栃木の食文化探訪 -宇都宮の黒カレー・かりまん・揚げたてあげあんパン・チャット-
宇都宮の市街地を歩く
2024年の年末に栃木県宇都宮市を訪問しました。
私はこれまで栃木県真岡市、足利市、栃木市、そして日光市を訪問したことがありますが、宇都宮市は訪問したことがありませんでした。
また、宇都宮市は魚柄仁之助先生(食文化研究家)が住んでおられた地でもあるため、いつか訪問してみたい街の1つでした。
東京・上野駅からJR宇都宮線(途中久喜駅で湘南新宿ライン(快速)に乗り換え)で宇都宮駅に到着しました。
(宇都宮線(湘南新宿ライン)・E231系・宇都宮駅)
湘南色(オレンジと緑のツートンカラー)の列車です。
宇都宮駅東口からは、2023年夏に開業した「宇都宮ライトレール(LRT)」が走っています。
(宇都宮ライトレール(LRT)・宇都宮駅東口)
新幹線のように先がとんがった、次世代型路面電車です。
(宇都宮駅)
こちらは、宇都宮駅西口の様子です。
宇都宮駅西口から延びる大通りを西へ向かって歩きました。
(宇都宮大通りから眺めた宇都宮駅)
さらに歩くと、宇都宮二荒山(ふたあらやま)神社の大鳥居が見えました。
(宇都宮二荒山神社・大鳥居)
宇都宮二荒山神社はかつて下野国(しもつけのくに)で最も格式が高い神社「一之宮(いちのみや)」とされ、その「一之宮」が転じて「宇都宮」という地名となったという説もあります。
宇都宮は餃子の街としても有名ですが、確かに駅前や大通り沿いを少し歩くだけでも、餃子のお店をたくさん見かけました。
私はこの「宇都宮餃子」を味わうべく、宇都宮二荒山神社近くの「来らっせ(きらっせ)本店」を訪問しました。
(「来らっせ本店」(MEGAドン・キホーテ))
「来らっせ本店」は宇都宮餃子の名店の味が一堂に会するフードテーマパークで、「MEGAドン・キホーテ宇都宮店」の地下にあります。
ドン・キホーテの店内に入り、「来らっせ本店」を目指して「♪ドンドンドン」と進んでいくと、大勢の人で賑わう「来らっせ本店」に着きました。
年末でお昼時(12時半)ということもあってか、予想をはるかに超える大勢のお客さんがおられ、驚きました。
お店の案内板には「約90分待ち」と表示されていました。
入口にお店の利用方法が説明されており、スマートフォンのLINEで友だち登録を行い、そのメニューから入場整理券を入手する必要があったので、急いで手続きをしました。
手続きを完了し、スマートフォンで待ち状況を確認すると「116組待ち」と表示されました。
タイトなスケジュールを組んでいた私は、宇都宮市内での滞在時間を2時間半程度しか取っておらず(だからこそ宇都宮餃子を一度に味わえるフードテーマパークを選んだわけですが…)、これではぎりぎり間に合うかどうかという感じでした。
その後しばらく待ちましたが、待ち人数は逆にドンドン増え続け、いつになるかわからず、順番が来てもゆっくり食べる時間がないことを悟った私は、やむを得ずキャンセルしました。
春木屋・AKAI TORIの「黒カレー」
再び宇都宮二荒山神社の前を歩いていると、交差点の角にある老舗喫茶店がありました。
(黒カレー・CAFE 春木屋)
「黒カレー」が有名なお店のようです。
(春木屋・AKAITORI)
お店の前のメニューボードには、「黒カレー」について、「戦後、進駐軍のコックからレシピを習った最初のカレーから78年。粉からオリジナル調合の昔タイプのカレーです」と説明がありました。
(昔の写真(春木屋))
創業当時(昭和23年)からずっと、この地で営業されているようです。
餃子と同様、この「黒カレー」も宇都宮の味だと思い、興味を持ってお店に入りました。
テーブル席に案内され、黒カレーを注文すると、店主さんから「1人でやっているので20分ぐらいかかりますが、よろしいですか」とお話があったので、「はい、いいですよ」とお返事して待つことにしました。
結局は20分も経たずに黒カレーが提供されました。
(黒カレー(スープ付))
昔ながらのステンレス製カレー皿にカレーライスが盛られ、漬物が添えられています。
スープは、味噌汁(ねぎ、豆腐、巻き麩、わかめ入り)がカップで提供されました。
黒カレーをいただくと、最初にハヤシライスのような熟成された甘みとコクを感じ、後からカレーの風味とほどよい辛さが追いかけてくる、マイルドな欧風カレーでした。
この甘みは、大量に使われている玉ねぎの甘みだと思います。
(黒カレー(拡大))
具は、大きめにカットされた玉ねぎと角切りの鶏肉が中心で、具だくさんのカレーです。
食べ進めるうちに、豚肉の脂身による旨味とコクも感じました。
そこで店主さんに「このカレーは鶏肉だけでなく、豚肉も入れておられるのでは」と尋ねてみると、「そのとおりです」と教えていただきました。
テーブル近くの棚に、店名の由来や黒カレーの歴史についてまとめられた冊子があったので読んでみました。
内容は、
・レストラン「春木屋」の喫茶部門が「赤い鳥(AKAITORI)」
・「赤い鳥(AKAITORI)」の名称は、鈴木三重吉の童話童謡雑誌「赤い鳥」から
・「黒カレー」は初代店主が進駐軍のコックさんから教わったもの
・当初は「黒カレー」ではなく「印度カレー」という名でメニューに載せていた
・実際は英国式洋食カレーで、お客さんの誤解も多かったため、「黒カレー」という名称にした
・材料は豚肉、鶏肉、玉ねぎ、生姜、にんにくが中心で、塩は赤穂の塩を使用している
・鶏肉をオーブンでローストし、皮をパリッとさせてから煮込んでいる
・炒めた豚肉と大量の玉ねぎ、ローストした鶏肉にスパイス、調味料、自家製ルーを加えて作る
鶏肉と豚肉と玉ねぎが織りなすハーモニーと、長年受け継がれ熟練された味を堪能することができました。
高林堂の「かりまん」と「揚げたてあげあんパン」
馬場通りを宇都宮駅に向かって歩いていると、和菓子店がありました。
(高林堂本店)
「高林堂(こうりんどう)」という宇都宮の和菓子店です。
私の目が釘付けになったのは、お店に掲げられていた「あげあんパン」の写真です。
(あげあんパン)
(高林堂ウェブサイトの写真を引用)
湧き上がる衝動を抑えることができず、お店に入りました。
(「KORINDO CAFE」メニュー)
店内のカフェコーナー(「KORINDO CAFE」)で揚げたてをいただけることを知り、「揚げたてあげあんパンドリンクセット」と、お店の看板商品の1つ「かりまん」を注文しました。
「かりまん」は単品での注文をお願いしましたが、お店の方は「かりまんも温めて一緒にお出しします」と快く注文に応じてくださいました。
注文を終え、店内を見渡すと、豪華客船「クイーンエリザベス」に高林堂の和菓子が提供されたことが紹介されていました。
馬場通り沿いのテーブル席に座り、宇都宮の街を眺めながら待っていると、注文の品が運ばれてきました。
(揚げたてあげあんパンドリンクセット・かりまん(包装))
食べやすいように紙で包装した状態で提供されます。
ワクワクしながら包みを開けました。
(揚げたてあげあんパンドリンクセット・かりまん)
「あげあんパン」も「かりまん」もアツアツで、写真を撮る時間さえもったいないと思いました。
(かりまん(中身))
「かりまん」は「かりんとう饅頭」の名称で、香ばしい「かりんとう」生地の中に「こしあん」が詰められています。
いただいてみると、黒糖のかりんとうの皮が「サクッ」と音が鳴るほどカリカリで香ばしく、なめらかでほどよい甘みのこしあんとの相性が抜群でした。
「かりまん」の「かり」は、「かりんとう」という意味だけでなく、「カリカリ」という意味も込められているように思いました。
(揚げたてあげあんパン(こしあん))
「揚げたてあげあんパン」は、小豆あんをサンドした揚げパンで、仕上げにきな粉がまぶされています。
小豆あん(あんこ)は注文時に「こしあん」か「つぶあん」を選べるようになっています。
パンは「パニーニ」のような平べったい形をしており、油で揚げることで全体がサクッとした食感になるよう工夫されています。
あんこをサンドした平べったい形のパンを揚げることにより、パンとあんこの一体感が増し、「かりまん」にも似た美味しさを味わうことが出来ました。
仕上げにコーヒーをいただきながら、至福のひとときを過ごしました。
うさぎやの「チャット」
宇都宮駅に隣接する「宇都宮PASEO」で、「うさぎや」の「チャット」を購入しました。
(うさぎや「チャット」(包装))
お菓子の名称「チャット」は詩人書家・相田みつをさんの命名で、「心のとけあった人たちが、気兼ねなく気楽なおしゃべりをしながら、楽しいひとときを過ごす」という意味が込められているそうです。
コミュニケーションツールの1つ「チャット」にも通じる、時代を先取りしたような名前です。
(うさぎや「チャット」)
愛媛の「母恵夢(ポエム)」や福島の「ままどおる」、博多の「博多通りもん」に似た乳菓です。
「チャット」の特徴は、皮や白あんがとてもやわらかいことです。
口に含むとホロリと溶けるような、やさしい食感・風味のお菓子です。
「チャット」をいただけば、心がとけあい、気兼ねなく気楽なおしゃべり(チャット)で盛り上がることでしょう。
<関連サイト>
「来らっせ」(本店 栃木県宇都宮市馬場通り2-3-12ほか)
「春木屋・AKAI TORI」(栃木県宇都宮市馬場通り2-3-10)
「高林堂」(本店 栃木県宇都宮市馬場通り3-4-7 ほか)
「うさぎや」(本店 栃木県宇都宮市伝馬町4-5ほか)
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