のグラフ、左下から右上に向かった点線(破線)がⅤ型結晶量のグラフで、黄色く塗りつぶしたところが、テンパリングの過程です。

 ココアバターの温度を一旦下げてⅣ型結晶を作り、再び上げてⅤ型結晶が作られる様子がわかります。

 「あしたが変わるトリセツショー」では、こうした面倒なテンパリングをしなくても、簡単に口どけのよいチョコレートを作る(Ⅴ型の結晶を作る)方法が紹介されました。

 それは、佐藤先生いわく、溶かしたチョコレートに「魔法の種」を入れる方法です。

(魔法の種)
Photo_20250216060401
 NHK「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」の映像の一部を引用

 これ、何だと思いますか?

 実は市販のチョコレートを包丁で細かく刻んだものです(笑)

 市販のチョコレートにはⅤ型の結晶が存在するため、それを溶かしたチョコレートに混ぜ合わせ、種をまいて発芽・成長させるように、チョコレートのⅤ型結晶を増やすという作戦です。

(溶かしたチョコレートに「魔法の種」を混ぜ合わせる様子)
Photo_20250216060701
 NHK「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」の映像の一部を引用

 番組の中で、佐藤先生は、
「魔法の種を入れると、入れた種が全体に散らばってⅤ型になる」
「まるで「オレについて来い!」というもの」
とおっしゃっていました。

 そしてもう1つ、Ⅴ型結晶を作るのに大切なのが「攪拌(かくはん)」です。

 広島大学生物生産学部の上野 聡 教授によると、よくかき混ぜることでチョコレート全体にⅤ型結晶を行き渡らせるのが、口どけのよいチョコレートを作るコツなのだそうです。

 こうして作られた手作りチョコレートは、その出来栄えの良さにスタジオの出演者も驚いておられました。

 広島市植物公園の講演会会場でも、佐藤先生はチョコレートの温度管理に細心の注意を払っておられました。

(液状のカカオニブ・温度計・ドライヤー)
Photo_20250216061001

 作業時に一定の温度(27℃~32℃)を保つことがとても重要らしく、溶かしたチョコレートを金属トレーへ移し替える時でさえ、佐藤先生はそのトレーをドライヤーの熱風で温めておられました。

 佐藤先生が冷やし固めるための液状のカカオニブを用意された際にも、実は白い「魔法の粉」が使用されました。

(液状のカカオニブと「魔法の粉」)
Photo_20250216061401

 液状のカカオニブに、白い粉を混ぜ合わせています。

 この粉は、会場では説明されなかったのですが、佐藤先生から「BOB」だと伺いました。

 「BOB」は、ベヘン酸とオレイン酸で作られたパウダー状の油脂で、ココアバターをⅤ型の結晶にするために用いられます。

 この「魔法の粉」のおかげで、子供たちの手を汚すことなく、口どけのよいチョコレートが短時間で完成しました。

 ちなみに、こうした「魔法の種」・「魔法の粉」でテンパリングする方法は、「シードテンパリング法」(シード(seed)は「種」、転じて「種結晶」という意味)と呼ばれています。


まとめ

 講演会終了後,佐藤先生に御挨拶をし、会場を後にしました。

 少し休憩しようと、帰りがけに喫茶店に寄りました。

 私の定番はホットコーヒーなのですが、この日は久しぶりにココアが飲みたくなり、注文しました。

(ココア)
Photo_20250216061801

 この日は寒波が訪れ、雪が降っていたこともあり、温かいココアが体や傷口に浸みわたり、良い香りに包まれて幸せな気持ちになりました。

 カカオポリフェノールには、実際に傷を治してくれる効果もあるようです。

(チョコレートに含まれるカカオポリフェノールの健康効果)
Photo_20250216071101
 NHK「あしたが変わるトリセツショー」の「チョコレート取扱説明書」の一部を引用

 モテる男なら、傷も早く治るのでしょうが…(笑)


<関連サイト>
 「広島市植物公園」(広島市佐伯区倉重三丁目495番地)

<関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「チョコレートの研究」を御参照ください。

<参考文献>
 NHKテレビ・NHKウェブサイト「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」
 佐藤清隆「チョコレートを極める12章」幸書房

2025年2月 9日 (日)

神戸・元町の老舗喫茶店・神戸エビアンコーヒーの「アサビアン」(モーニング・ロールパンセット)

 朝、喫茶店のモーニングを味わうため、神戸・元町を訪問しました。

 JR元町駅から「元町穴門(あなもん)商店街」を少し南へ歩いたところに、神戸の老舗喫茶店「神戸エビアンコーヒー」があります。

 「神戸エビアンコーヒー」は、関西でいち早くサイフォン式コーヒーを提供された老舗の喫茶店です。

(神戸エビアンコーヒー店舗)
Photo_20250209065901

 人通りが多い商店街の一角にある、老舗ならではの落ち着いた雰囲気が感じられる喫茶店です。

 自家焙煎のコーヒー(豆)や洋菓子(シフォンケーキ、ロールケーキ、プリンなど)の販売コーナーも併設されています。

(神戸エビアンコーヒー店舗入口)
Photo_20250209070101

 南側に店舗入口があります。

(メニュー看板)
Photo_20250209070301

 カラフルな手書きのイラストメニューに温かみを感じます。

 朝8時30分から11時までの時間には、「アサビアン」と呼ばれるモーニングセットが提供されています。

 朝(アサ)と店名(エビアン)をかけた面白いネーミングです。

 「アサビアン」には、ロールセット(ロールサンド2種とドリンクのセット)と「トーストセット(トーストとドリンクのセット)」の2種類が用意されています。

 お店に入り、しばらくメニューを眺めたあと、「アサビアン」のロールセット(ホットコーヒー)を注文しました。

 カウンター越しに、お店の方がゆっくりとサイフォンコーヒーを淹れておられる姿を眺めると、心がほっと和みました。

 まもなく、テーブルに冷水とミルクが用意されました。

(冷水とミルク)
Photo_20250209070801

 冷水はわかりますが、なぜミルクが今のタイミングなのか…このサービスは初めての体験です(笑)

 しばらくして、待望のアサビアンが運ばれてきました。

(アサビアン)
Photo_20250209072201

 アサビアンのロールセットとホットコーヒー(アメリカン)です。

(アサビアン・メニュースタンド)
Photo_20250209071401

 モーニングの時間帯は、アサビアンのイラストが描かれたメニュースタンドも置かれています。

(アサビアン・ロールセット(スイーツロールとコンビーフロール))
Photo_20250209071501

 ロールサンドは、生クリームをはさんだ「スイーツロール」(写真左)と、コンビーフと野菜をはさんだ「コンビーフロール」(写真右)の2種類のセットです。

 食事(コンビーフロール)とデザート(スイーツロール)のセットとも言えます。

 まずは食事系のコンビーフロールからいただきました。

 ロールパンに、あふれんばかりのコンビーフ、スライスしたトマト、おしゃれな紫玉ねぎ、そしてシャキシャキのレタスがサンドされています。

 コンビーフはマヨネーズソースで和えたものです。

 普段、コンビーフを食べることはあまりないのですが、ツナサンドにも似た味で、美味しくいただきました。

 コーヒーを飲んで一息つき、今度はデザートタイムです。

 とてもやわらかいロールパンに生クリームがたっぷり詰められており、まさにケーキ感覚でいただけました。

 生クリームがふわっと軽いので、これならいくらでも食べられます。

 そして驚いたのは、生クリームだけでなく、奥にブルーベリージャムもサンドされていたことです。

(スイーツロール(生クリームとブルーベリージャム))
Photo_20250209073701

 スイーツロールを食べ進めるうちに突如現れたブルーベリージャムは、生クリームに甘酸っぱいブルーベリーの風味が加わったスイーツに変化し、様々な味を楽しむことができました。

 締めくくりにサイフォンで淹れた香り高い自家焙煎コーヒーをゆっくりと味わい、神戸の朝のひとときを満喫しました。


<関連サイト>
 「神戸エビアンコーヒー」(神戸市中央区元町通1-7-2)
 「神戸みなとシフォン(神戸エビアンコーヒー・スイーツ)」(神戸市中央区元町通1-7-2)

2025年2月 2日 (日)

あずきの研究20 -津和野あんこ旅ウォーク(津和野町観光協会・日本あんこ協会「源氏巻食べ歩きツアー」)-

日本あんこ協会と津和野町観光協会の「津和野あんこ旅ウォーク」

 当ブログの読者様から、「日本あんこ協会」という協会があることを教えていただきました。

 小豆好き、あんこ好きの私は、早速御紹介いただいた「日本あんこ協会」のウェブサイトを拝見しました。

 すると、そのサイトの新着情報に「島根県津和野町で開催されるあんこ系スタンプラリーイベント「津和野あんこ旅2024」に監修協力致します。」という記事がありました。

(津和野あんこ旅)
Photo_20250202115901

 その記事をクリックし、さらに詳しく見てみると、2024年11月23日・24日の両日、「津和野あんこ旅2024」の関連イベントとして、各店の「源氏巻(げんじまき)」を食べながら津和野の街を歩く「あんこ旅ウォーク」が開催されることがわかりました。

(津和野あんこ旅ウォークチラシ)
Photo_20250202131401

 日本あんこ協会の「にしい会長」と一緒に、あんこの解説などを交えながら、各店舗の源氏巻を食べ歩きができるイベントです。

 「あんこ好きの私としては、ぜひ参加し、日本あんこ協会会長にもお会いしたい」と思い、即断即決で津和野町観光協会のサイトから参加申込みをしました。


「津和野あんこ旅ウォーク」オリエンテーション

 2024年11月23日、広島市内から車で島根県津和野町へ向かいました。

 集合場所の津和野町観光協会(津和野駅構内)に着くと、「津和野あんこ旅ウォーク」のコーナーがありました。

(津和野町観光協会・津和野あんこ旅ウォーク案内)
Photo_20250202131601

 受付を済ませ、スタート地点となる駅前広場へ向かいました。

 駅前広場には、実物の蒸気機関車が展示されていました。

(蒸気機関車D51 194(津和野のデゴイチ))
Photo_20250202131701

 蒸気機関車「D51(デゴイチ)」の194号機で、「津和野のデゴイチ」と呼ばれています。

 この蒸気機関車で私が注目したのはこちらです。

(蒸気機関車のヘッドマーク(津和野あんこ旅))
Photo_20250202131801

 何とヘッドマークまで「津和野あんこ旅」のデザインになっています。

 津和野町観光協会の公式キャラクター「源氏まき子」ちゃんが描かれたヘッドマークです。

 これを見て、ますますテンションが上がりました。

 ほどなく集合時刻を迎え、イベント参加者をはじめ、にしい会長、津和野観光協会・津和野町商工会の皆さんが勢ぞろいしました。

 また、プロレスラーで無類のあんこ好きの日高郁人さんも特別参加されました。

 にしい会長は、蒸気機関車のヘッドマークと同じ「源氏巻の被り物」をし、日本あんこ協会のたすきをかけての登場です。

 この姿を見て、私と波長が合うことが一発でわかりました(笑)

 「源氏巻食べ歩きツアー」のオリエンテーションとして、メンバー紹介と源氏巻の説明がなされました。

 続いて参加メンバーへ、試食した源氏巻の味を記録・分析するためのシート「源氏巻分析シート」とボールペン・バインダーが配られました。

(源氏巻分析シート(日本あんこ協会))
Photo_20250202132301

 店名(記入済み)、全体的な甘さ(控えめ~甘め 5段階)、生地の質感(しっとり~軽やか 5段階)、あんこの糖度(度数)、生地の厚み(mm・記入済み)、重さ(長さ3cmでの重さ・記入済み)、メモ(感想・気付き)の各項目を記録し、後で比較・分析できるようにまとめられたシートです。

 そして、「まめ茶」のペットボトルをいただきました。

(津和野まめ茶)
Photo_20250202132501

 「まめ茶」は「カワラケツメイ」というマメ科の植物から作られるお茶で、津和野・山口近郊で栽培されています。

 ノンカフェインで、独特な香ばしさと味が楽しめるお茶です。

 これから甘い源氏巻をたくさん食べるので、その際の口直し・水分補給用に用意されたものです。

 このお茶、源氏巻(和菓子)との相性が抜群ですので、津和野へお越しの際は源氏巻と一緒にぜひお飲みください。


津和野町の花「つわぶき」・源氏巻の名称と形の由来

 オリエンテーションを終え、いざ「源氏巻食べ歩きツアー」の開始です。

 メンバー揃って津和野の街中を歩きました。

 にしい会長のコスチューム効果もあり、行き交う人々からの注目度はナンバーワンです。

 途中、津和野町観光協会の職員さんから「つわぶき」の花を御紹介いただきました。

(津和野町の花「つわぶき」)
Photo_20250202132801

 「つわぶき」は秋に黄色い花を咲かせるキク科の植物です。

 津和野の語源は「つわぶきの生い茂る野」に由来しているいう説もあるそうです。

 あわせて、「源氏巻」の名前の由来も教えていただきました。

 源氏巻の名称は、
 「幕末、藩の御用菓子司が藩主にあんこを詰めたお菓子を献上し、このお菓子の命名をお願いしたところ、藩主のお姫様が紫色のあんこに感動し、源氏物語の「若紫」の歌を詠んだことにちなんだ」
という説が広く知られているそうです。

 ちなみに、源氏巻の形については、
 「江戸・元禄時代の津和野藩主が、高家の吉良上野介義央(きらこうずけのすけ よしひさ)に勅使の接待方法について教えを請うが、教えてもらえなかったため、小判をカステラのような生地に包んで吉良に献上したところ、教えてもらうことができた」
 そして、
 「こうした津和野藩主の対応が功を奏して藩が救われたことから、のちに小判の代わりにあんこを包み、めでたいお菓子として津和野で受け継がれてきた」
という説が広く知られているようです。

 この話が本当なら、「忠臣蔵」に登場する吉良上野介は、赤穂藩主だけでなく、津和野藩主にまで意地悪をしていたことになりますね…

 曇り空で、時折小雨が降る中、一行は源氏巻のお店を目指しました。


源氏巻食べ歩きツアー

【「山本風味堂」の源氏巻】

 最初のお店「山本風味堂(やまもとふうみどう)」に到着しました。

(山本風味堂)
Photo_20250202133301

 街の雰囲気に馴染んだ、味のあるお店です。

 お店に入ると、お店の方が出来たての源氏巻を用意してくださいました。

(山本風味堂の源氏巻)
Photo_20250202133401

 生地の厚みは4mm、幅3cmあたりの重さは22gです。

 早速いただいてみると…皮がパリッとしてとても軽く、中のこしあんはやわらかくてアツアツでした。

 私は頭の中で、
「こっ、これは!!」
「今まで食べた源氏巻とは全然違う」
「姫路の「あずきミュージアム」で焼きたての御座候を食べた時の感動と同じだ」
と有頂天になりました。

 焼きたての源氏巻は、陳列されている源氏巻と全く違うと言っても過言ではありません。

 にしい会長から「この源氏巻のあんこの糖度は59度です。この甘さを覚えていただき、後のお店の糖度を記入してください」とアドバイスがありました。

 私は、甘さは「5・強い甘さ」、生地の質感は「5・軽やか」、メモには「皮は薄くあっさり、こしあんはかなり甘い」と記入しました。


【「藤村山陰堂」の源氏巻】

 2軒目に「藤村山陰堂(ふじむらやまかげどう)」を訪問しました。

(藤村山陰堂)
Photo_20250202133701

 源氏巻のほか、「やまかげ(山陰)」と呼ばれる白あんのどら焼きに似たお菓子も有名です。

 「やまかげ」は予約販売が中心で、午前中には売り切れてしまうほどの人気だそうです。

(藤村山陰堂の源氏巻)
Photo_20250202133901

 生地の厚みは2mm、幅3cmあたりの重さは29.5gです。

 甘さは「3・中間の甘さ」、生地の質感は「1・しっとり」、糖度55度(正解は51度)、メモには「皮が薄く、しっとりとしている。こしあんがきめ細かく上品」と記入しました。


【「峰月堂」の源氏巻】

 3軒目に「峰月堂(ほうげつどう)」を訪問しました。

(峰月堂)
Photo_20250202134201

 お店に入ると、銘菓「紺珠(かんじゅ)」や、レモンケーキなども販売されていました。

(峰月堂の源氏巻)
Photo_20250202134401

 生地の厚みは3.5mm、幅3cmあたりの重さは21gです。

 源氏巻のあんこは「こしあん」が多いのですが、この源氏巻は「つぶあん」です。

 甘さは「4・やや強い甘さ」、生地の質感は「2・ややしっとり」、糖度50度(正解は59度)、メモには「こしあんに近いつぶあん。小豆の香りがする。皮がもっちりしっかりしている」と記入しました。


※峰月堂のレモンケーキ、紺珠、豆大福も購入しましたので、御紹介します。

(峰月堂のレモンケーキ・紺珠・豆大福(包装))
Photo_20250202223401

 写真上がレモンケーキ、右下が紺珠、左下が豆大福です。

(峰月堂のレモンケーキ・紺珠・豆大福)
Photo_20250202223501

 包装を開けると、こんな感じです。

(峰月堂のレモンケーキ・紺珠・豆大福(中身))
Photo_20250202223502

 
 「レモンケーキ」は横約7cm、幅約5cm、高さ約4cm。レモンチョコがパリッとして、ケーキの底までたっぷりとコーティングされています。ケーキ生地はきめ細やかでサクッとした食感です。口に含んだ瞬間、さわやかで強いレモン風味が感じられました。

 「紺珠」は直径約4cm、高さ約3.5cm。山芋入りの生地で作られた上用饅頭です。こしあんの中には、刻んだ甘栗が入っています。

 「豆大福」は豆入りのやわらかいお餅に、あっさりしたあんこがたっぷり入った一品です。

 紺珠の人気は言うまでもありませんが、特筆すべきはレモンケーキと豆大福で、これだけを買いに津和野へ行ってもいいくらい、魅力的な美味しさでした。


【「山田竹風軒」の源氏巻】

 4軒目に「山田竹風軒(やまだちくふうけん)」を訪問しました。

(山田竹風軒本町店)
Photo_20250202134601

 こちらのお店の源氏巻は、デパートの全国銘菓コーナーや東京のアンテナショップなどにも展開されています。

 店舗では「源氏巻アイス」も販売されています。

(山田竹風軒の源氏巻(菓子皿))
Photo_20250202134901

 1本の源氏巻を試食用に5等分し、菓子皿で提供していただきました。

(山田竹風軒の源氏巻)
Photo_20250202135001

 皮に厚みがあり、きめ細かなこしあんが包まれています。

 生地の厚みは4.5mm、幅3cmあたりの重さは21.5gです。

 甘さは「3・中間の甘さ」、生地の質感は「1・しっとり」、糖度52度(正解は57度)、メモには「厚い生地で弾力感がある。甘く上品なこしあん。どら焼きのイメージ」と記入しました。


【華泉酒造】

 次に「華泉酒造(かせんしゅぞう)」に伺い、限定特別企画「津和野の地酒と源氏巻のペアリング体験」をしました。

(華泉酒造)
Photo_20250202135101

 江戸中期(1730年)創業で、日本酒の仕込み水には、秀峰青野山の伏流水(井戸水)が使われています。

 今回御用意いただいたお酒は「純米大吟醸 黒狐(くろぎつね)」で、フルーティですっきりした味わいのお酒です。

 藤村山陰堂の源氏巻とのペアリングを体験しました。

 私は、津和野へ車で伺ったので、源氏巻のみいただきました。


【「倉益開正堂」の源氏巻】

 5軒目に「倉益開正堂(くらますかいせいどう)」を訪問しました。

(倉益開正堂)
Photo_20250202135401

 源氏巻はこしあんのほか、つぶあんや抹茶あんも販売されています。

(倉益開正堂の源氏巻(こしあん・つぶあん))
Photo_20250202135501

 写真上がこしあん、下がつぶあんです。

(倉益開正堂の源氏巻(抹茶あん))
Photo_20250202135502

 こちらは抹茶あんです。

 3種類すべてを試食させていただきました。

 生地の厚みは2.5mm、幅3cmあたりの重さは24gです。

 甘さは「4・やや強い甘さ」、生地の質感は「2・ややしっとり」、糖度60度(正解も60度)、メモには「あんこの甘みをしっかり感じる。つぶあんは小豆の粒々感あり。抹茶あんはしっかりと抹茶の香りを感じる」と記入しました。


【「沙羅の木」の源氏巻】

 6軒目に「沙羅の木(さらのき)」を訪問しました。

 お店の前では、地元のお祭りが行われていました。

(祭りのお神輿)
Photo_20250202135901

 「わっしょい、わっしょい」

 見ている方もテンションが上がります。

(沙羅の木(津和野観光会館・ことぶきや))
Photo_20250202135902

 「沙羅の木」は、お土産店のほか、食事や喫茶のお店もあり、津和野の観光拠点の1つとなっています。

 お店に入ると、メンバーに1つずつ源氏巻が手渡されました。

(沙羅の木の源氏巻(抹茶あん))
Photo_20250202140001

 こちらは抹茶あんです。

(沙羅の木の源氏巻(こしあん))
Photo_20250202140101

 こちらはこしあんです。

 抹茶あんに続いてこしあんの源氏巻、ボールペンと記録シートとバインダー、そして傘と、手に持つものがいっぱいで、やむなくこしあんの源氏巻は記録シートにのせて撮影しました。

 生地の厚みは2.5mm、幅3cmあたりの重さは27.5gです。

 甘さは「3・中間の甘さ」、生地の質感は「3・バランスのとれた生地」、糖度55度(正解は60度)、メモには「皮は標準でやわらかく食べやすい。あんこはすっきりした甘さ」と記入しました。

(源氏巻製造機)
Photo_20250202140301

 源氏巻の製造工程も見学しました。

 こちらのお店には珍しい「白あん」の源氏巻もあります。


【日本あんこ協会 にしい会長による紙芝居・あんこの話】

 津和野の街を歩いていると、鯉をよく見かけます。

(津和野の鯉)
Photo_20250202141201

 津和野藩の藩校「養老館」に着き、ここで少し休憩となりました。

 日本あんこ協会・にしい会長が用意された紙芝居で、津和野とあんこの歴史を学びました。

(日本あんこ協会にしい会長による紙芝居)
Photo_20250202141301

 紙芝居で、津和野出身の森鷗外(もりおうがい 小説家・軍医)があんこ入りの饅頭を割り、ごはんの上にのせて、お茶をかけて「饅頭茶漬け」にして食べていたというお話を御紹介いただきました。

 詳しくは日本あんこ協会のサイト「森鷗外と饅頭茶漬け~偉人とあんこ-Vol.4~」を御覧ください。


【「三松堂本店」の源氏巻】

 7軒目に「三松堂本店(さんしょうどうほんてん)」を訪問しました。

(三松堂本店)
Photo_20250202141701

 源氏巻のほか、「こいの里」という小豆菓子でも有名なお店です。

(三松堂本店の源氏巻(菓子皿))
Photo_20250202141801

 源氏巻を2切れずつ、気合いの入った朱塗りの菓子皿で用意していただきました。

(三松堂本店の源氏巻)
Photo_20250202141901

 見るからにさらりとした上品なこしあんが包まれています。

 そして注目したいのは、生地の巻き方です。源氏巻を裏返してみると…

(三松堂本店の源氏巻(裏))
Photo_20250202142001

 このように生地が重ねられていないのです。

 生地の巻き方1つとっても、各お店で違い・こだわりがあることがわかりました。

 生地の厚みは3.5mm、幅3cmあたりの重さは22gです。

 甘さは「2・やや控えめの甘さ」、生地の質感は「1・しっとり」、糖度54度(正解は55度)、メモには「生地に厚みがあり、しっとりしている。餅生地のようなモチモチ感もある。あんこの甘さは控えめ」と記入しました。

 店長の阿部さんが応対してくださり、甘さ控えめで、パサつきを防ぐ意味からも賞味期限を短く設定されていることや、源氏巻の味と伝統を未来に紡ぐため、クラウドファンディングで「出張源氏巻手焼き体験」などの活動をされているお話などを伺いました。

 私はメモに「店長が面白い」と追加しました(笑)


【「宗家」の源氏巻】

 8軒目に「宗家(そうけ)」を訪問しました。

(宗家)
Photo_20250202142201

 手焼きの源氏巻が味わえるお店です。

(源氏巻を切る様子(宗家))
Photo_20250202142301

 源氏巻は1本16cm前後の長さで売られていますが、これは三等分した長さで、出来上がり直後は50cm近くあることを知りました。

 注文すればロング巻きも販売していただけるようです。

 サブウェイのサンドイッチみたいですね(笑)

(宗家の源氏巻)
Photo_20250202142302

 生地が薄く、あんこに照りがあります。

 生地の厚みは2mm、幅3cmあたりの重さは24gです。

 甘さは「5・強い甘さ」、生地の質感は「5・軽やか」、糖度62度(正解は71度)、メモには「生地は薄くパリッとして固め。瓦せんべいのような甘い生地。あんこがしっとりとして、とても甘い」と記入しました。

 あんこの中にキャラメル状に煮詰めた砂糖を追加することで、あんこの照りと甘味を強めておられるそうです。


【「村田一貫堂」の源氏巻】

 9軒目に「村田一貫堂(むらたいっかんどう)」を訪問しました。

(村田一貫堂)
Photo_20250202142601

 伝統を受け継ぎ、手焼きの源氏巻を提供されているお店です。

(村田一貫堂の源氏巻)
Photo_20250202142602

 生地の厚みは2.5mm、幅3cmあたりの重さは22gです。

 甘さは「2・やや控えめな甘さ」、生地の質感は「1・しっとり」、糖度50度(正解は65度)、メモには「ほどよい厚みがあり、しっかりした食感の生地。あんこの甘さは控えめで適度な塩気もある」と記入しました。

 この分析で、私があんこの糖度を大きく間違えてしまったことを申し添えておきます。

 このお店のあんこ糖度65度で、他の源氏巻に比べて甘さが強いのですが、私は甘さ控えめと判断を誤りました。

 これは直前に食べた、甘みの強い「宗家」の源氏巻と(無意識に)比較してしまったからだと思います。

 甘みが強く、しっかりした生地の源氏巻です。

 お店の前で、津和野駅を出発するSLやまぐち号の汽笛が聞こえました。

 しばらく待っていると、すぐ目の前でSLやまぐち号を見ることができました。

(「村田一貫堂」から眺めたSLやまぐち号)
Photo_20250202142901

 2024年最後のSLやまぐち号が新山口へ向けて走っていきました。


「源氏巻すと養成コース修了証」授与式

 源氏巻のお店を9軒巡り、1つ1つの源氏巻を分析してきました。

 全行程が終了し、再び津和野藩の藩校「養老館」に集まりました。

 寒さが増した11月下旬、時折小雨の降る中、約2時間半延々と歩いて、無事9軒の源氏巻を味わうことができました。

 日本あんこ協会・にしい会長から、参加メンバー1人1人に「源氏巻すと養成コース修了証」が授与されました。

(源氏巻すと養成コース修了証(表))
Photo_20250202143401

 源氏巻の被り物のイラストと日付入りの修了証です。

(源氏巻すと養成コース修了証(裏))
Photo_20250202143501

 「貴殿は、津和野あんこ旅ウォーク2024において、津和野町が誇るローカルあんこ銘菓「源氏巻」を全店で完食し、各々のお店で違う味やこだわりへの理解を深められました。」
 「貴殿が源氏巻すと養成コースの全課程を修了され、晴れて源氏巻のスペシャリスト「源氏巻すと(英語表記:Genjimakist)」となられたことを、ここに証します。津和野町観光協会・日本あんこ協会」

 喜びと達成感もひとしおです。

 あわせて、記念に日本あんこ協会が発行する「アンコワネット」のシールもいただきました。

(アンコワネット「あんこを食べればいいじゃない」(日本あんこ協会))
Photo_20250202143601

 あんこ好きが愛してやまない、アンコワネット様のお言葉です(笑)

 これからは、私のプロフィールに「源氏巻すと」、尊敬する人物は「アンコワネット」と書くことにしましょう。

 最後に、にしい会長とあんこのお話で盛り上がり、一緒に記念撮影もしました。


まとめ

 今回の「津和野あんこ旅ウォーク」を通じて学んだことがあります。

 それは、「どの商品が美味しいか(好みか)は、すべてのお店の商品を食べてみないとわからない」ということです。

 一定のエリアに同じ商品が売られているお店が並んでいると、人気があるお店、雰囲気が良さそうなお店、入りやすそうなお店などを選んでしまいがちですが、自分が本当に美味しいと思えるお店、好みのお店は全く別に存在している可能性もあるのです。

 そうしたミスマッチをできるだけなくすためには、こうした食べ歩きツアーが役に立ちますし、観光協会や商業組合などが一度に試食できる機会を設けるのも一法だと思いました。

 試食したら買わないといけないと思いがちな私は、今回の食べ歩きツアーがとても役に立ちました。


 約半日、津和野の街と源氏巻、そしてあんこの世界を楽しむことができました。

 この場をお借りして、お世話になった日本あんこ協会・にしい会長、津和野町観光協会や商工会の皆様、参加メンバーの皆様に深くお礼申し上げます。


<関連サイト>
 「日本あんこ協会」(東京都豊島区南池袋1丁目16-15 ダイヤゲート池袋5F)
 「津和野町観光協会・ゆ~にしんさい」(島根県鹿足郡津和野町後田イ66-1)

<関連記事>
 「島根県津和野町の「黒いいなり寿司」-割子そば・いなりずし・おみやげいなり-

2025年2月 1日 (土)

幸せびな(貝びな)の耳かき -福岡県柳川市-

幸せびな(貝びな)の耳かきです。

柳川藩主立花邸 御花(おはな)のギフトショップ「お花小路」で購入しました。

4009295

貝(ハマグリ)の形をしたお雛様です。

40092951

柳川地方では、女の子の初節句に、ひな壇飾りと一緒に「つるし雛」の一種「さげもん」を飾り、お祝いする風習があります。

「さげもん」は、人形・鶴・亀・ウサギ・ひよこなどの縁起の良い布細工や、「柳川まり」と呼ばれるカラフルで鮮やかな「毬(まり)」を吊りさげた飾りものです。

ギフトショップ「お花小路」にも、お雛様や「さげもん」、「柳川まり」にちなんだお土産がたくさん用意されており、華やかでみやびな雰囲気を感じました。

かんざしと耳かき、よく間違えるんだよなぁ(笑)

« 2025年1月 | トップページ | 2025年3月 »

最近のコメント

最近の記事

最近のトラックバック

2025年7月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ