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2025年7月20日 (日)

秋田の食文化探訪3 -秋田の塩鮭「ボダッコ」(汐鮭定食・ぼだっこおむすび)、秋田で「ボダッコ」と呼ばれる理由-

秋田の「ボダッコ」

 2025年3月7日に秋田県秋田市を訪問しました。

 秋田市の繁華街「川反(かわばた)通り」沿いにある郷土料理店「お多福」で、店主さんや板前さん、そして常連のお客さんと秋田の食文化(郷土料理)の話を中心に、いろんなお話をさせていただきました。

(「お多福」店舗)
Photo_20250713124401 

 旅の話題になった際、旅好きの店主さんが「旅を終え、秋田へ戻って来た際、真っ先に食べたいと思うものは、秋田の米(ごはん)とボダッコだなぁ」とおっしゃいました。

 秋田の「ボダッコ」。

 プロの料理人が地元で一番食べたいと思う料理。

 気になった私は、店主さんに「ボダッコって何ですか」と伺うと、塩鮭のことだと教えてくださいました。

 「ボダッコ」は、周りの常連さんも御存知で、知らないのは私だけでした。

 そして店主さんの「ボダッコ」談義が始まりました。

 塩辛い塩鮭のことを、秋田ではなぜ「ボダッコ」と呼ぶのか。

 その由来については、①塩鮭が「牡丹(ぼたん)の花のように鮮やかな色をしているから、②囲炉裏やかまどにくべる「ほだ木」に似ているから、③塩鮭を「ほだ木」でくるんで保存した(隠した)から、といったいくつかの説があるそうです。

 そして「私が確信している説は…」と店主さんのお話が続きました。

 その説とは、
 「常陸(茨城)から出羽(秋田藩)へやって来られた佐竹のお殿様が、常陸にはイノシシがいたが、雪深い秋田にはイノシシがいないことから、イノシシの肉(ぼたん)のように見える塩鮭を(故郷のぼたん肉をイメージされて)「ぼたん」(のちに「ボダッコ」)と呼ぶようになった」

 「秋田では、身近なものや愛着のあるものを表現する際、語尾に「○○っこ」とつける風習(方言)があり(※)、「ぼたん」と呼ばれた塩鮭もやがて「ボダッコ」と呼ばれるようになった」
というものでした。
 ※「どじょっこ」、「ふなっこ」、「わらしっこ」、「あねっこ(漬け)」など

 「それならこのお店でもボダッコをメニューに加えてくださいよ!」と思わず言いそうになりましたが、何とか抑えました(笑)

 秋田では海産物として「タラの子、すじこ、ボダッコ」がよく食べられているそうです。

 (童謡「どじょっこ ふなっこ」をイメージして)
 「♪タラっこだーの ボダッコだーの たーべてみたいと おもうべな」

 続いて常連さんから「秋田へ来るたびに「ぼだっこおむすび」を買って食べる」というお話があったので、私が「そのおむすびはどこで売られているのですか?」と尋ねると、「コンビニで普通に売ってますよ」とのことでした。

 伝統的なボダッコは、とても塩辛く、サイコロ切りの鮭でたくさんのごはんが食べられたそうです。

 秋田県大仙市のファーマーズマーケット「しゅしゅえっと まるしぇ」の農産物直売所では、「げきからぼだっこ飯」と呼ばれる、200グラムのごはん(あきたこまち)の上に、たった5グラムの「ぼだっこ」がのせられた、さみしすぎるシャケ弁当も販売されているそうです。

 秋田ではおむすびや弁当で売られるほど親しまれている「ボダッコ」。

 とても興味深い情報を入手できました。


秋田市民市場

 翌朝(2025年3月8日)、川反通り近くの宿泊先から「秋田市民市場」を目指しました。

(旭川・川反通り(四丁目橋付近))
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 川反通りから旭川の四丁目橋を渡り、東へ(JR秋田駅方向へ)まっすぐ進んだところに「秋田市民市場」があります。

(秋田市民市場)
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 「秋田市民市場」は、地元の鮮魚や野菜、秋田の名産品などが揃う市場施設です。

 秋田駅から近く、早朝5時から営業されているお店もあります。

 入口に場内マップがありました。

(秋田市民市場 場内マップ)
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 食品、雑貨、青果、乾物、塩干物、水産物、飲食店、さらには業務スーパー、ダイソー、コンビニ、歯医者さんまでいろんなお店が揃っています。

(秋田市民市場 乾物・青果通り)
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 こちらは乾物・青果通りの様子です。

(秋田市民市場 水産通り)
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 こちらは水産通りの様子です。

 塩鮭(汐鮭)もたくさん売られていました。

 ただ、それと同じくらいキングサーモンも売られており、いったいどれが「ボダッコ」なのか(どちらもボダッコと呼ばれるのか)迷いました。

 あと、鮭の切り方も、「東京切り(一般的な斜め切り)」と「秋田切り(通称「ボダッコ切り」、(ほだ木の木切れのように)部位ごとに分厚く切る)」の2種類があることもわかりました。

 いずれにせよ、秋田の人々は鮭やサーモンが大好きなことがよくわかりました。

 施設の至る所で「なんもだー!」と言葉を目にしたのですが、これは「ありがとう」と言われた時に返す秋田の方言で、「どういたしまして」とか「気にしないで」といった意味があるそうです。

 北海道の「なんも なんも」という方言の使い方とよく似ているなと思いました。

 おもてなしや感謝の気持ちが込められた愛情いっぱいの言葉です。


朝定食(汐鮭)

 「ボダッコ(塩鮭・汐鮭)」を求めて、秋田市民市場内の飲食店「まんま」へ伺いました。

(まんま)
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 朝7時の開店と同時にお店に入りました。

 メニューを見ると、まぐろ丼、銀たら煮付定食、赤魚の煮付定食、サバのみそ煮定食、開きサバ定食、開きホッケ定食、キングサーモンの塩焼き定食、塩鮭定食、ピリ辛さんま焼き定食、焼肉定食、とんかつ定食、カキフライ定食と、魚料理を中心に構成されていました。

 このほか、朝限定メニューとして、モーニングセット(ハムエッグ)・朝定食・納豆定食の3種が、昼限定メニューとして日替りランチが用意されていました。

 朝定食のメインのおかずは、ホワイトボードに記載されていました。

(「まんま」の朝定食メニュー)
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 汐鮭、ピリ辛サンマ、ほっけの3種類から1つ選べるようです。

 こちらのお店でも「塩鮭(汐鮭)」と「キングサーモン」が提供されていました。

 キングサーモンは脂がのっているので魅力的ですが、「ボダッコ」は塩鮭(汐鮭)のことだろうと思った私は、「朝定食」の「汐鮭」を注文しました。

 しばらく待っていると、テーブルに朝定食が運ばれてきました。

(「まんま」の朝定食(汐鮭))
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 これぞ日本の朝食。

 汐鮭をメインに、ごはん、味噌汁、切り干し大根、マカロニサラダ、野菜サラダ、たくあん、そして熱いお茶という構成です。

(汐鮭)
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 これはいわゆる「東京切り」の汐鮭です。

 塩辛いのを覚悟していただきましたが、想像していたほど塩辛くなく、食べやすい汐鮭でした。

 近年の健康(減塩)志向や、塩辛い鮭だと食べきれないといった理由があるのかもしれません。

 汐鮭を一口サイズ(角切り)にし、ごはんの上にのせてみました。

(ごはんと汐鮭)
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 ボダッコはこんな感じでごはんと一緒に食べられるのでしょう。

 ごはんと味噌汁と塩鮭(汐鮭)は最高の組合せで、旅行(とりわけ海外)から帰って真っ先に食べたいのが「ボダッコ」だとおっしゃった「お多福」の店主さんのお気持ちがよく理解できました。


ぼだっこおむすび

 食事を終え、お店の隣にコンビニ(ファミリーマート)があったので立ち寄りました。

 おにぎりのコーナーを見てみると、「ぼだっこ(塩辛い鮭)」と表示されたおむすびが販売されていたので、購入しました。

 その後、歩いて秋田駅へ行きました。

(秋田駅)
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 秋田駅構内に秋田米「サキホコレ」にちなんだ合格祈願鳥居が設置されていました。

(「サキホコレ」受験生合格祈願鳥居)
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 「頑張れ受験生!秋田米「サキホコレ」を食べて咲き誇れ」という願いが込められています。

 秋田駅構内のコンビニ(NewDays)に立ち寄ってみました。

(コンビニで販売されている「ぼだっこおむすび」)
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 こちらのお店にも「ぼだっこおむすび」がありました。

 観光客向けに、
 「ぼだっこ 秋田の塩辛い鮭です Akita Salty Salmon」
 「ぼだっこ…秋田弁で「塩辛い鮭」のこと」
 「その名の由来は、猪の肉の色(ぼたん)に似てるから」
 「牡丹(ボタン)の花の色に似てるから、など諸説あります」
と説明書きまでありました。

 「ぼだっこ」とは別に「紅鮭」のおむすびも販売されていたのも興味深かったです。

(ぼだっこおむすび)
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 こちらが今回購入した「ぼだっこおむすび」です。

 ほかにも秋田県内のコンビニ各店で販売されていることと思います。

 一般的な鮭おにぎりとの違いは、
・鮭が若干塩辛く仕上げられていること
・「大きめの鮭フレーク」か「鮭のかたまり」が入っていること
でした。


まとめ(秋田で「ボダッコ」と呼ばれる理由)

 秋田の郷土料理店での会話から、秋田の「ボダッコ」を知り、味わうことができました。

 今回の記事を作成しながら、改めて「ボダッコ」の意味や由来について考えてみたのですが、その際ふと思い浮かんだのが民俗学者・宮本常一さんの「塩魚(塩鮭)」のお話でした。

 宮本常一さんのお話の中で、「昔の鮭は、表面に塩が白く吹くほど塩辛くされていたが、その理由は鮭を食べるためではなく(鮭に付いた)塩を入手したかったから」と紹介されています。

 海から遠く離れた山の中で暮らす人々にとって、塩はとても貴重なものでした。

 山で木を切って、その木(薪・たきぎ)を川へ流し、河口(海)へと運びます。

 その河口にたどり着いた薪を使って、浜で海水を焼いて塩を作り、山へ持ち帰ったのです。

 江戸時代以降、船で瀬戸内海の塩が運ばれてくるようになってからも、山に住む人々は薪を町家の燃料として売りさばき、そこで得たお金で塩を買って帰るという生活を送られていたそうです。

 これらの話をまとめると、
・塩を得るためにとても辛い塩鮭が作られた
・薪は(山に住む人々にとっても、海に住む人々にとっても)塩を焼くために欠かせない燃料だった
・塩の流通が盛んになってからも、薪を売って得たお金で塩を入手した
という塩と人々とのかかわりが明らかになります。

 さらに、「ほだ木」が薪として囲炉裏やかまどにくべる燃料にされたことまで考慮すれば、どういう経緯で塩辛い塩鮭が作られるようになり、それがなぜ秋田で「ボダッコ」と呼ばれるようになったのかについても明らかになるのです。

 つまり、秋田で「ボダッコ」と呼ばれる理由は、
・塩を得るため、塩辛い鮭が作られるようになった(鮭の保存性を高める効果もあった)
・「薪」や「ほだ木」は、塩(海水)を焼く燃料や、塩を購入するための商品となった
・塩と鮭、塩と薪(ほだ木)はお互い深い関わりを持ち、人々の生活に溶け込んだ
・塩、鮭、薪(ほだ木)が結びつき、鮭の色(ぼたん)や「ほだ木」の名称から、秋田では次第に(愛着を込めて)「ボダッコ」と呼ばれるようになった
というのが、私が導き出した答えです。

 「♪ボダッコだの 呼ばれるのは これがこたえと おもうべなー」

 今回の秋田訪問で、「ボダッコ(ぼだっこ)」が秋田の食文化に深く関係する、秋田県民自慢の食べ物であることがよくわかりました。

 秋田へ行かれる機会があれば、ぜひ「ボダッコ」を御賞味ください。


<関連サイト>
 「秋田市民市場」(秋田市中通4-7-35)
 「しゅしゅえっと まるしぇ」(秋田県大仙市花館字常保寺106-1)

<関連記事>
 「秋田の食文化探訪1 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-
 「秋田の食文化探訪2 -比内地鶏・ハタハタ・がっこ・あねっこ漬け・ばっけ・きりたんぽ鍋・秋田産枝豆のコロッケ・秋田産りんごジュース-

<参考文献>
 宮本常一「塩の道」講談社学術文庫

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コメント

ぼだっこおむすびも美味しそうですが、一番心惹かれたのはさみしすぎるシャケ弁当(^^)/
https://www.dailyshincho.jp/article/2025/05201100/?all=1&page=2

しょっつる鍋をおかずにして、さみしすぎるシャケ弁当を食べてみたい(^^)/
でも最近高血圧なので、これは命がけのチャレンジですね(^◇^;)

なーまん 様

なーまんさん、こんにちは。
コメントいただき、ありがとうございます。
くれぐれも御無理のないようお願いします。

ぼだっこ弁当、気になりますよね(笑)
記事も御紹介いただき、ありがとうございます。
スーパーで「ぼだっこ(激辛口)」という名で販売されていること、ぼだっこは日本酒との相性も抜群であることがわかり、とても勉強になりました。

しょっつる鍋は魚醤を使った鍋ですから、結構塩分があると思うのですが、それにぼだっこの弁当とは、ちょっと無理があるような気が…(笑)
秋田の食と塩分を満喫できますね。
ぼだっことごはんでお茶漬けにしても美味しそうです(^-^)
でも飲み干せば一緒ですね…(笑)

地域によって鮭の切り方とその呼び方に違いがあるんですねー。
秋田切りがどういう形か、いまひとつ想像できないんですが(^^;)
コンビニのご当地おにぎり、いいですね。
もしかしたら山口にも限定おにぎりがあったりしたのかな?

chibiaya 様

chibiayaさん、こんばんは。
山口に遠出されてお疲れのところ、コメントいただき、ありがとうございます。

「秋田切り」と「東京切り」は秋田での呼び名のようで、ほかでは「東京切り」が一般的だと思います。
「東京切り」は鮭を横に置いて、包丁で縦に細かく切りますが、「秋田切り」は包丁を横にして木の棒のように太く長く切ります。
刺身用サーモンがブロックで売られていますが、あんな感じに横に棒状に切ったものが「秋田切り」です。

御当地おにぎり、山口だと萩の「わかめおにぎり」・「しそわかめおにぎり」が有名だと思います。
あと、山口には郷土料理で「きなこおにぎり」もあるようなのですが、これがいくらネットで検索しても有力な情報が出て来ず、あきらめかけています…。
また山口のおにぎり情報が得られたら、御報告しますね!

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