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2025年7月

2025年7月27日 (日)

ミャンマー料理の特徴と主な料理 -オンタミン・チェッターヒン・ひろしま国際プラザのランチ・ミャンマーの民族衣装-

ひろしま国際プラザ・レストラン「ラコルト」

 広島県東広島市鏡山には、試験・研究機関が集積する「広島中央サイエンスパーク」があります。

 そしてこの「広島中央サイエンスパーク」内に「ひろしま国際プラザ」があります。

(ひろしま国際プラザ)
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 「ひろしま国際プラザ」(HIP:Hiroshima International Plaza)は、「広島県立広島国際協力センター(HICC:Hiroshima International Cooperation Center)」と「国際協力機構(JICA)中国センター」が一体化した複合施設です。

 私はかつてJICA中国やHICCの職員の方と一緒にお仕事させていただいたことがあるので、ひろしま国際プラザにはとても親しみがあります。

(宿泊棟とレストラン「ラコルト」)
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 手前の丸い建物がレストラン「ラコルト」、奥が海外からの研修員などが宿泊・滞在する宿泊棟です。

 レストラン「ラコルト」は、日替わりで世界各国の料理を提供されています。

 今回、このレストランで珍しいミャンマーの料理を中心としたランチが提供されていたので訪問しました。


ミャンマー料理

 ミャンマーは、バングラデシュ、インド、中国、ラオス、タイと国境を接する東南アジアの国です。

 面積は68万平方キロメートル、人口は5,114万人(2019年推計)、首都はネーピードー(ネピドー)です。

(ミャンマー)
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 (帝国書院ウェブサイト・世界白地図・南アジアを引用・一部加工)

 首都は2006年にヤンゴンからネーピードー(ネピドー)に移転しました。

 今回は、ミャンマーの料理を2つ御紹介します。


【オンタミン】

 「オンタミン」は、米をココナッツミルクで炊いたココナッツミルク風味ごはんです。

(オンタミン)
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 今回提供されたオンタミンは、鶏肉が入り、ターメリック(もしくはサフラン)で黄色く色付けられていました。

 ほのかに塩味が効いており、これだけでもピラフの感覚で食事になる一品でした。


【チェッターヒン】

 ミャンマーには、インドの食文化の影響を受け、鶏肉・豚肉・牛肉・山羊肉・海老・魚など様々な具を使ったカレー「ヒン」があります。

 ミャンマーの「ヒン」は、油をたっぷり使い、野菜をひたすら炒めて汁気を飛ばす調理法「油戻し法(スィービャン)」に特徴があります。

 ミャンマーの代表的なヒンの1つが「チェッターヒン」です。

(チェッターヒン)
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 「チェッター」は鶏肉という意味なので、日本で言う「チキンカレー」となります。

 今回提供されたチェッターヒンは、玉ねぎとトマトをベースに、ピーナッツオイルを使って調理されたもので、スパイスも効かせてピリ辛に仕上げられていました。

 オンタミンと一緒に、鶏肉をたっぷりいただきました。


レストラン「ラコルト」のランチ

 当日、ミャンマー料理以外にも様々な世界の料理がビュッフェ形式で提供されていましたので、御紹介します。


【ムラーバムカ】

 「ムラーバムカ」はスーダンの料理で、オクラと鶏肉のスープです。

(ムラーバムカ)
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 味噌汁の汁椀でいただくところが、日本のビュッフェっぽくて、いいですね(笑)

 オクラ、鶏肉、玉ねぎ、人参などを煮込んだスープで、日本のお吸い物のようなシンプルですっきりした味わいのスープでした。


【チキンソテー サンバルソース・白身フライ チリソース】

(チキンソテー サンバルソース・白身フライ チリソース)
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 写真右上が「チキンソテー サンバルソース」、手前が「白身フライ チリソース」です。

 「チキンソテー サンバルソース」はインドネシアの料理で、鶏肉を「サンバル」と呼ばれるチリソースで和え、ソテーした料理です。

 「サンバル」は唐辛子や発酵調味料を主体にしたチリソースで、インドネシアでは、ナシゴレン(焼き飯)やミーゴレン(焼きそば)、アヤムゴレン(フライドチキン)など、たくさんの料理に使われています。

 今回のチキンソテーは、インドのタンドリーチキンに似た味でした。

 「白身フライ チリソース」は、甘辛いスイートチリソースをかけて、東南アジア風にいただきました。


【ギゼリ】

 「ギゼリ」はケニアの料理で、トウモロコシと豆を茹で、塩やニンニクで調味した料理です。

(ギゼリ)
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 今回の「ギゼリ」は、トウモロコシ、レッドキドニービーンズ(金時豆)、玉ねぎなどをトマトベースのスープで煮込んだ料理でした。


【豆のサラダ・ガドガド・レタス・そばサラダ】

(豆のサラダ・ガドガド・レタス・そばサラダ)
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 写真右上が「そばサラダ」、手前が「豆のサラダ」・「ガドガド」・「レタス」です。

 「ガドガド」は温野菜に甘辛いピーナッツソースを和えた、インドネシアの代表的な料理の1つです。

 私がJICA中国やHICCの職員の方と一緒にインドネシアへ出張に行った際、一番印象に残った(美味しいと思った)料理が「ガドガド」です。

 現地で食べた「ガドガド」は、茹でキャベツ、茹で卵、厚揚げ、えびせん(クルプック)などに甘辛いピーナッツソースをかけたものでした。

 今回は、茹でたカリフラワーにピーナッツソースを和えたものが用意されました。

 お皿に盛り付ける際、「ガドガド」だと意識してなかったため、「豆のサラダ」に紛れ込ませてしまったのですが、いただくと甘辛いピーナッツ風味のカリフラワーでした。


【青りんごゼリー・コーヒー】

(青りんごゼリー・コーヒー)
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 デザートに青りんごゼリーをいただきました。

 締めくくりにホットコーヒーを飲みながら、ゆったりとしたひとときを過ごしました。


「JICAひろしま地球ひろば」とミャンマーの民族衣装

 食後に館内を見学させていただきました。

 「JICAひろしま地球ひろば」で、世界の民族衣装が展示・紹介されていました。

(世界の民族衣装展示)
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(東アフリカ「KANGA」の魅力)
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 東アフリカ、タンザニア、ケニアの女性たちに愛用されている一枚布の衣装「KANGA(カンガ)」が展示されていました。

 「カンガ」はスワヒリ語で「ホロホロ鳥」を意味し、初期のカンガはホロホロ鳥のようなドット柄だったようです。

 今回ミャンマー料理をいただいたので、ミャンマーの民族衣装はないかと探してみると、ありました。

(ミャンマー・カレン族の民族衣装)
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 ミャンマー・カレン族の女性が着る、可憐な民族衣装です。

(ミャンマー・カレン族の民族衣装の紹介文)
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 白い縦糸に赤い横糸を浮かせながら織り込まれ、立体感のある衣装に仕上がるのが特徴のようです。

 日本でもおしゃれ着として通用しそうな、色もデザインもかわいい民族衣装だと思いました。


まとめ

 今回は珍しいミャンマーの料理が食べられると意気込み、ひろしま国際プラザのレストランを訪問しましたが、後になって、実は「難民の故郷の味フェア」でいただいたことのある料理だとわかりました(笑)

 その分、「オンタミン」と「チェッターヒン」は深く印象に残る料理となりました。

 次回はどこの国のどんな料理と出会えるか楽しみです。


<関連サイト>
 「ひろしま国際プラザ(HIP)」(広島県東広島市鏡山3-3-1 広島中央サイエンスパーク内)
 「国際協力機構(JICA)中国センター」(広島県東広島市鏡山3-3-1)

<関連記事>
 「ひろしま国際プラザ「難民の故郷の味フェア」 -ミャンマーのオンタミンとチェッターヒン、ベトナムの鶏肉八角焼き、インドネシアのソトアヤム、スリランカのパリップサラーダヤ-

2025年7月20日 (日)

秋田の食文化探訪3 -秋田の塩鮭「ボダッコ」(汐鮭定食・ぼだっこおむすび)、秋田で「ボダッコ」と呼ばれる理由-

秋田の「ボダッコ」

 2025年3月7日に秋田県秋田市を訪問しました。

 秋田市の繁華街「川反(かわばた)通り」沿いにある郷土料理店「お多福」で、店主さんや板前さん、そして常連のお客さんと秋田の食文化(郷土料理)の話を中心に、いろんなお話をさせていただきました。

(「お多福」店舗)
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 旅の話題になった際、旅好きの店主さんが「旅を終え、秋田へ戻って来た際、真っ先に食べたいと思うものは、秋田の米(ごはん)とボダッコだなぁ」とおっしゃいました。

 秋田の「ボダッコ」。

 プロの料理人が地元で一番食べたいと思う料理。

 気になった私は、店主さんに「ボダッコって何ですか」と伺うと、塩鮭のことだと教えてくださいました。

 「ボダッコ」は、周りの常連さんも御存知で、知らないのは私だけでした。

 そして店主さんの「ボダッコ」談義が始まりました。

 塩辛い塩鮭のことを、秋田ではなぜ「ボダッコ」と呼ぶのか。

 その由来については、①塩鮭が「牡丹(ぼたん)の花のように鮮やかな色をしているから、②囲炉裏やかまどにくべる「ほだ木」に似ているから、③塩鮭を「ほだ木」でくるんで保存した(隠した)から、といったいくつかの説があるそうです。

 そして「私が確信している説は…」と店主さんのお話が続きました。

 その説とは、
 「常陸(茨城)から出羽(秋田藩)へやって来られた佐竹のお殿様が、常陸にはイノシシがいたが、雪深い秋田にはイノシシがいないことから、イノシシの肉(ぼたん)のように見える塩鮭を(故郷のぼたん肉をイメージされて)「ぼたん」(のちに「ボダッコ」)と呼ぶようになった」

 「秋田では、身近なものや愛着のあるものを表現する際、語尾に「○○っこ」とつける風習(方言)があり(※)、「ぼたん」と呼ばれた塩鮭もやがて「ボダッコ」と呼ばれるようになった」
というものでした。
 ※「どじょっこ」、「ふなっこ」、「わらしっこ」、「あねっこ(漬け)」など

 「それならこのお店でもボダッコをメニューに加えてくださいよ!」と思わず言いそうになりましたが、何とか抑えました(笑)

 秋田では海産物として「タラの子、すじこ、ボダッコ」がよく食べられているそうです。

 (童謡「どじょっこ ふなっこ」をイメージして)
 「♪タラっこだーの ボダッコだーの たーべてみたいと おもうべな」

 続いて常連さんから「秋田へ来るたびに「ぼだっこおむすび」を買って食べる」というお話があったので、私が「そのおむすびはどこで売られているのですか?」と尋ねると、「コンビニで普通に売ってますよ」とのことでした。

 伝統的なボダッコは、とても塩辛く、サイコロ切りの鮭でたくさんのごはんが食べられたそうです。

 秋田県大仙市のファーマーズマーケット「しゅしゅえっと まるしぇ」の農産物直売所では、「げきからぼだっこ飯」と呼ばれる、200グラムのごはん(あきたこまち)の上に、たった5グラムの「ぼだっこ」がのせられた、さみしすぎるシャケ弁当も販売されているそうです。

 秋田ではおむすびや弁当で売られるほど親しまれている「ボダッコ」。

 とても興味深い情報を入手できました。


秋田市民市場

 翌朝(2025年3月8日)、川反通り近くの宿泊先から「秋田市民市場」を目指しました。

(旭川・川反通り(四丁目橋付近))
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 川反通りから旭川の四丁目橋を渡り、東へ(JR秋田駅方向へ)まっすぐ進んだところに「秋田市民市場」があります。

(秋田市民市場)
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 「秋田市民市場」は、地元の鮮魚や野菜、秋田の名産品などが揃う市場施設です。

 秋田駅から近く、早朝5時から営業されているお店もあります。

 入口に場内マップがありました。

(秋田市民市場 場内マップ)
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 食品、雑貨、青果、乾物、塩干物、水産物、飲食店、さらには業務スーパー、ダイソー、コンビニ、歯医者さんまでいろんなお店が揃っています。

(秋田市民市場 乾物・青果通り)
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 こちらは乾物・青果通りの様子です。

(秋田市民市場 水産通り)
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 こちらは水産通りの様子です。

 塩鮭(汐鮭)もたくさん売られていました。

 ただ、それと同じくらいキングサーモンも売られており、いったいどれが「ボダッコ」なのか(どちらもボダッコと呼ばれるのか)迷いました。

 あと、鮭の切り方も、「東京切り(一般的な斜め切り)」と「秋田切り(通称「ボダッコ切り」、(ほだ木の木切れのように)部位ごとに分厚く切る)」の2種類があることもわかりました。

 いずれにせよ、秋田の人々は鮭やサーモンが大好きなことがよくわかりました。

 施設の至る所で「なんもだー!」と言葉を目にしたのですが、これは「ありがとう」と言われた時に返す秋田の方言で、「どういたしまして」とか「気にしないで」といった意味があるそうです。

 北海道の「なんも なんも」という方言の使い方とよく似ているなと思いました。

 おもてなしや感謝の気持ちが込められた愛情いっぱいの言葉です。


朝定食(汐鮭)

 「ボダッコ(塩鮭・汐鮭)」を求めて、秋田市民市場内の飲食店「まんま」へ伺いました。

(まんま)
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 朝7時の開店と同時にお店に入りました。

 メニューを見ると、まぐろ丼、銀たら煮付定食、赤魚の煮付定食、サバのみそ煮定食、開きサバ定食、開きホッケ定食、キングサーモンの塩焼き定食、塩鮭定食、ピリ辛さんま焼き定食、焼肉定食、とんかつ定食、カキフライ定食と、魚料理を中心に構成されていました。

 このほか、朝限定メニューとして、モーニングセット(ハムエッグ)・朝定食・納豆定食の3種が、昼限定メニューとして日替りランチが用意されていました。

 朝定食のメインのおかずは、ホワイトボードに記載されていました。

(「まんま」の朝定食メニュー)
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 汐鮭、ピリ辛サンマ、ほっけの3種類から1つ選べるようです。

 こちらのお店でも「塩鮭(汐鮭)」と「キングサーモン」が提供されていました。

 キングサーモンは脂がのっているので魅力的ですが、「ボダッコ」は塩鮭(汐鮭)のことだろうと思った私は、「朝定食」の「汐鮭」を注文しました。

 しばらく待っていると、テーブルに朝定食が運ばれてきました。

(「まんま」の朝定食(汐鮭))
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 これぞ日本の朝食。

 汐鮭をメインに、ごはん、味噌汁、切り干し大根、マカロニサラダ、野菜サラダ、たくあん、そして熱いお茶という構成です。

(汐鮭)
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 これはいわゆる「東京切り」の汐鮭です。

 塩辛いのを覚悟していただきましたが、想像していたほど塩辛くなく、食べやすい汐鮭でした。

 近年の健康(減塩)志向や、塩辛い鮭だと食べきれないといった理由があるのかもしれません。

 汐鮭を一口サイズ(角切り)にし、ごはんの上にのせてみました。

(ごはんと汐鮭)
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 ボダッコはこんな感じでごはんと一緒に食べられるのでしょう。

 ごはんと味噌汁と塩鮭(汐鮭)は最高の組合せで、旅行(とりわけ海外)から帰って真っ先に食べたいのが「ボダッコ」だとおっしゃった「お多福」の店主さんのお気持ちがよく理解できました。


ぼだっこおむすび

 食事を終え、お店の隣にコンビニ(ファミリーマート)があったので立ち寄りました。

 おにぎりのコーナーを見てみると、「ぼだっこ(塩辛い鮭)」と表示されたおむすびが販売されていたので、購入しました。

 その後、歩いて秋田駅へ行きました。

(秋田駅)
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 秋田駅構内に秋田米「サキホコレ」にちなんだ合格祈願鳥居が設置されていました。

(「サキホコレ」受験生合格祈願鳥居)
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 「頑張れ受験生!秋田米「サキホコレ」を食べて咲き誇れ」という願いが込められています。

 秋田駅構内のコンビニ(NewDays)に立ち寄ってみました。

(コンビニで販売されている「ぼだっこおむすび」)
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 こちらのお店にも「ぼだっこおむすび」がありました。

 観光客向けに、
 「ぼだっこ 秋田の塩辛い鮭です Akita Salty Salmon」
 「ぼだっこ…秋田弁で「塩辛い鮭」のこと」
 「その名の由来は、猪の肉の色(ぼたん)に似てるから」
 「牡丹(ボタン)の花の色に似てるから、など諸説あります」
と説明書きまでありました。

 「ぼだっこ」とは別に「紅鮭」のおむすびも販売されていたのも興味深かったです。

(ぼだっこおむすび)
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 こちらが今回購入した「ぼだっこおむすび」です。

 ほかにも秋田県内のコンビニ各店で販売されていることと思います。

 一般的な鮭おにぎりとの違いは、
・鮭が若干塩辛く仕上げられていること
・「大きめの鮭フレーク」か「鮭のかたまり」が入っていること
でした。


まとめ(秋田で「ボダッコ」と呼ばれる理由)

 秋田の郷土料理店での会話から、秋田の「ボダッコ」を知り、味わうことができました。

 今回の記事を作成しながら、改めて「ボダッコ」の意味や由来について考えてみたのですが、その際ふと思い浮かんだのが民俗学者・宮本常一さんの「塩魚(塩鮭)」のお話でした。

 宮本常一さんのお話の中で、「昔の鮭は、表面に塩が白く吹くほど塩辛くされていたが、その理由は鮭を食べるためではなく(鮭に付いた)塩を入手したかったから」と紹介されています。

 海から遠く離れた山の中で暮らす人々にとって、塩はとても貴重なものでした。

 山で木を切って、その木(薪・たきぎ)を川へ流し、河口(海)へと運びます。

 その河口にたどり着いた薪を使って、浜で海水を焼いて塩を作り、山へ持ち帰ったのです。

 江戸時代以降、船で瀬戸内海の塩が運ばれてくるようになってからも、山に住む人々は薪を町家の燃料として売りさばき、そこで得たお金で塩を買って帰るという生活を送られていたそうです。

 これらの話をまとめると、
・塩を得るためにとても辛い塩鮭が作られた
・薪は(山に住む人々にとっても、海に住む人々にとっても)塩を焼くために欠かせない燃料だった
・塩の流通が盛んになってからも、薪を売って得たお金で塩を入手した
という塩と人々とのかかわりが明らかになります。

 さらに、「ほだ木」が薪として囲炉裏やかまどにくべる燃料にされたことまで考慮すれば、どういう経緯で塩辛い塩鮭が作られるようになり、それがなぜ秋田で「ボダッコ」と呼ばれるようになったのかについても明らかになるのです。

 つまり、秋田で「ボダッコ」と呼ばれる理由は、
・塩を得るため、塩辛い鮭が作られるようになった(鮭の保存性を高める効果もあった)
・「薪」や「ほだ木」は、塩(海水)を焼く燃料や、塩を購入するための商品となった
・塩と鮭、塩と薪(ほだ木)はお互い深い関わりを持ち、人々の生活に溶け込んだ
・塩、鮭、薪(ほだ木)が結びつき、鮭の色(ぼたん)や「ほだ木」の名称から、秋田では次第に(愛着を込めて)「ボダッコ」と呼ばれるようになった
というのが、私が導き出した答えです。

 「♪ボダッコだの 呼ばれるのは これがこたえと おもうべなー」

 今回の秋田訪問で、「ボダッコ(ぼだっこ)」が秋田の食文化に深く関係する、秋田県民自慢の食べ物であることがよくわかりました。

 秋田へ行かれる機会があれば、ぜひ「ボダッコ」を御賞味ください。


<関連サイト>
 「秋田市民市場」(秋田市中通4-7-35)
 「しゅしゅえっと まるしぇ」(秋田県大仙市花館字常保寺106-1)

<関連記事>
 「秋田の食文化探訪1 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-
 「秋田の食文化探訪2 -比内地鶏・ハタハタ・がっこ・あねっこ漬け・ばっけ・きりたんぽ鍋・秋田産枝豆のコロッケ・秋田産りんごジュース-

<参考文献>
 宮本常一「塩の道」講談社学術文庫

2025年7月13日 (日)

秋田の食文化探訪2 -比内地鶏・ハタハタ・がっこ・あねっこ漬け・ばっけ・きりたんぽ鍋・秋田産枝豆のコロッケ・秋田産りんごジュース-

 2025年3月7日、山形県鶴岡市の鶴岡駅から「特急いなほ」に乗り、秋田県秋田市を訪問しました。

(特急いなほ7号・秋田駅到着)
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 秋田駅に到着した「特急いなほ7号」です。

 秋田駅から秋田市の繁華街「川反(かわばた)通り」沿いにある郷土料理店「お多福」へ行き、秋田の郷土料理を堪能することとしました。

 こちらのお店は、約7年前に一度訪問したことがあり、その際に店主さんから秋田の郷土料理の話を中心にいろんなお話を伺うことができ、楽しいひとときを過ごした思い出があります。

 そのため、また秋田市へ行くことがあればぜひ再訪したいと思っていたのですが、それが今回実現しました。

 予約時間を迎え、少し緊張気味にお店に入りました。

(「お多福」店舗)
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 前回と同様、カウンター席に案内していただきました。

 店主さんと板前さんを前に、「実は約7年前にも来たことがあるのですが、その時もお二人とお話しさせていただきました。またお会いできて嬉しいです」とお話しすると、店主さんが笑いながら「ずっとこのメンバーですから」とおっしゃいました。

 緊張がほぐれ、また同じ雰囲気で食事ができることを幸せに思いつつ、料理をいただきました。

 それでは、今回味わった秋田の郷土料理を御紹介します。


トマトジュース

 飲み物として、トマトジュースをいただきました。

 トマトジュースはこどもの頃から苦手意識を持っていたのですが、塩無添加ということで注文してみました。

(トマトジュース(塩無添加))
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 「あっ、これなら甘くて美味しい」

 トマトの旨みと甘みが凝縮された濃厚なトマトジュースでした。


お通し三種

 「お通し」を御用意いただきました。

(お通し三種)
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 今回のお通しは「魚のマヨネーズ和え」、「なめ茸」、「糸こんにゃくのきんぴら」でした。

 糸こんにゃくのきんぴらには、魚卵がまぶされており、美味しくいただけました。


お造り盛り合わせ

 続いて、お造り(刺身)が用意されました。

(お造り盛り合わせ)
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 写真奥がソイ、手前右側がヒラメ(昆布漬け)、手前左側がシマアジです。

 ソイは北海道や東北の日本海側で多く漁獲される、高級白身魚です。

 脂がのって、プリプリとした食感の魚でした。

 ヒラメは昆布漬けで、淡白な味わいの中に、昆布と白身の旨みを感じました。

 シマアジは肉厚で、噛みしめるほどに旨みが口の中いっぱいに溶け出しました。


比内地鶏手羽焼き

 「比内地鶏」は、秋田県北部・比内地方で飼育されてきた「比内鶏」(国の天然記念物)にロードアイランドをかけ合わせた鶏で、日本三大地鶏(比内地鶏、名古屋コーチン、薩摩地鶏)の1つです。

 その比内地鶏の手羽焼きが提供されました。

(比内地鶏手羽焼き)
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 手羽先を塩こしょうで焼き、レモンを添えたシンプルな料理です。

 表面の皮がパリッとして、噛みしめると中の肉汁が飛び出してきました。

 肉は水っぽさがなく、弾力があって、旨みとコクが凝縮されていました。

 シンプルな料理・調味ほど、素材の良し悪しが影響しますが、この比内地鶏には余計な調理・調味は要らないと思いました。


ハタハタの塩焼き

 秋田を代表する食材の1つが「ハタハタ(鰰)」です。

 秋田県の県魚にも指定されています。

 そのハタハタの塩焼きを提供していただきました。

(ハタハタの塩焼き)
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 板前さんが丁寧に焼いてくださった一品です。

 その板前さんから「よかったら、こちらで骨をお取りしましょうか」とお話があったので、興味津々でお願いしました。

 骨抜きの作業をカウンター越しに見ると、菜箸でハタハタの胴体をお腹からしっぽに向けて軽くはさみ続け、徐々に身から骨を外しておられました。
 
 最後に中骨を手に取り、その中骨をスルスルと横にスライドさせると、ものの見事に中骨だけが取り除かれました。

(ハタハタの塩焼き(骨抜き))
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 長い菜箸を使いこなし、身を崩すことなく、中の骨だけを取り除く板前さんの姿に、うっとりと見とれてしまいました。

 しばらくしてハタと我に返り、ハタハタをいただきました。

 ハタハタは、その見た目よりはるかに脂ののった魚で、それが大きな魅力です。

 大根おろしが添えられているのも、脂がのった魚をさっぱりといただくためです。

 ハタハタ漁は、今シーズン(2024年冬から2025年春まで)記録的な不漁となり、店主さんも嘆いておられました。

 昔は、ハタハタの卵(ブリコ)が海岸を埋め尽くすほどたくさん獲れたそうですが、温暖化の影響で海水温が高くなり、ハタハタの産卵や成長にも影響が及んでいるようです。

 そうした中でも、ハタハタを御用意いただいたことに感謝です。


がっこ盛り合わせ

 お店の看板メニューの1つ、「がっこ(漬物)」です。

 秋田では漬物のことを「がっこ」と呼びます。

 この言い方は「香の物(=漬物)」を意味する「こうこ」や、「雅香」に由来するようです(その他諸説あります)。

 漬物が売りの郷土料理店というのも珍しいですが、美味しい「がっこ」が食べられるお店として有名です。

(がっこ盛り合わせ)
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 写真右上が「やたら漬け」、それから時計回りに「いぶりがっこ」、「さっと干し大根(柿漬け)」、「大根の赤紫蘇漬け」です。

 「やたら漬け」は、ありあわせの野菜を「やたら」めったら塩漬けし、味噌や醤油で調味した漬物です。

 「いぶりがっこ」は、大根をいったん燻(いぶ)し、その燻した野菜を米ぬかで漬けこんだ漬物です。

 大根を薫製にする理由ついては、「生のままだと大根が辛いため」とか、「漬物にする大根が寒さで凍ってしまうのを防ぐため」とか、「囲炉裏の上でいったん薫製にすると美味しかったため」といったものが挙げられています。

 私が最も納得している理由は、「冬場に大根を置いておくと中の水分が凍ってしまう(使い物にならなくなる)ので、家の囲炉裏で大根を燻製して水分を抜き、保存性を高めるため」というものです。

 今回御用意いただいた「いぶりがっこ」は、燻製と相性が良いクリームチーズがはさまれていました。

 「さっと干し大根(柿漬け)」は,さっと軽く干した大根に柿(酢)を加えて漬けたものです。

 「大根の赤紫蘇漬け」は、大根を赤紫蘇で漬けたもので、きれいなピンク色に仕上がっていました。


あねっこ漬け

 「あねっこ漬け」は、きゅうりや大根などの漬物を刻み、梅酢で色をつけたもち米と混ぜ合わせた漬物で、その見た目や食感が初々しい娘さんを想像させることから名付けられた漬物です。

(あねっこ漬け)
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 もち米で漬けられているので、ほんのり甘く、漬物というよりは「もち米入りの野菜料理」という印象を持ちました。


天ぷら(ばっけ・タラの芽)

 秋田の様々な「がっこ」を味わった後に、天ぷらが用意されました。

(天ぷら(ばっけ・タラの芽))
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 「ばっけ(ふきのとう)」と「タラの芽」の天ぷらです。

 いずれも春の訪れを告げる野菜です。

 ふきのとうは、先に訪問した山形県鶴岡市でも「ばんけ」と呼ばれ、甘い味噌と混ぜ合わせた「ばんけ味噌」をはじめとする料理で親しまれています。


きりたんぽ鍋

 続いて、秋田名物であり、このお店の看板料理でもある「きりたんぽ鍋」を御用意いただきました。

 「きりたんぽ」の語源は、粗くつぶしたご飯を棒に巻き付けて焼いた「たんぽ」を切って鍋に入れたことに由来します。

(きりたんぽ鍋)
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 写真手前がヒラタケ、中心の緑色の野菜がセリ、右上が白ねぎ、左上がセリの根です。

 セリやセリの根は、シャキシャキした食感と香りの良さに特長があり、鍋をはじめとする煮込み料理に最適な野菜です。

 東北地方の料理でよく使用される野菜です。

(きりたんぽ鍋(きりたんぽ))
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 醤油仕立ての具だくさん鍋で、食べ進めると、中にきりたんぽ、比内地鶏、糸こんにゃくが入っていました。

 きりたんぽは、焼いたごはんの香ばしさと、鍋のだし汁をたっぷり吸ったもちもち感を楽しむことができました。


滝川豆腐

 「滝川豆腐」は、豆腐を「ところてん突き」で押し出して、細長く仕上げた豆腐です。

(滝川豆腐)
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 全国的にみられる料理ですが、このお店の看板メニューの1つです。

(滝川豆腐(崩した様子))
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 生姜醤油でいただきました。

 食べやすく、つるんとしたのどごしの豆腐麺でした。


秋田産枝豆のコロッケ

 もう少し食べられると思い、板前さんにおすすめを聞いてみました。

 すると板前さんから「秋田産枝豆のコロッケはいかがでしょう」と御提案があったので、私は「あ、それをお願いします」と注文しました。

 秋田産の枝豆。

 鶴岡で「だだちゃ豆(※)」と呼ばれる枝豆があることを知ったのですが、「秋田では「だだちゃ豆」とは呼ばないのだろうな」と思いつつ、出来上がりを待ちました。
 ※「だだちゃ」は鶴岡の方言で「お父さん」という意味

 しばらくして、「はい、枝豆コロッケです」と料理が提供されました。

 「えっ!」

(秋田産枝豆のコロッケ)
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 ソーセージのような形をしたコロッケです。

 「枝豆の揚げ物」と呼んだ方がいいような一品です。

 板前さんが笑顔で「イメージと違うでしょ?」とおっしゃったので、「確かに…」とお答えしました。

 私はてっきり、ジャガイモと枝豆で作った小判形のコロッケが出てくるものと思っていました。

(秋田産枝豆のコロッケ(枝豆))
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 すりつぶした枝豆に海老のすり身を混ぜ合わせ、きめ細かいパン粉をまぶして油で揚げたコロッケです。

 枝豆のさわやかな風味と海老の旨みを堪能しました。

 1つ1つ、きめ細やかで丁寧な調理をされる板前さんらしさが表現された一品でした。


秋田産りんごジュース

 食事を終え、店主さん、板前さん、そしてカウンターの常連さんと一緒にいろんな話で盛り上がりました。

(秋田産りんごジュース)
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 お酒に弱い私は、無添加の秋田産りんごジュースやウーロン茶をいただきながら、会話を楽しみました。
 (アルコールを飲まない方が陽気でテンションが高いのです…)


まとめ

 店主さんとは、秋田の食文化だけでなく、旅行の話や飛行機(マイル)の話、さらに釣りの話などでも盛り上がりました。

 川に棲むヤマメが海へ出て、成長して再び川に戻ってくるとサクラマスとなるのですが、このサクラマスは警戒心が強く、釣り人が自然と一体化するぐらいでないと釣れないという話になりました。

 店主さんがこの話をされた時、私は「まさに「釣りキチ三平」の「石化け」じゃないですか!」とお応えしました。

 秋田県出身の漫画家・矢口高雄さんの漫画「釣りキチ三平」で、「石化け」と呼ばれる釣法が紹介されています。

 この釣法は、釣り人が渓流の石や岩と一体化するぐらい存在感を無くすことで魚の警戒心を取り除いて魚を釣る方法を言います。

 この話を地元秋田の方なら御存知ではないかと思ってお応えしたのですが、予想どおり皆さんも「釣りキチ三平」や「石化け」の話を御存知でした。

 板前さんとは、板前さんが休暇を利用し、(雪のないところを求めて、私の地元)広島県沿岸部へ来られた時の話で盛り上がりました。

 閉店時刻を過ぎても話が尽きることなく、前回の訪問時と同様に、アットホームでとても楽しいひとときを過ごすことができました。

 夜も更けてきたので、おいとますることにしました。

 会計を済ませ、女性の店員さんにお店の外までお見送りいただいた時、雪が降っていました。

 夜空を見上げた店員さんがぽつり、「なごり雪が舞ってます」とおっしゃいました。

 お店で楽しいひとときを過ごし、名残惜しく思っていた私は、その言葉が心に沁みました。

 時は3月、秋田ももうすぐ春。

 「♪春になれば 氷(すが)こもとけて どじょっこだの 鮒っこだの 夜が明けたと思うべな」
 (童謡「どじょっこ ふなっこ」)

 「またよろしくお願いします」とお礼申し上げ、お店を後にしました。


<関連サイト>
 「お多福」(秋田市大町四丁目2-25)

<関連記事>
 「秋田の食文化探訪1 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-

2025年7月 6日 (日)

山形の食文化の特徴4 -あんだま・いとこ煮・むしたまご・しそ巻き・いちじく甘露煮・笹巻き・鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化-

 山形県鶴岡市は、その風土や歴史に育まれた豊かな食文化が認められ、2014年12月1日、日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定された街です。

 そして、同市は日本の学校給食発祥の地でもあります。

 そんな豊かな食文化に恵まれた鶴岡市で見つけた、鶴岡の伝統料理・郷土料理(菓子)をいくつか御紹介したいと思います。


あんだま・いとこ煮

 羽黒山と鶴岡市街地を結ぶ「羽黒街道(山形県道47号)」沿いを歩いていると、和菓子屋がありました。

(田舎の餅や「謹栄堂」)
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 田舎の餅や「謹栄堂(きんえいどう)」です。

 どんなお菓子があるのかとお店に近づいてみると…

(謹栄堂のお菓子)
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 絹のまち鶴岡の「絹入りだんご」、「いとこ煮」、「むしたまご」、冬に食べる「水ようかん」。

 「水ようかん」を夏ではなく冬に食べる風習は、北陸地方(福井県・石川県など)でみられるのですが、鶴岡市にも同様の風習があることは1つの発見でした。

 また、鶴岡が「絹のまち(鶴岡シルクタウン)」として有名なことも知りました。

 地元・鶴岡ならではのお菓子を求めて、店内にお邪魔しました。

 店内に「あんだま」の販売コーナーがありました。

(あんだまの販売コーナー)
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 「鶴岡まつりの風物詩」
 「昔なつかしい、やさしい味」
 「屋台スイーツ」

 何やらワクワクするお菓子です。

 お店の人にお話を伺うと、昔からお祭りの時に食べられてきたお菓子とのことでした。

 この「あんだま」と、鶴岡のあずき菓子「いとこ煮」を購入しました。

(あんだま・いとこ煮)
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 「あんだま」のパックを開けてみました。

(あんだま)
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 一瞬「たこ焼き」かと思いました(笑)
 (つまようじがさしてあるところまでそっくり!)

 たこ焼きを食べる感覚でいただきました。

(あんだま(あんこ))
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 小麦粉生地に粒あんを入れて、たこ焼きのように球形に焼いた郷土菓子です。

 お祭りの時、屋台でたこ焼きを焼くかたわらで、タコの代わりに粒あんを入れて「おやつ」として提供されたのがはじまりではないかと思います。

 お手頃価格なのに、中にあんこがたっぷり入っていました。

 続いて、「いとこ煮」を開けてみましょう。

(いとこ煮(謹栄堂))
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 「いとこ煮」と言えば、小豆とカボチャを煮た料理がよく知られていますが、鶴岡では小豆ともち米を一緒に甘く炊いたものを言います。

 ゆるい赤飯のような仕上がりになっています。

(いとこ煮(ふろむ亭))
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 こちらは、「謹栄堂」近くの郷土料理店「ふろむ亭」の「いとこ煮」です。

 おはぎを崩したような仕上がりになっています。

 ふろむ亭の店主さんから「作る家庭・お店によって違いがある」と伺っていましたが、確かに小豆ともち米の割合、炊き方の程度、水分、甘さなどに違いがあることがわかりました。

 ちなみに、全国で広く「いとこ煮」と呼ばれている「小豆とかぼちゃの煮物」を鶴岡では何と呼ばれているのか気になるところですが、こちらは「冬至かぼちゃ」と呼ばれています。


むしたまご

 「むしたまご」は、溶き卵に砂糖を加えて蒸し固めた鶴岡のお菓子です。

(蒸し玉子)
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 (鶴岡食文化創造都市推進協議会「つるおかおうち御膳」(ウェブサイト)を一部引用)

 卵と砂糖以外に、牛乳や「甘だれ(砂糖・薄口醬油・みりん)」を加えられたものもあります。

 お店の「むしたまご」と書かれた短冊を見て、私は一瞬「虫たまご」というお菓子があるのかと勘違いしてしまいました(笑)


JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」

 食材・食文化に富んだ鶴岡には、地元ならではの料理・お菓子が「もっとあ~る」のではないかと、JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」駅前店へ行ってみました。

(「もんとあ~る」駅前店)
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 店内を見て回ると、やっぱり鶴岡ならではの食が「もんとある!」(※)
 (※庄内の方言で「山ほどある」という意味)

 鶴岡の料理・お菓子をいくつか購入しました。


しそ巻き

 「しそ巻き」は、大葉(しそ)に「味噌ダネ」(味噌に砂糖、ゴマ、クルミ、ピーナッツ、唐辛子などを加え、もち粉などで練り固めたもの)をのせてクルクル巻き、油で揚げた料理です。

(しそ巻き(パック))
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 今回購入した「しそ巻き」は、味噌にゴマと砂糖を加え、米粉で練り固めた味噌ダネを使った「ごまみそ」のしそ巻きです。

(しそ巻き)
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 串刺しにして売られていました。

 油でサクサクに揚げられた大葉と、甘辛でねっとりとした味噌ダネの組合せは、「よくぞこれを思いついた」と賞賛したくなる美味しさで、おかずにもおつまみにも最適な一品です。


いちじく甘露煮

 いちじくの甘露煮を購入しました。

(いちじく甘露煮(パック))
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 口が開く前のいちじくを砂糖と酸味(レモン・酢・クエン酸など)で飴色になるまで煮詰めた料理です。

(いちじく甘露煮)
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 いちじくを丸ごと味わえる、鶴岡の保存食です。


笹巻き

 「笹巻き」は、鶴岡の代表的な郷土菓子の1つです。

 「端午の節句」に出されるお菓子で、全国的には「粽(ちまき)」と呼ばれていますが、東北地方では「笹巻き」と呼ばれています。

(笹巻き(パック))
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 きな粉と黒蜜がセットになっています。

 笹の巻き方にも様々な方法があり、三角おにぎりのような「三角巻き」、握ったこぶしのような「こぶし巻き」、何枚もの笹の葉を使って巻き上げる「たけのこ巻き/祝い巻き」、鉈(なた)のような「なた巻き」などがあります。

(笹巻き(笹で包まれている様子))
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 こちらは「三角巻き」の笹巻きです。

 鶴岡(庄内地方南部)の「笹巻き」の特徴は、灰汁(あく)に浸したもち米を笹で巻いて煮ることにあります。

 強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮ることで、もち米が黄変し、黄色いゼリー状の食べ物になります。

(笹巻き)
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 笹から取り出し、同梱のきな粉と黒蜜をかけてみました。

(笹巻き(青きな粉と黒蜜))
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 ゼリーとお餅の中間のような、やわらかくてプルンとした食感で、独特な香ばしさもあるので、甘いきな粉や黒蜜とよく合います。

 きな粉は青大豆で作られた「青きな粉」です。

 青きな粉は全国的にも珍しいのですが、庄内地方では、山形県庄内町を中心に昔から青大豆が栽培され、青きな粉が食べられてきました。

 私がこの青きな粉にピンときた理由は、私の住む広島市でもよく食べられており、「ザ・広島ブランド」に認証されている食品だからです。

 庄内と広島にこんな食文化の接点があったのかと嬉しく思いました。


鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化

 鶴岡の笹巻きは、強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮た食べ物ですが、同様の食べ物が「あくまき」という名で南九州(鹿児島・宮崎・熊本)にもあることから、南九州から伝えられたという説もあります。

 一方、私がカンボジア・コンポントム州郊外を訪問した際には、もち米に「クボン」と呼ばれる灰汁(凝固剤)を加え、笹の葉に包んで蒸した「ノムチャン」と呼ばれるお菓子があることを知りました。

(クボン(凝固剤))
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 「ノムチャン」にはパームシュガー(やし砂糖)をつけて食べるとのことでした。

 このお菓子は九州の「あくまき」そっくりだと思い、現地の方に通訳さんを通じて、日本にも同様の「あくまき」というお菓子があると紹介したところ、みんなが驚きました。

 今回、その食べ物が鶴岡にも「笹巻き」として伝承されていることを知り、またしても驚きました。

 灰汁でもち米を煮たり蒸したりする料理は、中国の粽が日本を含めた東アジア・東南アジアへ伝えられたものと思われます。

 これで、鶴岡の「笹巻き」、南九州の「あくまき」、カンボジアの「ノムチャン」、中国の「粽(粽子)」につながりがあることがわかりました。

 さらに、静岡県藤枝市岡部町朝比奈にもツバキの灰汁を使って作られる「朝比奈ちまき」があります。

 食のフィールドワークをする中で、ふと、こうした食文化のつながりがわかると、とても嬉しく、感動を覚えます。


まとめ

 鶴岡市中心部を徒歩やバスで移動しながら、様々な食と出会うことができました。

 夕方、鶴岡駅から「特急いなほ」に乗車し、秋田を目指しました。

(E653系いなほ号の看板)
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 「いなほ(稲穂)」という名称は、日本有数の米どころ新潟・山形・秋田を結ぶ特急の名称としてぴったりです。

(E653系いなほ号(ハマナス色)・鶴岡駅)
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 駅の看板とは異なる、濃いピンク色(ハマナス色)の「特急いなほ」がホームに入線しました。

(特急いなほ・秋田行・行先表示)
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 乗車し、窓から外を眺めると、白波が立つ日本海が広がっていました。

(車窓から眺めた日本海(遊佐駅-象潟駅間))
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 鶴岡駅近くの観光案内所・「つるおか食文化市場FOODEVER(フーデヴァー)」で購入した冊子「つるおかおうち御膳」で鶴岡の食文化を復習しながら秋田へ移動しました。

(「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」)
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 鶴岡で出会った食は、高級料理ではなく、見映えを意識した料理でもない、鶴岡の伝統的な日常料理ばかりでしたが、実はこうした料理が鶴岡の食文化の原点であり、魅力となっています。

 さらにもう一歩進んで、鶴岡が日本の食文化の根幹をなす、伝統的な日常料理が受け継がれている地域だととらえれば、鶴岡こそ「ユネスコ食文化創造都市」にふさわしい地域だと理解することができます。


<関連サイト>
 「田舎の餅や「謹栄堂」」(山形県鶴岡市大東町25-14)
 「もんとあ~る」(「駅前店」山形県鶴岡市日吉町3-3ほか)

<関連記事>
 「あずきの研究12 -なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのか-
 「カンボジア料理の特徴と主な料理8 -ライスプディング,クボン,ノムチャン,クロサンオ,カンボジアと日本の食文化の共通点-
 「山形の食文化の特徴3 -「つるおか食文化市場FOODEVER」と鶴岡の食文化(つや姫・昔ながらの郷土料理・いとこ煮)-
 「日本の学校給食史と山形県鶴岡市「学校給食発祥の地(大督寺)」訪問 -つや姫おにぎり・山形つや姫玄米茶-

<参考文献>
 「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」鶴岡食文化創造都市推進協議会

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