山形の食文化の特徴4 -あんだま・いとこ煮・むしたまご・しそ巻き・いちじく甘露煮・笹巻き・鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化-
山形県鶴岡市は、その風土や歴史に育まれた豊かな食文化が認められ、2014年12月1日、日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定された街です。
そして、同市は日本の学校給食発祥の地でもあります。
そんな豊かな食文化に恵まれた鶴岡市で見つけた、鶴岡の伝統料理・郷土料理(菓子)をいくつか御紹介したいと思います。
あんだま・いとこ煮
羽黒山と鶴岡市街地を結ぶ「羽黒街道(山形県道47号)」沿いを歩いていると、和菓子屋がありました。
(田舎の餅や「謹栄堂」)
田舎の餅や「謹栄堂(きんえいどう)」です。
どんなお菓子があるのかとお店に近づいてみると…
(謹栄堂のお菓子)
絹のまち鶴岡の「絹入りだんご」、「いとこ煮」、「むしたまご」、冬に食べる「水ようかん」。
「水ようかん」を夏ではなく冬に食べる風習は、北陸地方(福井県・石川県など)でみられるのですが、鶴岡市にも同様の風習があることは1つの発見でした。
また、鶴岡が「絹のまち(鶴岡シルクタウン)」として有名なことも知りました。
地元・鶴岡ならではのお菓子を求めて、店内にお邪魔しました。
店内に「あんだま」の販売コーナーがありました。
(あんだまの販売コーナー)
「鶴岡まつりの風物詩」
「昔なつかしい、やさしい味」
「屋台スイーツ」
何やらワクワクするお菓子です。
お店の人にお話を伺うと、昔からお祭りの時に食べられてきたお菓子とのことでした。
この「あんだま」と、鶴岡のあずき菓子「いとこ煮」を購入しました。
(あんだま・いとこ煮)
「あんだま」のパックを開けてみました。
(あんだま)
一瞬「たこ焼き」かと思いました(笑)
(つまようじがさしてあるところまでそっくり!)
たこ焼きを食べる感覚でいただきました。
(あんだま(あんこ))
小麦粉生地に粒あんを入れて、たこ焼きのように球形に焼いた郷土菓子です。
お祭りの時、屋台でたこ焼きを焼くかたわらで、タコの代わりに粒あんを入れて「おやつ」として提供されたのがはじまりではないかと思います。
お手頃価格なのに、中にあんこがたっぷり入っていました。
続いて、「いとこ煮」を開けてみましょう。
(いとこ煮(謹栄堂))
「いとこ煮」と言えば、小豆とカボチャを煮た料理がよく知られていますが、鶴岡では小豆ともち米を一緒に甘く炊いたものを言います。
ゆるい赤飯のような仕上がりになっています。
(いとこ煮(ふろむ亭))
こちらは、「謹栄堂」近くの郷土料理店「ふろむ亭」の「いとこ煮」です。
おはぎを崩したような仕上がりになっています。
ふろむ亭の店主さんから「作る家庭・お店によって違いがある」と伺っていましたが、確かに小豆ともち米の割合、炊き方の程度、水分、甘さなどに違いがあることがわかりました。
ちなみに、全国で広く「いとこ煮」と呼ばれている「小豆とかぼちゃの煮物」を鶴岡では何と呼ばれているのか気になるところですが、こちらは「冬至かぼちゃ」と呼ばれています。
むしたまご
「むしたまご」は、溶き卵に砂糖を加えて蒸し固めた鶴岡のお菓子です。
(蒸し玉子)
(鶴岡食文化創造都市推進協議会「つるおかおうち御膳」(ウェブサイト)を一部引用)
卵と砂糖以外に、牛乳や「甘だれ(砂糖・薄口醬油・みりん)」を加えられたものもあります。
お店の「むしたまご」と書かれた短冊を見て、私は一瞬「虫たまご」というお菓子があるのかと勘違いしてしまいました(笑)
JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」
食材・食文化に富んだ鶴岡には、地元ならではの料理・お菓子が「もっとあ~る」のではないかと、JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」駅前店へ行ってみました。
(「もんとあ~る」駅前店)
店内を見て回ると、やっぱり鶴岡ならではの食が「もんとある!」(※)
(※庄内の方言で「山ほどある」という意味)
鶴岡の料理・お菓子をいくつか購入しました。
しそ巻き
「しそ巻き」は、大葉(しそ)に「味噌ダネ」(味噌に砂糖、ゴマ、クルミ、ピーナッツ、唐辛子などを加え、もち粉などで練り固めたもの)をのせてクルクル巻き、油で揚げた料理です。
(しそ巻き(パック))
今回購入した「しそ巻き」は、味噌にゴマと砂糖を加え、米粉で練り固めた味噌ダネを使った「ごまみそ」のしそ巻きです。
(しそ巻き)
串刺しにして売られていました。
油でサクサクに揚げられた大葉と、甘辛でねっとりとした味噌ダネの組合せは、「よくぞこれを思いついた」と賞賛したくなる美味しさで、おかずにもおつまみにも最適な一品です。
いちじく甘露煮
いちじくの甘露煮を購入しました。
(いちじく甘露煮(パック))
口が開く前のいちじくを砂糖と酸味(レモン・酢・クエン酸など)で飴色になるまで煮詰めた料理です。
(いちじく甘露煮)
いちじくを丸ごと味わえる、鶴岡の保存食です。
笹巻き
「笹巻き」は、鶴岡の代表的な郷土菓子の1つです。
「端午の節句」に出されるお菓子で、全国的には「粽(ちまき)」と呼ばれていますが、東北地方では「笹巻き」と呼ばれています。
(笹巻き(パック))
きな粉と黒蜜がセットになっています。
笹の巻き方にも様々な方法があり、三角おにぎりのような「三角巻き」、握ったこぶしのような「こぶし巻き」、何枚もの笹の葉を使って巻き上げる「たけのこ巻き/祝い巻き」、鉈(なた)のような「なた巻き」などがあります。
(笹巻き(笹で包まれている様子))
こちらは「三角巻き」の笹巻きです。
鶴岡(庄内地方南部)の「笹巻き」の特徴は、灰汁(あく)に浸したもち米を笹で巻いて煮ることにあります。
強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮ることで、もち米が黄変し、黄色いゼリー状の食べ物になります。
(笹巻き)
笹から取り出し、同梱のきな粉と黒蜜をかけてみました。
(笹巻き(青きな粉と黒蜜))
ゼリーとお餅の中間のような、やわらかくてプルンとした食感で、独特な香ばしさもあるので、甘いきな粉や黒蜜とよく合います。
きな粉は青大豆で作られた「青きな粉」です。
青きな粉は全国的にも珍しいのですが、庄内地方では、山形県庄内町を中心に昔から青大豆が栽培され、青きな粉が食べられてきました。
私がこの青きな粉にピンときた理由は、私の住む広島市でもよく食べられており、「ザ・広島ブランド」に認証されている食品だからです。
庄内と広島にこんな食文化の接点があったのかと嬉しく思いました。
鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化
鶴岡の笹巻きは、強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮た食べ物ですが、同様の食べ物が「あくまき」という名で南九州(鹿児島・宮崎・熊本)にもあることから、南九州から伝えられたという説もあります。
一方、私がカンボジア・コンポントム州郊外を訪問した際には、もち米に「クボン」と呼ばれる灰汁(凝固剤)を加え、笹の葉に包んで蒸した「ノムチャン」と呼ばれるお菓子があることを知りました。
(クボン(凝固剤))
「ノムチャン」にはパームシュガー(やし砂糖)をつけて食べるとのことでした。
このお菓子は九州の「あくまき」そっくりだと思い、現地の方に通訳さんを通じて、日本にも同様の「あくまき」というお菓子があると紹介したところ、みんなが驚きました。
今回、その食べ物が鶴岡にも「笹巻き」として伝承されていることを知り、またしても驚きました。
灰汁でもち米を煮たり蒸したりする料理は、中国の粽が日本を含めた東アジア・東南アジアへ伝えられたものと思われます。
これで、鶴岡の「笹巻き」、南九州の「あくまき」、カンボジアの「ノムチャン」、中国の「粽(粽子)」につながりがあることがわかりました。
さらに、静岡県藤枝市岡部町朝比奈にもツバキの灰汁を使って作られる「朝比奈ちまき」があります。
食のフィールドワークをする中で、ふと、こうした食文化のつながりがわかると、とても嬉しく、感動を覚えます。
まとめ
鶴岡市中心部を徒歩やバスで移動しながら、様々な食と出会うことができました。
夕方、鶴岡駅から「特急いなほ」に乗車し、秋田を目指しました。
(E653系いなほ号の看板)
「いなほ(稲穂)」という名称は、日本有数の米どころ新潟・山形・秋田を結ぶ特急の名称としてぴったりです。
(E653系いなほ号(ハマナス色)・鶴岡駅)
駅の看板とは異なる、濃いピンク色(ハマナス色)の「特急いなほ」がホームに入線しました。
(特急いなほ・秋田行・行先表示)
乗車し、窓から外を眺めると、白波が立つ日本海が広がっていました。
(車窓から眺めた日本海(遊佐駅-象潟駅間))
鶴岡駅近くの観光案内所・「つるおか食文化市場FOODEVER(フーデヴァー)」で購入した冊子「つるおかおうち御膳」で鶴岡の食文化を復習しながら秋田へ移動しました。
(「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」)
鶴岡で出会った食は、高級料理ではなく、見映えを意識した料理でもない、鶴岡の伝統的な日常料理ばかりでしたが、実はこうした料理が鶴岡の食文化の原点であり、魅力となっています。
さらにもう一歩進んで、鶴岡が日本の食文化の根幹をなす、伝統的な日常料理が受け継がれている地域だととらえれば、鶴岡こそ「ユネスコ食文化創造都市」にふさわしい地域だと理解することができます。
<関連サイト>
「田舎の餅や「謹栄堂」」(山形県鶴岡市大東町25-14)
「もんとあ~る」(「駅前店」山形県鶴岡市日吉町3-3ほか)
<関連記事>
「あずきの研究12 -なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのか-」
「カンボジア料理の特徴と主な料理8 -ライスプディング,クボン,ノムチャン,クロサンオ,カンボジアと日本の食文化の共通点-」
「山形の食文化の特徴3 -「つるおか食文化市場FOODEVER」と鶴岡の食文化(つや姫・昔ながらの郷土料理・いとこ煮)-」
「日本の学校給食史と山形県鶴岡市「学校給食発祥の地(大督寺)」訪問 -つや姫おにぎり・山形つや姫玄米茶-」
<参考文献>
「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」鶴岡食文化創造都市推進協議会
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知らないお菓子や食べ物ばっかりです。
むしたまごはゆでたまごの蒸したバージョンを連想し、そんなものを和菓子屋で売ってるの?と思いました。
甘いなら伊達巻に似た感じなのでしょうか。
見た目は芋ようかんみたいです(笑)
粽というと中に中華おこわが入っているものしか浮かばないのですが、本来は(?)和菓子なんですね!
考えたら和菓子の粽って食べたことがないかも…
投稿: chibiaya | 2025年7月 6日 (日) 22時38分
chibiaya 様
chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます!
私も鶴岡へ行くまで知らなかったお菓子・食べ物ばかりで、現地で知り、味わい、本で復習してやっと理解できました。
ただ、「むしたまご」は味わっていないので、どんな味だったか感想を申し上げることができません…。
レシピ本では、卵と砂糖がベースのシンプルなお菓子だと紹介されていますので、あんだまと同じく、素朴な郷土菓子として販売されているのだと思います。
確かに見た目は「芋ようかん」そっくりですね(笑)
端午の節句のお菓子と言えば、関東・東日本では柏餅、関西・西日本では粽が主流なので、chibiayaさんは中華ちまきのイメージがお強いのではと思います。
中華おこわは中華街などでよく見かけますが、おこわとしての粽も和菓子としての粽もあり、どちらが本物という話でもなさそうです。
ただ、東アジアや東南アジアの粽は、中国や台湾の影響を受けていることは間違いないと思います。
和菓子の粽、西日本ではお餅を笹で細長く巻いて蒸したものをよく見かけます。
中のお餅は、米粉で作られた白いお餅で、小田原や名古屋の「ういろう(外郎)」に似ています。
投稿: コウジ菌 | 2025年7月 6日 (日) 23時05分