日本各地の食文化

2025年9月28日 (日)

北海道の食文化探訪7 -北海道函館市・ラッキーピエロの「チャイニーズチキンバーガー・ラキポテ・ウーロン茶」とカリフォルニアベイビーの「シスコライス」-

 2025年3月9日、北海道函館市を訪問しました。

 函館市電の谷地頭行きに乗り、函館ベイエリアに近い十字街電停で下車しました。

(函館市電(十字街電停))
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 今回は、函館ベイエリアにある函館のご当地料理を御紹介します。


ラッキーピエロの「チャイニーズチキンバーガー」

 函館市のベイエリアにある「ラッキーピエロ・ベイエリア本店」に伺いました。

(ラッキーピエロ・ベイエリア本店)
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 「ラッキーピエロ」は、地元では「ラッピ」の愛称で親しまれているハンバーガーレストランチェーンです。

 北海道函館市を中心とした道南エリアに店舗を展開されています。

 ラッキーピエロ・ベイエリア本店の隣には、「やきとり弁当」が看板商品の「ハセガワストア・ベイエリア店」がありますが、こちらのお店も道南エリアで店舗展開されているコンビニエンスストアです。

(ラッキーピエロ・オリジナルドリンク自動販売機)
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 こちらはラッキーピエロのオリジナルドリンク(ラッキーガラナ・ラッキーパワー888・ミルクコーヒー)の自動販売機です。

 ラッキーピエロのお店は函館市内のあらゆるところで見かけました。

 賑やかな外観なので、ワクワクしながらお店に入りました。

(ラッキーピエロ店内)
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 メニューを拝見すると、トップに「ダントツ人気ナンバーワンセット」というセットがあったので、こちらを注文しました。

(ダントツ人気ナンバーワンセット)
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 「ダントツ人気ナンバーワンセット」は、ハンバーガーでダントツ人気ナンバーワンの「チャイニーズチキンバーガー」、サイドオーダーでダントツ人気ナンバーワンの「ラキポテ」、ソフトドリンクでダントツ人気ナンバーワンの「自家製新鮮本物ウーロン茶」を一度に味わえるお得なセットです。

 「チャイニーズチキンバーガー」は、鶏の唐揚げ(竜田揚げ)とレタスに、たっぷりのマヨネーズをかけてバンズではさんだバーガーです。

 鶏の唐揚げは揚げたてパリパリで、甘辛く味付けされていました。

 甘辛い唐揚げとマヨネーズソースの相性も抜群で、人気ナンバーワンの理由がわかるような気がしました。

 「ウーロン茶」は、高級鉄観音が使われた、毎朝沸かしたての新鮮ウーロン茶です。

 続いて「ラキポテ(ラッキーフライドポテト)」をいただきました。

 フライドポテトにホワイトソースと粉チーズがまぶされていました。

 カップから取り出してみると…

(オリジナルラキポテ)
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 何と、中にデミグラスソースまでかけられていました。

 思わず「ラッキー!」と言いたくなるほど、お得感満載のフライドポテトでした。


カリフォルニアベイビーの「シスコライス」

 続いて、同じベイエリアで営業されている「CALIFORNIA BABY(カリフォルニアベイビー)」に伺いました。

(カリフォルニアベイビー店舗)
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 地元では「カリベビ」という愛称で呼ばれているようです。

 カリフォルニアの雰囲気が伝わってくるような建物です。

 店内もアメリカンダイナーのような内装となっています。

 こちらのお店の看板メニュー「シスコライス」を注文しました。

(シスコライス)
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 「シスコライス」は、バターピラフの上にフランクフルトのような太いグリルソーセージを2本のせ、濃厚なミートソースをたっぷりかけた料理です。

 お店のオーナーがサンフランシスコでボートレースの選手をしていた時に食べた「まかない飯」をアレンジされた料理とのことです。

 バター風味のピラフに濃厚なミートソースが加わると、美味しさが一段と増しました。

 また、グリルしたフランクフルトと挽き肉たっぷりのミートソースを一緒にいただくと、肉がたっぷりで、とても贅沢な気持ちになりました。

 食事を終え、お店を出てすぐ近くの坂を登ってみました。

 上から函館の街を眺めると、目の前に函館の観光写真でよく目にする光景が広がりました。

(函館・八幡坂)
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 海に向かって真っすぐ道が続いており、その先には青函連絡船・摩周丸が見えました。

 この写真の場所が撮影スポットとなっており、観光客が横一列になって写真撮影されていました。

(函館ハリストス正教会)
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 こちらは日本初のロシア正教会の聖堂「函館ハリストス正教会」です。

 どこで何を食べるかばかり考え、観光スポットのことはほとんど考えていませんでしたが、偶然にも函館らしい観光スポット巡りを楽しむことができました。


まとめ

 ベイエリアの海に沿って、歩いて函館駅へ向かいました。

(函館ベイエリア・レンガ造り倉庫)
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(BAYはこだて・運河)
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 金森洋物館内に、クリスマスカード専用ポストが設置されていました。

(金森赤レンガ倉庫クリスマスカード専用ポスト)
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 クリスマスカードに切手を貼って投函すると、クリスマスに郵送されるとありました。

 「これは面白い!」と思い、館内のショップでクリスマスカードを購入し、専用ポストの目の前にある郵便局で切手も購入して、自宅宛てにクリスマスカードを投函しました。

 クリスマスが楽しみです(笑)

(函館朝市エリア)
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(函館駅)
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 函館駅前から函館空港連絡バスに乗って、函館空港へ向かいました。

(函館空港連絡バス)
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 函館空港から羽田空港経由で広島空港まで戻りました。

(函館空港・JAL586便)
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 今回の旅は、広島空港から羽田空港乗り継ぎで山形の庄内空港へ行き、鶴岡駅(山形)から秋田駅までは「特急いなほ」を利用し、秋田駅から五所川原駅(青森)までは「リゾートしらかみ」を利用し、新青森駅から新函館北斗駅までは「北海道新幹線」を利用し、函館空港から羽田空港乗り継ぎで広島空港へ戻るというルートでした。

(フライト一覧(広島・羽田・庄内・函館))
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 ものすごく考えたルートのように思われるかも知れませんが、実は東北方面への割安のフライトを探した結果、このようなルートになったものです。

 2泊3日(2025年3月7日~9日)の東北・北海道旅行。

 タイトでしたが、とても充実した食のフィールドワークができました。


<関連サイト>
 「ラッキーピエロ」(ベイエリア本店 北海道函館市末広町23-18 ほか)
 「カリフォルニアベイビー」(北海道函館市末広町23-15)

<関連記事>
 「北海道の食文化探訪6 -道南で愛される豚肉の「やきとり」・ハセガワストアの「やきとり弁当」-

2025年9月14日 (日)

北海道の食文化探訪6 -道南で愛される豚肉の「やきとり」・ハセガワストアの「やきとり弁当」-

青森から北海道新幹線で函館へ

 2025年3月に青森県内各地(五所川原市、弘前市、黒石市、青森市)を訪問しました。

 青森市内のホテルに宿泊した翌朝、青森駅から新青森駅へ向かいました。

(青森駅・青い森鉄道・青森ベイブリッジ)
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 こちらの写真は、青森駅で出発を待つ「青い森鉄道」の列車です。

 列車の車体の至る所に「青い森鉄道」のイメージキャラクター「モーリー」が描かれているかわいい列車です。

 背景には青森ベイブリッジも見えます。

 私は向かいのホームに入線した奥羽本線の列車に乗って、新青森駅へ向かいました。

 新青森駅に着くと、早朝ということもあり、人の姿はまばらでした。

(新青森駅・北海道新幹線発車標)
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 北海道方面への1番列車「はやて91号」に乗って新函館北斗を目指します。

(新青森駅・はやて91号・新函館北斗行)
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 出発時刻の少し前に出発ホームに着くと、はやて91号が入線していました。

 2号車(指定席)に乗車したところ、新青森発の早朝便ということもあり、乗客は私1人でした。

(北海道新幹線・E5系・2号車・車内)
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 普通車指定席ですが、高級感のある車内です。

 高校生の時に在来線で青函トンネルを渡って以来、人生2回目となる青函トンネル通過に心躍りました。

 青函トンネル手前で、新幹線がこれから青函トンネルに入る旨のアナウンスが流れました。

 かつて営業されていた竜飛海底駅や吉岡海底駅を見ることができるかもと思っていたのですが、北海道新幹線開通により両駅が廃止され、新幹線で素早く通過する今となっては確認すらできませんでした。

 やがて列車がトンネルを抜け出て目の前が明るくなったことで、北海道に上陸したことを知りました。

(新幹線車内から眺めた風景・木古内駅付近)
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 「北海道の大地にやってきた」という感動を覚えました。

 実際は青森県側とそんなに違いはないのでしょうが…。

 約1時間で新函館北斗(しんはこだてほくと)駅に到着しました。

(北海道新幹線・新函館北斗駅ホーム)
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 青森県側、北海道側ともに、陸地を走る距離が長いこともあり、新幹線でも意外と時間がかかるものだなというのが感想です。

 函館市に向かうため、「はこだてライナー」に乗り換えました。

(はこだてライナー・新函館北斗駅ホーム)
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 「はこだてライナー」は、新函館北斗駅と函館市内を結ぶアクセス列車です。

 車体に紫色のラインが入っていますが、これは北海道のライラック、ルピナス、ラベンダーを想起させる「彩香パープル」と呼ばれる色で、JR北海道が使用する新幹線「H5系」に合わせて採用されています。

 「はこだてライナー」に乗り、五稜郭駅へ向かいました。


ハセガワストアの「やきとり弁当」

 五稜郭駅で下車し、歩いて五稜郭へ向かいました。

 五稜郭駅という名称ですが、実際には五稜郭までかなりの距離があります。

 五稜郭手前にある「ハセガワストア五稜郭店」に伺いました。

(ハセガワストア五稜郭店)
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 「ハセガワストア」は、北海道函館市で創業し、「ハセスト」の愛称で親しまれているコンビニエンスストアです。

 北海道函館市・北斗市・七飯町(ななえちょう)に店舗展開されています。

 手作り総菜が充実したコンビニエンスストアで、看板商品は「やきとり」・「やきとり弁当」です。

 北海道の道南では「やきとり」の肉として「鶏肉」ではなく「豚肉」が使われることが多いのですが、ハセガワストアの「やきとり」も豚肉がメインとなっています。

 「ハセスト」の「やきとり弁当」を味わうべく、お店に入りました。

 店内には、やきとり実演販売コーナーが併設されており、お店の方がやきとりを焼いておられました。

(やきとり実演販売コーナー)
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 「やきとり屋さんを備えたコンビニエンスストア」という印象です。

 やきとりコーナーへ行き、口頭で「やきとり弁当」を注文しようとすると、「注文内容を書いた注文書で注文してください」とお願いされました。

(やきとり弁当・やきとり ご注文書)
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 やきとり弁当のサイズ(小・中・大)、味(たれ・塩・塩だれ・うま辛・みそだれ)、数量を記入し、お店の方にお渡しする注文方法です。

 やきとり単品もこの注文書で注文します。

 私はやきとり弁当の「小(やきとり3本)」・「たれ(甘い醤油だれ)」で注文しました。

(やきとりを焼く様子)
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 「やきとり」や「つくね」が焼かれています。

 「つくね」は合鴨のつくねで、さすがに豚肉ではありませんでした(笑)

 実は豚肉だけでなく、「とり肉」、「とり皮」、「とり軟骨」など鶏肉のメニューも充実しています。

 そして、やきとりの「かくし味」として、やきとりに霧吹きで「はこだてわいん(赤ワイン)」が吹きかけられていました。

 出来上がりを待つ間、店内を見て歩きましたが、美味しそうな総菜やパンがたくさん並べられ、お手頃な値段で販売されていました。

 しばらくして、注文した「やきとり弁当」が出来上がりました。

 お店の窓側にあるイートインでいただくことにしました。

(やきとり弁当(テイクアウト))
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 フタには、やきとりを焼く「ぶたちゃん」が描かれています。

 フタを開けてみました。

(やきとり弁当(串))
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 海苔を敷いたごはんの上に、串刺しのやきとりが3本のせられていました。

 この「やきとり弁当」には、ハセガワストアおすすめの食べ方(やきとり弁当「通」の食べ方)があります。

 それは、①容器の端の溝(ミゾ)に串をのせ、②再度フタをかぶせ、③フタを手で押さえつつ、もう一方の手で串をクルクル回しながら引き抜き、④フタを開けて食べるというものです。

(やきとり弁当(串を容器から出した様子))
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 串を赤い矢印のように回しながら引くと、簡単に肉やネギを串から外すことができるのです。

(やきとり弁当(串抜き・紅しょうが追加))
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 紅しょうがを添えて、いただきました。

 出来たて、アツアツなのが何より嬉しいところです。

 豚肉は、表面はこんがりと、中は柔らかくジューシーに焼かれていました。

 醤油だれは、かくし味の赤ワインが加えられたことにより、とろみが増し、より深い甘さとコクを感じました。

 コンビニエンスストアというより、やきとり屋さんのお弁当と言ってもいいような気がします。

 食事を終え、お店を出る時も、やきとりコーナーではお店の方が絶え間なく「やきとり」を焼いておられました。

 あらかじめテイクアウト用に注文されるお客さんも多いようです。

 お店の入口には、「ハセストグッズ」のコーナーもあり、「やきとり弁当」にちなんだ筆記具、マグネット、Tシャツなど様々なグッズが販売されていました。

 地元の人々に愛されるコンビニエンスストアだなと思いつつ、お店を後にしました。

 その後、五稜郭タワーに寄り、お土産コーナーやアトリウムを見て回りました。

(土方歳三ブロンズ像)
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 五稜郭タワーのアトリウムに展示されている土方歳三(ひじかたとしぞう)のブロンズ像です。

 新選組副長から旧幕府軍陸軍奉行並に転じ、新政府軍と戦った人物です。

 お土産コーナーにも、土方歳三にまつわるグッズがたくさん販売されていました。

 函館観光の際に、近くのハセガワストアで「やきとり弁当」を味わうのもおすすめです。


<関連サイト>
 「ハセガワストア」(五稜郭店 北海道函館市五稜郭町4-1 ほか)

2025年8月31日 (日)

青森のソウルフード探訪記3 -生姜味噌おでん・いがめんち・嶽きみの天ぷら・黒石つゆ焼きそば・七戸産長芋の紫蘇漬け-

弘南鉄道・弘南線列車に乗って黒石へ

 青森県黒石市に「つゆ焼きそば」と呼ばれる、ちょっと珍しい御当地料理があるという情報を入手しました。

 そこで、2025年3月、この「つゆ焼きそば」を味わうべく、弘前駅から弘南鉄道・弘南線列車に乗って黒石駅へ向かいました。

(弘南鉄道・弘南線列車(弘前駅))
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 弘前駅の券売機で紙のきっぷを購入し、改札口で入鋏(にゅうきょう・ハサミの切れ込みを入れること)してもらって、入場しました。

(弘南鉄道のきっぷ)
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 地方ローカル線のほのぼのとした雰囲気に癒されました。

 17時発の列車に乗り、黒石駅へ向かいました。

 途中、車窓から「津軽富士」とも呼ばれる岩木山が見えました。

 「ああ、津軽富士が見える」

(弘南線の列車から眺めた岩木山(津軽富士))
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 「ただ津軽富士だけを、レンズ一ぱいにキャッチして、津軽富士、さようなら、お世話になりました。パチリ。」

 太宰治の気持ちでシャッターをパチリと切ったのでした。

 ただ実際には、岩木山が大きく、岩木山を囲む感じで列車が走るため、岩木山に「さようなら」するどころか、岩木山がいつまでもついてくる感じでした。

 17時36分、終点の黒石駅に到着しました。

(やきそばのまち黒石)
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 改札を出ると、「よぐ来たねし~やきそばのまち黒石」という看板が目に留まりました。

 焼きそばは黒石市民に馴染み深い食べもので、黒石市内には焼きそばの店舗数が約70軒もあります。

 黒石焼きそばの特徴は、甘辛いソースと太くて平たい麺(太平麺)にあります。

(黒石駅)
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 3月上旬でしたが、駅前には、まだ雪がたくさん積もっていました。

 歩いてお店へ向かいました。

(「蔵よし」店舗)
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 「蔵よし」というお店の名前のとおり、江戸時代の土蔵造りを基調とした建物となっています。

 お店に入り、テーブル席を案内していただきました。

 メニュー表を見て、黒石の郷土料理・名物料理を中心に料理を注文しました。

 今回いただいた料理を御紹介します。


いがめんち

 「いがめんち」は、イカ(津軽弁では「いが」)と野菜(玉ねぎ、人参など)を細かく刻み、小麦粉や片栗粉をつなぎにして、多めに油を敷いた鉄板で焼いた津軽の郷土料理です。

 料理で余ったイカや野菜をミンチにし、ハンバーグやミートボールのように仕上げた、無駄のない、津軽の先人の知恵と工夫が詰まった料理です。

(いがめんち)
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 こちらが「いがめんち」です。

 熱々のいがめんちにレモンを絞っていただきました。

(いがめんち(中身))
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 細かく刻んだイカと人参を丸め、揚げ焼きされていました。

 油で揚げたミートボールのような食感で、イカの旨みと人参の甘みが合わさり、いくらでもいただける美味しさでした。


生姜味噌おでん(青森おでん)

 青森市を中心とした地域では、おでんに生姜味噌をつけて食べる風習があります。

 厳しい寒さの中、青函連絡船を利用するお客さんの体を少しでも温めようと、屋台のおかみさんが味噌に生姜をすりおろして入れたものをお客さんに提供したのが始まりとされています。

(生姜味噌おでん)
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 竹輪、大根、こんにゃく、さつま揚げ(平天・ボール)、たまご、昆布など、様々な具が入っていました。

(すりおろし生姜入り味噌だれ)
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 こちらが「すりおろし生姜入り味噌だれ」です。

 甘めの味噌に、粗めにすりおろした生姜をたっぷり入れた味噌だれです。

(こんにゃくと味噌だれ)
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 こんにゃくに生姜入り味噌だれをかけていただきました。

 昆布や魚粉の旨みを生かした、上品であっさりした味のおでんだしに、生姜入り味噌だれの味がよく合いました。

(さつま揚げと味噌だれ)
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 さつま揚げにも味噌だれをつけてみました。

 からしのようにも見えますが、生姜がたっぷり入った甘めの味噌なので、たっぷりかけていただくことができます。

 確かに、身も心も温まりました。

 この「青森おでん」とよく似た食べ方として、おでんに生姜醤油をつけて食べる「姫路おでん」(兵庫県姫路市)があります。


嶽きみの天ぷら

 「嶽きみ(だけきみ)」は、とうもろこしのブランド名です。

 岩木山麓の嶽(だけ)高原で栽培・収穫されたものだけが「嶽きみ」と呼ばれます。

 「嶽きみ」の特徴はとても甘いことで、採れたてのものだと糖度が18度以上にもなり、メロンかそれ以上の甘さがあります。

 その「嶽きみ」の天ぷらをいただきました。

(嶽きみの天ぷら)
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 とうもろこしの実の部分を包丁でそぎ切り、衣をつけて揚げたものです。

(嶽きみの天ぷら(中身))
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 いただくと、スイーツのように甘いとうもろこしの天ぷらでした。

 天ぷらにし(高温で加熱し)、衣にほのかな塩味をつけることで、より一層とうもろこしの甘みが引き出されているように感じました。

 「富士には月見草、津軽富士には嶽きみがよく似合う」


黒石つゆ焼きそば

 最後に黒石名物「つゆ焼そば」を注文しました。

 「つゆ焼そば」が提供される前に、「つゆ焼そば」と「黒石つゆ焼そば」の説明資料を見せていただきました。

(「黒石焼そば」・「黒石つゆ焼そば」の始まり)
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 その説明資料には、
・「黒石焼そば」は戦後まもなく、市内の製麺所で中華麺の素材で作られた
・当時、麺裁断用の刃がうどん用のものしかなかったので、特有の「太平麺(ふとひらめん)」が生まれた
・昭和30~40年代には、市内のあちこちに何十軒もの焼きそば店が点在していた
・当時は10円単位で買うことができ、三角に丸めた経木や紙に包んで提供された
・「黒石焼そば」は半世紀以上前から市民に愛された黒石伝統の食文化
・「黒石つゆ焼そば」は、昭和30年代後半、中郷中学校の傍にあった「美満寿(みます)」という食堂で、学校帰りの子供たちが注文した焼きそばに、中華そばのつゆをかけて提供したのが始まりと言われている
・当時「もつけ(お調子者)」の子供たちは、テーブルに置いてあったウスターソースをこれでもかと大量に入れ、むせるほど酸っぱくして食べたというエピソードが知られている
と紹介されていました。

 「焼きそばを経木や紙に包んで提供された」というお話は、群馬県桐生市で「ポテト焼きそば」や「子供洋食」を食べた時にお店の御主人から伺ったお話とまったく一緒で、昭和30~40年代の光景が目に浮かぶようでした。

(「つゆ焼そば」のお召し上がり方)
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 「つゆ焼そば」の食べ方についても紹介されていました。
・当店では、焼きそばの麺をソースで炒め、出汁は和食屋ならではの本鰹節を使っている
・まずは、かき混ぜる前にお出汁を味わっていただきたい
・麺を食べ進むと、徐々にソースが浸み出してきて、鰹出汁とソースの不思議な美味しさに変化してくる
・サクサクの舞茸天とプリプリの海老天も当店の特徴

 知れば知るほど「つゆ焼そば」への期待が高まりました。

 その期待感が頂点に達した時、タイミングを見計らったかのように「つゆ焼そば」が運ばれてきました。

(つゆ焼そば)
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 うどんのような麺に、透き通った汁、そして舞茸と海老の天ぷら。

 「えっ、これのどこが焼きそば?」と思いました。

(つゆ焼そば(麺・海老天・舞茸天))
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 まずはそのままの状態でおつゆをいただいてみると、確かにうどんやそばに使われる鰹節ベースの上品な和風だしでした。

 ところが、太さはうどん、見た目は蕎麦のような麺をいただくと、味はソース焼きそばなのです。

 ひととおり味わったところで、麺と汁を混ぜてみました。

 すると、汁の色が濃くなり、味も甘い焼きそばソースの味にどんどん近づいていきました。

 こうなると、もう元の味には戻れません(笑)

 食べ進めるうちに、焼きそばの証拠となる具が登場しました。

(つゆ焼そば(豚肉・玉ねぎ))
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 麺と一緒に炒められた豚肉と玉ねぎです。

 この写真から、汁の色がソースで濃くなり、焼きそばを炒めた際の油もにじみ出ていることがわかります。

 和風だしのそば・うどんが、かき混ぜながら食べ進めるうちにソース焼きそばに近づいていく、味の変化も楽しめる料理です。

 「つゆ焼そば」について、お店の方に直接お話を伺ったところ、焼きそばは前の日にあらかじめ作っておき、時間をかけて麺にソースを馴染ませているとのことでした。

 作りたての焼きそばに汁を注ぐと、焼きそばのソースがそのまま汁に溶け込んでしまうのだそうです。

 意外と手間暇かけられた料理であることがわかりました。


七戸産長芋の紫蘇漬け

 つゆ焼そばに、漬物が添えられていました。

(七戸産長芋の紫蘇漬け)
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 青森県七戸(しちのへ)産長芋の紫蘇漬けです。

 七戸町は青森県内有数の長芋の産地で、昼夜の寒暖差により、糖度の高い長芋が採れます。

 この長芋を赤紫蘇の梅酢に漬けた紫蘇漬けは、ほんのりピンク色をして、ほどよい紫蘇の風味があり、シャキシャキした食感も楽しめました。

 黒石のつゆ焼きそばを中心に、津軽の郷土料理を堪能しました。

 お店の方にお世話になったお礼を申し上げ、お店を後にしました。


まとめ

 再び黒石駅に戻り、同駅から弘南鉄道・弘南列車を利用して弘前駅へと向かいました。

(弘南鉄道・弘南線列車(黒石駅))
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 列車があと数メートル後進したら、雪に埋もれてしまいます(笑)

 私が乗車したのが土曜日の夜だったこともありますが、列車の乗客が私1人になる区間もありました。

(弘南線列車・車内)
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 ただ、車内広告には、各種イベントや地元の高校とのコラボレーション企画など、弘南鉄道を盛り上げる様々な取組みがなされており、地元で愛されている鉄道であることがよく伝わってきました。

 私からは、弘前駅から弘南鉄道・弘南線を利用して黒石市を訪問し、全国的にも珍しい「黒石つゆ焼きそば」や津軽の郷土料理を味わうグルメ旅をおすすめします。


<関連サイト>
 「弘南鉄道
 「蔵よし」(青森県黒石市横町13)

<関連記事>
 「青森のソウルフード探訪記1 -万茶ンの太宰ブレンド・りんごジュース自動販売機・イギリストースト-
 「青森のソウルフード探訪記2 -味噌カレー牛乳ラーメン・味噌カレー牛乳煎餅・味噌バターカレー牛乳どらやき-
 「青森県弘前市のアップルパイ -弘前アップルパイめぐり-
 「群馬の食文化の特徴を探る(6)-ポテト入り焼きそばと子供洋食・スタイルブレッド・築地銀だこ・焼きまんじゅう・赤城山麓 徳川埋蔵金-

2025年8月24日 (日)

青森県弘前市のアップルパイ -弘前アップルパイめぐり-

「アップルパイの街」・「タルトタタンの街」弘前

 2025年3月、五所川原駅から五能線と奥羽本線を乗り継ぎ、弘前駅に到着しました。

(奥羽本線・普通列車(弘前駅ホーム))
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 発車メロディーが津軽三味線で演奏される「津軽じょんがら節」で、旅の情緒を感じました。

 駅構内で、JR東日本秋田支社のキャラクター「つがにゃん」のねぷた()を見つけました。
 ※弘前市では「ねぷた」と呼ばれます。

(つがにゃんねぷた)
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 「津軽のにゃんこ」です。

 「また現れたな、つがにゃん!」

 秋田と青森を結ぶリゾート列車「リゾートしらかみ」で「オムレツ雪人参ビーフシチュー弁当」をいただいた際、板海苔にプリントされた「つがにゃん」に出会い、きれいに食べ切ったはずなのに…(笑)

(セイリング「オムレツ雪人参ビーフシチュー弁当」)
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 今回は弘前のアップルパイが目当てなので、まずは情報を入手すべく、弘前駅1階の「弘前市観光案内所」へ伺いました。

(弘前駅)
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 観光案内所で、弘前市内のアップルパイ販売店・提供店が掲載された「弘前アップルパイガイドマップ」をいただきました。

(弘前アップルパイガイドマップ(表紙))
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 「弘前アップルパイガイドマップ」は、弘前市立観光館・弘前市観光案内所の観光コンシェルジュが「りんごの街・弘前」のアップルパイ取扱店を調査し、実際に試食された感想をもとにアップルパイデータやPRコメントを掲載したガイドマップです。

 アップルパイデータは、甘味・酸味・シナモンの3要素の強弱・有無により、5段階で示されており、お好みのアップルパイを見つけることができます。

(弘前アップルパイガイドマップ)
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 (弘前観光コンベンション協会「弘前アップルパイガイドマップ(第19版 2024.4月)」の一部を加工・引用)

 掲載店舗は40店舗にものぼり、街を挙げてアップルパイの振興に取り組んでおられる様子が伝わってきました。

 さらに、弘前観光コンベンション協会では、りんごスイーツとして「タルトタタン」のガイドマップ「弘前タルトタタンガイドマップ」も作成されています。

(弘前タルトタタンガイドマップ(表紙))
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 弘前市内のアップルパイとタルトタタン、制覇するためには何度も通う必要がありそうです(笑)


洋菓子工房ノエルの「りんごたっぷりパイ」と「りんごジュース」

 弘前のアップルパイを味わうべく、弘前駅周辺のアップルパイ巡りをしました。

 最初に伺ったのが、弘前市品川町にある「洋菓子工房ノエル」です。

(「洋菓子工房ノエル」店舗)
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 店内にはイートイン(カフェ)スペースもあるので、こちらを利用しました。

 りんごの街の洋菓子屋さんだけに、アップルパイ以外にも、アップルパフェ、「りんごの想い(りんご入りチョコレートケーキ)」、アップルシューロール、リンゴのクッキーシューなど、りんごを使った様々なお菓子が用意されていました。

 色々と食べたいところですが、このお店で最も有名な「りんごたっぷりパイ」をケーキセットでいただきました。

(洋菓子工房ノエルのケーキセット)
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 「りんごたっぷりパイ」にドリンク「りんごジュース」を付けた、りんごづくしのケーキセットです。

(洋菓子工房ノエルの「りんごたっぷりパイ」)
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 「りんごたっぷりパイ」は、その名のとおり、パイの中に大きな角切りりんごがたっぷり詰められたアップルパイです。

(洋菓子工房ノエルの「りんごたっぷりパイ」(角切りりんご))
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 甘く煮詰められたりんごは、やわらかくサックリとした食感で、ほどよいシナモンの香りも楽しめました。

 パイは薄く、しっとりとした食感で、リンゴ煮の味を引き立てていました。

 りんごが主役のアップルパイでした。

 「りんごジュース」は、青森県産りんごを使った「希望の雫」を提供していただきました。

 「希望の雫」は、降霜・降ひょう被害により市場に出荷できないりんごの生果が大量に発生した際、りんご農家の支援策の一環として被害果のみを使用して商品化されたりんごジュースです。

 その商品名には、希望を失わず、前向きに生産に励むりんご農家の意欲と、雫のようにみずみずしい新鮮なジュースという意味が込められています。

(りんごがデザインされたコースター)
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 コップを置くコースターにも、りんごの刺繡が施されていました。

 まさにりんごづくしのひとときを楽しみました。


茶房CoCoの「アップルパイ」

 続いて向かったのが弘前駅前の「茶房CoCo」です。

 3月でも積雪があり、雪に慣れていない私は、弘前市内の徒歩での移動が大変でした。

(弘前駅前の積雪と歩道)
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 除雪されているところ、雪が少ないところを選びながら歩きました。

 短い距離でも長く感じ、ようやくお店に到着しました。

(「茶房CoCo」店舗)
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 メニューを見ると、アップルパイとタルトタタン、どちらも用意されていました。

 ドリンク付きのデザートセットにできることがわかったので、アップルパイ・アイスクリーム添えとアップルジュースのセットを注文しました。

 茶房CoCoのデザートセットです。

(茶房CoCoのデザートセット)
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 アップルパイは熱々の状態で提供していただきました。

(茶房CoCoの「アップルパイ・アイスクリーム添え」)
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 アップルパイにバニラアイスが添えられ、お得感と贅沢感がありました。

 アップルパイに近づいてみましょう。

(茶房CoCoの「アップルパイ」)
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 パイはカリカリで香ばしく、焼きたてのクロワッサンのような感じでした。

 パイの中には、よく煮詰められたりんご(りんご煮)がたっぷり詰められていました。

 りんご煮のシナモンは控えめで、ねっとり甘い焼きいものような感じに仕上げられていました。

 ナイフとフォークでいただく、高級感あふれるアップルパイでした。

 地元・青森県産のアップルジュースと一緒に、青森のりんごをたっぷり味わいました。


<関連サイト>
 「きてみて、ひろさき。ここみて、弘前」(弘前観光コンベンション協会)
 「洋菓子工房ノエル」(青森県弘前市品川町2-2)
 「JAアオレン(希望の雫)」(青森県農村工業農業協同組合連合会)
 「茶房CoCo」(青森県弘前市駅前町6-1)

<参考文献>
 「弘前アップルパイガイドマップ」弘前観光コンベンション協会

2025年8月17日 (日)

津軽鉄道食景色4 -ぼんじゅそば・太宰治と若生おにぎり・ストーブ列車とスルメ・吉幾三の「津軽平野」・鉄道ジャーナルと津軽鉄道-

JR五所川原駅と津軽鉄道・津軽五所川原駅

 2025年3月、秋田駅からリゾート列車「リゾートしらかみ」に乗車し、五所川原駅で下車しました。

 隣接する津軽鉄道のグルメとイベント列車「ストーブ列車」を楽しむためです。

(五所川原駅(JR)と津軽五所川原駅(津軽鉄道))
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 写真手前(左側)がJR五所川原駅のホーム、写真奥(青い屋根のホーム)が津軽鉄道・津軽五所川原駅のホームです。

(津軽五所川原駅(出口))
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 JRの五所川原駅と津軽鉄道の津軽五所川原駅の通路は一部併用されているので、それぞれの鉄道会社の改札口(出入口)があります。

 私はJR線を利用して到着したため、JR五所川原駅の改札から出場しました。

 出てすぐの待合室の椅子がユニークでした。

(五所川原駅の待合室)
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 列車の座席そのままです(笑)

 奥には運転席までありました。


津軽鉄道本社と「コミュニティカフェ でる・そーれ」

 津軽鉄道・津軽五所川原駅のすぐ近くに津軽鉄道本社があります。

(津軽鉄道本社と「コミュニティカフェ でる・そーれ」)
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 津軽鉄道本社1階には「サン・じゃらっと」と呼ばれる地域交流施設があり、その中に飲食コーナー「コミュニティカフェ でる・そーれ」があります。

 こちらのカフェで、昼食をいただくことにしました。


ぼんじゅそば

 「コミュニティカフェ でる・そーれ」に入店し、テーブル席に御案内いただきました。

 メニューを見ると津軽の「ぼんじゅそば」がありました。

 津軽ならではの郷土料理をいただきたいと思い、この「ぼんじゅそば」に「若生(わかおい)おにぎり」がセットになった「ぼんじゅそば若生セット」を注文しました。

 「ぼんじゅそば(梵珠そば)」は、津軽地方を中心に食べられている「津軽蕎麦」の1つで、「生地で寝かせる」、「製麺して寝かせる」、「茹でて寝かせる」と、それぞれの工程の終わりにゆっくり時間をかけて「寝かせる」ことに特徴があります。

 お店の方が「ぼんじゅそば」の説明書きを持ってきてくださいました。

(「ぼんじゅそば」とは?)
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 名前の由来は、そば作りに青森市浪岡大釈迦地区にある標高468mの「梵珠(ぼんじゅ)山」の地下水が使用されており、その良質の水をもたらす梵珠山に感謝の気持ちを込めて命名されたそうです。

 それぞれの工程の終わりに「寝かせる」ことから、つくり始めから出来上がって出荷されるまで3日も要する、大変手間のかかる茹でそば(熟成そば)です。

 料理が運ばれてくるまでの間、店内を見回していると、「旨い駅そば大百科」という本が配架されていました。

(「旨い駅そば大百科」「旅と鉄道」編集部)
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 もしかすると、こちらのお店も掲載されているのではないかと思い、パラパラとページをめくってみると、予想どおり紹介されていました。

(「旨い駅そば大百科」で紹介されている「ぼんじゅそば」と「津鉄汁」)
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 津軽五所川原駅の看板メニューとして「ぼんじゅそば」と「津鉄汁(長芋入りの丸いすいとん、青森シャモロック、人参、舞茸、ごぼう、白髪ねぎなど具だくさんの醤油仕立てのすまし汁)が紹介されていました。

 しばらく経って、料理が運ばれてきました。

(ぼんじゅそば若生セット)
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 ぼんじゅそばと若生おにぎり、そして小鉢(ひじき煮)のセットです。

 太宰治の出身地にちなみ、「はしいれメロス」と書かれた「箸入れ」に割り箸が入っていました。

(ぼんじゅそば)
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 ぼんじゅそばは、刻みねぎと天かすがのせられた、汁そばでした。

 麺が時間をかけて寝かせた熟成麺だけあって、とてもやわらかく、煮干しベースのつゆとよくからんで美味しくいただきました。


若生おにぎり

 続いて、若生おにぎりを御紹介します。

 この若生おにぎりも提供時に説明書きを添えてくださいました。

(What’s? 若生おにぎり)
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 「若生(わかおい)」は1年ものの昆布のことで、津軽半島沿岸で春一番に収穫して干したものです。

 この昆布でごはんを包み、握ったものが若生おにぎりです。

 注意しなければならないのは、その食べ方です。

 昆布で巻かれているので、昆布の繊維に逆らうと噛み切れないのです。

 おにぎりを縦に持って食べると、繊維に沿ってうまく食べられるように作られています。

(若生おにぎり)
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 若生おにぎりを縦に持っていただきました。

 昆布の旨みと塩気が効いた、津軽ならではのおにぎりでした。

 「太宰治と若生のおにぎり」という説明書きも見せていただきました。

(太宰治と若生のおにぎり)
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 津島美智子さん(太宰治の妻)の回想録で、
 「炊きたての飯をワカオイという薄い昆布の間にはさんで両掌でヒタヒタおさえて、プツッとワカオイをかみきって食べるその歯ごたえ、自然の塩味、これが彼にとって最高の津軽風おむすびであった」
と紹介されています。

 回想録を読みながら若生おにぎりをいただくと、太宰治から「うまいだらう?」と話しかけられてゐるやうな気持ちになり、恥の多い生涯を送ってきた私の心にしみました。


ストーブ列車とスルメ

 昼食をいただいた後、津軽五所川原駅から、冬の津軽鉄道のイベント列車「ストーブ列車」に乗ることとしました。

(津軽五所川原駅)
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 出発時刻の関係から、津軽五所川原駅から津軽中里駅までの全線を往復するストーブ列車に乗車することはできませんでしたが、時刻表を読み込んだ結果、「津軽五所川原駅から中間点の金木駅まで普通列車で行き、同駅で行き違う津軽五所川原駅行き(戻り)のストーブ列車に乗る方法がある」とひらめきました。

 うまくいくかどうかはわかりませんでしたが、とにかくやってみようと、駅で金木駅までの往復乗車券を買い、津軽中里行きの列車を待ちました。

 駅構内にストーブ列車で焼いて食べる「スルメ」についての「お願い」が掲示されていました。

(スルメ事前購入のお願い)
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 「ストーブ列車で車内販売されているスルメや日本酒は、車内販売スタッフが席までお伺いするのに時間がかかる場合がございますので、車内販売と同じ商品を販売している駅の売店で事前購入をお願いします」という内容でした。

 途中駅から乗り込もうとしている私にとっては、とりわけ大事なお知らせであり、売店でスルメを事前購入しました。

(スルメ(袋詰め・売店商品))
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 袋詰めのスルメと、五所川原から金木までの往復乗車券です。

 きっぷが昔ながらの硬券(厚みのある紙のきっぷ)で、ハサミでパンチ(切り込み)されているのは、今となってはとても珍しいです。

 列車が出発するまでの間、津軽鉄道の列車を見学しました。

(津軽鉄道・旧列車)
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 かなり老朽化した、かつて活躍したであろう列車が置かれていました。

(津軽鉄道・走れメロス号)
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 こちらが今回乗車した津軽中里行きの普通列車で、愛称は「走れメロス」号です。

 太宰治の生家「斜陽館」がある金木駅へ行くのにぴったりの列車です。

(津鉄文庫)
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 列車内には、誰でも自由に読むことができる本棚「津鉄文庫」がありました。

(スルメとともに津軽五所川原駅出発)
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 出発時刻の13時30分となり、スルメと一緒に津軽五所川原駅を出発しました。

(十川駅(鉄道芸人 太田トラベル駅))
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 十川駅では、ネーミングライツによる副駅名「鉄道芸人 太田トラベル」と記載された駅名標を見かけました。

 13時51分、金木駅に到着しました。

(走れメロス号とストーブ列車(金木駅))
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 向かいのホームには13時56分発、津軽五所川原行きのストーブ列車が待っていました。

(ストーブ列車と金木駅)
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 乗り継ぎに5分もあればと、金木駅の駅舎に寄り、「エキタグ」のデジタル駅スタンプをゲットした上で、ストーブ列車が待つホームへと走りました。

 ホームは、あふれんばかりのお客さんで埋め尽くされており、「これは乗るだけで精一杯だ」と思いつつ、列の最後尾に並びました。

 すると前側の車両におられた車掌さんが私に大声で、「個人の方ですかー?それならこちらの車両からお乗りくださーい」と誘導してくださいました。

 大勢の人々は、中国から来られた団体客で、後側の団体専用車両から乗車されたようでした。

 前側の個人客向けの車両入口で車掌さんからストーブ券(1,000円)を購入し、無事ストーブ列車に乗ることができました。

 ストーブ列車が金木駅を出発後、車掌さんが客車のダルマストーブに石炭を継ぎ足しに来られました。

(車掌がダルマストーブに石炭を継ぎ足す様子)
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 ストーブ列車の車掌さんは、ダルマストーブの火加減を頻繫に点検し、石炭をくべる必要があるのです。

 火力が強まったところで、アテンダントさんが来られ、乗客が購入したスルメを炙り始められました。

(ダルマストーブでスルメが炙られる様子)
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 スルメがきれいに伸ばされた状態で、ストーブの上で炙られています。

 私が用意したスルメも、アテンダントさんにお渡しし、ストーブで炙っていただきました。

 アテンダントさんが軍手をはめた手で、網の上にスルメを押し付けて(伸ばして)おられる姿が印象的でした。

(アテンダントがスルメを炙る様子)
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 軍手越しとはいえ、「手を網の上にのせて熱くないのかな」と見ている方が心配になりました。

 素人には決してマネはできない荒技です(笑)

 最初に炙ってやわらかくなったスルメの胴体が私のところに運ばれてきました。

 アテンダントさんから「(スルメが入っていた)ビニール袋を広げて持っておいてください」と言われ、私がビニール袋を広げて持っていると、アテンダントさんがスルメの胴体を約1cm間隔の食べやすい大きさに手で裂いて、次々と入れてくださいました。

 続いてスルメのゲソ(足)を持ってこられ、足1本ごとに裂いて、私のビニール袋に入れてくださいました。

 スルメを裂く際に、カスがいっぱい床の上に落ちましたが、それもストーブ列車ならではの微笑ましい光景です。

 「ほかにも大勢のお客さんがおられるのに、こんなに丁寧にしてくださるとは」と感動しました。

 車内販売(スルメなどの販売)はこの後で来られたので、時間が限られていた私にとっては、スルメを事前に購入しておいて正解でした。

(津軽鉄道乗車券・ストーブ列車券・スルメ)
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 炙られてやわらかく、表面がカリッとなったスルメを袋から取り出し、いただきました。

(ストーブ列車でいただくスルメ(津軽飯詰駅付近))
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 香ばしく、噛みしめるほどに味が出るスルメでした。

 岩木山が見え、ストーブ列車の旅も終盤に差し掛かった頃、アテンダントさんが車内放送で歌を披露してくださいました。

 地元・青森県五所川原市出身の吉幾三さんの名曲「津軽平野」です。

 「♪つがるぅー へいやぁにぃー ゆきふぅーるぅー ころはヨー」

 津軽弁訛りの歌声は、車窓から眺める景色と相まって、深く心にしみました。

 名残惜しさを感じつつ、ストーブ列車は津軽五所川原駅に到着しました。

(ストーブ列車(DD352)の回送(津軽五所川原駅))
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 「♪降るな降るなよ 津軽の雪よ 春が今年も 遅くなるよ」
 「♪ストーブ列車よー あいたや親父(おどう)」

 またいつかストーブ列車に乗りに「よし、行くぞう!」


鉄道ジャーナル社からのプレゼント

 私が今回、津軽鉄道のストーブ列車に乗りたいと強く思ったきっかけは、鉄道雑誌「鉄道ジャーナル(2025年3月号)」の「冬に本領 風雪の津軽鉄道」という記事を読んだからでした。

 この記事では、津軽鉄道のストーブ列車に関する様々な情報や魅力が紹介されており、私の心は動かされました。

 そこで同誌の懸賞クイズ「RJクイズ」を解き、はがきにクイズの答えと一緒に記事の感想も書いて、鉄道ジャーナル社へ郵送(応募)しました。

 賞品は「図書カード5000円券=1名様」、「鉄道ジャーナル特製図書カード1000円券=15名様」となっていました。

 ただ、私の場合、賞品目当てというよりは、休刊となる鉄道ジャーナル社へのお礼と感想をお伝えしたい気持ちからお送りしたものでした。

 すると、後日、鉄道ジャーナル社から当選商品が郵送されてきたのです!

(鉄道ジャーナル社からの当選通知と図書カード)
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 しかも開封してみると、当選のお知らせとともに、5000円券が同封されていたので、さらにびっくりしました。

 そこで、次号の「鉄道ジャーナル」を読み終えた際、懸賞クイズの応募と記事の感想という名目で、お礼のはがきをお送りしました。

 月刊「鉄道ジャーナル」は2025年6月号をもって休刊となりましたが、綿密な現地取材に基づく詳細で情報満載の記事は、実際に列車の乗ってみたいと思わせてくれるものばかりでした。

 鉄道ジャーナル社様には、この場をお借りして、改めてお礼申し上げます。


<関連サイト>
 「津軽鉄道」(青森県五所川原市字大町39)
 「コミュニティカフェ でる・そーれ」(青森県五所川原市大町39)
 「ヤマホ竹鼻製麵所(ぼんじゅそば)」(青森県五所川原市金山字亀ヶ岡46-8)

<関連記事>
 「津軽鉄道食景色1 -津鉄汁セット,ストーブ列車石炭クッキー-
 「津軽鉄道食景色2 -若生おにぎり,中まで赤~いりんごジャム,干し餅,五農産米-
 「津軽鉄道食景色3 -東北・北海道新幹線車内で津軽鉄道「ストーブ弁当」を味わう-

<参考文献>
 「鉄道ジャーナル 2025年3月号 -冬に本領 風雪の津軽鉄道-」鉄道ジャーナル社
 「旨い駅そば大百科」「旅と鉄道」編集部
 永松 潔・高橋遠州「テツぼん 13」小学館ビッグコミックススペシャル
 作/川上健一・画/ひきの真二「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」小学館ビッグコミックス
 作/やまさき十三・画/北見けんいち「釣りバカ日誌 82 津軽鉄道冬景色!?の巻」小学館ビッグコミックス

2025年7月20日 (日)

秋田の食文化探訪3 -秋田の塩鮭「ボダッコ」(汐鮭定食・ぼだっこおむすび)、秋田で「ボダッコ」と呼ばれる理由-

秋田の「ボダッコ」

 2025年3月7日に秋田県秋田市を訪問しました。

 秋田市の繁華街「川反(かわばた)通り」沿いにある郷土料理店「お多福」で、店主さんや板前さん、そして常連のお客さんと秋田の食文化(郷土料理)の話を中心に、いろんなお話をさせていただきました。

(「お多福」店舗)
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 旅の話題になった際、旅好きの店主さんが「旅を終え、秋田へ戻って来た際、真っ先に食べたいと思うものは、秋田の米(ごはん)とボダッコだなぁ」とおっしゃいました。

 秋田の「ボダッコ」。

 プロの料理人が地元で一番食べたいと思う料理。

 気になった私は、店主さんに「ボダッコって何ですか」と伺うと、塩鮭のことだと教えてくださいました。

 「ボダッコ」は、周りの常連さんも御存知で、知らないのは私だけでした。

 そして店主さんの「ボダッコ」談義が始まりました。

 塩辛い塩鮭のことを、秋田ではなぜ「ボダッコ」と呼ぶのか。

 その由来については、①塩鮭が「牡丹(ぼたん)の花のように鮮やかな色をしているから、②囲炉裏やかまどにくべる「ほだ木」に似ているから、③塩鮭を「ほだ木」でくるんで保存した(隠した)から、といったいくつかの説があるそうです。

 そして「私が確信している説は…」と店主さんのお話が続きました。

 その説とは、
 「常陸(茨城)から出羽(秋田藩)へやって来られた佐竹のお殿様が、常陸にはイノシシがいたが、雪深い秋田にはイノシシがいないことから、イノシシの肉(ぼたん)のように見える塩鮭を(故郷のぼたん肉をイメージされて)「ぼたん」(のちに「ボダッコ」)と呼ぶようになった」

 「秋田では、身近なものや愛着のあるものを表現する際、語尾に「○○っこ」とつける風習(方言)があり(※)、「ぼたん」と呼ばれた塩鮭もやがて「ボダッコ」と呼ばれるようになった」
というものでした。
 ※「どじょっこ」、「ふなっこ」、「わらしっこ」、「あねっこ(漬け)」など

 「それならこのお店でもボダッコをメニューに加えてくださいよ!」と思わず言いそうになりましたが、何とか抑えました(笑)

 秋田では海産物として「タラの子、すじこ、ボダッコ」がよく食べられているそうです。

 (童謡「どじょっこ ふなっこ」をイメージして)
 「♪タラっこだーの ボダッコだーの たーべてみたいと おもうべな」

 続いて常連さんから「秋田へ来るたびに「ぼだっこおむすび」を買って食べる」というお話があったので、私が「そのおむすびはどこで売られているのですか?」と尋ねると、「コンビニで普通に売ってますよ」とのことでした。

 伝統的なボダッコは、とても塩辛く、サイコロ切りの鮭でたくさんのごはんが食べられたそうです。

 秋田県大仙市のファーマーズマーケット「しゅしゅえっと まるしぇ」の農産物直売所では、「げきからぼだっこ飯」と呼ばれる、200グラムのごはん(あきたこまち)の上に、たった5グラムの「ぼだっこ」がのせられた、さみしすぎるシャケ弁当も販売されているそうです。

 秋田ではおむすびや弁当で売られるほど親しまれている「ボダッコ」。

 とても興味深い情報を入手できました。


秋田市民市場

 翌朝(2025年3月8日)、川反通り近くの宿泊先から「秋田市民市場」を目指しました。

(旭川・川反通り(四丁目橋付近))
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 川反通りから旭川の四丁目橋を渡り、東へ(JR秋田駅方向へ)まっすぐ進んだところに「秋田市民市場」があります。

(秋田市民市場)
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 「秋田市民市場」は、地元の鮮魚や野菜、秋田の名産品などが揃う市場施設です。

 秋田駅から近く、早朝5時から営業されているお店もあります。

 入口に場内マップがありました。

(秋田市民市場 場内マップ)
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 食品、雑貨、青果、乾物、塩干物、水産物、飲食店、さらには業務スーパー、ダイソー、コンビニ、歯医者さんまでいろんなお店が揃っています。

(秋田市民市場 乾物・青果通り)
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 こちらは乾物・青果通りの様子です。

(秋田市民市場 水産通り)
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 こちらは水産通りの様子です。

 塩鮭(汐鮭)もたくさん売られていました。

 ただ、それと同じくらいキングサーモンも売られており、いったいどれが「ボダッコ」なのか(どちらもボダッコと呼ばれるのか)迷いました。

 あと、鮭の切り方も、「東京切り(一般的な斜め切り)」と「秋田切り(通称「ボダッコ切り」、(ほだ木の木切れのように)部位ごとに分厚く切る)」の2種類があることもわかりました。

 いずれにせよ、秋田の人々は鮭やサーモンが大好きなことがよくわかりました。

 施設の至る所で「なんもだー!」と言葉を目にしたのですが、これは「ありがとう」と言われた時に返す秋田の方言で、「どういたしまして」とか「気にしないで」といった意味があるそうです。

 北海道の「なんも なんも」という方言の使い方とよく似ているなと思いました。

 おもてなしや感謝の気持ちが込められた愛情いっぱいの言葉です。


朝定食(汐鮭)

 「ボダッコ(塩鮭・汐鮭)」を求めて、秋田市民市場内の飲食店「まんま」へ伺いました。

(まんま)
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 朝7時の開店と同時にお店に入りました。

 メニューを見ると、まぐろ丼、銀たら煮付定食、赤魚の煮付定食、サバのみそ煮定食、開きサバ定食、開きホッケ定食、キングサーモンの塩焼き定食、塩鮭定食、ピリ辛さんま焼き定食、焼肉定食、とんかつ定食、カキフライ定食と、魚料理を中心に構成されていました。

 このほか、朝限定メニューとして、モーニングセット(ハムエッグ)・朝定食・納豆定食の3種が、昼限定メニューとして日替りランチが用意されていました。

 朝定食のメインのおかずは、ホワイトボードに記載されていました。

(「まんま」の朝定食メニュー)
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 汐鮭、ピリ辛サンマ、ほっけの3種類から1つ選べるようです。

 こちらのお店でも「塩鮭(汐鮭)」と「キングサーモン」が提供されていました。

 キングサーモンは脂がのっているので魅力的ですが、「ボダッコ」は塩鮭(汐鮭)のことだろうと思った私は、「朝定食」の「汐鮭」を注文しました。

 しばらく待っていると、テーブルに朝定食が運ばれてきました。

(「まんま」の朝定食(汐鮭))
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 これぞ日本の朝食。

 汐鮭をメインに、ごはん、味噌汁、切り干し大根、マカロニサラダ、野菜サラダ、たくあん、そして熱いお茶という構成です。

(汐鮭)
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 これはいわゆる「東京切り」の汐鮭です。

 塩辛いのを覚悟していただきましたが、想像していたほど塩辛くなく、食べやすい汐鮭でした。

 近年の健康(減塩)志向や、塩辛い鮭だと食べきれないといった理由があるのかもしれません。

 汐鮭を一口サイズ(角切り)にし、ごはんの上にのせてみました。

(ごはんと汐鮭)
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 ボダッコはこんな感じでごはんと一緒に食べられるのでしょう。

 ごはんと味噌汁と塩鮭(汐鮭)は最高の組合せで、旅行(とりわけ海外)から帰って真っ先に食べたいのが「ボダッコ」だとおっしゃった「お多福」の店主さんのお気持ちがよく理解できました。


ぼだっこおむすび

 食事を終え、お店の隣にコンビニ(ファミリーマート)があったので立ち寄りました。

 おにぎりのコーナーを見てみると、「ぼだっこ(塩辛い鮭)」と表示されたおむすびが販売されていたので、購入しました。

 その後、歩いて秋田駅へ行きました。

(秋田駅)
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 秋田駅構内に秋田米「サキホコレ」にちなんだ合格祈願鳥居が設置されていました。

(「サキホコレ」受験生合格祈願鳥居)
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 「頑張れ受験生!秋田米「サキホコレ」を食べて咲き誇れ」という願いが込められています。

 秋田駅構内のコンビニ(NewDays)に立ち寄ってみました。

(コンビニで販売されている「ぼだっこおむすび」)
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 こちらのお店にも「ぼだっこおむすび」がありました。

 観光客向けに、
 「ぼだっこ 秋田の塩辛い鮭です Akita Salty Salmon」
 「ぼだっこ…秋田弁で「塩辛い鮭」のこと」
 「その名の由来は、猪の肉の色(ぼたん)に似てるから」
 「牡丹(ボタン)の花の色に似てるから、など諸説あります」
と説明書きまでありました。

 「ぼだっこ」とは別に「紅鮭」のおむすびも販売されていたのも興味深かったです。

(ぼだっこおむすび)
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 こちらが今回購入した「ぼだっこおむすび」です。

 ほかにも秋田県内のコンビニ各店で販売されていることと思います。

 一般的な鮭おにぎりとの違いは、
・鮭が若干塩辛く仕上げられていること
・「大きめの鮭フレーク」か「鮭のかたまり」が入っていること
でした。


まとめ(秋田で「ボダッコ」と呼ばれる理由)

 秋田の郷土料理店での会話から、秋田の「ボダッコ」を知り、味わうことができました。

 今回の記事を作成しながら、改めて「ボダッコ」の意味や由来について考えてみたのですが、その際ふと思い浮かんだのが民俗学者・宮本常一さんの「塩魚(塩鮭)」のお話でした。

 宮本常一さんのお話の中で、「昔の鮭は、表面に塩が白く吹くほど塩辛くされていたが、その理由は鮭を食べるためではなく(鮭に付いた)塩を入手したかったから」と紹介されています。

 海から遠く離れた山の中で暮らす人々にとって、塩はとても貴重なものでした。

 山で木を切って、その木(薪・たきぎ)を川へ流し、河口(海)へと運びます。

 その河口にたどり着いた薪を使って、浜で海水を焼いて塩を作り、山へ持ち帰ったのです。

 江戸時代以降、船で瀬戸内海の塩が運ばれてくるようになってからも、山に住む人々は薪を町家の燃料として売りさばき、そこで得たお金で塩を買って帰るという生活を送られていたそうです。

 これらの話をまとめると、
・塩を得るためにとても辛い塩鮭が作られた
・薪は(山に住む人々にとっても、海に住む人々にとっても)塩を焼くために欠かせない燃料だった
・塩の流通が盛んになってからも、薪を売って得たお金で塩を入手した
という塩と人々とのかかわりが明らかになります。

 さらに、「ほだ木」が薪として囲炉裏やかまどにくべる燃料にされたことまで考慮すれば、どういう経緯で塩辛い塩鮭が作られるようになり、それがなぜ秋田で「ボダッコ」と呼ばれるようになったのかについても明らかになるのです。

 つまり、秋田で「ボダッコ」と呼ばれる理由は、
・塩を得るため、塩辛い鮭が作られるようになった(鮭の保存性を高める効果もあった)
・「薪」や「ほだ木」は、塩(海水)を焼く燃料や、塩を購入するための商品となった
・塩と鮭、塩と薪(ほだ木)はお互い深い関わりを持ち、人々の生活に溶け込んだ
・塩、鮭、薪(ほだ木)が結びつき、鮭の色(ぼたん)や「ほだ木」の名称から、秋田では次第に(愛着を込めて)「ボダッコ」と呼ばれるようになった
というのが、私が導き出した答えです。

 「♪ボダッコだの 呼ばれるのは これがこたえと おもうべなー」

 今回の秋田訪問で、「ボダッコ(ぼだっこ)」が秋田の食文化に深く関係する、秋田県民自慢の食べ物であることがよくわかりました。

 秋田へ行かれる機会があれば、ぜひ「ボダッコ」を御賞味ください。


<関連サイト>
 「秋田市民市場」(秋田市中通4-7-35)
 「しゅしゅえっと まるしぇ」(秋田県大仙市花館字常保寺106-1)

<関連記事>
 「秋田の食文化探訪1 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-
 「秋田の食文化探訪2 -比内地鶏・ハタハタ・がっこ・あねっこ漬け・ばっけ・きりたんぽ鍋・秋田産枝豆のコロッケ・秋田産りんごジュース-

<参考文献>
 宮本常一「塩の道」講談社学術文庫

2025年7月13日 (日)

秋田の食文化探訪2 -比内地鶏・ハタハタ・がっこ・あねっこ漬け・ばっけ・きりたんぽ鍋・秋田産枝豆のコロッケ・秋田産りんごジュース-

 2025年3月7日、山形県鶴岡市の鶴岡駅から「特急いなほ」に乗り、秋田県秋田市を訪問しました。

(特急いなほ7号・秋田駅到着)
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 秋田駅に到着した「特急いなほ7号」です。

 秋田駅から秋田市の繁華街「川反(かわばた)通り」沿いにある郷土料理店「お多福」へ行き、秋田の郷土料理を堪能することとしました。

 こちらのお店は、約7年前に一度訪問したことがあり、その際に店主さんから秋田の郷土料理の話を中心にいろんなお話を伺うことができ、楽しいひとときを過ごした思い出があります。

 そのため、また秋田市へ行くことがあればぜひ再訪したいと思っていたのですが、それが今回実現しました。

 予約時間を迎え、少し緊張気味にお店に入りました。

(「お多福」店舗)
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 前回と同様、カウンター席に案内していただきました。

 店主さんと板前さんを前に、「実は約7年前にも来たことがあるのですが、その時もお二人とお話しさせていただきました。またお会いできて嬉しいです」とお話しすると、店主さんが笑いながら「ずっとこのメンバーですから」とおっしゃいました。

 緊張がほぐれ、また同じ雰囲気で食事ができることを幸せに思いつつ、料理をいただきました。

 それでは、今回味わった秋田の郷土料理を御紹介します。


トマトジュース

 飲み物として、トマトジュースをいただきました。

 トマトジュースはこどもの頃から苦手意識を持っていたのですが、塩無添加ということで注文してみました。

(トマトジュース(塩無添加))
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 「あっ、これなら甘くて美味しい」

 トマトの旨みと甘みが凝縮された濃厚なトマトジュースでした。


お通し三種

 「お通し」を御用意いただきました。

(お通し三種)
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 今回のお通しは「魚のマヨネーズ和え」、「なめ茸」、「糸こんにゃくのきんぴら」でした。

 糸こんにゃくのきんぴらには、魚卵がまぶされており、美味しくいただけました。


お造り盛り合わせ

 続いて、お造り(刺身)が用意されました。

(お造り盛り合わせ)
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 写真奥がソイ、手前右側がヒラメ(昆布漬け)、手前左側がシマアジです。

 ソイは北海道や東北の日本海側で多く漁獲される、高級白身魚です。

 脂がのって、プリプリとした食感の魚でした。

 ヒラメは昆布漬けで、淡白な味わいの中に、昆布と白身の旨みを感じました。

 シマアジは肉厚で、噛みしめるほどに旨みが口の中いっぱいに溶け出しました。


比内地鶏手羽焼き

 「比内地鶏」は、秋田県北部・比内地方で飼育されてきた「比内鶏」(国の天然記念物)にロードアイランドをかけ合わせた鶏で、日本三大地鶏(比内地鶏、名古屋コーチン、薩摩地鶏)の1つです。

 その比内地鶏の手羽焼きが提供されました。

(比内地鶏手羽焼き)
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 手羽先を塩こしょうで焼き、レモンを添えたシンプルな料理です。

 表面の皮がパリッとして、噛みしめると中の肉汁が飛び出してきました。

 肉は水っぽさがなく、弾力があって、旨みとコクが凝縮されていました。

 シンプルな料理・調味ほど、素材の良し悪しが影響しますが、この比内地鶏には余計な調理・調味は要らないと思いました。


ハタハタの塩焼き

 秋田を代表する食材の1つが「ハタハタ(鰰)」です。

 秋田県の県魚にも指定されています。

 そのハタハタの塩焼きを提供していただきました。

(ハタハタの塩焼き)
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 板前さんが丁寧に焼いてくださった一品です。

 その板前さんから「よかったら、こちらで骨をお取りしましょうか」とお話があったので、興味津々でお願いしました。

 骨抜きの作業をカウンター越しに見ると、菜箸でハタハタの胴体をお腹からしっぽに向けて軽くはさみ続け、徐々に身から骨を外しておられました。
 
 最後に中骨を手に取り、その中骨をスルスルと横にスライドさせると、ものの見事に中骨だけが取り除かれました。

(ハタハタの塩焼き(骨抜き))
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 長い菜箸を使いこなし、身を崩すことなく、中の骨だけを取り除く板前さんの姿に、うっとりと見とれてしまいました。

 しばらくしてハタと我に返り、ハタハタをいただきました。

 ハタハタは、その見た目よりはるかに脂ののった魚で、それが大きな魅力です。

 大根おろしが添えられているのも、脂がのった魚をさっぱりといただくためです。

 ハタハタ漁は、今シーズン(2024年冬から2025年春まで)記録的な不漁となり、店主さんも嘆いておられました。

 昔は、ハタハタの卵(ブリコ)が海岸を埋め尽くすほどたくさん獲れたそうですが、温暖化の影響で海水温が高くなり、ハタハタの産卵や成長にも影響が及んでいるようです。

 そうした中でも、ハタハタを御用意いただいたことに感謝です。


がっこ盛り合わせ

 お店の看板メニューの1つ、「がっこ(漬物)」です。

 秋田では漬物のことを「がっこ」と呼びます。

 この言い方は「香の物(=漬物)」を意味する「こうこ」や、「雅香」に由来するようです(その他諸説あります)。

 漬物が売りの郷土料理店というのも珍しいですが、美味しい「がっこ」が食べられるお店として有名です。

(がっこ盛り合わせ)
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 写真右上が「やたら漬け」、それから時計回りに「いぶりがっこ」、「さっと干し大根(柿漬け)」、「大根の赤紫蘇漬け」です。

 「やたら漬け」は、ありあわせの野菜を「やたら」めったら塩漬けし、味噌や醤油で調味した漬物です。

 「いぶりがっこ」は、大根をいったん燻(いぶ)し、その燻した野菜を米ぬかで漬けこんだ漬物です。

 大根を薫製にする理由ついては、「生のままだと大根が辛いため」とか、「漬物にする大根が寒さで凍ってしまうのを防ぐため」とか、「囲炉裏の上でいったん薫製にすると美味しかったため」といったものが挙げられています。

 私が最も納得している理由は、「冬場に大根を置いておくと中の水分が凍ってしまう(使い物にならなくなる)ので、家の囲炉裏で大根を燻製して水分を抜き、保存性を高めるため」というものです。

 今回御用意いただいた「いぶりがっこ」は、燻製と相性が良いクリームチーズがはさまれていました。

 「さっと干し大根(柿漬け)」は,さっと軽く干した大根に柿(酢)を加えて漬けたものです。

 「大根の赤紫蘇漬け」は、大根を赤紫蘇で漬けたもので、きれいなピンク色に仕上がっていました。


あねっこ漬け

 「あねっこ漬け」は、きゅうりや大根などの漬物を刻み、梅酢で色をつけたもち米と混ぜ合わせた漬物で、その見た目や食感が初々しい娘さんを想像させることから名付けられた漬物です。

(あねっこ漬け)
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 もち米で漬けられているので、ほんのり甘く、漬物というよりは「もち米入りの野菜料理」という印象を持ちました。


天ぷら(ばっけ・タラの芽)

 秋田の様々な「がっこ」を味わった後に、天ぷらが用意されました。

(天ぷら(ばっけ・タラの芽))
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 「ばっけ(ふきのとう)」と「タラの芽」の天ぷらです。

 いずれも春の訪れを告げる野菜です。

 ふきのとうは、先に訪問した山形県鶴岡市でも「ばんけ」と呼ばれ、甘い味噌と混ぜ合わせた「ばんけ味噌」をはじめとする料理で親しまれています。


きりたんぽ鍋

 続いて、秋田名物であり、このお店の看板料理でもある「きりたんぽ鍋」を御用意いただきました。

 「きりたんぽ」の語源は、粗くつぶしたご飯を棒に巻き付けて焼いた「たんぽ」を切って鍋に入れたことに由来します。

(きりたんぽ鍋)
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 写真手前がヒラタケ、中心の緑色の野菜がセリ、右上が白ねぎ、左上がセリの根です。

 セリやセリの根は、シャキシャキした食感と香りの良さに特長があり、鍋をはじめとする煮込み料理に最適な野菜です。

 東北地方の料理でよく使用される野菜です。

(きりたんぽ鍋(きりたんぽ))
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 醤油仕立ての具だくさん鍋で、食べ進めると、中にきりたんぽ、比内地鶏、糸こんにゃくが入っていました。

 きりたんぽは、焼いたごはんの香ばしさと、鍋のだし汁をたっぷり吸ったもちもち感を楽しむことができました。


滝川豆腐

 「滝川豆腐」は、豆腐を「ところてん突き」で押し出して、細長く仕上げた豆腐です。

(滝川豆腐)
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 全国的にみられる料理ですが、このお店の看板メニューの1つです。

(滝川豆腐(崩した様子))
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 生姜醤油でいただきました。

 食べやすく、つるんとしたのどごしの豆腐麺でした。


秋田産枝豆のコロッケ

 もう少し食べられると思い、板前さんにおすすめを聞いてみました。

 すると板前さんから「秋田産枝豆のコロッケはいかがでしょう」と御提案があったので、私は「あ、それをお願いします」と注文しました。

 秋田産の枝豆。

 鶴岡で「だだちゃ豆(※)」と呼ばれる枝豆があることを知ったのですが、「秋田では「だだちゃ豆」とは呼ばないのだろうな」と思いつつ、出来上がりを待ちました。
 ※「だだちゃ」は鶴岡の方言で「お父さん」という意味

 しばらくして、「はい、枝豆コロッケです」と料理が提供されました。

 「えっ!」

(秋田産枝豆のコロッケ)
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 ソーセージのような形をしたコロッケです。

 「枝豆の揚げ物」と呼んだ方がいいような一品です。

 板前さんが笑顔で「イメージと違うでしょ?」とおっしゃったので、「確かに…」とお答えしました。

 私はてっきり、ジャガイモと枝豆で作った小判形のコロッケが出てくるものと思っていました。

(秋田産枝豆のコロッケ(枝豆))
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 すりつぶした枝豆に海老のすり身を混ぜ合わせ、きめ細かいパン粉をまぶして油で揚げたコロッケです。

 枝豆のさわやかな風味と海老の旨みを堪能しました。

 1つ1つ、きめ細やかで丁寧な調理をされる板前さんらしさが表現された一品でした。


秋田産りんごジュース

 食事を終え、店主さん、板前さん、そしてカウンターの常連さんと一緒にいろんな話で盛り上がりました。

(秋田産りんごジュース)
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 お酒に弱い私は、無添加の秋田産りんごジュースやウーロン茶をいただきながら、会話を楽しみました。
 (アルコールを飲まない方が陽気でテンションが高いのです…)


まとめ

 店主さんとは、秋田の食文化だけでなく、旅行の話や飛行機(マイル)の話、さらに釣りの話などでも盛り上がりました。

 川に棲むヤマメが海へ出て、成長して再び川に戻ってくるとサクラマスとなるのですが、このサクラマスは警戒心が強く、釣り人が自然と一体化するぐらいでないと釣れないという話になりました。

 店主さんがこの話をされた時、私は「まさに「釣りキチ三平」の「石化け」じゃないですか!」とお応えしました。

 秋田県出身の漫画家・矢口高雄さんの漫画「釣りキチ三平」で、「石化け」と呼ばれる釣法が紹介されています。

 この釣法は、釣り人が渓流の石や岩と一体化するぐらい存在感を無くすことで魚の警戒心を取り除いて魚を釣る方法を言います。

 この話を地元秋田の方なら御存知ではないかと思ってお応えしたのですが、予想どおり皆さんも「釣りキチ三平」や「石化け」の話を御存知でした。

 板前さんとは、板前さんが休暇を利用し、(雪のないところを求めて、私の地元)広島県沿岸部へ来られた時の話で盛り上がりました。

 閉店時刻を過ぎても話が尽きることなく、前回の訪問時と同様に、アットホームでとても楽しいひとときを過ごすことができました。

 夜も更けてきたので、おいとますることにしました。

 会計を済ませ、女性の店員さんにお店の外までお見送りいただいた時、雪が降っていました。

 夜空を見上げた店員さんがぽつり、「なごり雪が舞ってます」とおっしゃいました。

 お店で楽しいひとときを過ごし、名残惜しく思っていた私は、その言葉が心に沁みました。

 時は3月、秋田ももうすぐ春。

 「♪春になれば 氷(すが)こもとけて どじょっこだの 鮒っこだの 夜が明けたと思うべな」
 (童謡「どじょっこ ふなっこ」)

 「またよろしくお願いします」とお礼申し上げ、お店を後にしました。


<関連サイト>
 「お多福」(秋田市大町四丁目2-25)

<関連記事>
 「秋田の食文化探訪1 -がっこ・なた漬け・きりたんぽ鍋・くじらかやき-

2025年7月 6日 (日)

山形の食文化の特徴4 -あんだま・いとこ煮・むしたまご・しそ巻き・いちじく甘露煮・笹巻き・鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化-

 山形県鶴岡市は、その風土や歴史に育まれた豊かな食文化が認められ、2014年12月1日、日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定された街です。

 そして、同市は日本の学校給食発祥の地でもあります。

 そんな豊かな食文化に恵まれた鶴岡市で見つけた、鶴岡の伝統料理・郷土料理(菓子)をいくつか御紹介したいと思います。


あんだま・いとこ煮

 羽黒山と鶴岡市街地を結ぶ「羽黒街道(山形県道47号)」沿いを歩いていると、和菓子屋がありました。

(田舎の餅や「謹栄堂」)
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 田舎の餅や「謹栄堂(きんえいどう)」です。

 どんなお菓子があるのかとお店に近づいてみると…

(謹栄堂のお菓子)
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 絹のまち鶴岡の「絹入りだんご」、「いとこ煮」、「むしたまご」、冬に食べる「水ようかん」。

 「水ようかん」を夏ではなく冬に食べる風習は、北陸地方(福井県・石川県など)でみられるのですが、鶴岡市にも同様の風習があることは1つの発見でした。

 また、鶴岡が「絹のまち(鶴岡シルクタウン)」として有名なことも知りました。

 地元・鶴岡ならではのお菓子を求めて、店内にお邪魔しました。

 店内に「あんだま」の販売コーナーがありました。

(あんだまの販売コーナー)
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 「鶴岡まつりの風物詩」
 「昔なつかしい、やさしい味」
 「屋台スイーツ」

 何やらワクワクするお菓子です。

 お店の人にお話を伺うと、昔からお祭りの時に食べられてきたお菓子とのことでした。

 この「あんだま」と、鶴岡のあずき菓子「いとこ煮」を購入しました。

(あんだま・いとこ煮)
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 「あんだま」のパックを開けてみました。

(あんだま)
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 一瞬「たこ焼き」かと思いました(笑)
 (つまようじがさしてあるところまでそっくり!)

 たこ焼きを食べる感覚でいただきました。

(あんだま(あんこ))
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 小麦粉生地に粒あんを入れて、たこ焼きのように球形に焼いた郷土菓子です。

 お祭りの時、屋台でたこ焼きを焼くかたわらで、タコの代わりに粒あんを入れて「おやつ」として提供されたのがはじまりではないかと思います。

 お手頃価格なのに、中にあんこがたっぷり入っていました。

 続いて、「いとこ煮」を開けてみましょう。

(いとこ煮(謹栄堂))
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 「いとこ煮」と言えば、小豆とカボチャを煮た料理がよく知られていますが、鶴岡では小豆ともち米を一緒に甘く炊いたものを言います。

 ゆるい赤飯のような仕上がりになっています。

(いとこ煮(ふろむ亭))
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 こちらは、「謹栄堂」近くの郷土料理店「ふろむ亭」の「いとこ煮」です。

 おはぎを崩したような仕上がりになっています。

 ふろむ亭の店主さんから「作る家庭・お店によって違いがある」と伺っていましたが、確かに小豆ともち米の割合、炊き方の程度、水分、甘さなどに違いがあることがわかりました。

 ちなみに、全国で広く「いとこ煮」と呼ばれている「小豆とかぼちゃの煮物」を鶴岡では何と呼ばれているのか気になるところですが、こちらは「冬至かぼちゃ」と呼ばれています。


むしたまご

 「むしたまご」は、溶き卵に砂糖を加えて蒸し固めた鶴岡のお菓子です。

(蒸し玉子)
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 (鶴岡食文化創造都市推進協議会「つるおかおうち御膳」(ウェブサイト)を一部引用)

 卵と砂糖以外に、牛乳や「甘だれ(砂糖・薄口醬油・みりん)」を加えられたものもあります。

 お店の「むしたまご」と書かれた短冊を見て、私は一瞬「虫たまご」というお菓子があるのかと勘違いしてしまいました(笑)


JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」

 食材・食文化に富んだ鶴岡には、地元ならではの料理・お菓子が「もっとあ~る」のではないかと、JA鶴岡ファーマーズマーケット「もんとあ~る」駅前店へ行ってみました。

(「もんとあ~る」駅前店)
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 店内を見て回ると、やっぱり鶴岡ならではの食が「もんとある!」(※)
 (※庄内の方言で「山ほどある」という意味)

 鶴岡の料理・お菓子をいくつか購入しました。


しそ巻き

 「しそ巻き」は、大葉(しそ)に「味噌ダネ」(味噌に砂糖、ゴマ、クルミ、ピーナッツ、唐辛子などを加え、もち粉などで練り固めたもの)をのせてクルクル巻き、油で揚げた料理です。

(しそ巻き(パック))
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 今回購入した「しそ巻き」は、味噌にゴマと砂糖を加え、米粉で練り固めた味噌ダネを使った「ごまみそ」のしそ巻きです。

(しそ巻き)
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 串刺しにして売られていました。

 油でサクサクに揚げられた大葉と、甘辛でねっとりとした味噌ダネの組合せは、「よくぞこれを思いついた」と賞賛したくなる美味しさで、おかずにもおつまみにも最適な一品です。


いちじく甘露煮

 いちじくの甘露煮を購入しました。

(いちじく甘露煮(パック))
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 口が開く前のいちじくを砂糖と酸味(レモン・酢・クエン酸など)で飴色になるまで煮詰めた料理です。

(いちじく甘露煮)
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 いちじくを丸ごと味わえる、鶴岡の保存食です。


笹巻き

 「笹巻き」は、鶴岡の代表的な郷土菓子の1つです。

 「端午の節句」に出されるお菓子で、全国的には「粽(ちまき)」と呼ばれていますが、東北地方では「笹巻き」と呼ばれています。

(笹巻き(パック))
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 きな粉と黒蜜がセットになっています。

 笹の巻き方にも様々な方法があり、三角おにぎりのような「三角巻き」、握ったこぶしのような「こぶし巻き」、何枚もの笹の葉を使って巻き上げる「たけのこ巻き/祝い巻き」、鉈(なた)のような「なた巻き」などがあります。

(笹巻き(笹で包まれている様子))
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 こちらは「三角巻き」の笹巻きです。

 鶴岡(庄内地方南部)の「笹巻き」の特徴は、灰汁(あく)に浸したもち米を笹で巻いて煮ることにあります。

 強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮ることで、もち米が黄変し、黄色いゼリー状の食べ物になります。

(笹巻き)
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 笹から取り出し、同梱のきな粉と黒蜜をかけてみました。

(笹巻き(青きな粉と黒蜜))
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 ゼリーとお餅の中間のような、やわらかくてプルンとした食感で、独特な香ばしさもあるので、甘いきな粉や黒蜜とよく合います。

 きな粉は青大豆で作られた「青きな粉」です。

 青きな粉は全国的にも珍しいのですが、庄内地方では、山形県庄内町を中心に昔から青大豆が栽培され、青きな粉が食べられてきました。

 私がこの青きな粉にピンときた理由は、私の住む広島市でもよく食べられており、「ザ・広島ブランド」に認証されている食品だからです。

 庄内と広島にこんな食文化の接点があったのかと嬉しく思いました。


鶴岡の笹巻きと東アジア・東南アジアの食文化

 鶴岡の笹巻きは、強いアルカリ性の灰汁でもち米を煮た食べ物ですが、同様の食べ物が「あくまき」という名で南九州(鹿児島・宮崎・熊本)にもあることから、南九州から伝えられたという説もあります。

 一方、私がカンボジア・コンポントム州郊外を訪問した際には、もち米に「クボン」と呼ばれる灰汁(凝固剤)を加え、笹の葉に包んで蒸した「ノムチャン」と呼ばれるお菓子があることを知りました。

(クボン(凝固剤))
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 「ノムチャン」にはパームシュガー(やし砂糖)をつけて食べるとのことでした。

 このお菓子は九州の「あくまき」そっくりだと思い、現地の方に通訳さんを通じて、日本にも同様の「あくまき」というお菓子があると紹介したところ、みんなが驚きました。

 今回、その食べ物が鶴岡にも「笹巻き」として伝承されていることを知り、またしても驚きました。

 灰汁でもち米を煮たり蒸したりする料理は、中国の粽が日本を含めた東アジア・東南アジアへ伝えられたものと思われます。

 これで、鶴岡の「笹巻き」、南九州の「あくまき」、カンボジアの「ノムチャン」、中国の「粽(粽子)」につながりがあることがわかりました。

 さらに、静岡県藤枝市岡部町朝比奈にもツバキの灰汁を使って作られる「朝比奈ちまき」があります。

 食のフィールドワークをする中で、ふと、こうした食文化のつながりがわかると、とても嬉しく、感動を覚えます。


まとめ

 鶴岡市中心部を徒歩やバスで移動しながら、様々な食と出会うことができました。

 夕方、鶴岡駅から「特急いなほ」に乗車し、秋田を目指しました。

(E653系いなほ号の看板)
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 「いなほ(稲穂)」という名称は、日本有数の米どころ新潟・山形・秋田を結ぶ特急の名称としてぴったりです。

(E653系いなほ号(ハマナス色)・鶴岡駅)
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 駅の看板とは異なる、濃いピンク色(ハマナス色)の「特急いなほ」がホームに入線しました。

(特急いなほ・秋田行・行先表示)
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 乗車し、窓から外を眺めると、白波が立つ日本海が広がっていました。

(車窓から眺めた日本海(遊佐駅-象潟駅間))
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 鶴岡駅近くの観光案内所・「つるおか食文化市場FOODEVER(フーデヴァー)」で購入した冊子「つるおかおうち御膳」で鶴岡の食文化を復習しながら秋田へ移動しました。

(「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」)
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 鶴岡で出会った食は、高級料理ではなく、見映えを意識した料理でもない、鶴岡の伝統的な日常料理ばかりでしたが、実はこうした料理が鶴岡の食文化の原点であり、魅力となっています。

 さらにもう一歩進んで、鶴岡が日本の食文化の根幹をなす、伝統的な日常料理が受け継がれている地域だととらえれば、鶴岡こそ「ユネスコ食文化創造都市」にふさわしい地域だと理解することができます。


<関連サイト>
 「田舎の餅や「謹栄堂」」(山形県鶴岡市大東町25-14)
 「もんとあ~る」(「駅前店」山形県鶴岡市日吉町3-3ほか)

<関連記事>
 「あずきの研究12 -なぜ冬に水ようかんを食べる地方があるのか-
 「カンボジア料理の特徴と主な料理8 -ライスプディング,クボン,ノムチャン,クロサンオ,カンボジアと日本の食文化の共通点-
 「山形の食文化の特徴3 -「つるおか食文化市場FOODEVER」と鶴岡の食文化(つや姫・昔ながらの郷土料理・いとこ煮)-
 「日本の学校給食史と山形県鶴岡市「学校給食発祥の地(大督寺)」訪問 -つや姫おにぎり・山形つや姫玄米茶-

<参考文献>
 「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」鶴岡食文化創造都市推進協議会

2025年6月22日 (日)

山形の食文化の特徴3 -「つるおか食文化市場FOODEVER」と鶴岡の食文化(つや姫・昔ながらの郷土料理・いとこ煮)-

広島空港から庄内空港へ

 2025年3月7日、山形県鶴岡市を訪問しました。

(空路案内(広島-羽田-庄内))
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 広島空港から飛行機を利用し、羽田空港経由で庄内空港へ向かいました。

 広島空港から羽田空港へ向かう途中、窓から富士山が見えました。

(ANA672便から眺めた富士山)
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 その後、飛行機は着陸態勢に入り、羽田空港に到着しました。

 庄内空港行きの乗り継ぎ時間は約1時間30分だったので、空港内のラウンジで過ごしました。

(ANA395便(羽田空港))
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 羽田空港発、庄内空港行きANA395便です。

 出発時刻となり、同便は庄内空港へ向けて離陸しました。

(ANA395便から眺めた東京都心部)
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 眼下に東京都心部を眺めつつ、北へ向かって飛行しました。

 早朝からの旅だったので、疲れてウトウトしていると、飛行機が着陸態勢に入るとのアナウンスがありました。

 ふと窓の外を眺めると…

(ANA395便から眺めた山形県山地・内陸部)
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 3月にもかかわらず、雪で覆われている光景に驚きました。

 「雪に慣れていないので困ったな…」と思っていると、やがて状況が一変し、田畑が広がる庄内平野に入りました。

(ANA395便から眺めた庄内平野)
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 羽田空港から約1時間(フライト時間は約40分)、あっという間に庄内空港に到着しました。

(ANA395便・庄内空港着)
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おいしい庄内空港

 庄内空港の愛称は「おいしい庄内空港」です。

 到着ロビーでマスコットキャラクターの「まめうさ」が出迎えてくれました。

(庄内空港ビルマスコットキャラクター「まめうさ」)
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 「まめうさ」は、口元にだだちゃ豆の「だだちゃさん」を付けたウサギです。

(おいしい庄内空港)
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 ターミナルビルの屋根は庄内米をデザイン化したものです。

 食に興味を持つ私は、空港名に「おいしい」と付く庄内空港の施設をゆっくり見学してみたかったのですが、庄内空港連絡バスのりばへ直行しました。

 なぜなら、この空港連絡バスは飛行機の到着時刻に合わせて出発し、出発の目安が到着の10分後と設定されているからです。

(庄内空港連絡バス(酒田行・鶴岡行))
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 写真手前の赤いバスが鶴岡行、奥の青いバスが酒田行です。

 鶴岡行きの連絡バスに乗車すると、ほどなくしてバスが出発しました。


観光・食文化情報発信拠点「つるおか食文化市場FOODEVER」

 連絡バスは約30分かけて鶴岡駅に到着しました。

(鶴岡駅と鶴岡市内循環バス)
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 鶴岡駅前を散策すると、目の前に観光案内所・「つるおか食文化市場FOODEVER(フーデヴァー)」の入口がありました。

(観光案内所・つるおか食文化市場FOODEVER入口)
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 駅前交差点側にも入口がありました。

(つるおか食文化市場FOODEVER入口)
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 中に入って、施設を見学させていただきました。

(世界のユネスコ食文化創造都市 鶴岡)
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 鶴岡は、その風土や歴史に育まれた豊かな食文化が認められ、2014年12月1日、日本で初めて「ユネスコ食文化創造都市」に認定されました。

(世界のユネスコ食文化創造都市)
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 (「つるおか食文化市場FOODEVER」展示資料)

 日本では、鶴岡市のほか、大分県臼杵市も「ユネスコ食文化創造都市」に認定されています。

(世界のユネスコ食文化創造都市 鶴岡のあゆみ)
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 ユネスコの認定を目指し、2010年から食文化関連のシンポジウム・フォトコンテスト・映画祭・フェスタなど様々なイベントが鶴岡で開催されました。

(情報発信スペース)
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 情報発信スペースでは、鶴岡の食文化を紡ぐ人々や食材が紹介されています。

(庄内の代表食材(野菜))
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 庄内地方の野菜を中心とした代表食材が紹介されているコーナーもありました。

 鶴岡では、カブ、ナス、ネギ、柿など、約60種類の在来種が栽培されています。

 ちなみに、希少な在来作物「藤沢かぶ」が栽培されている鶴岡市藤沢地区は、作家・藤沢周平のペンネームの由来となったことでも有名です。

(紅エビ・トラフグの紹介)
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 海に面した庄内地方は、紅エビやトラフグをはじめ、タラ、ハタハタ、真鯛、アンコウ、カナガシラ、スルメイカ、由良アナゴ、口細カレイ、サクラマス、岩のり、エゲシ(海藻)など海産物にも恵まれており、豊かな食文化が形成されました。

(飲食店舗)
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 館内には飲食店舗もあり、様々な料理やお酒を味わうことができます。

 「つるおか食文化市場FOODEVER」は、鶴岡の食文化の情報発信・交流拠点です。


ふろむ亭の「ふるさと定食」

 鶴岡のふるさと料理を求めて、同市日出一丁目の「ふろむ亭」を訪問しました。

 鶴岡駅から少し距離があったのですが、歩いてお店へ向かいました。

(切添大橋から眺めた新内川と金峰山)
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 途中、鶴岡の街並みや自然の風景を楽しむことができました。

(ふろむ亭店舗)
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 お店に着くと、「営業中」と掲げられているものの、のれんが玄関の中にあったので、「営業されていますように…」と祈る気持ちでお店のドアを開けました。

 すると店主さんが出て来られ、御案内いただけたので、ホッと一安心しました。

 外は風が強かったため、のれんは中に掲げられていたのでしょう。

 旅先で荷物が多かったこともあり、座敷席でゆっくり食事させていただくことにしました。

 注文するメニューはあらかじめ決めていました。

 鶴岡で誕生したお米「つや姫」を土鍋で炊いたごはんと、鶴岡の伝統的な御馳走が味わえる「ふるさと定食」です。

 土鍋でごはんが炊かれるため、この定食は注文してから約20分かかるのですが、その時間も旅行スケジュールに折り込み済みです。

 出来上がりに本当に20分程度かかったのですが、その間、店主さんとの会話も弾み、楽しく時間を過ごせました。

 まずは料理が運ばれてきました。

(ふるさと定食)
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 鶴岡の伝統的な御馳走をずらりと用意していただきました。

 高級料理ではなく、昔から地元・鶴岡で「日常の食事」として食べられてきた料理ばかりです。

 それぞれの料理を御紹介します。

(味噌汁)
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 味噌汁の具は、麩・厚揚げ・ネギ・大根・人参・レンコン・椎茸・しめじで、たっぷり具を入れることで、良い「だし」が出ていました。

(ヒラタケと鶏肉の煮物)
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 こちらは「ヒラタケと鶏肉の煮物」です。

 庄内地方はきのこや山菜も多く採れます。

(切り干し大根)
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 こちらはお馴染みの「切り干し大根」です。

(玉こんにゃくの煮物)
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 「玉こんにゃくの煮物」です。

 「玉こんにゃく」は、山形市の「山寺(宝珠山立石寺)」で精進料理として使われていたものが周辺住民にも広まっていったとされる、山形のご当地食材です。

(しそ巻き)
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 こちらは「しそ巻き」と呼ばれる、昔ながらの郷土料理です。

 大葉(しそ)に「味噌ダネ」(味噌に砂糖、ゴマ、クルミ、ピーナッツ、唐辛子などを加え、もち粉などで練り固めたもの)をのせてクルクル巻き、油で揚げた料理です。

(しそ巻き(味噌ダネ))
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 油でサクサクに揚げられた大葉と甘辛の味噌ダネのコンビネーションが最高で、おかずにもおつまみにも嬉しい一品です。

(冷奴(山ぶどう塩))
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 こちらは冷奴です。

 ざっくりとした食感の手作り豆腐が使われています。

 豆腐にかけられているピンク色のものは「山ぶどう塩」です。

 山ぶどうの風味・酸味が味わえる塩で、新潟県村上市の製塩業者から仕入れておられるそうです。

(赤魚の煮付け)
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 こちらは「赤魚の煮付け」です。

(大根の桜漬け)
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 大根を梅酢で漬けた「大根の桜漬け」です。

(ひじき煮)
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 こちらは「ひじき煮」です。

 海の幸・山の幸に恵まれた鶴岡で、昔から食べられてきた日常の料理を堪能しました。

 やがて炊き上がったごはんも運ばれてきました。

 土鍋のフタを開けると、炊きたての「つや姫」ごはんが登場しました。

(土鍋で炊いた「つや姫」ごはん)
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 「つや姫」という名のとおり、お米がつやつやと光り輝いていました。

 ごはんを茶碗によそって、いただきました。

 米粒は大きくて真っ白、食感はモチモチしてやわらかく、噛みしめるほどに甘みとうまみが感じられました。

 さらに、冷めてもモチモチで美味しいことがわかりました。

 むしろ冷めた時(おにぎりにした時)こそ本領を発揮するのが「つや姫」の特長なのです。

 「つや姫」は他のお米と比べて少し高価なのですが、それだけの価値があることが理解できました。

 店内には、山形のブランド米「つや姫」と「雪若丸」の登録証が掲げられています。

(「つや姫」と「雪若丸」の登録証)
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 山形県全体で「つや姫」と「雪若丸」の生産・販売・消費の拡大に取り組まれています。

 店主さんにお話を伺ったところ、「鶴岡は昔からお米の一大産地で、米沢(山形県内陸部)が飢饉の時も、鶴岡では白い米を食べていた」、「鶴岡では(昔から白米が好まれ)玄米を食べる文化すらない」とのことでした。

 さすがお米の本場。お米の美味しさを知ることができました。

 食後のデザートとして「いとこ煮」をいただきました。

 「いとこ煮」と言えば、小豆とカボチャを煮た料理がよく知られていますが、鶴岡では小豆ともち米を一緒に甘く炊いたものを言います。

(いとこ煮の紹介文)
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 最近では「いとこ煮」を作る家庭が減ってしまい、食べる機会が失われつつあるようです。

(いとこ煮)
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 こちらが鶴岡の「いとこ煮」です。

 おはぎを崩したような仕上がりになっています。

 店主さんのお話では、「作る家庭・お店によって違いがある」とのことです。

 また、「祖母に作ってもらった「いとこ煮」はかなり甘かったので、祖母の作り方を伝承しつつ、甘さは控えめに仕上げている」そうです。

 さらに、「作りたてより、少し寝かせた方が美味しさが増す」ことも教えていただきました。


 高級料理ではなく、見映えを意識した料理でもない、鶴岡の伝統的な日常料理ばかりですが、実はこうした料理が鶴岡の食文化の原点であり、魅力なのだと思いました。

 店主さんとの会話が盛り上がり、土鍋のごはんが何度も炊けるぐらいの時間を過ごしましたが(笑)、こうした番狂わせは大歓迎です。

 鶴岡の食文化の知識も深まり、とても有意義なひとときを過ごすことができました。


<関連サイト>
 「鶴岡食文化創造都市推進協議会」(事務局 鶴岡市食文化創造都市推進課)
 「つるおか観光ナビ 頂きます(グルメ)」(鶴岡ツーリズムビューロー)
 「ふろむ亭」(山形県鶴岡市日出一丁目4-8)
 「つや姫・雪若丸」(山形「つや姫」「雪若丸」ブランド戦略推進本部)

<関連記事>
 「山形の食文化の特徴1 -米沢の鯉料理と食用菊-
 「山形の食文化の特徴2 -芋煮,納豆汁,ひょう干し煮,あさつきの酢味噌和え,そば-

<参考文献>
 「つるおかおうち御膳 改訂令和4年版」鶴岡食文化創造都市推進協議会

2025年6月 8日 (日)

兵庫の食文化探訪2 -加古川市のご当地グルメ・ソウルフード「かつめし」(加古川市役所食堂・コーヒーハウス ロッキー・いろは食堂(ビストロ))-

加古川市のご当地グルメ・加古川市民のソウルフード「かつめし」

 私にとって兵庫県加古川市と言えば、「JRの新快速(電車)が停車する駅」程度のイメージしかなかったのですが、「かつめし」というご当地グルメがあることを知りました。

 「かつめし」は、「ごはんの上に叩いて平たくしたビフカツをのせ、デミグラスソース系のたれをかけたものを洋皿に盛り、箸で食べる」料理です。

(WE LOVE かつめし(加古川じゃらん))
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 (「加古川じゃらん(かつめし編)」表紙の一部を引用)

 「かつめし」を味わえるお店は、加古川市を中心に100店舗以上あると言われています。

 さらに、家庭でも作れるよう「かつめし」専用のたれが販売され、学校給食のメニューにも取り入れられており、「加古川市民のソウルフード」の1つとなっています。

 そんな魅力にあふれる「かつめし」を求めて、加古川市を訪問しました。

(加古川駅・新快速)
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 姫路駅から新快速を利用し、加古川駅に着きました。

(かこのちゃん)
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 加古川駅構内で、加古川市まちの魅力発信キャラクター「かこのちゃん」が歓迎してくれました。

 「かつめし」巡りのスタートです。


加古川市役所食堂の「かつめし」

 加古川駅から約1.4km歩き、加古川市役所を訪問しました。

(加古川市役所庁舎)
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 広い敷地に大きな庁舎がそびえ立っていました。

(加古川市役所玄関)
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 10階建ての新館の正面玄関から入り、庁舎内の食堂を目指しました。

 案内を見ると、食堂は隣の本館にあることがわかり、連絡通路を歩いて本館の食堂へ向かいました。

(加古川市役所食堂)
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 入口には、本日の日替わり定食(2種類)が展示されていました。

 「かつめし」はあるだろうかと、食券券売機に近づいてみると…

(食券券売機)
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 「かつめし」、「かつめしコーヒー(コーヒー付)」というボタンがありました。

 「かつめし」を選び、食券を厨房へ持って行き、注文しました。

 すると、お店の方が厨房に向けて「かつでーす」と注文を伝えられ、私に「少々お時間かかりますのでお呼びしますね」とお話がありました。

 メニューには「かつ丼」や「カツカレー」もあるにもかかわらず、「かつめし」を「かつ」と呼ばれていることや、職員食堂で「少々時間がかかる」メニューであることに、特別感がありました。

 「一般市民客も多く利用されているな」と思いながらテーブル席で待っていると、「かつめし」が出来上がりました。

(かつめしとサラダ(加古川市役所食堂))
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 木製の皿に、かつめしとサラダが盛られ、ドレッシングが添えられています。

(かつめし(加古川市役所食堂))
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 ごはんの上にカツがのせられ、その上からデミグラスソースがたっぷりとかけられています。

 カツをじっくり見てみましょう。

(かつめしのカツとデミグラスソース(加古川市役所食堂))
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 牛肉を叩いて薄くのばし、パン粉をつけて揚げたビーフカツです。

 箸で食べられるよう、カツは一口サイズにカットされています。

 深くコクのあるデミグラスソースとサクサクのビーフカツは、ごはんとの相性が抜群でした。 

 ビーフカツをごはんにのせて一緒に食べるなら、薄いカツの方が一体感があることがわかりました。


コーヒーハウス ロッキーの「ビーフカツメシ」

 加古川市役所食堂で「かつめし」を堪能した後、次なるお店へ向かいました。

 加古川駅構内にある「加古川観光案内所」で、「加古川駅から少々遠くてもいいので、地元の人々に人気のお店を教えてください」と伺って御紹介いただいたお店「コーヒーハウスロッキー」です。

 加古川市役所から歩いて「コーヒーハウス ロッキー」を目指しました。

 加古川市役所から「ロッキー」まで約4.5kmと少し距離がありましたが、頑張って歩きました。

 途中、清涼飲料水の自動販売機を多く見かけましたが、100円のドリンク、さらには50円、80円で販売されているドリンクまであり、加古川市は激安自動販売機が多い地域でもあることを知りました。

 歩き疲れた頃、ようやくお店にたどり着きました。

(コーヒーハウス ロッキー)
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 車で来店される地元のお客さんが中心のお店です。

 お昼時だったこともあり、多くの車と大勢のお客さんで賑わっていました。

 メニューを見ると、ビーフカツメシのほか、ポークカツメシや牛ヘレカツメシもありました。

 私は「ビーフカツメシ」を注文しました。

 すると店員さんから厨房へ「ビーフ、ワンです」と注文がなされました。

 しばらくして、テーブル席にビーフカツメシが運ばれてきました。

(ビーフカツメシ(コーヒーハウス ロッキー 味噌汁・漬物セット))
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 味噌汁と漬物がセットになっています。

(ビーフカツメシ(コーヒーハウス ロッキー))
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 ごはんの上にビーフカツがのせられ、茹でキャベツが添えられています。

(ビーフカツメシのカツとデミグラスソース(コーヒーハウス ロッキー))
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 大きめのカツを一口サイズにカットし、デミグラスソースがたっぷりとかけられています。

 デミグラスソースは甘酸っぱいソースに仕上げられていました。

 茹でキャベツは、クミンの香りが効いていました。

 こちらのお店は「コーヒーハウス」なので、食後にコーヒーもいただきました。

(アメリカンコーヒー(コーヒーハウス ロッキー))
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 少し濃いめのコーヒーで苦味は少なく、ストレートでも美味しくいただけました。


いろは食堂(ビストロ)の「牛かつめし」

 続いて「いろは食堂(ビストロ)」を目指しました。

 「かつめし」発祥の店「いろは食堂」の屋号と味を37年ぶりに復活させたお店です。

 バスを使って移動することもできたのですが、かつめしを続けて食べていることもあり、運動を兼ねて歩いて行くことにしました。

 「ロッキー」から「いろは食堂(ビストロ)」までは約1.3kmです。

 加古川駅までかなり戻ったところで、「いろは食堂(ビストロ)」の建物が見えてきました。

(いろは食堂(ビストロ))
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 店名は和風ですが、建物は洋風で、まさに「かつめし」のようなお店です。

 1947年創業の「いろは食堂」を引き継いだお店です。

 ランチタイムにギリギリ間に合い、カウンター席に案内していただきました。

 「かつめし」のメニューを見ると、牛肉のかつめしと豚肉のかつめしが用意されていたので、私は「牛かつめし」を注文しました。

(牛かつめし(いろは食堂 味噌汁セット))
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 熱々の味噌汁(写真右上)が用意され、ほどなく「牛かつめし」も運ばれてきました。

(牛かつめし(いろは食堂))
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 ボリュームのあるビーフカツに、デミグラスソースがたっぷりかけられています。

 茹でキャベツも添えられています。

(牛かつめしのカツとデミグラスソース(いろは食堂))
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 デミグラスソースは、ハンバーグソースのような深みのあるソースで、1947年創業の味を引き継いだ秘伝のタレが使われています。 

 洋食のビーフカツを、そのままライスに盛り付けたような「かつめし」でした。

 ランチタイムだったので、一口デザートもありました。

(一口デザート・プリン(いろは食堂))
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 一口ではないサイズのプリンです(笑)

 ほどよいかたさで、ほろ苦いカラメルがアクセントとなった美味しいプリンでした。

 会計を済ませ、お店の方に御承諾いただいた上で、店内の「かつめし博物館」を見学させていただきました。

(かつめし博物館)
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 「かつめし」の資料や、お店の歴史・代々の店主さんなどが展示・紹介されています。

(いろは食堂物語・加古川じゃらん(かつめし編))
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 「いろは食堂物語」というお店の歴史が紹介された冊子や、加古川の「かつめし」を特集した「加古川じゃらん(かつめし編)」も展示されていました。

 ちなみに、冒頭で御紹介した「WE LOVE かつめし(加古川じゃらん)」の「かつめし」は、こちら「いろは食堂(ビストロ)」の「かつめし」です。

(いろは食堂開業時の写真)
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 いろは食堂開業時(昭和22年)の写真も展示されていました。

 「かつめし」が、ご当地グルメというだけでなく、地元のソウルフードとして長年愛され続けていることがわかりました。


まとめ

 ランチタイムに「かつめし」を(1皿でもボリューム満点なのに)続けて3皿もいただき、お腹いっぱいの状態で、約0.8kmの道のりを歩いて加古川駅まで戻りました。

 胃の中がパンパンになり、体が重くなったことを実感できるレベルでした(笑)

 JR加古川駅前商店街(ベルデモール)に、かつめしキャラクター「かっつん」と「デミーちゃん」の石像モニュメントが設置されています。

(かつめしキャラクター「かっつん」と「デミーちゃん」)
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 顔がごはんでできていて、その上に(帽子のような感じで)カツとデミグラスソースと茹でキャベツがのせられています。

 モニュメントの隣に「かつめし」の紹介文がありました。

(愛する加古川の名物 かつめし)
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・かつめしは、戦後間もない頃に、この加古川駅前通商店街にあった「いろは食堂」で考案されました。

・洋皿にご飯を盛り、牛カツをのせ、独特のたれをかけ、箸で食べるスタイルは、気軽に食べられる洋食として親しまれました。

・今では、加古川市やその周辺の100店舗以上で食べることができます。

・また、スーパーでは専用のたれが販売され、家庭にも普及し、学校給食のメニューにも取り入れられています。

・まさに愛する加古川の名物となった「かつめし」を、ぜひ食べてみてください!


 「かつめし」をよく食べ(3食)、そのために加古川市内をよく歩きました(約9km)。

 今回、加古川市内の3店舗で「かつめし」をいただきましたが、それはほんの一部で、まだまだいろんな「かつめし」があるので、また機会があれば「かつめし」の食べ歩きをしたいと思います。

 加古川市の「かつめし」、皆さんも機会があれば御賞味ください。


<関連サイト>
 「名物かつめし特集」(加古川観光協会)
 「コーヒーハウス ロッキー」(兵庫県加古川市野口町水足22-2)
 「いろは食堂(インスタグラム)」(兵庫県加古川市加古川町溝の口73-1)
 「うまいでぇ!かつめしの会」(兵庫県加古川市寺家町45 JAビル3階)

<参考文献>
 「名物かつめし特集」(加古川観光協会)
 「加古川じゃらん(かつめし編)」加古川市

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