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2025年4月20日 (日)

中国新聞文化センター講座「カカオのテロワールとチョコレートのおいしさのヒミツ」

中国新聞文化センター クレドビル教室

 2025年4月5日に、中国新聞文化センターでチョコレートの専門家・佐藤清隆先生(広島大学名誉教授)の1日講座が開催されることを知りました。

 チョコレートの味の決め手となるカカオ豆を産地別に食べ比べ、それぞれのカカオ豆の特徴や違いを学ぶ講座で、チョコレート作り体験やココアの試飲もあると紹介されていました。

 受講料は3,520円(一般)で、材料代500円と合わせると4,020円でしたが、即断即決で会員登録、受講申込みをしました。

 講座当日、広島市中区基町の「パセーラ(基町クレド)」を訪問しました。

(パセーラ(基町クレド))
Photo_20250420073701

 基町クレドの10階に中国新聞文化センター クレドビル教室があります。

(中国新聞文化センター・クレドビル教室)
Photo_20250420073702

 初めて訪問しましたが、フロアがとても広く、いくつも教室があるので驚きました。

 講座開始30分前に教室に着くと、佐藤先生と中国新聞文化センター職員の方々が会場準備をしておられました。

 佐藤先生は私を見つけるなり、「おおっ、この講座を受けに来たの?」と、とても嬉しそうに声をかけてくださいました。

 そして中国新聞文化センター職員のお2人に、「彼はいつも私の講演会に来てくれてね。皆勤賞だなぁー」と、色々と紹介していただいたのですが、話が長引いて準備の邪魔になりそうだったので、笑顔で「また開始時刻が近づいたら来ますねー」と言って一旦教室を離れました(笑)

 開始10分前に再訪し、最前列の席に座りました。


板チョコレート作り体験

 受講生が集まり、講座が開始されました。

 受講生のテーブルには、講座テキスト、各産地のカカオ豆、スティックシュガー、紙コップ、小皿、試食用のスプーンなどが用意されていました。

(受講生用準備品とカカオ)
Photo_20250420075101

 写真右下の黄色いものはカカオで、本物のエクアドル産カカオを色だけ塗り直したものです。

(カカオ豆(ホンジュラス・ボリビア・フィリピン))
Photo_20250420075301

 今回御用意いただいたカカオ豆は、ホンジュラス産(北米)、ボリビア産(南米)、フィリピン産(アジア)のもので、ホンジュラス産は「クリオロ種」、ボリビア産は「野生種」(ベニ川で収穫された「Beni(ベニ)」という品種)、フィリピン産はフィリピンの農園から佐藤先生が直接入手された「トリニタリオ種」です。

 ボウルには、すでにテンパリング(温度調整・結晶化)済みの「カカオマス」(液状のカカオニブ、チョコレートリカー)が用意されていました。

(カカオマスと温度計)
Photo_20250420080001

 カカオマスの温度は、34.5℃を示しています。

 このカカオマスを木のスプーンに入れてもらい、カカオマスを試食しました。

(カカオマスの試食)
Photo_20250420080301

 ほろ苦い液状のチョコレートでした。

 佐藤先生はカカオマスを金属トレーに移し替えると、すぐにトレーを机にバンバン打ち付け、中の空気を抜く作業(タッピング)を開始されました。

 その際、「バシャン、バシャン」と会場に大きく鳴り響くレベルでトレーを机に叩きつけられました。

 「佐藤先生はどこへ行かれても、大きな音をさせ、机や床をチョコレートまみれにされている…」と心の中でクスクス笑いながら、受講しました。

 受講生も各自、テーブルでタッピングを体験しました。

(カカオマスを小皿に流し込んだ様子)
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 テーブルに用意された小皿にカカオマスを注ぎ、その小皿をテーブルにバンバン叩きつけてカカオマスの中の空気を抜きました。

 このタッピングは、垂直に音を立てて叩きつける必要があります。

 叩きつけた衝撃でこぼれないかと心配でしたが、カカオマスはこぼれることなく、小皿に均一にならされていきました。

 カカオマスをこぼしたのは、「(金属トレーを)ひっくり返してもこぼれない」とおっしゃいながらタッピングを実演された佐藤先生だけでした(笑)

(タッピングを終えたカカオマス)
Photo_20250420081501

 表面が鏡のように美しく均一になりました。

 タッピングを終えたカカオマス(金属トレー・小皿)は、すぐに冷蔵庫に入れて冷やし固められました。


生チョコレート作り体験

 続いて、生チョコレート作りが行われました。

 生チョコレートを作る様子を見るのは初めてです。

 今回の生チョコレートは、乳製品に生クリームではなく、牛乳が使用されました。

 ちなみに、生クリームを使う際にも、動物性のものを使う必要があるとのお話でした。

 いざ作ろうという時、佐藤先生は牛乳がないことに気付き、会場の皆さんに「どこか牛乳がありませんか~?」と尋ねておられました。

 私は「机や椅子の周りから(要冷蔵の)牛乳が出てくるわけないでしょうが!」とツッコミました。

 中国新聞文化センターの方が牛乳を用意され、佐藤先生に差し出されました。

 佐藤先生が「これはおいしい牛乳ですよ~」と自信たっぷりにおっしゃっていたので、よく見ると、紙パックに「おいしい牛乳」と商品名が書かれていました(笑)

 その牛乳を約50℃に温め、34℃のカカオマスに注ぎました。

(カカオマスに牛乳を注ぐ様子)
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 佐藤先生はこれまで「ミルクチョコレートを作る時に牛乳を混ぜてはいけない」と散々おっしゃっていたので、大丈夫なのかと半信半疑で作業を見守りました。

 牛乳で生チョコレートを作る時に大事なことは、カカオマスと牛乳の割合で、カカオ70%の場合は「9対5」にする必要があるそうです。

(カカオマスと牛乳を混ぜる様子)
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 カカオマスと牛乳を混ぜ合わせる(乳化させる)ため、ゴムベラを使って素早く混ぜます。

 乳化させてマヨネーズを作るのと同じ要領です。

 ゴムベラで切るような感じで素早く混ぜるのがコツで、泡立て器だと失敗するそうです。

(カカオマスと牛乳が混ざった様子)
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 牛乳を注いで白っぽくなっていたカカオマスが、混ぜ合わさってチョコレート色に戻っています。

(液状の生チョコレートの試食)
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 なるほど、ダークチョコレートに比べてかなり滑らかで食べやすくなっていました。


トリュフチョコレート作り体験

 出来上がった液状の生チョコレートを、氷水とドライヤーの冷風で冷やし固めました。

(氷水とドライヤーの冷風で生チョコレートを冷やし固める様子)
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 実際にはなかなか固まらず、「あれっ、固まるはずなんだけど、おかしいな、おかしいな」という感じで作業されました。

(生チョコレートの温度を細かく測る様子)
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 「温度が原因か?」と生チョコレートの温度を何度も計測されていました。

 根気強く混ぜ合わせているうちに、生チョコレートに粘りが出てきて、次第に固まりました。

(生チョコレートが冷やし固まった様子)
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 この生チョコレートをトリュフの形に丸め、ココアパウダーをまぶしました。

(生チョコレートにココアパウダーをまぶす様子)
Photo_20250420093801

 受講生がココアパウダーをまぶしておられる様子を見た佐藤先生が、「フンコロガシが糞を転がしているような感じだなぁ」と食欲をそぐようなことをつぶやいておられました…。

 こうしてトリュフチョコレートも完成しました。

(トリュフチョコレート)
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 口どけが滑らかで、ほのかな苦味とコクのあるトリュフチョコレートでした。


カカオ豆の産地当てクイズ

 今回の講座は実習が中心でした。

 佐藤先生から受講生の皆さんへ、
 「各産地のカカオ豆の殻を割って中の実(胚乳・カカオニブ)を取り出してみてください」
 「その際、カカオニブの中に小さく細長い棒(胚芽)があるので取り出してください」
とお話がありました。

(殻付きカカオ豆(ホンジュラス・ボリビア・フィリピン))
Photo_20250420094201

 私も紙コップからカカオ豆を取り出し、爪を使ってカカオ豆の硬い殻を取り除いてみました。

 豆が大きいフィリピン産は比較的容易に皮がむけましたが、豆が小さく野生種のボリビア産は皮をむくのにとても苦労しました。

(カカオ豆の皮むき体験(フィリピン))
Photo_20250420094301

 写真左が殻を割った「カカオニブ(カカオの胚乳)」、右がそれを細かく砕いたもの、カカオニブの上側にある小さい茶柱のような形をしたものは胚芽(ジャーム、チュニブ)です。

 胚芽はやがてカカオの木へと成長するものですが、これを食べてもジャリジャリして苦いだけなので、チョコレートを作る際には取り除く必要があります。

 胚芽を取り除いたカカオニブをそのままいただき、各産地の味や風味の違いを確かめました。

 続いて、手のひらの上にカカオニブをのせ、その上から砂糖(グラニュー糖)をたっぷりかけていただきました。

 こうすると、甘くて食べやすいチョコレートの味に様変わりします。

 その後、佐藤先生が別に用意されたカカオニブが受講生に配付され、このカカオニブがどこの産地のものか当てるクイズが出されました。

 私は写真撮影やメモに集中するあまり、どのカカオニブをどの場所に戻せばよいのかわからなくなり、クイズも外してしまいました。

 ちなみに正解はボリビア産で、まずまずの正答率でした。


ピュアココア

 テキストを使った講義では、チョコレートの作り方、カカオの生育条件、カカオの品種(フォラステロ種・トリニタリオ種・クリオロ種など)、カカオ豆とテロワール(生育した土地の土壌や気候による違い・特徴)、現在のカカオ・チョコレートの状況などが紹介されました。

 終了後、カカオマス(ダークチョコレート)に牛乳を加えて作ったピュアココア(ミルクココア)が用意されました。

(ココア(ピュアココア))
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 粉末の調整ココアとの違いは、ピュアココアには「乳酸」が残っていることです。

 カカオマスや牛乳に含まれる油脂もそのまま摂取できます。

 ココアではなく「ミルク入りチョコレートドリンク」と呼びたい、やさしい味のドリンクでした。


板チョコレートの試食・お土産

 講義終了後、冷蔵庫で冷やされた板チョコレートを持ってきていただきました。

 滑らかで光沢のある板チョコレートに仕上がりました。

(完成した板チョコレート(会場試食用))
Photo_20250420100801

 フィリピン産カカオ豆70%のチョコレートです。

 受講生各自でタッピングして作った小皿の板チョコレートは、お土産としていただきました。

 小皿に受講生の氏名が書かれた付箋が貼られていたので、配付もスムーズでした。

(完成した板チョコレート(お土産用))
Photo_20250420101301

 2日ぐらい寝かせたチョコレートの方が美味しいとのことだったので、後日いただきましたが、苦味の効いた美味しいビターチョコレートに仕上がっていました。


絵本「ひと粒のチョコレートに」の購入とサイン

 中国新聞文化センターの方から、佐藤先生が書かれたチョコレートの絵本の紹介がありました。

 良い機会なので、私も1冊購入しました。

(絵本「ひと粒のチョコレートに」)
Photo_20250420101501

 この絵本の面白いところは、ブックカバーが板チョコの銀紙のようなデザインになっていて、しかも、板チョコの銀紙そっくりにギザギザになっていることです。

(本をブックカバーから引き出した様子)
Photo_20250420101601

 ブックカバーの中の本は、板チョコのデザインになっており、上に引っ張り出すと、板チョコが飛び出たように見えます。

 こんなブックカバーは初めて見ました。

 買ったばかりの本に、佐藤先生からサインをいただきました。

(佐藤先生のサイン)
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佐藤先生への質問

 今回は少人数の講座だったので、佐藤先生との距離も近く、質問もしやすい状況にありました。

 そこで私からも佐藤先生へ1つ質問をさせていただきました。

【質問】
 「温暖化の影響でカカオベルト(カカオの生育範囲・北緯20度~南緯20度のエリア)が北上(南半球は南下)する可能性があるのではないでしょうか」

【回答】
 「今後、カカオベルトが北上(南下)する可能性はありますが、広がった分だけカカオが栽培できるわけではありません」
 「むしろ拡大する見込みのエリアは、カカオ栽培に適した(腐葉土に恵まれた)土壌や雨量でないのが現状です」
 「また、カカオは最低気温だけでなく、最高気温が高すぎても生育できないことも理解しておく必要があります」
 「カカオについては、温暖化よりも生産性が低いことの方が問題となっています」
 「カカオが単位面積あたり4トンから5トン生産可能な場所で、わずか400キログラムしか生産できていないのです」
 「この生産量を1トンまで上げるのが目標です」

 なるほど、このままだと高温になり過ぎてカカオが栽培できなくなり、カカオベルトの範囲が狭まる可能性もあるようです。

 カカオの安定供給のためには、単位面積あたりの生産量を増やすことを考える必要があります。

 また、カカオが投機の対象とされ、生産量は約10%の減少にとどまっている一方で、国際取引価格が約3倍も上昇していることへの対策も必要だと思います。


まとめ

 今回は、有料・少人数・大人向けの講座だったので、受講生の皆さんのカカオ・チョコレートに対する関心度・本気度が高く、熱心に聴講し、質問もされていたのが印象的でした。

 帰りがけに、佐藤先生から「これお土産」とカカオニブをいただきました。

(ブラインドテスト・ボ)
Photo_20250420102901

 ブラインドテストで使われたカカオニブ(の余り)です。

 「ブライドテスト」と書いた後で「ン」を加えて「ブラインドテスト」に修正されています(笑)

 「ボ」は「(正解は)ボリビア産カカオ豆」という意味で書かれたのでしょう。

 最後に、佐藤先生とお世話になった文化センター職員の方にお礼を申し上げ、教室を後にしました。


<関連サイト>
 「中国新聞文化センター」(クレドビル教室 広島市中区基町6-78 ほか)

<関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「チョコレートの研究」を御参照ください。

<参考文献>
 佐藤清隆/Junaida「ひと粒のチョコレートに」福音館書店
 佐藤清隆「チョコレートを極める12章」幸書房

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コメント

基町クレドとひろしまゲートパークのある界隈は、オシャレで魅力的なエリアですね(^。^)
「佐藤先生はどこへ行かれても、大きな音をさせ、机や床をチョコレートまみれにされている…」
このワンフレーズで、先生のお人柄が伝わって来ます ^ ^
空間と時間とお金は有意義に使いたいですね(^_^)

佐藤先生のイベント、よく開催されているんですねー。
佐藤先生がすごい人だからなのでしょうか。
チョコレートの絵本のブックカバー、面白くていいですね!
プレゼントされたらうれしいかも。

なーまん 様

なーまんさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。

ひろしまゲートパーク、よく御存知ですね!
恥ずかしながら、私はまだ行ったことがありません。
オシャレではありませんが、今度ゆっくり訪問してみようと思います。

文章からお人柄が伝わってくるというお話、ドキッとしました。
文章の内容によって、私自身の人柄も映し出されているというお話ですから…。
身が引き締まる思いがしました。

今回初めて有料の講習会に参加しました。
タイミングを逃さず、チャンスをつかみ、お金を有意義に使うことは意外と難しいですが、迷ったら前へ進み、できるだけ充実した人生を歩めたらいいなと思っております。

chibiaya 様

chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。

佐藤先生のイベント、今回は口コミで教えてもらったのですが、本当に偶然、たまたま知ったイベントでした。
昨年9月末に開催された佐藤先生のイベントも、広島市の広報誌でたまたま見つけて参加したものです。
偶然、たまたまが多いということは、chibiayaさんのおっしゃるとおり、普段からよく開催されているということなのでしょうね(笑)

佐藤先生は、チョコレートの大先生ですが、私は何より佐藤先生のお人柄に惚れて、講演会に参加しているのが本音です。
私も佐藤先生も、お調子者ですから…(笑)

チョコレートの絵本、ブックカバーの工夫は後で気付きました。
ブックカバーだけにすると、上側が破れているような感じです(笑)
税込みで2200円。子供向けの絵本って高いんですね…

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