沖縄の食文化探訪7 沖縄の「ぜんざい」-富士家ぜんざい・黒糖ぜんざい 「沖縄ぜんざい」と「かき氷」の違いについて-
沖縄のぜんざい
「ぜんざい」と言えば、小豆を煮て砂糖で甘みをつけた温かい(つぶあんの)汁をイメージされる方が多いと思います。
ところが、沖縄の「ぜんざい」は、この温かい「ぜんざい」とは大きく異なります。
沖縄のぜんざいは、甘く煮た金時豆(または小豆)に冷たい「かき氷」をのせたものなのです。
お店によっては、かき氷に豆の煮汁・黒糖・抹茶などのシロップやミルクがかけられたり、トッピングとして白玉だんごや紅芋・田芋などがそえられたりします。
沖縄ぜんざいは、ぜんざい・かき氷店のほか、飲食店のデザートメニューや沖縄そば店のサイドメニューとしても用意されています。
そして、このぜんざいを通年食べられるお店も数多くあります。
ちなみに、温かい「ぜんざい」は、「ホットぜんざい」として区別されているようです。
今回は、そんな沖縄ぜんざいの魅力を御紹介したいと思います。
「ぜんざいの富士家」の「富士家ぜんざい」
沖縄のぜんざいを求めて、那覇市泊にある「ぜんざいの富士家 泊店」を訪問しました。
(ぜんざいの富士家(店舗))
賑やかな壁画を眺め、ワクワクしながらお店に入りました。
沖縄ぜんざいのお店なので、沖縄ぜんざいやかき氷が年中提供されています。
また、フードメニューとして、タコライス、タコス、沖縄そばなども用意されています。
私は沖縄ぜんざいの定番メニュー「富士家ぜんざい」を注文しました。
しばらくして、テーブルに「富士家ぜんざい」が運ばれてきました。
(富士家ぜんざい(別盛り))
かき氷は富士家オリジナルの青いタンブラー容器に、金時豆の煮豆と白玉だんごはガラスの器に、別々に盛られています。
煮豆と白玉だんごの器の奥には、「亀せんべい」と呼ばれる揚げせんべいが添えられています。
テーブルには、かき氷と煮豆を別盛りにする理由が紹介されていました。
(「なぜ、この容器に氷を入れるのか」)
「豆の煮汁から作った手作りの氷を最後までシャリシャリのまま食べてもらいたい思いから」
「従来の器だとシャリシャリ氷が溶けるのがどうしても早いため」
「今回、抜群に保冷性のあるハイドロフラスク社のタンブラー容器に氷を入れました」
「豆とモチを氷が入ってる容器に」
「三、四回に分けてゆっくり、くつろぎながらお召し上がりください」
スプーンでかき氷をすくい、豆とモチが盛られた器に合わせました。
(富士家ぜんざい)
今になって気付きました。
「盛り付けが逆だーっ(笑)」
豆とモチを、かき氷の入ったタンブラー容器へ移すよう説明書きがあるのに、私はその逆をしています。
沖縄のぜんざいに不慣れな私は、豆と白玉だんごの組合せこそ「ぜんざい」で、それにかき氷を足す感覚で盛り付けたのです。
手作りの氷を最後までシャリシャリのまま食べてもらうための方法なのに…
かき氷は、豆の甘い煮汁を凍らせた氷を削ったもので、これだけでも十分美味しいものでした。
そのため、改めてシロップをかける必要がなく、豆とモチが盛られた器も、シロップの量はごくわずかでした。
だからこそ、お店の説明書きにも、かき氷のトッピングとして、かき氷の入ったタンブラー容器に豆とモチを加える方法を紹介されているのでしょう。
初めてのことばかりで、色々戸惑いましたが、甘い金時豆や白玉だんごとかき氷は、相性が抜群に良いことがわかりました。
温かいぜんざいと比べて、あっさりとした甘さなので、「(温かい)ぜんざいは甘すぎて…」という方にもおすすめです。
食べ終えて、くつろいでいると、壁に面白い説明書きが掲示されていました。
(ぜんざいの富士家と不二家のペコちゃん)
「フジヤといっても(ペコちゃんの不二家)ではありません」
「ぜんざいの富士家です。」
確かにどちらもスイーツを中心とした店舗・飲食店を展開されていますね(笑)
黒糖ぜんざい
嘉手納町(かでなちょう)にある「道の駅かでな」を訪問しました。
(道の駅かでな)
「道の駅かでな」は、飲食・物販・休憩施設だけでなく、隣接する嘉手納基地を一望できる展望所や、嘉手納基地の概要や嘉手納町の歴史が学べる展示室も設置されています。
(嘉手納基地(道の駅かでな展望所))
4階の展望所から眺めた嘉手納基地の様子です。
私が訪問した日は日曜日だったこともあり、戦闘機は飛んでいませんでしたが、嘉手納基地の広大な滑走路や敷地に圧倒されました。
展望所と同じ4階に、スイーツ・軽食のお店「スカイラウンジ」があります。
(道の駅かでな「スカイラウンジ」)
「ぜんざい」の旗が立っていました。
「(訪問した)3月でもかき氷(ぜんざい)があるとは、さすが沖縄」と思いつつ、吸い寄せられるようにお店に入りました。
メニュー表を見ると、ぜんざいは「黒糖ぜんざい」と「黒糖ミルクぜんざい」の2種類が用意されていました。
そこで「黒糖ぜんざい」を注文しました。
(黒糖ぜんざい)
「何というボリューム!」
思わず笑ってしまうほど大きなかき氷でした。
かき氷に黒糖シロップがかけられ、頂点に甘い金時豆がトッピングされています。
「せっかくなので外で食べよう」と、お店を出て、再び展望所へ向かいました。
(黒糖ぜんざいと嘉手納基地)
展望所のテーブルでいただいた「ぜんざい」は格別でした。
黒糖のシロップのかき氷は初めてで、注文の時点では「金時豆だけのぜんざいもあれば、そちらを選ぶのだけど…」と思っていたのですが、実際にいただくと、その考えは一変しました。
黒糖は「重くて、クセがある」イメージがあったのですが、かき氷にかけると「軽くて、カラメルに似た香ばしさがある」シロップに大変身するのです。
黒糖シロップと金時豆の相性も抜群でした。
食べ進めると、カップの底に金時豆と白玉が入っていました。
(黒糖ぜんざい(底の様子))
これは嬉しいサプライズでした。
(黒糖ぜんざい(金時豆と白玉だんご))
前半は黒糖シロップのかき氷を、後半は金時豆や白玉だんごと合わせたかき氷を楽しむことが出来ました。
最後に、黒糖シロップがほどよく溶け込んだ金時豆や白玉だんごをいただきましたが、これまた、黒糖の風味が金時豆の煮汁と見事にマッチし、最後の最後まで美味しくいただけました。
「沖縄ぜんざい」と「かき氷」の違いについて
今回、初めて沖縄の「ぜんざい」をいただいて、かき氷と黒糖シロップの相性がとても良いことがわかりました。
また、宇治金時に使われるような「小豆の粒あん」ではなく、「金時豆とその煮汁」を使ったかき氷だと、(金時豆は煮崩れないので)甘い金時豆そのものの美味しさを味わえることも理解出来ました。
そして、このことに関連して気付いたことがあります。
沖縄ぜんざいは、「ぜんざい」という名が示すとおり、金時豆(小豆)とその煮汁、白玉だんごがメインで、それを冷やして食べるために、「かき氷」が(トッピングとして)盛られて完成されたお菓子ではないかということです。
つまり、沖縄ぜんざいは、冷やしぜんざいにかき氷が追加されたものであり、かき氷の一種として考案されたものではないという考え方です。
この考え方だと、かき氷にあんこをトッピングした「氷あずき」や「宇治金時」とは全く別物のお菓子となります。
でもこのように考える方が、「氷あずき」ではなく「ぜんざい」と呼ばれることへの説明がうまくつくのです。
まあ、美味しければそれで良いのですが、沖縄ぜんざいは、温かいぜんざい(ホットぜんざい)に比べて、さっぱりとした甘さなので、それだけ幅広い方々にお楽しみいただけるお菓子だと思います。
沖縄ぜんざい。機会があれば、御賞味ください。
まとめ
今回の沖縄県訪問は1泊2日とわずかな期間でしたが、月桃(サンニン)や田芋(ターム)を使った料理・お菓子、ムーチー・くんぺん(こんぺん)・ポーポー・レモンケーキ・ヒラミーレモンケーキなどの郷土菓子、沖縄の「ランチ」、いなり寿司とチキン、そして今回の「ぜんざい」など、様々な沖縄の食とめぐり合うことが出来ました。
沖縄の食を中心とした旅となりましたが、レンタカーやゆいレールでの移動途中に、いくつか観光スポットにも立ち寄りました。
立ち寄ったのは、コザの街並み(沖縄市)、西海岸リゾート(恩納村)、美浜アメリカンビレッジ(北谷町)、国際通り・首里城(那覇市)、平和祈念公園・ひめゆりの塔(糸満市)などです。
(アメリカンビレッジ(デポアイランドシーサイド))
こちらは、北谷町(ちゃたんちょう)にある「美浜アメリカンビレッジ」の夜景です。
(アメリカンビレッジ(デポセントラル))
多くの人々がショッピングや飲食を楽しんでおられました。
ゆいレールで首里城公園へも行きました。
(守礼門(首里城公園))
守礼門(しゅれいもん)や首里杜館(すいむいかん)などを見学しました。
(ゆいレール(そらとぶピカチュウデザイン)・牧志駅)
ゆいレールの車内チャイムは、沖縄の代表曲・沖縄ゆかりの曲を中心に構成されており、心が和みました。
私は県庁前駅で流れるメロディ「てぃんさぐぬ花」が沖縄らしくて好きです。
また機会があれば、沖縄を訪問し、沖縄の食文化を探訪したいと思います。
<関連サイト>
「ぜんざいの富士家」(沖縄県那覇市泊2-10-9)
「道の駅かでな」(沖縄県中頭郡嘉手納町屋良1026-3)
「アメリカンビレッジ」(沖縄県中頭郡北谷町字美浜)
「首里城公園」(沖縄県那覇市首里金城町1-2)
<参考文献>
芝崎本実 監修「あんこのことがすべてわかる本」誠文堂新光社
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