日本各地の食文化

2025年7月13日 (日)

秋田の食文化探訪2 -比内地鶏・ハタハタ・がっこ・あねっこ漬け・ばっけ・きりたんぽ鍋・秋田産枝豆のコロッケ・秋田産りんごジュース-

 2025年3月7日、山形県鶴岡市の鶴岡駅から「特急いなほ」に乗り、秋田県秋田市を訪問しました。

(特急いなほ7号・秋田駅到着)
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 秋田駅に到着した「特急いなほ7号」です。

 秋田駅から秋田市の繁華街「川反(かわばた)通り」沿いにある郷土料理店「お多福」へ行き、秋田の郷土料理を堪能することとしました。

 こちらのお店は、約7年前に一度訪問したことがあり、その際に店主さんから秋田の郷土料理の話を中心にいろんなお話を伺うことができ、楽しいひとときを過ごした思い出があります。

 そのため、また秋田市へ行くことがあればぜひ再訪したいと思っていたのですが、それが今回実現しました。

 予約時間を迎え、少し緊張気味にお店に入りました。

(「お多福」店舗)
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 前回と同様、カウンター席に案内していただきました。

 店主さんと板前さんを前に、「実は約7年前にも来たことがあるのですが、その時もお二人とお話しさせていただきました。またお会いできて嬉しいです」とお話しすると、店主さんが笑いながら「ずっとこのメンバーですから」とおっしゃいました。

 緊張がほぐれ、また同じ雰囲気で食事ができることを幸せに思いつつ、料理をいただきました。

 それでは、今回味わった秋田の郷土料理を御紹介します。


トマトジュース

 飲み物として、トマトジュースをいただきました。

 トマトジュースはこどもの頃から苦手意識を持っていたのですが、塩無添加ということで注文してみました。

(トマトジュース(塩無添加))
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 「あっ、これなら甘くて美味しい」

 トマトの旨みと甘みが凝縮された濃厚なトマトジュースでした。


お通し三種

 「お通し」を御用意いただきました。

(お通し三種)
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 今回のお通しは「魚のマヨネーズ和え」、「なめ茸」、「糸こんにゃくのきんぴら」でした。

 糸こんにゃくのきんぴらには、魚卵がまぶされており、美味しくいただけました。


お造り盛り合わせ

 続いて、お造り(刺身)が用意されました。

(お造り盛り合わせ)
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 写真奥がソイ、手前右側がヒラメ(昆布漬け)、手前左側がシマアジです。

 ソイは北海道や東北の日本海側で多く漁獲される、高級白身魚です。

 脂がのって、プリプリとした食感の魚でした。

 ヒラメは昆布漬けで、淡白な味わいの中に、昆布と白身の旨みを感じました。

 シマアジは肉厚で、噛みしめるほどに旨みが口の中いっぱいに溶け出しました。


比内地鶏手羽焼き

 「比内地鶏」は、秋田県北部・比内地方で飼育されてきた「比内鶏」(国の天然記念物)にロードアイランドをかけ合わせた鶏で、日本三大地鶏(比内地鶏、名古屋コーチン、薩摩地鶏)の1つです。

 その比内地鶏の手羽焼きが提供されました。

(比内地鶏手羽焼き)
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 手羽先を塩こしょうで焼き、レモンを添えたシンプルな料理です。

 表面の皮がパリッとして、噛みしめると中の肉汁が飛び出してきました。

 肉は水っぽさがなく、弾力があって、旨みとコクが凝縮されていました。

 シンプルな料理・調味ほど、素材の良し悪しが影響しますが、この比内地鶏には余計な調理・調味は要らないと思いました。


ハタハタの塩焼き

 秋田を代表する食材の1つが「ハタハタ(鰰)」です。

 秋田県の県魚にも指定されています。

 そのハタハタの塩焼きを提供していただきました。

(ハタハタの塩焼き)
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 板前さんが丁寧に焼いてくださった一品です。

 その板前さんから「よかったら、こちらで骨をお取りしましょうか」とお話があったので、興味津々でお願いしました。

 骨抜きの作業をカウンター越しに見ると、菜箸でハタハタの胴体をお腹からしっぽに向けて軽くはさみ続け、徐々に身から骨を外しておられました。
 
 最後に中骨を手に取り、その中骨をスルスルと横にスライドさせると、ものの見事に中骨だけが取り除かれました。

(ハタハタの塩焼き(骨抜き))
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 長い菜箸を使いこなし、身を崩すことなく、中の骨だけを取り除く板前さんの姿に、うっとりと見とれてしまいました。

 しばらくしてハタと我に返り、ハタハタをいただきました。

 ハタハタは、その見た目よりはるかに脂ののった魚で、それが大きな魅力です。

 大根おろしが添えられているのも、脂がのった魚をさっぱりといただくためです。

 ハタハタ漁は、今シーズン(2024年冬から2025年春まで)記録的な不漁となり、店主さんも嘆いておられました。

 昔は、ハタハタの卵(ブリコ)が海岸を埋め尽くすほどたくさん獲れたそうですが、温暖化の影響で海水温が高くなり、ハタハタの産卵や成長にも影響が及んでいるようです。

 そうした中でも、ハタハタを御用意いただいたことに感謝です。


がっこ盛り合わせ

 お店の看板メニューの1つ、「がっこ(漬物)」です。

 秋田では漬物のことを「がっこ」と呼びます。

 この言い方は「香の物(=漬物)」を意味する「こうこ」や、「雅香」に由来するようです(その他諸説あります)。

 漬物が売りの郷土料理店というのも珍しいですが、美味しい「がっこ」が食べられるお店として有名です。

(がっこ盛り合わせ)
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 写真右上が「やたら漬け」、それから時計回りに「いぶりがっこ」、「さっと干し大根(柿漬け)」、「大根の赤紫蘇漬け」です。

 「やたら漬け」は、ありあわせの野菜を「やたら」めったら塩漬けし、味噌や醤油で調味した漬物です。

 「いぶりがっこ」は、大根をいったん燻(いぶ)し、その燻した野菜を米ぬかで漬けこんだ漬物です。

 大根を薫製にする理由ついては、「生のままだと大根が辛いため」とか、「漬物にする大根が寒さで凍ってしまうのを防ぐため」とか、「囲炉裏の上でいったん薫製にすると美味しかったため」といったものが挙げられています。

 私が最も納得している理由は、「冬場に大根を置いておくと中の水分が凍ってしまう(使い物にならなくなる)ので、家の囲炉裏で大根を燻製して水分を抜き、保存性を高めるため」というものです。

 今回御用意いただいた「いぶりがっこ」は、燻製と相性が良いクリームチーズがはさまれていました。

 「さっと干し大根(柿漬け)」は,さっと軽く干した大根に柿(酢)を加えて漬けたものです。

 「大根の赤紫蘇漬け」は、大根を赤紫蘇で漬けたもので、きれいなピンク色に仕上がっていました。


あねっこ漬け

 「あねっこ漬け」は、きゅうりや大根などの漬物を刻み、梅酢で色をつけたもち米と混ぜ合わせた漬物で、その見た目や食感が初々しい娘さんを想像させることから名付けられた漬物です。

(あねっこ漬け)
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 もち米で漬けられているので、ほんのり甘く、漬物というよりは「もち米入りの野菜料理」という印象を持ちました。


天ぷら(ばっけ・タラの芽)

 秋田の様々な「がっこ」を味わった後に、天ぷらが用意されました。

(天ぷら(ばっけ・タラの芽))
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 「ばっけ(ふきのとう)」と「タラの芽」の天ぷらです。

 いずれも春の訪れを告げる野菜です。

 ふきのとうは、先に訪問した山形県鶴岡市でも「ばんけ」と呼ばれ、甘い味噌と混ぜ合わせた「ばんけ味噌」をはじめとする料理で親しまれています。


きりたんぽ鍋

 続いて、秋田名物であり、このお店の看板料理でもある「きりたんぽ鍋」を御用意いただきました。

 「きりたんぽ」の語源は、粗くつぶしたご飯を棒に巻き付けて焼いた「たんぽ」を切って鍋に入れたことに由来します。

(きりたんぽ鍋)
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 写真手前がヒラタケ、中心の緑色の野菜がセリ、右上が白ねぎ、左上がセリの根です。

 セリやセリの根は、シャキシャキした食感と香りの良さに特長があり、鍋をはじめとする煮込み料理に最適な野菜です。

 東北地方の料理でよく使用される野菜です。

(きりたんぽ鍋(きりたんぽ))
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 醤油仕立ての具だくさん鍋で、食べ進めると、中にきりたんぽ、比内地鶏、糸こんにゃくが入っていました。

 きりたんぽは、焼いたごはんの香ばしさと、鍋のだし汁をたっぷり吸ったもちもち感を楽しむことができました。


滝川豆腐

 「滝川豆腐」は、豆腐を「ところてん突き」で押し出して、細長く仕上げた豆腐です。

(滝川豆腐)
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 全国的にみられる料理ですが、このお店の看板メニューの1つです。

(滝川豆腐(崩した様子))
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 生姜醤油でいただきました。

 食べやすく、つるんとしたのどごしの豆腐麺でした。


秋田産枝豆のコロッケ

 もう少し食べられると思い、板前さんにおすすめを聞いてみました。

 すると板前さんから「秋田産枝豆のコロッケはいかがでしょう」と御提案があったので、私は「あ、それをお願いします」と注文しました。

 秋田産の枝豆。

 鶴岡で「だだちゃ豆(※)」と呼ばれる枝豆があることを知ったのですが、「秋田では「だだちゃ豆」とは呼ばないのだろうな」と思いつつ、出来上がりを待ちました。
 ※「だだちゃ」は鶴岡の方言で「お父さん」という意味

 しばらくして、「はい、枝豆コロッケです」と料理が提供されました。

 「えっ!」

(秋田産枝豆のコロッケ)
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 ソーセージのような形をしたコロッケです。

 「枝豆の揚げ物」と呼んだ方がいいような一品です。

 板前さんが笑顔で「イメージと違うでしょ?」とおっしゃったので、「確かに…」とお答えしました。

 私はてっきり、ジャガイモと枝豆で作った小判形のコロッケが出てくるものと思っていました。

(秋田産枝豆のコロッケ(枝豆))
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 すりつぶした枝豆に海老のすり身を混ぜ合わせ、きめ細かいパン粉をまぶして油で揚げたコロッケです。

 枝豆のさわやかな風味と海老の旨みを堪能しました。

 1つ1つ、きめ細やかで丁寧な調理をされる板前さんらしさが表現された一品でした。


秋田産りんごジュース

 食事を終え、店主さん、板前さん、そしてカウンターの常連さんと一緒にいろんな話で盛り上がりました。

(秋田産りんごジュース)
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 お酒に弱い私は、無添加の秋田産りんごジュースやウーロン茶をいただきながら、会話を楽しみました。
 (アルコールを飲まない方が陽気でテンションが高いのです…)


まとめ

 店主さんとは、秋田の食文化だけでなく、旅行の話や飛行機(マイル)の話、さらに釣りの話などでも盛り上がりました。

 川に棲むヤマメが海へ出て、成長して再び川に戻ってくるとサクラマスとなるのですが、このサクラマスは警戒心が強く、釣り人が自然と一体化するぐらいでないと釣れないという話になりました。

 店主さんがこの話をされた時、私は「まさに「釣りキチ三平」の「石化け」じゃないですか!」とお応えしました。

 秋田県出身の漫画家・矢口高雄さんの漫画「釣りキチ三平」で、「石化け」と呼ばれる釣法が紹介されています。

 この釣法は、釣り人が渓流の石や岩と一体化するぐらい存在感を無くすことで魚の警戒心を取り除いて魚を釣る方法を言います。

 この話を地元秋田の方なら御存知ではないかと思ってお応えしたのですが、予想どおり皆さんも「釣りキチ三平」や「石化け」の話を御存知でした。

 板前さんとは、板前さんが休暇を利用し、(雪のないところを求めて、私の地元)広島県沿岸部へ来られた時の話で盛り上がりました。

 閉店時刻を過ぎても話が尽きることなく、前回の訪問時と同様に、アットホームでとても楽しいひとときを過ごすことができました。

 夜も更けてきたので、おいとますることにしました。

 会計を済ませ、女性の店員さんにお店の外までお見送りいただいた時、雪が降っていました。

 夜空を見上げた店員さんがぽつり、「なごり雪が舞ってます」とおっしゃいました。

 お店で楽しいひとときを過ごし、名残惜しく思っていた私は、その言葉が心に沁みました。

 時は3月、秋田ももうすぐ春。

 「♪春になれば 氷(すが)こもとけて どじょっこだの 鮒っこだの 夜が明けたと思うべな」
 (童謡「どじょっこ ふなっこ」)

 「またよろしくお願いします」とお礼申し上げ、お店を後にしました。


<関連サイト>
 「お多福」(秋田市大町四丁目2-25)

<関連記事>
 「秋田の食文化探訪1 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-

2025年7月 6日 (日)

山形の食文化の特徴4 -あんだま・いとこ煮・むしたまご・しそ巻き・いちじく甘露煮・笹巻き・鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化-

 山形県鶴岡市は、その風土や歴史に育まれた豊かな食文化が認められ、2014年12月1日、日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定された街です。

 そして、同市は日本の学校給食発祥の地でもあります。

 そんな豊かな食文化に恵まれた鶴岡市で見つけた、鶴岡の伝統料理・郷土料理(菓子)をいくつか御紹介したいと思います。


あんだま・いとこ煮

 羽黒山と鶴岡市街地を結ぶ「羽黒街道(山形県道47号)」沿いを歩いていると、和菓子屋がありました。

(田舎の餅や「謹栄堂」)
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 田舎の餅や「謹栄堂(きんえいどう)」です。

 どんなお菓子があるのかとお店に近づいてみると…

(謹栄堂のお菓子)
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 絹のまち鶴岡の「絹入りだんご」、「いとこ煮」、「むしたまご」、冬に食べる「水ようかん」。

 「水ようかん」を夏ではなく冬に食べる風習は、北陸地方(福井県・石川県など)でみられるのですが、鶴岡市にも同様の風習があることは1つの発見でした。

 また、鶴岡が「絹のまち(鶴岡シルクタウン)」として有名なことも知りました。

 地元・鶴岡ならではのお菓子を求めて、店内にお邪魔しました。

 店内に「あんだま」の販売コーナーがありました。

(あんだまの販売コーナー)
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 「鶴岡まつりの風物詩」
 「昔なつかしい、やさしい味」
 「屋台スイーツ」

 何やらワクワクするお菓子です。

 お店の人にお話を伺うと、昔からお祭りの時に食べられてきたお菓子とのことでした。

 この「あんだま」と、鶴岡のあずき菓子「いとこ煮」を購入しました。

(あんだま・いとこ煮)
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 「あんだま」のパックを開けてみました。

(あんだま)
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 一瞬「たこ焼き」かと思いました(笑)
 (つまようじがさしてあるところまでそっくり!)

 たこ焼きを食べる感覚でいただきました。

(あんだま(あんこ))
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 小麦粉生地に粒あんを入れて、たこ焼きのように球形に焼いた郷土菓子です。

 お祭りの時、屋台でたこ焼きを焼くかたわらで、タコの代わりに粒あんを入れて「おやつ」として提供されたのがはじまりではないかと思います。

 お手頃価格なのに、中にあんこがたっぷり入っていました。

 続いて、「いとこ煮」を開けてみましょう。

(いとこ煮(謹栄堂))
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 「いとこ煮」と言えば、小豆とカボチャを煮た料理がよく知られていますが、鶴岡では小豆ともち米を一緒に甘く炊いたものを言います。

 ゆるい赤飯のような仕上がりになっています。

(いとこ煮(ふろむ亭))
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 こちらは、「謹栄堂」近くの郷土料理店「ふろむ亭」の「いとこ煮」です。

 おはぎを崩したような仕上がりになっています。

 ふろむ亭の店主さんから「作る家庭・お店によって違いがある」と伺っていましたが、確かに小豆ともち米の割合、炊き方の程度、水分、甘さなどに違いがあることがわかりました。

 ちなみに、全国で広く「いとこ煮」と呼ばれている「小豆とかぼちゃの煮物」を鶴岡では何と呼ばれているのか気になるところですが、こちらは「冬至かぼちゃ」と呼ばれています。


むしたまご

 「むしたまご」は、溶き卵に砂糖を加えて蒸し固めた鶴岡のお菓子です。

(蒸し玉子)
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 (鶴岡食文化創造都市推進協議会「つるおかおうち御膳」(ウェブサイト)を一部引用)

 卵と砂糖以外に、牛乳や「甘だれ(砂糖・薄口醬油・みりん)」を加えられたものもあります。

 お店の「むしたまご」と書かれた短冊を見て、私は一瞬「虫たまご」というお菓子があるのかと勘違いしてしまいました(笑)


JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」

 食材・食文化に富んだ鶴岡には、地元ならではの料理・お菓子が「もっとあ~る」のではないかと、JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」駅前店へ行ってみました。

(「もんとあ~る」駅前店)
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 店内を見て回ると、やっぱり鶴岡ならではの食が「もんとある!」(※)
 (※庄内の方言で「山ほどある」という意味)

 鶴岡の料理・お菓子をいくつか購入しました。


しそ巻き

 「しそ巻き」は、大葉(しそ)に「味噌ダネ」(味噌に砂糖、ゴマ、クルミ、ピーナッツ、唐辛子などを加え、もち粉などで練り固めたもの)をのせてクルクル巻き、油で揚げた料理です。

(しそ巻き(パック))
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 今回購入した「しそ巻き」は、味噌にゴマと砂糖を加え、米粉で練り固めた味噌ダネを使った「ごまみそ」のしそ巻きです。

(しそ巻き)
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 串刺しにして売られていました。

 油でサクサクに揚げられた大葉と、甘辛でねっとりとした味噌ダネの組合せは、「よくぞこれを思いついた」と賞賛したくなる美味しさで、おかずにもおつまみにも最適な一品です。


いちじく甘露煮

 いちじくの甘露煮を購入しました。

(いちじく甘露煮(パック))
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 口が開く前のいちじくを砂糖と酸味(レモン・酢・クエン酸など)で飴色になるまで煮詰めた料理です。

(いちじく甘露煮)
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 いちじくを丸ごと味わえる、鶴岡の保存食です。


笹巻き

 「笹巻き」は、鶴岡の代表的な郷土菓子の1つです。

 「端午の節句」に出されるお菓子で、全国的には「粽(ちまき)」と呼ばれていますが、東北地方では「笹巻き」と呼ばれています。

(笹巻き(パック))
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 きな粉と黒蜜がセットになっています。

 笹の巻き方にも様々な方法があり、三角おにぎりのような「三角巻き」、握ったこぶしのような「こぶし巻き」、何枚もの笹の葉を使って巻き上げる「たけのこ巻き/祝い巻き」、鉈(なた)のような「なた巻き」などがあります。

(笹巻き(笹で包まれている様子))
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 こちらは「三角巻き」の笹巻きです。

 鶴岡(庄内地方南部)の「笹巻き」の特徴は、灰汁(あく)に浸したもち米を笹で巻いて煮ることにあります。

 強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮ることで、もち米が黄変し、黄色いゼリー状の食べ物になります。

(笹巻き)
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 笹から取り出し、同梱のきな粉と黒蜜をかけてみました。

(笹巻き(青きな粉と黒蜜))
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 ゼリーとお餅の中間のような、やわらかくてプルンとした食感で、独特な香ばしさもあるので、甘いきな粉や黒蜜とよく合います。

 きな粉は青大豆で作られた「青きな粉」です。

 青きな粉は全国的にも珍しいのですが、庄内地方では、山形県庄内町を中心に昔から青大豆が栽培され、青きな粉が食べられてきました。

 私がこの青きな粉にピンときた理由は、私の住む広島市でもよく食べられており、「ザ・広島ブランド」に認証されている食品だからです。

 庄内と広島にこんな食文化の接点があったのかと嬉しく思いました。


鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化

 鶴岡の笹巻きは、強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮た食べ物ですが、同様の食べ物が「あくまき」という名で南九州(鹿児島・宮崎・熊本)にもあることから、南九州から伝えられたという説もあります。

 一方、私がカンボジア・コンポントム州郊外を訪問した際には、もち米に「クボン」と呼ばれる灰汁(凝固剤)を加え、笹の葉に包んで蒸した「ノムチャン」と呼ばれるお菓子があることを知りました。

(クボン(凝固剤))
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 「ノムチャン」にはパームシュガー(やし砂糖)をつけて食べるとのことでした。

 このお菓子は九州の「あくまき」そっくりだと思い、現地の方に通訳さんを通じて、日本にも同様の「あくまき」というお菓子があると紹介したところ、みんなが驚きました。

 今回、その食べ物が鶴岡にも「笹巻き」として伝承されていることを知り、またしても驚きました。

 灰汁でもち米を煮たり蒸したりする料理は、中国の粽が日本を含めた東アジア・東南アジアへ伝えられたものと思われます。

 これで、鶴岡の「笹巻き」、南九州の「あくまき」、カンボジアの「ノムチャン」、中国の「粽(粽子)」につながりがあることがわかりました。

 さらに、静岡県藤枝市岡部町朝比奈にもツバキの灰汁を使って作られる「朝比奈ちまき」があります。

 食のフィールドワークをする中で、ふと、こうした食文化のつながりがわかると、とても嬉しく、感動を覚えます。


まとめ

 鶴岡市中心部を徒歩やバスで移動しながら、様々な食と出会うことができました。

 夕方、鶴岡駅から「特急いなほ」に乗車し、秋田を目指しました。

(E653系いなほ号の看板)
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 「いなほ(稲穂)」という名称は、日本有数の米どころ新潟・山形・秋田を結ぶ特急の名称としてぴったりです。

(E653系いなほ号(ハマナス色)・鶴岡駅)
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 駅の看板とは異なる、濃いピンク色(ハマナス色)の「特急いなほ」がホームに入線しました。

(特急いなほ・秋田行・行先表示)
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 乗車し、窓から外を眺めると、白波が立つ日本海が広がっていました。

(車窓から眺めた日本海(遊佐駅-象潟駅間))
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 鶴岡駅近くの観光案内所・「つるおか食文化市場FOODEVER(フーデヴァー)」で購入した冊子「つるおかおうち御膳」で鶴岡の食文化を復習しながら秋田へ移動しました。

(「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」)
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 鶴岡で出会った食は、高級料理ではなく、見映えを意識した料理でもない、鶴岡の伝統的な日常料理ばかりでしたが、実はこうした料理が鶴岡の食文化の原点であり、魅力となっています。

 さらにもう一歩進んで、鶴岡が日本の食文化の根幹をなす、伝統的な日常料理が受け継がれている地域だととらえれば、鶴岡こそ「ユネスコ食文化創造都市」にふさわしい地域だと理解することができます。


<関連サイト>
 「田舎の餅や「謹栄堂」」(山形県鶴岡市大東町25-14)
 「もんとあ~る」(「駅前店」山形県鶴岡市日吉町3-3ほか)

<関連記事>
 「あずきの研究12 -なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのか-
 「カンボジア料理の特徴と主な料理8 -ライスプディング,クボン,ノムチャン,クロサンオ,カンボジアと日本の食文化の共通点-
 「山形の食文化の特徴3 -「つるおか食文化市場FOODEVER」と鶴岡の食文化(つや姫・昔ながらの郷土料理・いとこ煮)-
 「日本の学校給食史と山形県鶴岡市「学校給食発祥の地(大督寺)」訪問 -つや姫おにぎり・山形つや姫玄米茶-

<参考文献>
 「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」鶴岡食文化創造都市推進協議会

2025年6月22日 (日)

山形の食文化の特徴3 -「つるおか食文化市場FOODEVER」と鶴岡の食文化(つや姫・昔ながらの郷土料理・いとこ煮)-

広島空港から庄内空港へ

 2025年3月7日、山形県鶴岡市を訪問しました。

(空路案内(広島-羽田-庄内))
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 広島空港から飛行機を利用し、羽田空港経由で庄内空港へ向かいました。

 広島空港から羽田空港へ向かう途中、窓から富士山が見えました。

(ANA672便から眺めた富士山)
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 その後、飛行機は着陸態勢に入り、羽田空港に到着しました。

 庄内空港行きの乗り継ぎ時間は約1時間30分だったので、空港内のラウンジで過ごしました。

(ANA395便(羽田空港))
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 羽田空港発、庄内空港行きANA395便です。

 出発時刻となり、同便は庄内空港へ向けて離陸しました。

(ANA395便から眺めた東京都心部)
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 眼下に東京都心部を眺めつつ、北へ向かって飛行しました。

 早朝からの旅だったので、疲れてウトウトしていると、飛行機が着陸態勢に入るとのアナウンスがありました。

 ふと窓の外を眺めると…

(ANA395便から眺めた山形県山地・内陸部)
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 3月にもかかわらず、雪で覆われている光景に驚きました。

 「雪に慣れていないので困ったな…」と思っていると、やがて状況が一変し、田畑が広がる庄内平野に入りました。

(ANA395便から眺めた庄内平野)
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 羽田空港から約1時間(フライト時間は約40分)、あっという間に庄内空港に到着しました。

(ANA395便・庄内空港着)
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おいしい庄内空港

 庄内空港の愛称は「おいしい庄内空港」です。

 到着ロビーでマスコットキャラクターの「まめうさ」が出迎えてくれました。

(庄内空港ビルマスコットキャラクター「まめうさ」)
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 「まめうさ」は、口元にだだちゃ豆の「だだちゃさん」を付けたウサギです。

(おいしい庄内空港)
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 ターミナルビルの屋根は庄内米をデザイン化したものです。

 食に興味を持つ私は、空港名に「おいしい」と付く庄内空港の施設をゆっくり見学してみたかったのですが、庄内空港連絡バスのりばへ直行しました。

 なぜなら、この空港連絡バスは飛行機の到着時刻に合わせて出発し、出発の目安が到着の10分後と設定されているからです。

(庄内空港連絡バス(酒田行・鶴岡行))
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 写真手前の赤いバスが鶴岡行、奥の青いバスが酒田行です。

 鶴岡行きの連絡バスに乗車すると、ほどなくしてバスが出発しました。


観光・食文化情報発信拠点「つるおか食文化市場FOODEVER」

 連絡バスは約30分かけて鶴岡駅に到着しました。

(鶴岡駅と鶴岡市内循環バス)
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 鶴岡駅前を散策すると、目の前に観光案内所・「つるおか食文化市場FOODEVER(フーデヴァー)」の入口がありました。

(観光案内所・つるおか食文化市場FOODEVER入口)
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 駅前交差点側にも入口がありました。

(つるおか食文化市場FOODEVER入口)
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 中に入って、施設を見学させていただきました。

(世界のユネスコ食文化創造都市 鶴岡)
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 鶴岡は、その風土や歴史に育まれた豊かな食文化が認められ、2014年12月1日、日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定されました。

(世界のユネスコ食文化創造都市)
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 (「つるおか食文化市場FOODEVER」展示資料)

 日本では、鶴岡市のほか、大分県臼杵市も「ユネスコ食文化創造都市」に認定されています。

(世界のユネスコ食文化創造都市 鶴岡のあゆみ)
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 ユネスコの認定を目指し、2010年から食文化関連のシンポジウム・フォトコンテスト・映画祭・フェスタなど様々なイベントが鶴岡で開催されました。

(情報発信スペース)
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 情報発信スペースでは、鶴岡の食文化を紡ぐ人々や食材が紹介されています。

(庄内の代表食材(野菜))
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 庄内地方の野菜を中心とした代表食材が紹介されているコーナーもありました。

 鶴岡では、カブ、ナス、ネギ、柿など、約60種類の在来種が栽培されています。

 ちなみに、希少な在来作物「藤沢かぶ」が栽培されている鶴岡市藤沢地区は、作家・藤沢周平のペンネームの由来となったことでも有名です。

(紅エビ・トラフグの紹介)
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 海に面した庄内地方は、紅エビやトラフグをはじめ、タラ、ハタハタ、真鯛、アンコウ、カナガシラ、スルメイカ、由良アナゴ、口細カレイ、サクラマス、岩のり、エゲシ(海藻)など海産物にも恵まれており、豊かな食文化が形成されました。

(飲食店舗)
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 館内には飲食店舗もあり、様々な料理やお酒を味わうことができます。

 「つるおか食文化市場FOODEVER」は、鶴岡の食文化の情報発信・交流拠点です。


ふろむ亭の「ふるさと定食」

 鶴岡のふるさと料理を求めて、同市日出一丁目の「ふろむ亭」を訪問しました。

 鶴岡駅から少し距離があったのですが、歩いてお店へ向かいました。

(切添大橋から眺めた新内川と金峰山)
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 途中、鶴岡の街並みや自然の風景を楽しむことができました。

(ふろむ亭店舗)
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 お店に着くと、「営業中」と掲げられているものの、のれんが玄関の中にあったので、「営業されていますように…」と祈る気持ちでお店のドアを開けました。

 すると店主さんが出て来られ、御案内いただけたので、ホッと一安心しました。

 外は風が強かったため、のれんは中に掲げられていたのでしょう。

 旅先で荷物が多かったこともあり、座敷席でゆっくり食事させていただくことにしました。

 注文するメニューはあらかじめ決めていました。

 鶴岡で誕生したお米「つや姫」を土鍋で炊いたごはんと、鶴岡の伝統的な御馳走が味わえる「ふるさと定食」です。

 土鍋でごはんが炊かれるため、この定食は注文してから約20分かかるのですが、その時間も旅行スケジュールに折り込み済みです。

 出来上がりに本当に20分程度かかったのですが、その間、店主さんとの会話も弾み、楽しく時間を過ごせました。

 まずは料理が運ばれてきました。

(ふるさと定食)
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 鶴岡の伝統的な御馳走をずらりと用意していただきました。

 高級料理ではなく、昔から地元・鶴岡で「日常の食事」として食べられてきた料理ばかりです。

 それぞれの料理を御紹介します。

(味噌汁)
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 味噌汁の具は、麩・厚揚げ・ネギ・大根・人参・レンコン・椎茸・しめじで、たっぷり具を入れることで、良い「だし」が出ていました。

(ヒラタケと鶏肉の煮物)
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 こちらは「ヒラタケと鶏肉の煮物」です。

 庄内地方はきのこや山菜も多く採れます。

(切り干し大根)
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 こちらはお馴染みの「切り干し大根」です。

(玉こんにゃくの煮物)
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 「玉こんにゃくの煮物」です。

 「玉こんにゃく」は、山形市の「山寺(宝珠山立石寺)」で精進料理として使われていたものが周辺住民にも広まっていったとされる、山形のご当地食材です。

(しそ巻き)
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 こちらは「しそ巻き」と呼ばれる、昔ながらの郷土料理です。

 大葉(しそ)に「味噌ダネ」(味噌に砂糖、ゴマ、クルミ、ピーナッツ、唐辛子などを加え、もち粉などで練り固めたもの)をのせてクルクル巻き、油で揚げた料理です。

(しそ巻き(味噌ダネ))
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 油でサクサクに揚げられた大葉と甘辛の味噌ダネのコンビネーションが最高で、おかずにもおつまみにも嬉しい一品です。

(冷奴(山ぶどう塩))
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 こちらは冷奴です。

 ざっくりとした食感の手作り豆腐が使われています。

 豆腐にかけられているピンク色のものは「山ぶどう塩」です。

 山ぶどうの風味・酸味が味わえる塩で、新潟県村上市の製塩業者から仕入れておられるそうです。

(赤魚の煮付け)
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 こちらは「赤魚の煮付け」です。

(大根の桜漬け)
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 大根を梅酢で漬けた「大根の桜漬け」です。

(ひじき煮)
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 こちらは「ひじき煮」です。

 海の幸・山の幸に恵まれた鶴岡で、昔から食べられてきた日常の料理を堪能しました。

 やがて炊き上がったごはんも運ばれてきました。

 土鍋のフタを開けると、炊きたての「つや姫」ごはんが登場しました。

(土鍋で炊いた「つや姫」ごはん)
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 「つや姫」という名のとおり、お米がつやつやと光り輝いていました。

 ごはんを茶碗によそって、いただきました。

 米粒は大きくて真っ白、食感はモチモチしてやわらかく、噛みしめるほどに甘みとうまみが感じられました。

 さらに、冷めてもモチモチで美味しいことがわかりました。

 むしろ冷めた時(おにぎりにした時)こそ本領を発揮するのが「つや姫」の特長なのです。

 「つや姫」は他のお米と比べて少し高価なのですが、それだけの価値があることが理解できました。

 店内には、山形のブランド米「つや姫」と「雪若丸」の登録証が掲げられています。

(「つや姫」と「雪若丸」の登録証)
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 山形県全体で「つや姫」と「雪若丸」の生産・販売・消費の拡大に取り組まれています。

 店主さんにお話を伺ったところ、「鶴岡は昔からお米の一大産地で、米沢(山形県内陸部)が飢饉の時も、鶴岡では白い米を食べていた」、「鶴岡では(昔から白米が好まれ)玄米を食べる文化すらない」とのことでした。

 さすがお米の本場。お米の美味しさを知ることができました。

 食後のデザートとして「いとこ煮」をいただきました。

 「いとこ煮」と言えば、小豆とカボチャを煮た料理がよく知られていますが、鶴岡では小豆ともち米を一緒に甘く炊いたものを言います。

(いとこ煮の紹介文)
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 最近では「いとこ煮」を作る家庭が減ってしまい、食べる機会が失われつつあるようです。

(いとこ煮)
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 こちらが鶴岡の「いとこ煮」です。

 おはぎを崩したような仕上がりになっています。

 店主さんのお話では、「作る家庭・お店によって違いがある」とのことです。

 また、「祖母に作ってもらった「いとこ煮」はかなり甘かったので、祖母の作り方を伝承しつつ、甘さは控えめに仕上げている」そうです。

 さらに、「作りたてより、少し寝かせた方が美味しさが増す」ことも教えていただきました。


 高級料理ではなく、見映えを意識した料理でもない、鶴岡の伝統的な日常料理ばかりですが、実はこうした料理が鶴岡の食文化の原点であり、魅力なのだと思いました。

 店主さんとの会話が盛り上がり、土鍋のごはんが何度も炊けるぐらいの時間を過ごしましたが(笑)、こうした番狂わせは大歓迎です。

 鶴岡の食文化の知識も深まり、とても有意義なひとときを過ごすことができました。


<関連サイト>
 「鶴岡食文化創造都市推進協議会」(事務局 鶴岡市食文化創造都市推進課)
 「つるおか観光ナビ 頂きます(グルメ)」(鶴岡ツーリズムビューロー)
 「ふろむ亭」(山形県鶴岡市日出一丁目4-8)
 「つや姫・雪若丸」(山形「つや姫」「雪若丸」ブランド戦略推進本部)

<関連記事>
 「山形の食文化の特徴1 -米沢の鯉料理と食用菊-
 「山形の食文化の特徴2 -芋煮,納豆汁,ひょう干し煮,あさつきの酢味噌和え,そば-

<参考文献>
 「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」鶴岡食文化創造都市推進協議会

2025年6月 8日 (日)

兵庫の食文化探訪2 -加古川市のご当地グルメ・ソウルフード「かつめし」(加古川市役所食堂・コーヒーハウス ロッキー・いろは食堂(ビストロ))-

加古川市のご当地グルメ・加古川市民のソウルフード「かつめし」

 私にとって兵庫県加古川市と言えば、「JRの新快速(電車)が停車する駅」程度のイメージしかなかったのですが、「かつめし」というご当地グルメがあることを知りました。

 「かつめし」は、「ごはんの上に叩いて平たくしたビフカツをのせ、デミグラスソース系のたれをかけたものを洋皿に盛り、箸で食べる」料理です。

(WE LOVE かつめし(加古川じゃらん))
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 (「加古川じゃらん(かつめし編)」表紙の一部を引用)

 「かつめし」を味わえるお店は、加古川市を中心に100店舗以上あると言われています。

 さらに、家庭でも作れるよう「かつめし」専用のたれが販売され、学校給食のメニューにも取り入れられており、「加古川市民のソウルフード」の1つとなっています。

 そんな魅力にあふれる「かつめし」を求めて、加古川市を訪問しました。

(加古川駅・新快速)
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 姫路駅から新快速を利用し、加古川駅に着きました。

(かこのちゃん)
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 加古川駅構内で、加古川市まちの魅力発信キャラクター「かこのちゃん」が歓迎してくれました。

 「かつめし」巡りのスタートです。


加古川市役所食堂の「かつめし」

 加古川駅から約1.4km歩き、加古川市役所を訪問しました。

(加古川市役所庁舎)
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 広い敷地に大きな庁舎がそびえ立っていました。

(加古川市役所玄関)
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 10階建ての新館の正面玄関から入り、庁舎内の食堂を目指しました。

 案内を見ると、食堂は隣の本館にあることがわかり、連絡通路を歩いて本館の食堂へ向かいました。

(加古川市役所食堂)
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 入口には、本日の日替わり定食(2種類)が展示されていました。

 「かつめし」はあるだろうかと、食券券売機に近づいてみると…

(食券券売機)
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 「かつめし」、「かつめしコーヒー(コーヒー付)」というボタンがありました。

 「かつめし」を選び、食券を厨房へ持って行き、注文しました。

 すると、お店の方が厨房に向けて「かつでーす」と注文を伝えられ、私に「少々お時間かかりますのでお呼びしますね」とお話がありました。

 メニューには「かつ丼」や「カツカレー」もあるにもかかわらず、「かつめし」を「かつ」と呼ばれていることや、職員食堂で「少々時間がかかる」メニューであることに、特別感がありました。

 「一般市民客も多く利用されているな」と思いながらテーブル席で待っていると、「かつめし」が出来上がりました。

(かつめしとサラダ(加古川市役所食堂))
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 木製の皿に、かつめしとサラダが盛られ、ドレッシングが添えられています。

(かつめし(加古川市役所食堂))
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 ごはんの上にカツがのせられ、その上からデミグラスソースがたっぷりとかけられています。

 カツをじっくり見てみましょう。

(かつめしのカツとデミグラスソース(加古川市役所食堂))
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 牛肉を叩いて薄くのばし、パン粉をつけて揚げたビーフカツです。

 箸で食べられるよう、カツは一口サイズにカットされています。

 深くコクのあるデミグラスソースとサクサクのビーフカツは、ごはんとの相性が抜群でした。 

 ビーフカツをごはんにのせて一緒に食べるなら、薄いカツの方が一体感があることがわかりました。


コーヒーハウス ロッキーの「ビーフカツメシ」

 加古川市役所食堂で「かつめし」を堪能した後、次なるお店へ向かいました。

 加古川駅構内にある「加古川観光案内所」で、「加古川駅から少々遠くてもいいので、地元の人々に人気のお店を教えてください」と伺って御紹介いただいたお店「コーヒーハウスロッキー」です。

 加古川市役所から歩いて「コーヒーハウス ロッキー」を目指しました。

 加古川市役所から「ロッキー」まで約4.5kmと少し距離がありましたが、頑張って歩きました。

 途中、清涼飲料水の自動販売機を多く見かけましたが、100円のドリンク、さらには50円、80円で販売されているドリンクまであり、加古川市は激安自動販売機が多い地域でもあることを知りました。

 歩き疲れた頃、ようやくお店にたどり着きました。

(コーヒーハウス ロッキー)
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 車で来店される地元のお客さんが中心のお店です。

 お昼時だったこともあり、多くの車と大勢のお客さんで賑わっていました。

 メニューを見ると、ビーフカツメシのほか、ポークカツメシや牛ヘレカツメシもありました。

 私は「ビーフカツメシ」を注文しました。

 すると店員さんから厨房へ「ビーフ、ワンです」と注文がなされました。

 しばらくして、テーブル席にビーフカツメシが運ばれてきました。

(ビーフカツメシ(コーヒーハウス ロッキー 味噌汁・漬物セット))
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 味噌汁と漬物がセットになっています。

(ビーフカツメシ(コーヒーハウス ロッキー))
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 ごはんの上にビーフカツがのせられ、茹でキャベツが添えられています。

(ビーフカツメシのカツとデミグラスソース(コーヒーハウス ロッキー))
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 大きめのカツを一口サイズにカットし、デミグラスソースがたっぷりとかけられています。

 デミグラスソースは甘酸っぱいソースに仕上げられていました。

 茹でキャベツは、クミンの香りが効いていました。

 こちらのお店は「コーヒーハウス」なので、食後にコーヒーもいただきました。

(アメリカンコーヒー(コーヒーハウス ロッキー))
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 少し濃いめのコーヒーで苦味は少なく、ストレートでも美味しくいただけました。


いろは食堂(ビストロ)の「牛かつめし」

 続いて「いろは食堂(ビストロ)」を目指しました。

 「かつめし」発祥の店「いろは食堂」の屋号と味を37年ぶりに復活させたお店です。

 バスを使って移動することもできたのですが、かつめしを続けて食べていることもあり、運動を兼ねて歩いて行くことにしました。

 「ロッキー」から「いろは食堂(ビストロ)」までは約1.3kmです。

 加古川駅までかなり戻ったところで、「いろは食堂(ビストロ)」の建物が見えてきました。

(いろは食堂(ビストロ))
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 店名は和風ですが、建物は洋風で、まさに「かつめし」のようなお店です。

 1947年創業の「いろは食堂」を引き継いだお店です。

 ランチタイムにギリギリ間に合い、カウンター席に案内していただきました。

 「かつめし」のメニューを見ると、牛肉のかつめしと豚肉のかつめしが用意されていたので、私は「牛かつめし」を注文しました。

(牛かつめし(いろは食堂 味噌汁セット))
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 熱々の味噌汁(写真右上)が用意され、ほどなく「牛かつめし」も運ばれてきました。

(牛かつめし(いろは食堂))
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 ボリュームのあるビーフカツに、デミグラスソースがたっぷりかけられています。

 茹でキャベツも添えられています。

(牛かつめしのカツとデミグラスソース(いろは食堂))
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 デミグラスソースは、ハンバーグソースのような深みのあるソースで、1947年創業の味を引き継いだ秘伝のタレが使われています。 

 洋食のビーフカツを、そのままライスに盛り付けたような「かつめし」でした。

 ランチタイムだったので、一口デザートもありました。

(一口デザート・プリン(いろは食堂))
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 一口ではないサイズのプリンです(笑)

 ほどよいかたさで、ほろ苦いカラメルがアクセントとなった美味しいプリンでした。

 会計を済ませ、お店の方に御承諾いただいた上で、店内の「かつめし博物館」を見学させていただきました。

(かつめし博物館)
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 「かつめし」の資料や、お店の歴史・代々の店主さんなどが展示・紹介されています。

(いろは食堂物語・加古川じゃらん(かつめし編))
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 「いろは食堂物語」というお店の歴史が紹介された冊子や、加古川の「かつめし」を特集した「加古川じゃらん(かつめし編)」も展示されていました。

 ちなみに、冒頭で御紹介した「WE LOVE かつめし(加古川じゃらん)」の「かつめし」は、こちら「いろは食堂(ビストロ)」の「かつめし」です。

(いろは食堂開業時の写真)
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 いろは食堂開業時(昭和22年)の写真も展示されていました。

 「かつめし」が、ご当地グルメというだけでなく、地元のソウルフードとして長年愛され続けていることがわかりました。


まとめ

 ランチタイムに「かつめし」を(1皿でもボリューム満点なのに)続けて3皿もいただき、お腹いっぱいの状態で、約0.8kmの道のりを歩いて加古川駅まで戻りました。

 胃の中がパンパンになり、体が重くなったことを実感できるレベルでした(笑)

 JR加古川駅前商店街(ベルデモール)に、かつめしキャラクター「かっつん」と「デミーちゃん」の石像モニュメントが設置されています。

(かつめしキャラクター「かっつん」と「デミーちゃん」)
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 顔がごはんでできていて、その上に(帽子のような感じで)カツとデミグラスソースと茹でキャベツがのせられています。

 モニュメントの隣に「かつめし」の紹介文がありました。

(愛する加古川の名物 かつめし)
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・かつめしは、戦後間もない頃に、この加古川駅前通商店街にあった「いろは食堂」で考案されました。

・洋皿にご飯を盛り、牛カツをのせ、独特のたれをかけ、箸で食べるスタイルは、気軽に食べられる洋食として親しまれました。

・今では、加古川市やその周辺の100店舗以上で食べることができます。

・また、スーパーでは専用のたれが販売され、家庭にも普及し、学校給食のメニューにも取り入れられています。

・まさに愛する加古川の名物となった「かつめし」を、ぜひ食べてみてください!


 「かつめし」をよく食べ(3食)、そのために加古川市内をよく歩きました(約9km)。

 今回、加古川市内の3店舗で「かつめし」をいただきましたが、それはほんの一部で、まだまだいろんな「かつめし」があるので、また機会があれば「かつめし」の食べ歩きをしたいと思います。

 加古川市の「かつめし」、皆さんも機会があれば御賞味ください。


<関連サイト>
 「名物かつめし特集」(加古川観光協会)
 「コーヒーハウス ロッキー」(兵庫県加古川市野口町水足22-2)
 「いろは食堂(インスタグラム)」(兵庫県加古川市加古川町溝の口73-1)
 「うまいでぇ!かつめしの会」(兵庫県加古川市寺家町45 JAビル3階)

<参考文献>
 「名物かつめし特集」(加古川観光協会)
 「加古川じゃらん(かつめし編)」加古川市

2025年2月 9日 (日)

神戸・元町の老舗喫茶店・神戸エビアンコーヒーの「アサビアン」(モーニング・ロールパンセット)

 朝、喫茶店のモーニングを味わうため、神戸・元町を訪問しました。

 JR元町駅から「元町穴門(あなもん)商店街」を少し南へ歩いたところに、神戸の老舗喫茶店「神戸エビアンコーヒー」があります。

 「神戸エビアンコーヒー」は、関西でいち早くサイフォン式コーヒーを提供された老舗の喫茶店です。

(神戸エビアンコーヒー店舗)
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 人通りが多い商店街の一角にある、老舗ならではの落ち着いた雰囲気が感じられる喫茶店です。

 自家焙煎のコーヒー(豆)や洋菓子(シフォンケーキ、ロールケーキ、プリンなど)の販売コーナーも併設されています。

(神戸エビアンコーヒー店舗入口)
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 南側に店舗入口があります。

(メニュー看板)
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 カラフルな手書きのイラストメニューに温かみを感じます。

 朝8時30分から11時までの時間には、「アサビアン」と呼ばれるモーニングセットが提供されています。

 朝(アサ)と店名(エビアン)をかけた面白いネーミングです。

 「アサビアン」には、ロールセット(ロールサンド2種とドリンクのセット)と「トーストセット(トーストとドリンクのセット)」の2種類が用意されています。

 お店に入り、しばらくメニューを眺めたあと、「アサビアン」のロールセット(ホットコーヒー)を注文しました。

 カウンター越しに、お店の方がゆっくりとサイフォンコーヒーを淹れておられる姿を眺めると、心がほっと和みました。

 まもなく、テーブルに冷水とミルクが用意されました。

(冷水とミルク)
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 冷水はわかりますが、なぜミルクが今のタイミングなのか…このサービスは初めての体験です(笑)

 しばらくして、待望のアサビアンが運ばれてきました。

(アサビアン)
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 アサビアンのロールセットとホットコーヒー(アメリカン)です。

(アサビアン・メニュースタンド)
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 モーニングの時間帯は、アサビアンのイラストが描かれたメニュースタンドも置かれています。

(アサビアン・ロールセット(スイーツロールとコンビーフロール))
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 ロールサンドは、生クリームをはさんだ「スイーツロール」(写真左)と、コンビーフと野菜をはさんだ「コンビーフロール」(写真右)の2種類のセットです。

 食事(コンビーフロール)とデザート(スイーツロール)のセットとも言えます。

 まずは食事系のコンビーフロールからいただきました。

 ロールパンに、あふれんばかりのコンビーフ、スライスしたトマト、おしゃれな紫玉ねぎ、そしてシャキシャキのレタスがサンドされています。

 コンビーフはマヨネーズソースで和えたものです。

 普段、コンビーフを食べることはあまりないのですが、ツナサンドにも似た味で、美味しくいただきました。

 コーヒーを飲んで一息つき、今度はデザートタイムです。

 とてもやわらかいロールパンに生クリームがたっぷり詰められており、まさにケーキ感覚でいただけました。

 生クリームがふわっと軽いので、これならいくらでも食べられます。

 そして驚いたのは、生クリームだけでなく、奥にブルーベリージャムもサンドされていたことです。

(スイーツロール(生クリームとブルーベリージャム))
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 スイーツロールを食べ進めるうちに突如現れたブルーベリージャムは、生クリームに甘酸っぱいブルーベリーの風味が加わったスイーツに変化し、様々な味を楽しむことができました。

 締めくくりにサイフォンで淹れた香り高い自家焙煎コーヒーをゆっくりと味わい、神戸の朝のひとときを満喫しました。


<関連サイト>
 「神戸エビアンコーヒー」(神戸市中央区元町通1-7-2)
 「神戸みなとシフォン(神戸エビアンコーヒー・スイーツ)」(神戸市中央区元町通1-7-2)

2025年1月26日 (日)

島根県津和野町の「黒いいなり寿司」-割子そば・いなりずし・おみやげいなり-

島根県津和野町の紹介

 島根県津和野町を訪問しました。

 津和野駅前広場には、蒸気機関車が設置されています。

(蒸気機関車D51 194(津和野のデゴイチ))
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 この蒸気機関車は「津和野のデゴイチ(D51)」と呼ばれています。

 新山口駅-津和野駅間を走る「SLやまぐち号」の蒸気機関車も、現在は主に「デゴイチ」が使われています。

 津和野町の中心街を歩いていると、山口県の観光案内板を見つけました。

(山口県観光案内板)
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 案内板の横には、
「この案内板は、島根県と山口県の広域観光振興を目的として、山口県が、津和野町(島根県)に設置したものです。」
と記載されています。

 この一文は、津和野町は山口県だと誤解されないために記載されたものですが、「津和野町あるある」だなとクスっと笑ってしまいました。

(鷺舞の像)
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 こちらは「鷺舞(さぎまい)」の像です。

 白鷺が舞う姿を表現する芸能神事で、国の重要無形文化財に指定されています。

(津和野の鯉)
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 中心街のお堀では、たくさんの鯉(錦鯉)が泳いでいる姿を見ることができます。

 もともとは救荒食(非常食)用として飼育されていたようです。

(津和野大橋から眺めた津和野川)
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 こちらは津和野川です。

 この写真の右側(山側)に「太皷谷稲成神社(たいこだにいなりじんじゃ)」があります。

(太皷谷稲成神社・鳥居)
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 太皷谷稲成神社は日本五大稲荷のひとつで、参道に続く朱塗りの鳥居は壮観です。


美松食堂のいなりずしと割子そば(割子そば定食)

 太皷谷稲成神社参道入口のすぐ近くにある「美松食堂(みまつしょくどう)」を訪問しました。

(美松食堂)
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 美松食堂は、いなり寿司で有名なお店です。

 メニューを見ると、うどん・そばに「いなりずし」がセットになった定食があったので、私はその中の1つ「割子そば定食」を注文しました。

 島根は「出雲そば」の「割子そば(わりごそば)」が有名です。

 割子そばは、冷たいそばを丸い朱塗りの割子(わりご)に入れ、ねぎ、海苔、大根おろしなどの薬味をのせ、その上につゆをかけて食べるそばです。

 そば猪口(ちょこ)のつゆに薬味を入れ、そのつゆにそばをつけて食べる「ざるそば」や「もりそば」とは逆の食べ方になります。

 割子そばは、他のうどん・そばに比べて少し手間がかかるようで、奥の厨房でそばを一皿ずつ丁寧に盛り付けておられる様子が伺えました。

 しばらくして、私のテーブル席に「割子そば定食」が運ばれてきました。

(割子そば定食)
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 割子そば、山菜、いなりずし(3個)、漬物の定食です。

(いなりずし(美松食堂))
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 こちらが美松食堂の「いなりずし」です。

 よく炊かれた黒い油揚げが食欲をそそります。

 中に包まれている「すし飯」を確認してみましょう。

(いなりずし(中身))
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 すし飯にも濃く甘辛い煮汁が加えられていて、人参、椎茸、タケノコが入っていました。

 一般的ないなり寿司に比べて油揚げがかなり黒いので、お店の方に「もしかして黒砂糖(黒糖)を使われていますか」とお尋ねしたところ、「ずっと昔から砂糖のみで炊いているのですよ」と教えていただきました。

 つまりこの黒っぽさは、砂糖をよく加熱することで起きる「メイラード反応(褐変反応)」により、カラメル化させたものなのです。

 黒い油揚げは煮汁がよく浸み込んでおり、甘みと深いコク、そしてほろ苦さを感じる大人の味でした。

 すし飯はコクのある甘みと酢のさわやかな酸味があり、黒い油揚げとよく調和していました。

 続いて「割子そば」をいただきました。

(割子そば)
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 そばが丸く平べったい割子に盛られ、刻みねぎ、刻みのり、もみじおろしがのせられています。

 その割子がお重のように三段に積み重ねられていました。

 写真は積み重ねられていた割子をテーブルの上に広げたものですが、通常は積み重ねたままの状態で一番上のそばから順にいただきます。

 写真右上の朱塗りの容器には「そばつゆ」が入っており、これを割子そばにかけていただきます。

 まずは一番上の割子そばに「そばつゆ」をかけていただきました。

 シャキッと弾力のあるそばに、濃く甘辛いそばつゆがよく合いました。

 食べ終えたら、空になった割子を一番下の段へ重ね直し、二段目にある割子そばをいただきます。

 この際、食べ終えた割子に残ったそばつゆを次の割子のそばにかけて食べるのが正しい食べ方とされています。

(割子そばとつゆ)
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 こんな感じに、残ったそばつゆを次の割子のそばにかけていただくのです。

 これを繰り返し、そばつゆが薄くなったら、そばつゆ入れのそばつゆを足します。

 無駄なく、効率的な方法ですね(笑)

 こうした方法でそばが食べられるため、出雲そば(割子そば)のそばつゆは濃い(甘辛い)のが特徴です。


美松食堂の「おみやげいなり」

 このお店で、手土産用の「おみやげいなり」も購入しました。

(おみやげいなり(包装))
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 きつねや鳥居のイラストが描かれた、味のある包装紙です。

(おみやげいなり)
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 この油揚げの黒さは並大抵ではありません(笑)

 津和野の黒い「いなりずし」を堪能しました。


 津和野のいなり寿司は、この美松食堂のほか、道の駅「津和野温泉なごみの里」や「津和野駅売店(毎週土・日・祝に営業)」などでも食事や購入することができます。

 津和野町は、いなり寿司のほかにも、「源氏巻(げんじまき、あんこをカステラ生地で巻いたお菓子)」、「うずめ飯(ごはんに様々な具をうずめた雑炊のような郷土料理)」、「まめ茶(カワラケツメイのお茶)」、わさび、里芋、栗、山菜など、様々なお菓子・料理・食材に恵まれています。

 歴史・文化・食がコンパクトに凝縮された津和野は、自分の興味・関心に合わせた楽しみ方が出来る魅力的な街です。


<関連サイト>
 「津和野町観光協会・ゆ~にしんさい」(島根県鹿足郡津和野町後田イ66-1)
 「美松食堂」(島根県鹿足郡津和野町後田ロ59-13)

2025年1月 5日 (日)

栃木の食文化探訪 -宇都宮の黒カレー・かりまん・揚げたてあげあんパン・チャット-

宇都宮の市街地を歩く

 2024年の年末に栃木県宇都宮市を訪問しました。

 私はこれまで栃木県真岡市、足利市、栃木市、そして日光市を訪問したことがありますが、宇都宮市は訪問したことがありませんでした。

 また、宇都宮市は魚柄仁之助先生(食文化研究家)が住んでおられた地でもあるため、いつか訪問してみたい街の1つでした。

 東京・上野駅からJR宇都宮線(途中久喜駅で湘南新宿ライン(快速)に乗り換え)で宇都宮駅に到着しました。

(宇都宮線(湘南新宿ライン)・E231系・宇都宮駅)
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 湘南色(オレンジと緑のツートンカラー)の列車です。

 宇都宮駅東口からは、2023年夏に開業した「宇都宮ライトレール(LRT)」が走っています。

(宇都宮ライトレール(LRT)・宇都宮駅東口)
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 新幹線のように先がとんがった、次世代型路面電車です。

(宇都宮駅)
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 こちらは、宇都宮駅西口の様子です。

 宇都宮駅西口から延びる大通りを西へ向かって歩きました。

(宇都宮大通りから眺めた宇都宮駅)
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 さらに歩くと、宇都宮二荒山(ふたあらやま)神社の大鳥居が見えました。

(宇都宮二荒山神社・大鳥居)
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 宇都宮二荒山神社はかつて下野国(しもつけのくに)で最も格式が高い神社「一之宮(いちのみや)」とされ、その「一之宮」が転じて「宇都宮」という地名となったという説もあります。

 宇都宮は餃子の街としても有名ですが、確かに駅前や大通り沿いを少し歩くだけでも、餃子のお店をたくさん見かけました。

 私はこの「宇都宮餃子」を味わうべく、宇都宮二荒山神社近くの「来らっせ(きらっせ)本店」を訪問しました。

(「来らっせ本店」(MEGAドン・キホーテ))
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 「来らっせ本店」は宇都宮餃子の名店の味が一堂に会するフードテーマパークで、「MEGAドン・キホーテ宇都宮店」の地下にあります。

 ドン・キホーテの店内に入り、「来らっせ本店」を目指して「♪ドンドンドン」と進んでいくと、大勢の人で賑わう「来らっせ本店」に着きました。

 年末でお昼時(12時半)ということもあってか、予想をはるかに超える大勢のお客さんがおられ、驚きました。

 お店の案内板には「約90分待ち」と表示されていました。

 入口にお店の利用方法が説明されており、スマートフォンのLINEで友だち登録を行い、そのメニューから入場整理券を入手する必要があったので、急いで手続きをしました。

 手続きを完了し、スマートフォンで待ち状況を確認すると「116組待ち」と表示されました。

 タイトなスケジュールを組んでいた私は、宇都宮市内での滞在時間を2時間半程度しか取っておらず(だからこそ宇都宮餃子を一度に味わえるフードテーマパークを選んだわけですが…)、これではぎりぎり間に合うかどうかという感じでした。

 その後しばらく待ちましたが、待ち人数は逆にドンドン増え続け、いつになるかわからず、順番が来てもゆっくり食べる時間がないことを悟った私は、やむを得ずキャンセルしました。


春木屋・AKAI TORIの「黒カレー」

 再び宇都宮二荒山神社の前を歩いていると、交差点の角にある老舗喫茶店がありました。

(黒カレー・CAFE 春木屋)
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 「黒カレー」が有名なお店のようです。

(春木屋・AKAITORI)
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 お店の前のメニューボードには、「黒カレー」について、「戦後、進駐軍のコックからレシピを習った最初のカレーから78年。粉からオリジナル調合の昔タイプのカレーです」と説明がありました。

(昔の写真(春木屋))
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 創業当時(昭和23年)からずっと、この地で営業されているようです。

 餃子と同様、この「黒カレー」も宇都宮の味だと思い、興味を持ってお店に入りました。

 テーブル席に案内され、黒カレーを注文すると、店主さんから「1人でやっているので20分ぐらいかかりますが、よろしいですか」とお話があったので、「はい、いいですよ」とお返事して待つことにしました。

 結局は20分も経たずに黒カレーが提供されました。

(黒カレー(スープ付))
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 昔ながらのステンレス製カレー皿にカレーライスが盛られ、漬物が添えられています。

 スープは、味噌汁(ねぎ、豆腐、巻き麩、わかめ入り)がカップで提供されました。

 黒カレーをいただくと、最初にハヤシライスのような熟成された甘みとコクを感じ、後からカレーの風味とほどよい辛さが追いかけてくる、マイルドな欧風カレーでした。

 この甘みは、大量に使われている玉ねぎの甘みだと思います。

(黒カレー(拡大))
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 具は、大きめにカットされた玉ねぎと角切りの鶏肉が中心で、具だくさんのカレーです。

 食べ進めるうちに、豚肉の脂身による旨味とコクも感じました。

 そこで店主さんに「このカレーは鶏肉だけでなく、豚肉も入れておられるのでは」と尋ねてみると、「そのとおりです」と教えていただきました。

 テーブル近くの棚に、店名の由来や黒カレーの歴史についてまとめられた冊子があったので読んでみました。

 内容は、
・レストラン「春木屋」の喫茶部門が「赤い鳥(AKAITORI)」
・「赤い鳥(AKAITORI)」の名称は、鈴木三重吉の童話童謡雑誌「赤い鳥」から
・「黒カレー」は初代店主が進駐軍のコックさんから教わったもの
・当初は「黒カレー」ではなく「印度カレー」という名でメニューに載せていた
・実際は英国式洋食カレーで、お客さんの誤解も多かったため、「黒カレー」という名称にした
・材料は豚肉、鶏肉、玉ねぎ、生姜、にんにくが中心で、塩は赤穂の塩を使用している
・鶏肉をオーブンでローストし、皮をパリッとさせてから煮込んでいる
・炒めた豚肉と大量の玉ねぎ、ローストした鶏肉にスパイス、調味料、自家製ルーを加えて作る

 鶏肉と豚肉と玉ねぎが織りなすハーモニーと、長年受け継がれ熟練された味を堪能することができました。


高林堂の「かりまん」と「揚げたてあげあんパン」

 馬場通りを宇都宮駅に向かって歩いていると、和菓子店がありました。

(高林堂本店)
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 「高林堂(こうりんどう)」という宇都宮の和菓子店です。

 私の目が釘付けになったのは、お店に掲げられていた「あげあんパン」の写真です。

(あげあんパン)
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 (高林堂ウェブサイトの写真を引用)

 湧き上がる衝動を抑えることができず、お店に入りました。

(「KORINDO CAFE」メニュー)
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 店内のカフェコーナー(「KORINDO CAFE」)で揚げたてをいただけることを知り、「揚げたてあげあんパンドリンクセット」と、お店の看板商品の1つ「かりまん」を注文しました。

 「かりまん」は単品での注文をお願いしましたが、お店の方は「かりまんも温めて一緒にお出しします」と快く注文に応じてくださいました。

 注文を終え、店内を見渡すと、豪華客船「クイーンエリザベス」に高林堂の和菓子が提供されたことが紹介されていました。

 馬場通り沿いのテーブル席に座り、宇都宮の街を眺めながら待っていると、注文の品が運ばれてきました。

(揚げたてあげあんパンドリンクセット・かりまん(包装))
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 食べやすいように紙で包装した状態で提供されます。

 ワクワクしながら包みを開けました。

(揚げたてあげあんパンドリンクセット・かりまん)
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 「あげあんパン」も「かりまん」もアツアツで、写真を撮る時間さえもったいないと思いました。

(かりまん(中身))
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 「かりまん」は「かりんとう饅頭」の名称で、香ばしい「かりんとう」生地の中に「こしあん」が詰められています。

 いただいてみると、黒糖のかりんとうの皮が「サクッ」と音が鳴るほどカリカリで香ばしく、なめらかでほどよい甘みのこしあんとの相性が抜群でした。

 「かりまん」の「かり」は、「かりんとう」という意味だけでなく、「カリカリ」という意味も込められているように思いました。

(揚げたてあげあんパン(こしあん))
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 「揚げたてあげあんパン」は、小豆あんをサンドした揚げパンで、仕上げにきな粉がまぶされています。

 小豆あん(あんこ)は注文時に「こしあん」か「つぶあん」を選べるようになっています。

 パンは「パニーニ」のような平べったい形をしており、油で揚げることで全体がサクッとした食感になるよう工夫されています。

 あんこをサンドした平べったい形のパンを揚げることにより、パンとあんこの一体感が増し、「かりまん」にも似た美味しさを味わうことが出来ました。

 仕上げにコーヒーをいただきながら、至福のひとときを過ごしました。


うさぎやの「チャット」

 宇都宮駅に隣接する「宇都宮PASEO」で、「うさぎや」の「チャット」を購入しました。

(うさぎや「チャット」(包装))
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 お菓子の名称「チャット」は詩人書家・相田みつをさんの命名で、「心のとけあった人たちが、気兼ねなく気楽なおしゃべりをしながら、楽しいひとときを過ごす」という意味が込められているそうです。

 コミュニケーションツールの1つ「チャット」にも通じる、時代を先取りしたような名前です。

(うさぎや「チャット」)
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 愛媛の「母恵夢(ポエム)」や福島の「ままどおる」、博多の「博多通りもん」に似た乳菓です。

 「チャット」の特徴は、皮や白あんがとてもやわらかいことです。

 口に含むとホロリと溶けるような、やさしい食感・風味のお菓子です。

 「チャット」をいただけば、心がとけあい、気兼ねなく気楽なおしゃべり(チャット)で盛り上がることでしょう。


<関連サイト>
 「来らっせ」(本店 栃木県宇都宮市馬場通り2-3-12ほか)
 「春木屋・AKAI TORI」(栃木県宇都宮市馬場通り2-3-10)
 「高林堂」(本店 栃木県宇都宮市馬場通り3-4-7 ほか)
 「うさぎや」(本店 栃木県宇都宮市伝馬町4-5ほか)

2024年9月 1日 (日)

沖縄の食文化探訪7 沖縄の「ぜんざい」-富士家ぜんざい・黒糖ぜんざい 「沖縄ぜんざい」と「かき氷」の違いについて-

沖縄のぜんざい

 「ぜんざい」と言えば、小豆を煮て砂糖で甘みをつけた温かい(つぶあんの)汁をイメージされる方が多いと思います。

 ところが、沖縄の「ぜんざい」は、この温かい「ぜんざい」とは大きく異なります。

 沖縄のぜんざいは、甘く煮た金時豆(または小豆)に冷たい「かき氷」をのせたものなのです。

 お店によっては、かき氷に豆の煮汁・黒糖・抹茶などのシロップやミルクがかけられたり、トッピングとして白玉だんごや紅芋・田芋などがそえられたりします。

 沖縄ぜんざいは、ぜんざい・かき氷店のほか、飲食店のデザートメニューや沖縄そば店のサイドメニューとしても用意されています。

 そして、このぜんざいを通年食べられるお店も数多くあります。

 ちなみに、温かい「ぜんざい」は、「ホットぜんざい」として区別されているようです。

 今回は、そんな沖縄ぜんざいの魅力を御紹介したいと思います。


「ぜんざいの富士家」の「富士家ぜんざい」

 沖縄のぜんざいを求めて、那覇市泊にある「ぜんざいの富士家 泊店」を訪問しました。

(ぜんざいの富士家(店舗))
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 賑やかな壁画を眺め、ワクワクしながらお店に入りました。

 沖縄ぜんざいのお店なので、沖縄ぜんざいやかき氷が年中提供されています。

 また、フードメニューとして、タコライス、タコス、沖縄そばなども用意されています。

 私は沖縄ぜんざいの定番メニュー「富士家ぜんざい」を注文しました。

 しばらくして、テーブルに「富士家ぜんざい」が運ばれてきました。

(富士家ぜんざい(別盛り))
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 かき氷は富士家オリジナルの青いタンブラー容器に、金時豆の煮豆と白玉だんごはガラスの器に、別々に盛られています。

 煮豆と白玉だんごの器の奥には、「亀せんべい」と呼ばれる揚げせんべいが添えられています。

 テーブルには、かき氷と煮豆を別盛りにする理由が紹介されていました。

(「なぜ、この容器に氷を入れるのか」)
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 「豆の煮汁から作った手作りの氷を最後までシャリシャリのまま食べてもらいたい思いから」
 「従来の器だとシャリシャリ氷が溶けるのがどうしても早いため」
 「今回、抜群に保冷性のあるハイドロフラスク社のタンブラー容器に氷を入れました」
 「豆とモチを氷が入ってる容器に」
 「三、四回に分けてゆっくり、くつろぎながらお召し上がりください」

 スプーンでかき氷をすくい、豆とモチが盛られた器に合わせました。

(富士家ぜんざい)
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 今になって気付きました。

 「盛り付けが逆だーっ(笑)」

 豆とモチを、かき氷の入ったタンブラー容器へ移すよう説明書きがあるのに、私はその逆をしています。

 沖縄のぜんざいに不慣れな私は、豆と白玉だんごの組合せこそ「ぜんざい」で、それにかき氷を足す感覚で盛り付けたのです。

 手作りの氷を最後までシャリシャリのまま食べてもらうための方法なのに…

 かき氷は、豆の甘い煮汁を凍らせた氷を削ったもので、これだけでも十分美味しいものでした。

 そのため、改めてシロップをかける必要がなく、豆とモチが盛られた器も、シロップの量はごくわずかでした。

 だからこそ、お店の説明書きにも、かき氷のトッピングとして、かき氷の入ったタンブラー容器に豆とモチを加える方法を紹介されているのでしょう。

 初めてのことばかりで、色々戸惑いましたが、甘い金時豆や白玉だんごとかき氷は、相性が抜群に良いことがわかりました。

 温かいぜんざいと比べて、あっさりとした甘さなので、「(温かい)ぜんざいは甘すぎて…」という方にもおすすめです。

 食べ終えて、くつろいでいると、壁に面白い説明書きが掲示されていました。

(ぜんざいの富士家と不二家のペコちゃん)
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 「フジヤといっても(ペコちゃんの不二家)ではありません」
 「ぜんざいの富士家です。」

 確かにどちらもスイーツを中心とした店舗・飲食店を展開されていますね(笑)


黒糖ぜんざい

 嘉手納町(かでなちょう)にある「道の駅かでな」を訪問しました。

(道の駅かでな)
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 「道の駅かでな」は、飲食・物販・休憩施設だけでなく、隣接する嘉手納基地を一望できる展望所や、嘉手納基地の概要や嘉手納町の歴史が学べる展示室も設置されています。

(嘉手納基地(道の駅かでな展望所))
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 4階の展望所から眺めた嘉手納基地の様子です。

 私が訪問した日は日曜日だったこともあり、戦闘機は飛んでいませんでしたが、嘉手納基地の広大な滑走路や敷地に圧倒されました。

 展望所と同じ4階に、スイーツ・軽食のお店「スカイラウンジ」があります。

(道の駅かでな「スカイラウンジ」)
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 「ぜんざい」の旗が立っていました。

 「(訪問した)3月でもかき氷(ぜんざい)があるとは、さすが沖縄」と思いつつ、吸い寄せられるようにお店に入りました。

 メニュー表を見ると、ぜんざいは「黒糖ぜんざい」と「黒糖ミルクぜんざい」の2種類が用意されていました。

 そこで「黒糖ぜんざい」を注文しました。

(黒糖ぜんざい)
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 「何というボリューム!」

 思わず笑ってしまうほど大きなかき氷でした。

 かき氷に黒糖シロップがかけられ、頂点に甘い金時豆がトッピングされています。

 「せっかくなので外で食べよう」と、お店を出て、再び展望所へ向かいました。

(黒糖ぜんざいと嘉手納基地)
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 展望所のテーブルでいただいた「ぜんざい」は格別でした。

 黒糖のシロップのかき氷は初めてで、注文の時点では「金時豆だけのぜんざいもあれば、そちらを選ぶのだけど…」と思っていたのですが、実際にいただくと、その考えは一変しました。

 黒糖は「重くて、クセがある」イメージがあったのですが、かき氷にかけると「軽くて、カラメルに似た香ばしさがある」シロップに大変身するのです。

 黒糖シロップと金時豆の相性も抜群でした。

 食べ進めると、カップの底に金時豆と白玉が入っていました。

(黒糖ぜんざい(底の様子))
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 これは嬉しいサプライズでした。

(黒糖ぜんざい(金時豆と白玉だんご))
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 前半は黒糖シロップのかき氷を、後半は金時豆や白玉だんごと合わせたかき氷を楽しむことが出来ました。

 最後に、黒糖シロップがほどよく溶け込んだ金時豆や白玉だんごをいただきましたが、これまた、黒糖の風味が金時豆の煮汁と見事にマッチし、最後の最後まで美味しくいただけました。


「沖縄ぜんざい」と「かき氷」の違いについて

 今回、初めて沖縄の「ぜんざい」をいただいて、かき氷と黒糖シロップの相性がとても良いことがわかりました。

 また、宇治金時に使われるような「小豆の粒あん」ではなく、「金時豆とその煮汁」を使ったかき氷だと、(金時豆は煮崩れないので)甘い金時豆そのものの美味しさを味わえることも理解出来ました。

 そして、このことに関連して気付いたことがあります。

 沖縄ぜんざいは、「ぜんざい」という名が示すとおり、金時豆(小豆)とその煮汁、白玉だんごがメインで、それを冷やして食べるために、「かき氷」が(トッピングとして)盛られて完成されたお菓子ではないかということです。

 つまり、沖縄ぜんざいは、冷やしぜんざいにかき氷が追加されたものであり、かき氷の一種として考案されたものではないという考え方です。

 この考え方だと、かき氷にあんこをトッピングした「氷あずき」や「宇治金時」とは全く別物のお菓子となります。

 でもこのように考える方が、「氷あずき」ではなく「ぜんざい」と呼ばれることへの説明がうまくつくのです。

 まあ、美味しければそれで良いのですが、沖縄ぜんざいは、温かいぜんざい(ホットぜんざい)に比べて、さっぱりとした甘さなので、それだけ幅広い方々にお楽しみいただけるお菓子だと思います。

 沖縄ぜんざい。機会があれば、御賞味ください。


まとめ

 今回の沖縄県訪問は1泊2日とわずかな期間でしたが、月桃(サンニン)や田芋(ターム)を使った料理・お菓子、ムーチー・くんぺん(こんぺん)・ポーポー・レモンケーキ・ヒラミーレモンケーキなどの郷土菓子、沖縄の「ランチ」、いなり寿司とチキン、そして今回の「ぜんざい」など、様々な沖縄の食とめぐり合うことが出来ました。

 沖縄の食を中心とした旅となりましたが、レンタカーやゆいレールでの移動途中に、いくつか観光スポットにも立ち寄りました。

 立ち寄ったのは、コザの街並み(沖縄市)、西海岸リゾート(恩納村)、美浜アメリカンビレッジ(北谷町)、国際通り・首里城(那覇市)、平和祈念公園・ひめゆりの塔(糸満市)などです。

(アメリカンビレッジ(デポアイランドシーサイド))
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 こちらは、北谷町(ちゃたんちょう)にある「美浜アメリカンビレッジ」の夜景です。

(アメリカンビレッジ(デポセントラル))
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 多くの人々がショッピングや飲食を楽しんでおられました。

 ゆいレールで首里城公園へも行きました。

(守礼門(首里城公園))
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 守礼門(しゅれいもん)や首里杜館(すいむいかん)などを見学しました。

(ゆいレール(そらとぶピカチュウデザイン)・牧志駅)
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 ゆいレールの車内チャイムは、沖縄の代表曲・沖縄ゆかりの曲を中心に構成されており、心が和みました。

 私は県庁前駅で流れるメロディ「てぃんさぐぬ花」が沖縄らしくて好きです。


 また機会があれば、沖縄を訪問し、沖縄の食文化を探訪したいと思います。


<関連サイト>
 「ぜんざいの富士家」(沖縄県那覇市泊2-10-9)
 「道の駅かでな」(沖縄県中頭郡嘉手納町屋良1026-3)
 「アメリカンビレッジ」(沖縄県中頭郡北谷町字美浜)
 「首里城公園」(沖縄県那覇市首里金城町1-2)

<参考文献>
 芝崎本実 監修「あんこのことがすべてわかる本」誠文堂新光社

2024年8月18日 (日)

広島のいなり寿司 -「尾道いなり」と「棒いなり」(ばあちゃんの駅弁・いなりとチキン)-

 今回は広島県内の「いなり寿司」を2種類、御紹介します。


尾道いなり

 広島県尾道市に「尾道いなり」と呼ばれるいなり寿司があります。

 この「尾道いなり」を、広島市西区のいなり寿司専門店「狐尾(きつねのお)」(「LECT(レクト)」1階)で購入しました。

(「狐尾」のいなり寿司(パック))
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 包装紙にキツネのロゴマークが描かれています。

(「狐尾」ロゴマーク)
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 このキツネ、よく見ると玉に片足を乗せています。

 これは、尾道の石工職人が作った「玉乗り狛犬(たまのりこまいぬ)」がモチーフにされているからです。

 狛犬は神社などに左右一対で設置されている像で、様々なタイプがありますが、「玉乗り狛犬」は「尾道型」とも呼ばれ、石工で栄えた尾道を象徴する石造物なのです。

 つまり、玉乗りのキツネには、「尾道のキツネ(狐)」という意味があるのです。

 店名の「狐尾」もこの意味から名付けられたのではないかと思います。

(尾道いなり)
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 こちらが「尾道いなり」です。

 いなり寿司の上下をひっくり返し、すし飯の上に薄桃色の「えびのおぼろ(えび粉)」がたっぷりまぶされているのが特徴です。

 「えびのおぼろ(えび粉)」は茹でた海老の身を包丁で叩いて細かくし、砂糖・みりん・酒などで甘く炒りつけたもので、巻き寿司やちらし寿司などに用いられます。

(尾道いなり(中身))
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 すし飯には人参・ごぼう・椎茸が入っており、そのすし飯が甘めに炊かれた「いなりあげ」で包まれています。

 この「いなりあげ」ですが、三角形に(いなりあげの角が中心に立つように)握られるのは、キツネの耳の形に似ているからなのだそうです。

 旨味が凝縮したほんのり甘い「えびのおぼろ」が、甘めのいなり寿司とよく合いました。

(狐尾いなり)
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 こちらは「狐尾いなり」です。

 「尾道いなり」とは「えびのおぼろ(えび粉)」がまぶされているかどうかの違いだけで、すし飯の具は一緒です。

 「えびのおぼろ(えび粉)」は尾道の郷土料理であり、これを用いたいなり寿司が「尾道いなり」と呼ばれているのです。

 さらに私には、いなり寿司をひっくり返した姿が港町・尾道に関わりの深い「船」の形にも見えるのですが、いかがでしょうか。


元祖名物おばあちゃんの棒いなり

 広島駅の「ekie(エキエ)」2階にある「安芸太田町みんなの店」では、「棒いなり」や「ばあちゃんの駅弁」、安芸太田町のお土産・特産品などが販売されています。

 お店の前を歩いていて、ふと「ばあちゃんの駅弁」に目が留まりました。

(「ばあちゃんの駅弁」販売の様子)
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 手書きの商品POPで「ばあちゃんの駅弁」が面白く説明されています。

 例えば…
 「子供や孫に食べさせちゃいものを はなえてみたけぇねぇ(作ってみましたの意味)」
 「今日は暑くなるみたいなけぇ、塩は少し多めかなぁ」
 「さぁ~今日も笑顔で楽しんでこうねぇ みんないつもありがとう」
 「ばあさんより」

 ごはんもおかずもぎっしりと詰められた愛情たっぷりの「ばあちゃんの駅弁」です。

 お弁当のごはん(広島菜にぎりめし・炊き込みご飯・棒いなり)もおかずも、様々な種類・組合せがあり、お好みのものを選ぶことが出来ます。

 私は、このお店の名物「棒いなり」が入った「ばあちゃんの駅弁」を手に取り、レジへ向かいました。

 レジ前では単品の「棒いなり」が販売されていました。

(「棒いなり」販売の様子)
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 「棒いなりは しいたけ・人参・かんぴょう・ごま・油あげ・山くらげ・竹の子が入ってますよぉ~♪」

 外国人観光客向けに、英語でいなり寿司を説明したPOPもありました。
 「Inari sushi is sushi made by stuffing vinegared rice in fried tofu」
 (いなり寿司は、油揚げにすし飯を詰めた寿司です)

 本当にばあさんが書いているのか?(笑)

 レジで私より先に並ばれた外国人観光客の方がお弁当を購入されるのを待っていると、年配の女性店員さんがその外国人観光客と英語で流暢に会話されていたので驚きました。

 私の順番となったので、私はその女性店員さんに「棒いなり」についてお話を伺いました。

私:「この棒いなりは大きいですね。通常のいなり寿司の2倍くらいありそうですね」
店員さん:
 「(手で棒いなりの長さを測りながら)うーん、どうなんでしょう」
 「名古屋からいらっしゃるお客さんの話では、名古屋のいなり寿司の3倍くらいあるそうです」
 「名古屋のいなり寿司は小ぶりで具がなく、うちのような具だくさんの田舎いなりは珍しいようです」
 「その名古屋のお客さんは広島に来られる度にうちの棒いなりを買ってくださいます」
私:「なるほど、ありがとうございます」

 精算の際、その店員さんから「650万円です」と言われ、ついさっきまで外国人に英語で値段を伝えておられたのに…とクスっと笑ってしまいました。

 県外にもファンがいる理由は、商品の魅力だけでなく、店員さんのお人柄の良さにもあるようです。

 それでは私が購入した「ばあちゃんの駅弁」を御紹介します。

(ばあちゃんの駅弁)
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 棒いなり1本に、様々なおかずがセットになった弁当です。

 なぜ私がこの弁当を選んだのか、その理由は、いなり寿司と鶏の唐揚げがセットになっていたからです。

(いなりとチキン)
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 このお弁当を見つけた瞬間、「こっ、これは沖縄で人気の『いなりとチキン』の組合せじゃないか!」と嬉しくなりました。

 ちなみに鶏の唐揚げは「ひとくち山賊からあげ」と呼ばれるにんにく醤油味の唐揚げで、こちらもお店の看板商品です。

 棒いなりをもう少し詳しく見てみましょう。

(棒いなり)
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 棒のように長く、ずっしりと重いいなり寿司です。

 測ってみると、長さ約13cm、幅約4cm、高さ約3.5cmありました。

 底がどうなっているか、ひっくり返してみましょう。

(棒いなり(底))
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 大きな「いなりあげ」で全体がきっちりと包まれており、すし飯が見えません。

 この「いなりあげ」を広げてみました。

(棒いなり(いなりあげを広げた様子))
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 具だくさんのすし飯が入っていました。

 「いなりあげ」も「すし飯」も、甘くべったりした感じに仕上げられています。

(棒いなり(中身))
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 しいたけ・人参・かんぴょう・ごま・油あげ・山くらげ・竹の子・ゴマと、山の幸たっぷりのいなり寿司です。

 しっかりとした甘辛さを感じる「田舎いなり」ならではの味付けとなっています。

 1本で十分な食べ応えがありました。

 おかずも、大きな鶏の唐揚げ(ひとくち山賊からあげ)2個をはじめ、海老天ぷら、カマボコ(花と三色団子)、インゲンのゴマ和え、紅白なます、煮しめ(しいたけ・コンニャク・がんもどき)、もち(メロン風味・カスタードあん)と、たくさん詰められており、それぞれ美味しくいただきました。

 こちらのお店では、「棒いなり」と「山賊焼き(鶏肉の串焼き)」をお得なセット価格で販売されています。

 これも「チキンといなり」のセットとなっており、「チキンといなり」の人気が沖縄だけではないことがわかりました。

 このほか、広島菜、祇園坊(柿)のお菓子、絶大な人気を誇る「鯛焼屋よしお」の鯛焼き(冷凍)など、地元ならではの食品・お宝級の食品も販売されています。


 広島県内のいなり寿司だけでもバラエティーに富んでいるだけに、全国には様々ないなり寿司があることでしょう。

 いなり寿司から地域の食文化を分析してみるのも面白そうです。


<関連サイト>
 「いなり寿司 狐尾(キツネノオ)、尾道生まれの専門店が広島市に初出店」(広島ニュース 食べタインジャー)
 「えび粉/巻き寿司 広島県」(「うちの郷土料理」農林水産省)
 「安芸太田町みんなのお店」(広島駅「ekie(エキエ)」2階(インスタグラム))
 「鯛焼屋よしお」(広島県山県郡安芸太田町加計3494-9)

<関連記事>
 「沖縄の食文化探訪6 -沖縄のいなり寿司の特徴・なぜ沖縄で「いなりとチキン」が人気なのか-
 「尾道の夏のお菓子「ふなやき」 -「ふなやき」の由来と「麩の焼き」について-

<参考文献>
 「LECTR(レクター)vol.22」(2023年10月)

2024年8月11日 (日)

沖縄の食文化探訪6 -沖縄のいなり寿司の特徴・なぜ沖縄で「いなりとチキン」が人気なのか-

沖縄のいなり寿司・「いなりとチキン」

 午前中に那覇空港に着き、レンタカーを借りて、すぐさま向かったのが、有名な観光地や絶景スポット…ではなく、いなり寿司のお店です。

 沖縄はいなり寿司が人気で、食事やおやつとして、よく食べられています。

 「いなりとチキン」(いなり寿司とチキンの揚げ物)の組合せも人気で、セットで販売されているお店も多く見かけます。

 いなり寿司やチキンが売り切れ次第閉店というお店も多く、こうしたお店では早めに購入する必要があります。

 沖縄のいなり寿司にはどんな特徴があるのか、「いなりとチキン」はどんな食べ物なのか、そしてなぜ沖縄で人気があるのか、真相を解明すべく、車で沖縄県内のお店を巡ってみました。


「いなり寿し家」の「いなり寿し」

 那覇市から車で沖縄市へ向かいました。

 レンタカーのお店で「沖縄の道路のアスファルトには、サンゴ礁(琉球石灰岩)が使われているので、雨の時はスリップに注意してください」と伺ったので、「サンゴ礁が埋まっているのかな」と、道路の舗装を眺めながら走行しました。

 あと、道路沿いに「軍用地売買」の不動産広告が点在していることにも興味を持ちました。

 前回、友人の結婚式で沖縄を訪問した際の移動手段は借上げバスやタクシーだったので、今回は「ごっぱち(国道58号)」を中心とした沖縄のドライブも楽しみました。

 そのうち、車は沖縄市内に入りました。

 最初に目指したお店「いなり寿し家」は、沖縄市の「沖縄こどもの国」近く、沖縄郵便局通り沿いにありました。

(「いなり寿し家」郵便局通り店)
Photo_20240811133301

 売り切れ次第終了のお店です。

 お店ではお客さんの列が途絶えることがなく、沖縄のいなり寿司人気は本物だと実感しました。

 店頭に「法事用いなり寿し」の案内がありました。

(法事用いなり寿しの案内)
Photo_20240811133401

 沖縄では、お供え物としても「いなり寿司」や「レモンケーキ」が用いられることを知りました。

 確かにどちらも色・形・大きさがそっくりで、大勢の人におすそ分けすることも出来ます。

 やがて私が注文する番となり、私はチキンを重さ(グラム)で注文するのか個数で注文するのかよくわからないまま、「いなり寿し2個とチキン2本ください」と注文しました。

 チキンは本数で注文し、お店の方がその重さを量って値段が決まる仕組みでした。

 いなり寿し2個とチキン2本が包装され、無事購入出来ました。

 いなり寿しもチキンも、お好みの数量で注文できるところがいいですね。

 これなら、食事としてしっかり食べたい時、おやつとして軽く食べたい時など、その時の状況に合わせて必要な分だけ気軽に購入することが出来ます。

(いなり寿しとチキン(包装))
Photo_20240811133801

 スーパーマーケットなどで見かける普通のポリ袋に、いなり寿司とチキンが詰められています。

 地元の人が食事・軽食用として購入されることを想定した簡易包装となっています。

(いなり寿しとチキン)
Photo_20240811134001

 いなり寿しもチキンも結構大きめのサイズです。

 いなりあげ(油揚げ)は、薄くて白っぽく、味も薄味に仕上げられていました。

 すし飯も甘さ控えめの、あっさりとした味付けでした。

 いなりあげとすし飯は三角形に握られ、すし飯に白ゴマがトッピングされていました。

 チキンは、鶏肉にパン粉をまぶして揚げた、いわゆる「チキンカツ」でした。

 ガーリック(にんにく)が効いていて、食欲が増しました。

 このチキンに、あっさりとした味付けのいなり寿しが実によく合いました。

 揚げ物のチキンを食べた後でいなり寿しを食べると、適度な酸味と甘味で口の中がさっぱりとし、またチキンが食べたくなる…という無限ループにはまってしまいます。

 揚げ物と沖縄のいなり寿司は最強のコンビであることが理解出来ました。


「丸一食品」塩屋店

 続いて、車でうるま市へ向かいました。

 次に目指すお店は「丸一食品」です。

 いなり寿司とチキンを中心に販売されているお店で、売り切れ次第終了の人気店です。

 11時頃、那覇市内からお店へ電話して在庫を確認したところ、「まだ若干ございますが、早めにお越しいただいた方が良いと思います」とのお話だったので、急いでお店へ向かいました。

 お店には13時30分頃到着しました。

(「丸一食品」塩屋店)
Photo_20240811140101

 すると、お店に併設した広い駐車場のゲートが半分閉められ、駐車場内には車が1台のみという状態でした。

 ただならぬ気配を感じ、駐車場におられたお店の方に尋ねてみると、「売り切れで営業を終了しました」と申し訳なさそうにお答えいただきました。

 とても残念でしたが、諦めるほかありませんでした。

 いなり寿司とチキンは、地元の人々に絶大な人気がある食べ物なのだと改めて認識しました。


「城まんじゅう」の「アーサいなり」

 続いて、「丸一食品」塩屋店からほど近い、うるま市の「うるマルシェ」を訪問しました。

(うるマルシェ)
Photo_20240526114801

 こちらの産直コーナーで珍しいいなり寿司が販売されていました。

 「城(ぐすく)まんじゅう」から販売されている「アーサいなり」です。

(アーサいなり(包装))
Photo_20240811141001

 アーサ(朝)でなく、昼過ぎでもいなり寿司が1パックだけありました。

 すし飯に北中城(きたなかぐすく)特産のアーサ(海藻)が混ぜられているいなり寿司です。

(アーサいなり)
Photo_20240811141101

 三角形のいなり寿司が5個入っていました。

 すし飯といなりあげを分けてみました。

(アーサいなり(すし飯といなりあげ))
Photo_20240811141201

 すし飯には、緑色の海藻「アーサ」が混ぜられ、隠し味としてマヨネーズも加えられていました。

 一方、いなりあげは、「いなり寿し家」と同様に、薄くて白っぽく、味も薄味に仕上げられていました。

 爽やかなアーサの風味や、ほのかに感じるマヨネーズのコクと旨味が、いなり寿司をより一層美味しくさせていました。

 このお店でも、法事や香典返し用のいなり寿司セット(折詰・重箱)が用意されています。

(城まんじゅうチラシ(法事・香典返し用))
Photo_20240811141501
 (食べログ・城まんじゅう公式ページより一部引用・価格は2024年8月11日現在)

 生地にアーサが練り込まれた「城まんじゅう」が法事の際にも使われることについては、当ブログでも御紹介しました(「関連記事」参照)が、これにいなり寿司を加えたセットを「法事・香典返し用」として販売されているのです。

 さらに、ここでもチキンが登場し、「いなりとチキン」のセットにもなっているところが興味深いです。

 沖縄県ならではの法事用折詰・香典返しです。


まとめ

 沖縄のいなり寿司には、いくつか特徴が見い出せます。

・三角形が中心で、比較的大きい
・いなりあげは白っぽくて厚みがなく、薄味(甘さ控えめ)に仕上げられている
・すし飯はあっさりしており、具はほとんど入っていない
・チキン(揚げ物)との相性が抜群に良い

 沖縄では揚げ物やファストフードが好まれる傾向にありますが、そのニーズにぴったり合う食事・軽食の1つが「いなりとチキン」なのです。


<関連サイト>
 「いなり寿し家」(沖縄県沖縄市園田2-13-6)
 「丸一食品」(「塩屋店」沖縄県うるま市塩屋494-6(インスタグラム))
 「うるマルシェ」(沖縄県うるま市字前原183-2)
 「城まんじゅう」(沖縄県中頭郡北中城村仲順230)

<関連記事>
 「沖縄の食文化探訪4-城まんじゅう、くんじゃんナントゥ、いもぽき、ポーポー、こんぺん・くんぺん-

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