魚柄仁之助先生の世界8 -魚柄先生の御自宅訪問(梅酒の梅・酢漬けビーツ・ビーツ葉の佃煮・薄切り干し大根煮・しそ塩・ミョウガ)-
魚柄先生との再会がかなう
2025年9月23日、広島から飛行機を利用して、東京へ行きました。
当日の朝、羽田空港に到着し、電車で都心へ向かっていた際に、魚柄先生から私を含めたミズホ学級のLINEグループにメッセージが届きました。
そこで私は、そのメッセージの感想とともに、「今、東京(羽田)に着き、今日明日は東京にいます」と魚柄先生や皆さんにお伝えしました。
あわせて、私が東京に着いたのを見計らったかのように絶妙なタイミングで魚柄先生からメッセージが届いたので、「(東京におられる魚柄先生が)監視カメラで私の行動を確認されているのでは」と冗談もお伝えしました。
すると、しばらく時間を置いて魚柄先生から、
「数日前にビーツの酢漬けを作りましたので、よろしかったらお土産にお持ち帰りください。今日明日は自宅にいますから、もし寄れるのでしたら電話ください」とお返事をいただきました。
「これは魚柄先生と再会できるチャンスだ」と思った私は、新橋駅で下車し、魚柄先生にお電話しました。
そして魚柄先生へ同日15時に御自宅に伺うことをお伝えし、実際にお会いできることとなりました。
2023年11月25日に開催された「ミズホ学級ファイナル講演会」でお会いして以来、約2年ぶりの再会となります。
LINEや電子メールでメッセージをやり取りしたり、魚柄先生が作られた乾物などを郵送で送っていただいたりとお付き合いは続いているものの、直接お会いする機会はもうないのではと思っていただけに、喜びはひとしおでした。
何もお土産らしきものを持参していなかった私は、地下鉄で銀座へ向かいました。
銀座にある広島のアンテナショップ「TAU(タウ)」に行けば、広島のお土産が売られているからです。
(ひろしまブランドショップ TAU)
もみじ饅頭、音戸ちりめん、藻塩といった広島土産を買いました。
(広島土産を詰めたTAUの袋)
袋にお土産を詰めてもらったのですが、銀座で買ったことがバレバレです(笑)
新宿で昼食をとり、カフェで少し時間調整した後、都内の魚柄先生の御自宅へ向かいました。
魚柄先生の御自宅で時間を忘れて会話を楽しむ
スマートフォンの地図アプリに魚柄先生の御自宅の住所を入力し、近くなったところで魚柄先生へ近くに着いたことを連絡しました。
しばらくして、普段着に雪駄を履いた姿の魚柄先生が出てこられました。
魚柄先生に導かれるがままに、御自宅へ伺いました。
途中、お庭で栽培されているミョウガを見せてもらいました。
私には草が生い茂っているだけにしか見えなかったのですが、しゃがんで地面を覗くと、確かにミョウガがなっていました。
(魚柄先生御自宅のミョウガ)
玄関まで来た時、魚柄先生から「どうぞ上がってください」とおっしゃっていただいたのですが、私は「いえ、ここでお土産をいただいたら失礼します」とお答えしました。
それでも「(奥の部屋から)どうぞ」とおっしゃっていただいたので、「それでは少しだけお邪魔します」と言って、中へ入らせていただきました。
魚柄先生自作の大きなテーブル席に案内され、座ると、お茶とおつまみを用意してくださいました。
(梅酒の梅・酢漬けビーツ・ビーツ葉の佃煮・薄切り干し大根煮)
写真左から、梅酒から引き上げた梅、酢漬けビーツ、ビーツの葉の佃煮、薄切り干し大根煮です。
箸も手作りだと思います。
お茶や手作りのおつまみをいただきながら、魚柄先生といろんな食の話で盛り上がりました。
その話をいくつか御紹介します。
○わらびの乾物
塩を強くして保存性を高めれば、わらびも乾物にできる。
○和歌山の痩せたサンマとサンマ寿司
寒流にのって三陸沖から南下し、和歌山で採れるサンマは身が引き締まり、脂がほどよく抜けているため、寿司に適していた。
すし酢の代わりに温州みかんの果汁が使われた。
○人手(担い手)不足と農業問題
島しょ部では、みかんが生っていても収穫する人がいない状況も見受けられる。
○民俗学者・宮本常一さんと「塩の道」
とてもしょっぱい塩鮭は、塩を運ぶ目的で作られた。
能登の「揚浜式塩田」と瀬戸内の「入浜式塩田」。
長野県の「塩尻」という地名や、福井県敦賀市と京都市を結ぶ鯖街道に見られる「塩の道」。
○かんぴょうとナタ
かんぴょうをナタで厚めにむくとシャキシャキ感がでる。
○カマの草刈りとカマの研ぎ方
カマによる草刈りの方法と、カマの研ぎ方を教えてもらう。
○ビーツの調理方法
ビーツを水で煮ると真っ赤な液体になる。しっかり煮た後で料理の食材として用いる。
○冷蔵庫のない時代(状況)の保存方法
カンボジアの市場では冷蔵庫がなく、腐敗を防ぐため、動物は生きた状態で売られ、魚は水中で泳いだ状態で売られていたことを魚柄先生に報告。
○米の高騰と備蓄米、タイ米
備蓄米やタイ米でも炊き方次第で美味しく食べられる。
○液卵・乾燥卵の輸入・流通と食品産業
液卵や乾燥卵は戦前から開発されていた。
海外からも輸入しており、加工食品に使われている
○囲炉裏と火力調節、調理機能と暖房の機能、いぶりがっこと凍み大根
囲炉裏は家屋の暖房器具であったと同時に、調理器具でもあった。
かまどがなくても囲炉裏はある家が多かった。
東北地方では、冬場に大根の水分が凍って「凍み大根」になってしまうため、大根を燻製させて水分を抜き、漬物にする「いぶりがっこ」が誕生した。
○北海道のジャガイモ(餅)とイカの塩辛
北海道では大量に採れたイカを保存するため「イカの塩辛」を作り、タンパク源とした。
イカの塩辛は炭水化物のジャガイモや、保存性を高めた「いももち(ジャガイモ餅)」と一緒に食べた。
○北海道とジンギスカン
軍隊が軍服に羊毛が必要となったため、北海道で羊が飼われるようになり、その副産物の肉をジンギスカンとして食べられるようになった。
○イギリスのウスターソースと日本
イギリス発祥のウスターソースは、日本では醤油と同様に料理や素材につけて(かけて)食べるのが一般的となった。
日本のかけ醤油の使い方がベースとなっている。
○ハヤシライスの素、美人の素
昔は「○○の素」という商品が流行った。エスカレートして「美人の素」と呼ばれる化粧品まで販売された。
○牛鍋の調理と肉を柔らかくする方法
昔の牛肉は今と比べて肉が固かったと思われるが、その肉を柔らかくするため「パパイン」と呼ばれるタンパク質分解酵素が使われた。
○融米、炭で濾過(ろか)した日本酒
日本酒の製造法には、酒米を無駄なく使い切るため、酒米を溶かして作る「融米(ゆうまい)造り」という方法や、炭で濾過しクリアな味に仕上げる方法もある。
○かつての港の食料事情
かつては港に傷んだ輸入野菜が積み上げられていた時代もあった。こうした背景から食の安全・安心意識が高まった。
○戦後日本の小麦粉・牛乳輸入とアメリカのララ物資
○日本と海外の食料(食糧)政策・食料自給率の違い
○食品添加物と日本の食文化
食品添加物が多用されるようになったのも日本の食文化の1つと言える。
○著書「ひと月9000円の快適食生活」の意味
「ひと月9000円」は1か月を30日、1日300円で計算したもの。実際はもっと少額で済んだ。
○里芋とお月見(月見団子)
団子として丸い形の里芋や「むかご(球状の芽)」も使われた。
○「かつお羊羹」
かつて鰹のサク(短冊状の切身)に大量の砂糖をまぶした「かつお羊羹」という保存食が考案された。
○魚柄先生の古道具屋時代の思い出話
○海外のものを日本人に合わせて取り込んだ日本人の柔軟性
○「和食」の定義
ヨーロッパのカツ(コートレット)とインドからイギリス経由で伝わったカレーから誕生した日本の「カツカレー」も「和食」の1つと呼べるのではないか。
○食の偏差値
食の知識を得て選り好みするようになった人と、食の知識は乏しいが何でも美味しく(ありがたく)食べられる人では、どちらが食の偏差値が高いと言えるか。
○お金が大事か、お金で買えないものが大事か
魚柄先生も私も後者が大事という意見で一致。
高額なお金を払って価値あるものを買うのではなく、身近なものを価値あるものへと作り替える能力こそ生きる術。
中でも面白かったのが、魚柄先生が秋葉原や隅田川でのホームレスの皆さんの暮らしを研究されていた時のお話でした。
魚柄先生はホームレスの仲間に入れてもらって、すっかり仲良くなり、残飯として捨てられた肉や野菜で作った焼肉や、日雇い仕事で稼いだお金を集めて買った焼酎などを振る舞ってもらったそうです。
その際、とあるホームレスの方が魚柄先生に対し「仕事は何やってるの?」と聞かれたらしく、新聞や雑誌の連載記事を執筆しておられた魚柄先生は「新聞や雑誌の仕事をしています」と答えられたそうです。
するとそのホームレスの方は「新聞や雑誌?ダメダメ、空き缶の方が高く売れるよ。特にアルミ缶がおすすめ」と教えてくれたそうです(笑)
食べること(を研究すること)が好きな2人が、食べるのも忘れて食の話題で盛り上がりました。
会話の途中、魚柄先生がお得意のギターを手に取り、ギター演奏も披露してくださいました。
魚柄先生がギターで讃美歌「いつくしみ深き」を演奏されたので、私もそれに合わせて歌いました。
気付けばすっかり夜が更け、お庭から虫の音が聞こえてきました。
やがてトイレに行きたくなり、トイレをお借りするため席を立ちました。
その際、ふと目の前に柱時計が見えたのですが、時計の針は夜10時30分を過ぎていました。
昼の3時から7時間半以上、2人はトイレも行かず、ひたすら食の話で盛り上がったことになります。
「えっ、いつの間に…」と我に返った私は、トイレを済ませた後、おいとますることにしました。
たくさんお土産をいただき、外まで見送っていただきました。
夜遅くなったことをお詫びし、感謝の気持ちを込めて深々とお礼を申し上げたあと、宿泊先へと向かいました。
魚柄先生からいただいたお土産
今回、魚柄先生からいただいたお土産は「ビーツの酢漬け」と「しそ塩」、そして「ミョウガ」です。
(ビーツの酢漬け・しそ塩(実・粉末))
「ビーツの酢漬け」は、長野の畑で収穫されたビーツを煮て、酢漬けにしたものです。
「しそ塩」は、赤しそやしその実を約1年塩漬けして、それをさらに天日干しにしたものです。
市販のものとは異なり、無糖(赤しそ・しその実と塩のみ)なのが特徴です。
薬物のようにも見える「しそ塩」の袋詰めと、怪しいほど赤い「ビーツの酢漬け」。
空港の手荷物検査で捕まりはしないかとドキドキしました(笑)
(ミョウガ(小皿))
「ミョウガ」は刻んで醤油をかけていただきましたが、刺激的な辛さでした(笑)
まとめ
今回、魚柄先生がラインでメッセージをくださったのも、その時、私が東京(羽田)に着いたとお返事したのも、それを受けて魚柄先生が声をかけてくださったのも、全て偶然の出来事でした。
でもその偶然をチャンスととらえ、お互いの都合も一致したことで、今回の再会が実現しました。
こうした出来事こそ、お金の力で実現できるものではない典型例だと思います。
とても思い出深い東京訪問となりました。
今回お会いできたことをステップに、またいつか魚柄先生とお会いできないかなと欲張りなことを考えています(笑)
最後にこの場をお借りして、「魚柄先生、どうもありがとうございました!」
<関連サイト>
「ひろしまブランドショップ TAU」(東京都中央区銀座1-6-10)
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これだけの情報量、全部記憶しているとすれば驚異的ʘ‿ʘ
それよりまず、7時間半以上トイレを我慢する自信がありません( ̄∇ ̄)
講師自ら椅子・テーブルを設営、そして誰よりも遠方から駆けつけた弟子!
心と心が響き合った、お金の力だけでは実現できない貴重な体験でしたね!
そして今回の再会で、師弟の絆は更に深まった!
そんな印象を受けました(^_^)
コメントを書いた後で、じっくり拝読したいと思いますm(_ _)m
投稿: なーまん | 2025年10月 5日 (日) 13時09分
なーまん様
なーまんさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
いろんなお話を御紹介しましたが、これは決して記憶力が良いわけではなく、後から「あんなこと話したな」とスマートフォンのメモ帳に思い出しながらメモしただけです。
ただ、7時間半もトイレを意識しなかったのは、今考えても不思議です。それだけ夢中だったからだと思います。
でもその後、魚柄先生のお宅でトイレをお借りするなんて考えてもいませんでしたが、我慢できなかったのが情けないところです(^^ゞ
魚柄先生も、「長くなっているな」と感じつつ、お話をしてくださったのだと思います。
また機会があれば、魚柄先生とお会いして、食のお話を伺いたいです。
師弟関係と言えば、魚柄先生から怒られそうですが…(笑)
今回は長々とした文章中心になりましたが、お付き合いいただき、ありがとうございました。
投稿: コウジ菌 | 2025年10月 5日 (日) 19時14分
機転を働かせて広島土産をアンテナショップで調達!
東京って便利なところですねえ(笑)
いろいろ出てきていましたが、かつお羊羹が一番気になりました。
生の魚に砂糖をまぶしたら、どんな味になるんだろう…
魚を保存するなら塩がいいように思うけど、あえて砂糖なのは、砂糖の方が保存が効くってことなのでしょうか?
投稿: chibiaya | 2025年10月 5日 (日) 21時29分
chibiaya 様
chibiayaさん、こんばんは。
いつもコメントいただき、ありがとうございます。
そうそう、chibiayaさんもよく御存知のTAUでお土産を調達しました(笑)
TAUは、地元でも珍しいものが普通に売られてたりするので、本当に便利なお店です。
「かつお羊羹」ですが、これは鰹の水分を無くし、保存性を高めることを目的に作られた料理のようです。
(魚)肉の水分を飛ばすには、大量の塩がまぶされるのが普通ですが、砂糖をまぶしても同じ効果が得られます。
それでも、「鰹の身に砂糖をまぶすと、身全体が甘くなってしまうのでは」と思ってしまいますが、実際に作ってみられた魚柄先生によると、「鰹の身の表面だけ甘くなり、中までは浸透しなかった」そうです。
魚柄先生が召し上がったところ、「ほんのり甘い鰹の刺身で、醤油をつけて食べると意外と美味しかった」とのことでした。
つまり、鰹から羊羹のようなお菓子を作るのではなく、冷蔵庫がない時代に鰹の刺身の保存性を高めるために鰹の身に砂糖がまぶした料理だったようです。
御興味があればお試しください(笑)
投稿: コウジ菌 | 2025年10月 5日 (日) 22時52分