ビッグ錠先生の世界20 -浅草すしや通り「十和田」・「美味しんぼ」海原雄山も絶賛した「暮坪そば」・浅草のおかみさんと浅草吉原の文化-
ビッグ錠先生おすすめのお店
2025年10月12日、神奈川県藤沢市湘南台で開催された「漫画飯オフ会」・「ビッグ錠誕生日祭2025」に参加しました。
(「ビッグ錠誕生日祭2025」チラシ)
イベント終了後、ビッグ錠先生、シャンソン歌手の浜野ケイ子さん、そしてアコーディオン奏者のえびさわなおき。さんと私の4人でお話する機会がありました。
その際、ビッグ錠先生が私に「明日は何か予定があるの?」と聞かれたので、私は「いえ、特に決めてません。東京を散策して(広島へ)帰ろうかなと思っています」とお答えしました。
するとビッグ錠先生から、
「だったら、浅草のそば屋「十和田」を訪ねるといいよ。六区に近い「すしや通り」のお店。おかみさんが僕のことよく知ってるから」
とお話がありました。
浅草、すしや通り、そば屋、十和田、おかみさん…キーワードを頼りに、ネットでお店を調べました。
「浅草は帰りに利用する羽田空港へのアクセスも良好だし、明日お店へ行ってみよう」と心に誓いました。
浅草すしや通りと浅草「十和田」
翌日、「かっぱ橋道具街」を散策した後、浅草「すしや通り」に到着しました。
(浅草すしや通り商店街)
「本当に寿司屋さんが多い!」というのが訪れた感想です。
「すしや通り」という名称は、明治時代、雷門通りから六区に通ずる延長100mの通りに18軒もの寿司屋が連なったことに由来しています。
この「すしや通り」に、手打ちそばのお店「十和田」があります。
(十和田(浅草すしや通り))
お店に入ろうとした時、お店の中から1人の女性が出て来られました。
お店の服を着ておられたことから、私は「もしかしてこの方がおかみさんでは」と思い、とっさに「あっ、おかみさんですかー?」とお尋ねしました。
するとその方が「はい、わたしがおかみさんです」とお答えいただきました。
本当に「十和田」のおかみさんだったから良かったものの、今思い出しても、よく言えたなぁと恥ずかしくなってしまいます(笑)
でもこの会話のおかげで、その後もおかみさんとお話しすることが出来ました。
おかみさんに、「ビッグ錠先生にこちらのお店とおかみさんを紹介していただきました」とお話しすると、おかみさんは嬉しそうに「ビッグ錠さんには浅草のまちおこしでお世話になっていますから」とおっしゃいました。
「十和田」の暮坪そば・一品料理
【暮坪そば】
席に着くと、おかみさんがお越しになり、おすすめのメニューを教えてくださいました。
そんなおかみさんのアドバイスをそっちのけで、私の目が釘付けになったメニューがありました。
「暮坪そば(くれつぼそば)」です。
(「暮坪そば」の紹介文)
「暮坪カブ」のおろしが薬味に添えられたそばです。
「暮坪カブ」は岩手県遠野市の伝統野菜で、グルメ漫画「美味しんぼ」32巻の「第4話 薬味探訪」でも紹介されています。
(岩手県遠野の名産「暮坪カブ」)
(雁屋 哲・花咲アキラ「美味しんぼ 32巻」小学館(ビッグコミックス)から一部引用)
カブは一般的に丸くずんぐりした形をしていますが、暮坪カブは長細い大根のような形をしています。
美食俱楽部の海原雄山も驚いた伝統野菜です。
(海原雄山「暮坪そば」命名)
(雁屋 哲・花咲アキラ「美味しんぼ 32巻」小学館(ビッグコミックス)から一部引用)
蕎麦と暮坪カブをおろした薬味の組合せに感動した海原雄山は、これを「暮坪そば」と名付けました。
「グルメ漫画」というつながりや、あの海原雄山を唸らせた料理に興味を持ち、暮坪そばを注文しました。
おかみさんがお店の方に「暮坪そばって、今日はもう売切れじゃなかったっけ?」と確認してくださったところ、「いえ、まだあります」とのお返事だったので、ホッと一安心しました。
そばが出来上がるのを待っていると、おかみさんが再びやって来られ、「これをどうぞ」と冊子をプレゼントしていただきました。
(浅草タウン誌「おかみさん」第40号)
私はあわててお代をお支払いしようとしたところ、「いいのよ。ビッグ錠さんにはお世話になっているし」とおっしゃいました。
その後も申し訳ないからとお金をお支払いしようとしたのですが、断られたため、お言葉に甘えて頂戴しました。
おかみさんの心意気の良さを見せていただいたとともに、これもビッグ錠先生のおかげだと感謝しました。
感動の余韻が冷めないうちに、料理が運ばれてきました。
(暮坪そば)
こちらが「暮坪そば」です。
お盆の手前に、そばつゆと一緒に、薬味として「暮坪カブおろし」と「刻みねぎ」が用意されていました。
(暮坪カブおろし)
こちらが暮坪カブをすりおろした「暮坪カブおろし」です。
もし私が何も知らずにこれを食べたら、間違いなく「大根おろし」だと思うことでしょう。
「美味しんぼ」で、美食俱楽部の海原雄山は暮坪カブおろしを食べて、次のような感想を述べています。
「しかし、辛味大根と決定的な違いがあるぞ…」
「香りはひなびて みょうに郷愁を誘う…」
「それは土の香り…」
「これは…見た目が大根おろしに似ているが、大根ではない…」
「もしかすると これはカブか」
海原雄山は、こうして見事に大根おろしではなくカブおろしであることに気付いたのです。
私にはこうしたワインのソムリエのような味わい方も説明もできませんが(笑)、ただ1つ気付いたのは、大根おろしのように水分をたっぷり含んでフワッとした食感ではなく、カブで繊維が詰まっている分、シャリシャリした食感に近かったということです。
だから、めんつゆに入れても味が薄まらず、そばの風味を引き立てる薬味になっていると思いました。
辛味の中にほのかな甘みも感じる薬味でした。
そばも、シャッキリ、つるんとした食感で、のどごしがよく、上品な味わいのそばでした。
【海老天ぷら】
そばと一緒に、単品料理もいただきました。
(海老天ぷら)
「海老の天ぷら」です。
カラッとサクサクに揚げられており、天ぷらもお店の看板メニューであることがわかりました。
【わさびの茎 醤油漬】
(わさびの茎 醤油漬)
こちらは「わさびの茎 醤油漬」です。
メニューに「静岡産わさびの茎は女将イチおし!」とあったので、いただきました。
シャキシャキした食感で、醤油のマイルドな味わいの後に、わさびの辛味がツンとくる一品でした。
【揚げにんにく】
お店のメニューの中で、「暮坪そば」と同様に気になる一品料理がありました。
(青森県田子産「揚げにんにく」案内)
にんにくの産地・青森の「揚げにんにく」です。
こちらのお店では、岩手・遠野の「暮坪カブ」、青森の「にんにく」、秋田の「いぶりがっこ」など東北の食も味わうことができます。
この「揚げにんにく」をいただきました。
(揚げにんにく)
なんと、皮付きのにんにくを1玉丸ごと油で揚げた一品が提供されました。
味噌が添えられています。
どうやって食べるのかと思いましたが、にんにくを一片ずつ皮ごと口に含むと、茹でた枝豆のようにつるんとにんにくが飛び出してきて、簡単に食べることが出来ました。
にんにくが中までしっかり加熱され、とろけるような食感でした。
ほんのり塩味が効いているので、そのままでも美味しく、味噌をつけると深みが増しました。
ボリューム満点で、お得感もある、コウジ菌イチオシ!の一品です。
【りんごジュース】
(りんごジュース)
りんごジュースもいただきました。
青森を訪問した際、りんごジュースでハズレだったことはなかったのですが、このりんごジュースも当たりでした。
「そば屋なら、お酒(日本酒)だろう!」
お酒に弱い私に、貴重な御意見ありがとうございました(笑)
「十和田」とグルメ漫画家
店内には、グルメ漫画家のサイン・作品も展示されていました。
(「味いちもんめ」メンバーの羽子板)
倉田よしみ先生が描かれた「味いちもんめ」メンバーの羽子板が飾られていました。
そしてこんなお酒も…
(ミッドナイト・ジョー)
「ミッドナイト・ジョー ビッグ錠ラベル」!!
(ミッドナイト・ジョー(快盗くいしん坊))
「俺流!絶品めし Vol.28」ぶんか社 p177の一部を引用・加工
「ミッドナイト・ジョー ビッグ錠ラベル」は、スコットランドのスペイサイド(スペイ川流域)・オルトモア蒸留所で11年熟成されたシングルモルトウイスキーです。
このお酒からも、ビッグ錠先生とお付き合いされている様子が伺えました。
浅草おかみさん会とおかみさん
後日、おかみさんからいただいた浅草タウン誌「おかみさん」を読ませていただくと、おかみさんが「十和田」のおかみさんだけでなく、「浅草おかみさん会」の会長や理事長としても活躍されていることがわかりました。
浅草タウン誌「おかみさん」、浅草サンバカーニバル、浅草ニューオリンズ・ジャズフェスティバル、浅草リバーサイドリレーマラソン、歌舞伎、花柳、演劇、能登半島地震の復興支援など、様々な分野で中心的人物として活躍されている様子が伺えました。
(浅草タウン誌「おかみさん」第40号(いい男だねぇ・勝俣州和さんとおかみさんの対談))
勝俣州和さんとビールで乾杯されているのがおかみさん(冨永照子さん)です。
吉原の遊郭・花魁
浅草タウン誌「おかみさん」で、蔦屋重三郎(蔦重)と浅草・吉原(遊郭(ゆうかく)・花魁(おいらん))の話が特集されていました。
おかみさんは「人を惹きつける街には、色気といかがわしさも必要」とおっしゃっています。
ちょうどその日、お店を訪問する前に、私は上野にある東京藝術大学大学美術館で「藝大コレクション展2025 名品リミックス!」を鑑賞したのですが、その展覧会で一番印象深かった作品が高橋由一(たかはし ゆいち)さんの「花魁」でした。
(高橋由一「花魁」)
高橋由一さんが、明治5(1872)年、次第に廃れていく吉原の花魁風俗を記録に留めるために描いた作品です。
高橋由一さんは、花魁の装いを化粧や衣装の細部に至るまで丹念に描かれました。
ただ、その絵はリアルさゆえに、これまでの錦絵の類型化された美人の姿とは異なる画風となりました。
そのため、モデルをつとめた四代目小稲さんは完成作品を見て、「私はこんな顔じゃありません」と泣いて怒ったのだとか(笑)
おかみさんのお話から、この「花魁」の絵やエピソードを思い出しました。
まとめ
浅草のまちおこしに御尽力されているおかみさん、そしてビッグ錠先生。
お二人のおかげで、浅草で素敵なひとときを過ごせ、浅草の文化や人情に触れることが出来ました。
<関連サイト>
「浅草すしや通り商店街」(東京都台東区浅草一丁目)
「十和田(浅草すしや通り)」(東京都台東区浅草1-13-4)
「東京藝術大学 大学美術館」(東京都台東区上野公園12-8)
<参考文献>
協同組合浅草おかみさん会「おかみさん 第40号(令和7年5月27日発行)」
雁屋 哲・花咲アキラ「美味しんぼ 32巻」小学館(ビッグコミックス)













































































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