食文化事例研究

2025年4月20日 (日)

中国新聞文化センター講座「カカオのテロワールとチョコレートのおいしさのヒミツ」

中国新聞文化センター クレドビル教室

 2025年4月5日に、中国新聞文化センターでチョコレートの専門家・佐藤清隆先生(広島大学名誉教授)の1日講座が開催されることを知りました。

 チョコレートの味の決め手となるカカオ豆を産地別に食べ比べ、それぞれのカカオ豆の特徴や違いを学ぶ講座で、チョコレート作り体験やココアの試飲もあると紹介されていました。

 受講料は3,520円(一般)で、材料代500円と合わせると4,020円でしたが、即断即決で会員登録、受講申込みをしました。

 講座当日、広島市中区基町の「パセーラ(基町クレド)」を訪問しました。

(パセーラ(基町クレド))
Photo_20250420073701

 基町クレドの10階に中国新聞文化センター クレドビル教室があります。

(中国新聞文化センター・クレドビル教室)
Photo_20250420073702

 初めて訪問しましたが、フロアがとても広く、いくつも教室があるので驚きました。

 講座開始30分前に教室に着くと、佐藤先生と中国新聞文化センター職員の方々が会場準備をしておられました。

 佐藤先生は私を見つけるなり、「おおっ、この講座を受けに来たの?」と、とても嬉しそうに声をかけてくださいました。

 そして中国新聞文化センター職員のお2人に、「彼はいつも私の講演会に来てくれてね。皆勤賞だなぁー」と、色々と紹介していただいたのですが、話が長引いて準備の邪魔になりそうだったので、笑顔で「また開始時刻が近づいたら来ますねー」と言って一旦教室を離れました(笑)

 開始10分前に再訪し、最前列の席に座りました。


板チョコレート作り体験

 受講生が集まり、講座が開始されました。

 受講生のテーブルには、講座テキスト、各産地のカカオ豆、スティックシュガー、紙コップ、小皿、試食用のスプーンなどが用意されていました。

(受講生用準備品とカカオ)
Photo_20250420075101

 写真右下の黄色いものはカカオで、本物のエクアドル産カカオを色だけ塗り直したものです。

(カカオ豆(ホンジュラス・ボリビア・フィリピン))
Photo_20250420075301

 今回御用意いただいたカカオ豆は、ホンジュラス産(北米)、ボリビア産(南米)、フィリピン産(アジア)のもので、ホンジュラス産は「クリオロ種」、ボリビア産は「野生種」(ベニ川で収穫された「Beni(ベニ)」という品種)、フィリピン産はフィリピンの農園から佐藤先生が直接入手された「トリニタリオ種」です。

 ボウルには、すでにテンパリング(温度調整・結晶化)済みの「カカオマス」(液状のカカオニブ、チョコレートリカー)が用意されていました。

(カカオマスと温度計)
Photo_20250420080001

 カカオマスの温度は、34.5℃を示しています。

 このカカオマスを木のスプーンに入れてもらい、カカオマスを試食しました。

(カカオマスの試食)
Photo_20250420080301

 ほろ苦い液状のチョコレートでした。

 佐藤先生はカカオマスを金属トレーに移し替えると、すぐにトレーを机にバンバン打ち付け、中の空気を抜く作業(タッピング)を開始されました。

 その際、「バシャン、バシャン」と会場に大きく鳴り響くレベルでトレーを机に叩きつけられました。

 「佐藤先生はどこへ行かれても、大きな音をさせ、机や床をチョコレートまみれにされている…」と心の中でクスクス笑いながら、受講しました。

 受講生も各自、テーブルでタッピングを体験しました。

(カカオマスを小皿に流し込んだ様子)
Photo_20250420080901

 テーブルに用意された小皿にカカオマスを注ぎ、その小皿をテーブルにバンバン叩きつけてカカオマスの中の空気を抜きました。

 このタッピングは、垂直に音を立てて叩きつける必要があります。

 叩きつけた衝撃でこぼれないかと心配でしたが、カカオマスはこぼれることなく、小皿に均一にならされていきました。

 カカオマスをこぼしたのは、「(金属トレーを)ひっくり返してもこぼれない」とおっしゃいながらタッピングを実演された佐藤先生だけでした(笑)

(タッピングを終えたカカオマス)
Photo_20250420081501

 表面が鏡のように美しく均一になりました。

 タッピングを終えたカカオマス(金属トレー・小皿)は、すぐに冷蔵庫に入れて冷やし固められました。


生チョコレート作り体験

 続いて、生チョコレート作りが行われました。

 生チョコレートを作る様子を見るのは初めてです。

 今回の生チョコレートは、乳製品に生クリームではなく、牛乳が使用されました。

 ちなみに、生クリームを使う際にも、動物性のものを使う必要があるとのお話でした。

 いざ作ろうという時、佐藤先生は牛乳がないことに気付き、会場の皆さんに「どこか牛乳がありませんか~?」と尋ねておられました。

 私は「机や椅子の周りから(要冷蔵の)牛乳が出てくるわけないでしょうが!」とツッコミました。

 中国新聞文化センターの方が牛乳を用意され、佐藤先生に差し出されました。

 佐藤先生が「これはおいしい牛乳ですよ~」と自信たっぷりにおっしゃっていたので、よく見ると、紙パックに「おいしい牛乳」と商品名が書かれていました(笑)

 その牛乳を約50℃に温め、34℃のカカオマスに注ぎました。

(カカオマスに牛乳を注ぐ様子)
Photo_20250420092801

 佐藤先生はこれまで「ミルクチョコレートを作る時に牛乳を混ぜてはいけない」と散々おっしゃっていたので、大丈夫なのかと半信半疑で作業を見守りました。

 牛乳で生チョコレートを作る時に大事なことは、カカオマスと牛乳の割合で、カカオ70%の場合は「9対5」にする必要があるそうです。

(カカオマスと牛乳を混ぜる様子)
Photo_20250420093001

 カカオマスと牛乳を混ぜ合わせる(乳化させる)ため、ゴムベラを使って素早く混ぜます。

 乳化させてマヨネーズを作るのと同じ要領です。

 ゴムベラで切るような感じで素早く混ぜるのがコツで、泡立て器だと失敗するそうです。

(カカオマスと牛乳が混ざった様子)
Photo_20250420093101

 牛乳を注いで白っぽくなっていたカカオマスが、混ぜ合わさってチョコレート色に戻っています。

(液状の生チョコレートの試食)
Photo_20250420093301

 なるほど、ダークチョコレートに比べてかなり滑らかで食べやすくなっていました。


トリュフチョコレート作り体験

 出来上がった液状の生チョコレートを、氷水とドライヤーの冷風で冷やし固めました。

(氷水とドライヤーの冷風で生チョコレートを冷やし固める様子)
Photo_20250420093401

 実際にはなかなか固まらず、「あれっ、固まるはずなんだけど、おかしいな、おかしいな」という感じで作業されました。

(生チョコレートの温度を細かく測る様子)
Photo_20250420093601

 「温度が原因か?」と生チョコレートの温度を何度も計測されていました。

 根気強く混ぜ合わせているうちに、生チョコレートに粘りが出てきて、次第に固まりました。

(生チョコレートが冷やし固まった様子)
Photo_20250420093701

 この生チョコレートをトリュフの形に丸め、ココアパウダーをまぶしました。

(生チョコレートにココアパウダーをまぶす様子)
Photo_20250420093801

 受講生がココアパウダーをまぶしておられる様子を見た佐藤先生が、「フンコロガシが糞を転がしているような感じだなぁ」と食欲をそぐようなことをつぶやいておられました…。

 こうしてトリュフチョコレートも完成しました。

(トリュフチョコレート)
Photo_20250420093901

 口どけが滑らかで、ほのかな苦味とコクのあるトリュフチョコレートでした。


カカオ豆の産地当てクイズ

 今回の講座は実習が中心でした。

 佐藤先生から受講生の皆さんへ、
 「各産地のカカオ豆の殻を割って中の実(胚乳・カカオニブ)を取り出してみてください」
 「その際、カカオニブの中に小さく細長い棒(胚芽)があるので取り出してください」
とお話がありました。

(殻付きカカオ豆(ホンジュラス・ボリビア・フィリピン))
Photo_20250420094201

 私も紙コップからカカオ豆を取り出し、爪を使ってカカオ豆の硬い殻を取り除いてみました。

 豆が大きいフィリピン産は比較的容易に皮がむけましたが、豆が小さく野生種のボリビア産は皮をむくのにとても苦労しました。

(カカオ豆の皮むき体験(フィリピン))
Photo_20250420094301

 写真左が殻を割った「カカオニブ(カカオの胚乳)」、右がそれを細かく砕いたもの、カカオニブの上側にある小さい茶柱のような形をしたものは胚芽(ジャーム、チュニブ)です。

 胚芽はやがてカカオの木へと成長するものですが、これを食べてもジャリジャリして苦いだけなので、チョコレートを作る際には取り除く必要があります。

 胚芽を取り除いたカカオニブをそのままいただき、各産地の味や風味の違いを確かめました。

 続いて、手のひらの上にカカオニブをのせ、その上から砂糖(グラニュー糖)をたっぷりかけていただきました。

 こうすると、甘くて食べやすいチョコレートの味に様変わりします。

 その後、佐藤先生が別に用意されたカカオニブが受講生に配付され、このカカオニブがどこの産地のものか当てるクイズが出されました。

 私は写真撮影やメモに集中するあまり、どのカカオニブをどの場所に戻せばよいのかわからなくなり、クイズも外してしまいました。

 ちなみに正解はボリビア産で、まずまずの正答率でした。


ピュアココア

 テキストを使った講義では、チョコレートの作り方、カカオの生育条件、カカオの品種(フォラステロ種・トリニタリオ種・クリオロ種など)、カカオ豆とテロワール(生育した土地の土壌や気候による違い・特徴)、現在のカカオ・チョコレートの状況などが紹介されました。

 終了後、カカオマス(ダークチョコレート)に牛乳を加えて作ったピュアココア(ミルクココア)が用意されました。

(ココア(ピュアココア))
Photo_20250420095601

 粉末の調整ココアとの違いは、ピュアココアには「乳酸」が残っていることです。

 カカオマスや牛乳に含まれる油脂もそのまま摂取できます。

 ココアではなく「ミルク入りチョコレートドリンク」と呼びたい、やさしい味のドリンクでした。


板チョコレートの試食・お土産

 講義終了後、冷蔵庫で冷やされた板チョコレートを持ってきていただきました。

 滑らかで光沢のある板チョコレートに仕上がりました。

(完成した板チョコレート(会場試食用))
Photo_20250420100801

 フィリピン産カカオ豆70%のチョコレートです。

 受講生各自でタッピングして作った小皿の板チョコレートは、お土産としていただきました。

 小皿に受講生の氏名が書かれた付箋が貼られていたので、配付もスムーズでした。

(完成した板チョコレート(お土産用))
Photo_20250420101301

 2日ぐらい寝かせたチョコレートの方が美味しいとのことだったので、後日いただきましたが、苦味の効いた美味しいビターチョコレートに仕上がっていました。


絵本「ひと粒のチョコレートに」の購入とサイン

 中国新聞文化センターの方から、佐藤先生が書かれたチョコレートの絵本の紹介がありました。

 良い機会なので、私も1冊購入しました。

(絵本「ひと粒のチョコレートに」)
Photo_20250420101501

 この絵本の面白いところは、ブックカバーが板チョコの銀紙のようなデザインになっていて、しかも、板チョコの銀紙そっくりにギザギザになっていることです。

(本をブックカバーから引き出した様子)
Photo_20250420101601

 ブックカバーの中の本は、板チョコのデザインになっており、上に引っ張り出すと、板チョコが飛び出たように見えます。

 こんなブックカバーは初めて見ました。

 買ったばかりの本に、佐藤先生からサインをいただきました。

(佐藤先生のサイン)
Photo_20250420101701


佐藤先生への質問

 今回は少人数の講座だったので、佐藤先生との距離も近く、質問もしやすい状況にありました。

 そこで私からも佐藤先生へ1つ質問をさせていただきました。

【質問】
 「温暖化の影響でカカオベルト(カカオの生育範囲・北緯20度~南緯20度のエリア)が北上(南半球は南下)する可能性があるのではないでしょうか」

【回答】
 「今後、カカオベルトが北上(南下)する可能性はありますが、広がった分だけカカオが栽培できるわけではありません」
 「むしろ拡大する見込みのエリアは、カカオ栽培に適した(腐葉土に恵まれた)土壌や雨量でないのが現状です」
 「また、カカオは最低気温だけでなく、最高気温が高すぎても生育できないことも理解しておく必要があります」
 「カカオについては、温暖化よりも生産性が低いことの方が問題となっています」
 「カカオが単位面積あたり4トンから5トン生産可能な場所で、わずか400キログラムしか生産できていないのです」
 「この生産量を1トンまで上げるのが目標です」

 なるほど、このままだと高温になり過ぎてカカオが栽培できなくなり、カカオベルトの範囲が狭まる可能性もあるようです。

 カカオの安定供給のためには、単位面積あたりの生産量を増やすことを考える必要があります。

 また、カカオが投機の対象とされ、生産量は約10%の減少にとどまっている一方で、国際取引価格が約3倍も上昇していることへの対策も必要だと思います。


まとめ

 今回は、有料・少人数・大人向けの講座だったので、受講生の皆さんのカカオ・チョコレートに対する関心度・本気度が高く、熱心に聴講し、質問もされていたのが印象的でした。

 帰りがけに、佐藤先生から「これお土産」とカカオニブをいただきました。

(ブラインドテスト・ボ)
Photo_20250420102901

 ブラインドテストで使われたカカオニブ(の余り)です。

 「ブライドテスト」と書いた後で「ン」を加えて「ブラインドテスト」に修正されています(笑)

 「ボ」は「(正解は)ボリビア産カカオ豆」という意味で書かれたのでしょう。

 最後に、佐藤先生とお世話になった文化センター職員の方にお礼を申し上げ、教室を後にしました。


<関連サイト>
 「中国新聞文化センター」(クレドビル教室 広島市中区基町6-78 ほか)

<関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「チョコレートの研究」を御参照ください。

<参考文献>
 佐藤清隆/Junaida「ひと粒のチョコレートに」福音館書店
 佐藤清隆「チョコレートを極める12章」幸書房

2025年4月13日 (日)

ドライブインの魅力5 兵庫県尼崎市「U・Kワイルドキャッツカフェ」の「ネギすじソースやきそばライスプレート」と「エスプレッソジェラートケーキ ハイアニス」

阪急・武庫之荘駅から「U・Kワイルドキャッツカフェ」へ

 阪急神戸線で、武庫之荘(むこのそう)駅(兵庫県尼崎市)にやってきました。

(阪急電車・武庫之荘駅)
Photo_20250413102401

 「阪急マルーン」と呼ばれる茶色の電車を見ると、京阪神に来たことを実感します。

 今回目指すお店は、アメリカンダイナー「U・Kワイルドキャッツカフェ」です。

 武庫川近く、国道171号沿いのお店なので、最寄り駅から歩いて行くには若干距離があるのですが、尼崎市の散策も兼ねて、武庫之荘駅から北西方向へ徒歩で伺いました。

 水路沿いの道を歩いていると、水車のある公園がありました。

(源太郎橋水車公園)
Photo_20250413102601

 駅からお店まで3km弱あったので、この公園で少し休憩し、再びお店を目指しました。

 ドライブインを訪問するために、車ではなく、ひたすら歩くところが私らしい(笑)

 歩き続けてお腹も空いたところで、「U・Kワイルドキャッツカフェ 西宮武庫川店」に到着しました。


U・Kワイルドキャッツカフェ

(U・Kワイルドキャッツカフェ外観)
Photo_20250413102801

 ロードサイドの電光看板やアメリカの国旗、アメ車…とアメリカンダイナーならではの光景を目の当たりにし、期待が高まりました。

(U・Kワイルドキャッツカフェとアメ車)
Photo_20250413103401

 アメ車には、英語でケンタッキーとかレキシントンとか記載されていますが、よく見ると店舗のローカルな所在地(高井田・武庫川・堺)も記載されていました。

(U・Kワイルドキャッツカフェ玄関)
Photo_20250413103601

 ちなみに「U・K」は、かつてオーナーさんが留学しておられた「University of Kentucky(ケンタッキー大学)」の略なのだそうです。

 そのケンタッキー大学のスポーツ競技チーム名が「Kentucky Wildcats(ケンタッキー・ワイルドキャッツ)」であることも店名に関係しているのでしょう。

 店内には、背の高い椅子、木目のテーブル、電光装飾、メイドインアメリカの看板(シボレー・コルベット・ルート66・ペプシなど)、アメリカンバイク、ミニカーなどがあり、すべてがアメリカナイズされていました。

(ミニカー展示)
Photo_20250413104101

 メニューが運ばれてきたので、手に取って眺めたところ、1つ1つの料理の説明書きがマニアックで、どこからどこまでが本当なのか迷うほど詳しく記述されていました。

 このお店のメニューは、読み物としても十分楽しむことができます。

 マキヒロチさんの漫画「いつかティファニーで朝食を」の第9巻でも、このお店で「リトルスージー(すじ肉の煮込みとライス)」を注文する様子が描かれていて、

 「料理の説明が物語みたいで」
 「ベンジーの書く歌詞みたい」
 「リトルスージーってスジ肉のことか~」
 「おもしろいな~このメニュー」
 「アラバマにあるモンゴメリーCAFEの娘スージーが 愛するタフガイのボーイフレンド、デュークのために心を込めて作ったPower Food」
 「かわいい~読んでるだけで気持ちがあったかくなる」

と紹介されています。


ネギすじソースやきそばライスプレート

 私はランチタイムに訪問し、お得なランチセットがあったので、「スージー」入りのランチセットを注文しました。

 今回注文したのは「ネギすじソースやきそばライスプレート」という料理です。

 続けて読むとどういう料理なのかピンときませんが、「ネギすじ」、「ソースやきそば」、「ライス」のワンプレートランチなのだろうと思い、注文しました。

 しばらくして、注文した料理が運ばれてきました。

(ネギすじソースやきそばライスプレート(ライス))
Photo_20250413104501

 ライスとソース焼きそば、そしてサラダが山のように盛られています。

 「すごいボリューム、アメリカンサイズ!」

 少し困惑した表情で、軽く両手を上げ、

 「見ろよスージー、この店狂ってるぜ!」

 と思わず独り言を言いたくなるようなランチプレートでした(笑)

(ネギすじソースやきそばライスプレート(やきそば))
Photo_20250413104601

 ソース焼きそばだけでも1人前ありそうな量で、すでに皿からこぼれ落ちそうになっています。

(ネギすじソースやきそばライスプレート(ネギすじ))
Photo_20250413104602

 ソース焼きそばの上に、甘辛い醤油ベースのタレでじっくり煮込まれたスジ肉とシシトウが盛られ、その上に刻みネギがのせられています。

 他のメニューを見ても、こちらのお店は「スージー(すじ肉の煮込み)」が看板料理の1つなのだと思います。

 神戸市長田区には「ぼっかけ」と呼ばれる牛すじとこんにゃくを甘辛く煮込んだ料理があることから、すじ肉料理はこの地域で親しまれているのだろうなと思いました。

 「スージー」は醤油ベースの和風の味付けで、とてもやわらかく煮こまれており、ライスだけでなく焼きそばともよく合いました。

 お腹いっぱい、心も体も大満足のランチでした。


エスプレッソジェラートケーキ ハイアニス

 ここまで食べておきながら…そして大満足だと書いておきながら…すっかりクレイジーでハイテンションになった私は、デザートも注文しました。

 メニューにある説明書きも、とても興味深いものでした。

【エスプレッソジェラートケーキ ハイアニス】
 ボストンにあるオイスターハウスは、1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ氏が足しげく通った店である。
 今もこの店に集まる紳士・淑女がお腹一杯になっても「別腹」と言って注文するのがこれである。
 パンケーキにエスプレッソジェラートそれにキャラメルソースがかかった大人の味。
 観た目の悪さにちょっとビックリ↓
 でも食べてもっとビックリ↑
 メチャメチャ美味しいです。ぜひ、ぜひTry me!

 ボストンの紳士・淑女が好む「観た目が悪いけど美味しい」デザートを注文しました。

(エスプレッソジェラートケーキ ハイアニス)
Photo_20250413105201

 アツアツのパンケーキに、エスプレッソジェラートがドン、ドン、ドンとワイルドに盛られ、チョコレートソースがたっぷりかけられています。

(エスプレッソジェラート)
Photo_20250413105401

 ほろ苦いエスプレッソジェラートには、チョコチップがたっぷり入っていました。

 パンケーキが熱いので、写真撮影なんかに没頭せず、早くエスプレッソジェラートをやっつけてしまわないと、観た目がさらに悪くなっちまうぜ(笑)

(アメリカンコーヒー)
Photo_20250413105501

 ドリンクもアメリカンコーヒーで決まりだぜ!

(U・Kワイルドキャッツカフェ伝票)
Photo_20250413105502

 美味しくてボリューム満点のフード・デザート・ドリンクをいただき、ストロングなパワーをいただきました。

(U・Kワイルドキャッツカフェと飛行機)
Photo_20250413105601

 山陽新幹線の沿線で、大阪(伊丹)空港からも近い「U・Kワイルドキャッツカフェ」。

 帰りはアメ車…ではなく歩きで、ケンタッキー大学…ではなく関西学院大学に寄って、阪急・甲東園駅から帰りました。

(関西学院大学・西宮上ヶ原キャンパス)
Photo_20250413105701

 久しぶりに関西学院大学を訪問しました。

 ケンタッキー大学じゃないのかって?

 キャンパス内には「ケンタッキー・フライドチキン関西学院大学店」(H号館ラーニングコモンズ1階ラウンジ)があり、ケンタッキーの気分を味わえるってわけさ(笑)


<関連サイト>
 「U・K WILDCATS CAFE(ユーケーワイルドキャッツカフェ)」(「西宮武庫川店」兵庫県尼崎市常松1-15-27 ほか)

<参考文献>
 マキヒロチ「いつかティファニーで朝食を(9巻)」新潮社

2025年3月 9日 (日)

ドライブインの魅力4 -岡山県倉敷市「ドライブイン古城」の「きつねそば」-

ドライブイン古城

 岡山県倉敷市の南部に、24時間営業のドライブインがあります。

 「ドライブイン古城(こじょう)」です。

 水島から倉敷市街地へ向かう道路沿いで、山の峠付近にあるので、注意して見ておかないと、通り過ごしてしまう可能性があります。
 (倉敷市街地から車で向かった私は、場所がわからず一度通り過ごしてしまいました…)

(ドライブイン古城)
Photo_20240921123401

 ドリンクやたばこの自動販売機がずらーっと並んでいるところに、ドライブインらしさを感じます。

 ただ、外観からは中の様子が全くわかりません。


店内の様子

 駐車場に車を止め、店内に入ってみました。

(ゲームコーナー(スロット・UFOキャッチャー))
Photo_20240921123501

 ドアを開けると、たくさんのゲーム機が目に飛び込んできました。

 ゲームセンター中心のドライブインのようです。

 奥へ行くほど照明が暗くなるところに、昔ながらのゲームセンターの雰囲気が漂っています。

(ゲームコーナー(パチンコ・スロット))
Photo_20240921123601

 こちらはパチンコ台・スロットマシンがずらりと揃っています。

 タバコを吸いながらパチンコやスロットを楽しんでおられる方が何人かおられました。

 ドライブインはドライバーやライダーの休憩施設なので、トイレもあるだろうと見渡しましたが、すぐには見つかりませんでした。

 「もしかしてトイレは無いのか」と歩き回っていると、お店の奥のドアに小さな字で「御手洗 TOILET」と書かれた札がありました。

(ゲームコーナー(アーケードゲーム))
Photo_20240921123801

 写真中央の青い窓のドアの上に小さく「御手洗」と書かれた札があったので、そのドアを開けると…建物の外に出ました。

 そして、建物の向かい側に独立した小さなトイレがありました。

 面白い配置ですが、のちに、トイレがお店を出た別の場所にあるのはドライブインではよくあることだと知りました。


うどん・そば自動販売機

 ゲーム機ばかりだと単なる「ゲームセンター」ですが、「ドライブイン古城」にはパンやお菓子・麺類などの自動販売機が設置され、飲食スペースも設けられています。

 飲食スペースに「うどん・そば自動販売機」がありました。

(うどん・そば自動販売機)
Photo_20240921124201

 レトロ自動販売機ですが、レトロなデザインに魅力を感じる(懐かしさを覚える)方も多いと思います。

 「お客様へのお願い」として、「食べた後の空容器は持ち帰らず、備え付けの回収バケツに入れてください」と書かれています。

 「うどん・そば自動販売機」どころか、それに使われる容器すら、もはや製造されていないということでしょう。

 この「うどん・そば自動販売機」、正式名称は「富士めん類自動調理販売機」と言います。

 昭和40年~50年頃に開発されたこの自動販売機は、売上低迷により1995年に生産が中止され、現存するのは全国で70台程度と言われています。

(うどん・そば自動販売機(料金投入口・メニューボタン))
Photo_20240921124601

 「きつねそば280円」と「天ぷらそば280円」のメニューボタンがあります。

 「きつねそば」のボタンを押すと、ボタンの上に待ち時間が表示されます。

 「できあがりまで 25秒、24秒、23秒…」とニキシー管の赤い数字が1秒ずつ減っていくのです。

 この間、自動販売機の中では、麺が茹で切りされたり、だしがかけられたりと様々な調理がなされています。

 約25秒後、取出口に出来上がったきつねそばが現れました。

(うどん・そば自動販売機(麺の取出口))
Photo_20240921125001


ドライブイン古城のきつねそば

 きつねそばを取り出し、さあ食べようと思った時になって、ふと気付いたことがあります。

 「自動販売機に割り箸がない…」

 「これは困った…割り箸の有無を確認してから買えばよかった…」と思いつつ、テーブル席に着くと、テーブルの上に割り箸と七味が置いてありました(笑)

(きつねそば)
Photo_20240921125101

 かけそばに、甘く炊いた油揚げ(きつね)がのせられています。

 うどん・そば自動販売機のうどんやそばは、汁がしょっぱ過ぎることがよくあるのですが、このお店の汁はちょうどよい濃さでした。

(きつねそばとゲームコーナー)
Photo_20240921125201

 ゲームコーナーを眺めながら、きつねそばをいただきました。

 飲食スペースは禁煙ですが、ゲームコーナーでタバコを吸われている方がおられたので、タバコの臭いが少し気になりましたが、それも一興なのかも知れません。

 ドライブの途中に立ち寄ってゲームを楽しみ、うどん・そばを食べて、心も体もほっと安らぐ場となっています。


<関連サイト>
 「ドライブイン古城」(岡山県倉敷市福田町福田2111-1)
 「味わいの昭和レトロ自販機コーナー「懐かし自販機」

<関連記事>
 「懐かしのうどん・そば・ラーメン自動販売機1 -広島県三次市「福原酒店」の天ぷらそば・自動販売機のうどん・そばの魅力-
 「懐かしのうどん・そば・ラーメン自動販売機2 -島根県浜田市「ドライブイン日本海」の天ぷらうどん・日清食品カップヌードルの自動販売機-

2025年2月16日 (日)

広島市植物公園「バレンタインフェスティバル2025」 -絵本の朗読とチョコレート作り体験・テンパリングとココアバターの結晶化について-

広島市植物公園のバレンタインフェスティバル

 今年も広島市植物公園でバレンタインイベントが開催されました。

(「バレンタインフェスティバル2025」チラシ)
Photo_20250215220701

 私は2025年2月9日に広島市植物公園を訪問しました。

(広島市植物公園・ハート形の花の鉢植え)
Photo_20250215220801

 広島市植物公園です。

 バレンタインフェスティバルにちなみ、花の鉢植えがハート形に並べられていました。

 奥の建物は大温室です。

 この大温室では,全国でも珍しいカカオが栽培されています。


カカオの木・カカオの実とチョコレートの香りがするランの花

 大温室の「くだものと暮らしのコーナー」エリアにカカオの木があります。

 このカカオの木を見に行くと…

(カカオの木・バレンタインフェスティバル装飾)
Photo_20250215221001

 カカオの木に、バレンタインデーにちなんだハート形や星形の装飾が施されていました。

 カカオの実がどこになっているかわからない状態になっています(笑)

 カカオの木に近づいて、カカオの実を探しました。

(カカオの木・カカオの実)
Photo_20250215221101

 褐色のカカオの実がなっていました。

 次に「チョコレートの香りがするラン」を探しました。

(オンシジウム シャリー ベイビー)
Photo_20250215221102

 チョコレートの香りがするランは、「オンシジウム シャリー ベイビー」という名で知られています。

 色はワインレッド・薄ピンク・白で構成され、見た目にもチョコレートの香りがしそうな花です。

 花に近づいて香りを確かめると、本当にチョコレート(ローストカカオ)の香りがしました。

 チョコレート好きにはたまらない花です。


ベゴニア温室と「カカオとチョコの秘密」展示

 続いて、ベゴニア温室へ行ってみました。

(ベゴニア温室入口・バレンタイン装飾)
Photo_20250215221401

 ハート形のカラフルなアーチが設置されていました。

 室内には色とりどりのベゴニアが並び、「カカオとチョコの秘密」についての説明書きもありました。

(ベゴニアと「カカオとチョコの秘密」展示)
Photo_20250215221402

 また、同じ室内で「99本のバラと記念撮影」イベントも開催されており、家族連れやカップルなどで賑わっていました。


森のカフェでランチ

 次に、ベゴニア温室の向かいにある「森のカフェ(ログハウス)」へ行きました。

 こちらのお店で昼食をいただきました。

 私の目当ては、カツカレーです。

(「森のカフェ」のカツカレー)
Photo_20250215221701

 このお店のカツカレーは、これで3回目の注文となります。

 お腹も満足したところで、ふと窓から外を眺めると、展示資料館の建物が見えました。

(「森のカフェ」から眺めた展示資料館)
Photo_20250215221801

 この展示資料館2階の講堂で、チョコレートの専門家・佐藤清隆先生(広島大学名誉教授)によるバレンタインフェスティバル関連イベント「絵本の朗読とチョコレート作りの体験」が開催されます。

 イベント開始時刻が近づいたため、お店を後にし、展示資料館へ向かいました。


世界のチョコレート販売

 展示資料館1階のロビーで、世界のチョコレートが販売されていました。

 イタリア、ドイツ、トルコなどのチョコレートが用意されていました。

 私がひときわ興味を持ったのは、スプーンの形をしたチョコレートです。

(エリート チョコレートスプーン)
Photo_20250215222001

 ミルクチョコレートのスプーンが3本、ダークチョコレートのスプーンが3本、計6本のセットです。

 スプーンとして使ったあとでバリバリ食べるのが楽しそうです。


絵本「ひと粒のチョコレートに」の朗読とチョコレート作り体験イベント

 買い物を済ませ、展示資料館の2階へ行こうとしたところ、講演開始の30分以上前にもかかわらず、あっという間に参加希望者の列ができ、私は1階の階段付近で待つこととなりました。

 列にならんで待っていると、佐藤清隆先生が登場しました。

 佐藤先生は私を見つけ、「おっ、毎年1回会うね!」と声をかけてくださいました。

 私は「今年は初めてだけど、去年は3回お会いしてますよ!」と心の中でつぶやきながら受付開始を待ちました。

 受付を済ませ、私は前の席に座りました。

 私の入場整理券は31番で、この日、100名の定員は埋まったようでした。

 講演会開始までの間、佐藤先生と少しお話しすることもできました。

 受付で、植物公園の職員さんから紙皿にのせたローストカカオ豆や砂糖などをいただきました。

(ローストカカオ豆・砂糖・水・フラワーバレンタインチラシ・入場整理券)
Photo_20250215223701

 御用意いただいたカカオ豆はフィリピン産で、佐藤先生がフィリピンの農園から直接入手されたそうです。

 やがて講演会開始時刻を迎えました。

 講演会は、佐藤先生が書かれた絵本「ひと粒のチョコレートに」(福音館書店)をもとに、「ぐるんぱ」の皆さんがその絵本を朗読し、佐藤先生がその朗読に合わせて絵本やチョコレート研究のスライドを紹介する方法で進められました。

 その朗読の合間にチョコレートに関するクイズが出されたり、チョコレート製造工程の一部を体験できたりと、盛りだくさんの内容でした。

 絵本の朗読の途中、佐藤先生から会場の皆さんへ、
「カカオ豆の殻を割って中の実(胚乳・カカオニブ)を取り出してみてください」
「その際、カカオニブの中に小さく細長い棒(胚芽)があるので取り出してください」
とお話がありました。

(スライド・カカオ豆の皮むき体験)
Photo_20250215224001

 私も爪を使ってカカオ豆の硬い殻を取り除いてみました。

(カカオ豆・カカオニブ・カカオ豆の皮)
Photo_20250215224101

 写真左上が殻を割った「カカオニブ(カカオの胚乳)」、右上がそれを細かく砕いたもの、それらの間(時計の12時の方向)にある小さい茶柱のような形をしたものが胚芽(ジャーム、チュニブ)、写真下側の茶色いものがカカオの殻(外皮の「カカオシェル」と薄皮の「カカオハスク」)です。

 カカオの胚芽は5mm前後と小さく、探し出すのが難しいのですが、豆の状態のカカオニブをよく観察すると、豆の先端部に丸い穴が開いている箇所があります。

(カカオニブの胚芽の位置)
Photo_20250215224201

 この穴(写真の赤い矢印の箇所)の中にカカオの胚芽があります。

 この胚芽はやがてカカオの木へと成長するものですが、これを食べてもジャリジャリして苦いだけなので、チョコレートを作る際には取り除く必要があります。

 胚芽を取り除いたカカオニブを、まずはそのままいただきました。

 ローストしたアーモンドのような食感で、味はカカオ100%の苦いチョコレートでした。

 次に手のひらの上にカカオニブをのせ、その上から砂糖(グラニュー糖)をたっぷりかけたものをいただきました。

(砂糖を加えたカカオニブ)
Photo_20250215224401

 このように砂糖と一緒にカカオニブを食べると、甘くて食べやすいチョコレートに一変します。

 写真の手のひらにすり傷が見えますが、これは当日、急いで広島市植物公園へ向かおうと走っていた際、つまずいて転んでできた傷です。

 右手の手のひらや左足のひざは、傷が深く、皮膚がめくれてしまいました。

(ケガをした右手)
Photo_20250215224601

 カカオニブの試食をするのも大変でした(笑)

 絵本の朗読が進む中、チョコレート作り体験も行われました。

 ボウルには、すでにテンパリング(温度調整・結晶化)済みの液状のカカオニブ(チョコレートリカー)が用意されていました。

(液状のカカオニブと温度計)
Photo_20250215224701

 液状のカカオニブを金属トレーに移し替えると、すぐにトレーを机にバンバン打ち付け、中の空気を抜く作業(タッピング)がなされました。

 最初に佐藤先生が実演されたのですが、「バシャン、バシャン」と会場に大きく鳴り響くレベルでトレーを机に叩きつけられました。

 続いて会場の子供たちもタッピング作業を体験しました。

 トレーを叩き過ぎてカカオニブをこぼす子供もいて(笑)、会場は大変な盛り上がりでした。

 タッピングを終えたカカオニブは、すぐに冷蔵庫に入れて冷やし固められました。

 絵本の朗読が終わる頃、植物公園の職員の方が完成した板チョコレートを持って来られました。

(冷やし固めたチョコレート)
Photo_20250215225401

 滑らかで光沢のあるチョコレートに仕上がりました。

 最後にこの板チョコレートを一口サイズに割る作業の体験がありました。

 これも子供たちが担当しました。

(冷やし固めたチョコレートを割る様子)
Photo_20250215225501

 みんな楽しそうに板チョコレートを割っていました。

 このあと、完成したチョコレートを参加者全員で試食しました。

(チョコレート(試食用))
Photo_20250215225601

 フィリピン産カカオ豆70%のチョコレートです。

 カカオニブをかじっているような、純粋な美味しさを味わえるビターチョコレートでした。


テンパリングとココアバターの結晶化

 ここからは、少し専門的なチョコレートのお話をしようと思います。

 このイベントが開催されているちょうどその時に、NHK総合テレビで「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」という番組が再放送されました。

 この番組に佐藤清隆先生が「チョコレート博士」として登場されました。

 テーマは簡単に作れる手作りチョコレートの「トリセツ(取扱説明書)」です。

 そこで、今回の講演会とこの番組にちなんだ「テンパリングとココアバターの結晶化」について御紹介します。


 手作りチョコレートを作る時、細心の注意を払う必要があるのが「テンパリング」です。

 テンパリングは、温めて溶かしたチョコレートをモールド(型)に入れて冷やし固める際に、「冷却→昇温→再冷却」と温度調整するなどの方法で、ベタベタ・ザラツキがなく、口どけのよいチョコレートに仕上げることを言います。

 単純に「溶かしたチョコレートをモールドに入れて冷やし固めればよいのでは」と思うのですが、こうするとその多くは失敗してしまう(チョコレートがベタベタ、ザラザラ、口どけが悪くなってしまう)のです。

 この現象は、ココアバターの結晶を最適な状態にして固められなかったことが原因です。

 そこで「ココアバターの結晶を最適化させる」ためにテンパリングがなされます。

 ココアバターの結晶はⅠ型(1型)からⅥ型(6型)まで6種類あります。

 このうち、Ⅳ型(4型)から下だと指で触るだけでチョコレートが溶けてしまい,逆にⅥ型だと固すぎて口の中でチョコレートが溶けないため,一般的なチョコレートにはⅤ型(5型)が適しています。

 まとめると、「テンパリング」は「ココアバターの結晶を最適化させる」ことであり、言い換えれば「ココアバターの結晶をⅤ型にさせる」ことだと言えます。

(市販のチョコレートに存在する「口溶け結晶(Ⅴ型)」)
Photo_20250216054301
 NHK「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」の映像の一部を引用

 市販のチョコレートには「Ⅴ型」の美しい結晶が並んでいます。

 Ⅴ型とそれ以外の型では、炭素の「ダイヤモンド(宝石)」と「黒鉛(鉛筆の芯)」、炭酸カルシウムの「アラゴナイト(真珠)」と「カルサイト(貝殻)」ぐらい大きな違いがあります。

(Ⅴ型結晶)
Photo_20250216054302
 NHK「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」のウェブサイトの一部を引用

 チョコレートをⅤ型にするためには、一旦冷却させてⅣ型を作った後、昇温させてⅤ型を作り、再冷却してⅤ型で固めるというプロセスが求められます。

(テンパリングのメカニズム)
Photo_20250216054601
 佐藤清隆「チョコレートを極める12章」幸書房・p227 図11.5を引用

 単に冷却してⅤ型を作ろうとすると、18時間以上かけて冷ます(固める)必要があり、そうやって固めたⅤ型も粗大な結晶の塊となり、微細なⅤ型の結晶にはならないのです。

(ココアバターの結晶化プロセス)
Photo_20250216054801
 佐藤清隆「チョコレートを極める12章」幸書房・p229 図11.6を引用・一部加工

 図の左上から右下に向かった一点鎖線が温度のグラフ、左下から右上に向かった点線(破線)がⅤ型結晶量のグラフで、黄色く塗りつぶしたところが、テンパリングの過程です。

 ココアバターの温度を一旦下げてⅣ型結晶を作り、再び上げてⅤ型結晶が作られる様子がわかります。

 「あしたが変わるトリセツショー」では、こうした面倒なテンパリングをしなくても、簡単に口どけのよいチョコレートを作る(Ⅴ型の結晶を作る)方法が紹介されました。

 それは、佐藤先生いわく、溶かしたチョコレートに「魔法の種」を入れる方法です。

(魔法の種)
Photo_20250216060401
 NHK「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」の映像の一部を引用

 これ、何だと思いますか?

 実は市販のチョコレートを包丁で細かく刻んだものです(笑)

 市販のチョコレートにはⅤ型の結晶が存在するため、それを溶かしたチョコレートに混ぜ合わせ、種をまいて発芽・成長させるように、チョコレートのⅤ型結晶を増やすという作戦です。

(溶かしたチョコレートに「魔法の種」を混ぜ合わせる様子)
Photo_20250216060701
 NHK「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」の映像の一部を引用

 番組の中で、佐藤先生は、
「魔法の種を入れると、入れた種が全体に散らばってⅤ型になる」
「まるで「オレについて来い!」というもの」
とおっしゃっていました。

 そしてもう1つ、Ⅴ型結晶を作るのに大切なのが「攪拌(かくはん)」です。

 広島大学生物生産学部の上野 聡 教授によると、よくかき混ぜることでチョコレート全体にⅤ型結晶を行き渡らせるのが、口どけのよいチョコレートを作るコツなのだそうです。

 こうして作られた手作りチョコレートは、その出来栄えの良さにスタジオの出演者も驚いておられました。

 広島市植物公園の講演会会場でも、佐藤先生はチョコレートの温度管理に細心の注意を払っておられました。

(液状のカカオニブ・温度計・ドライヤー)
Photo_20250216061001

 作業時に一定の温度(27℃~32℃)を保つことがとても重要らしく、溶かしたチョコレートを金属トレーへ移し替える時でさえ、佐藤先生はそのトレーをドライヤーの熱風で温めておられました。

 佐藤先生が冷やし固めるための液状のカカオニブを用意された際にも、実は白い「魔法の粉」が使用されました。

(液状のカカオニブと「魔法の粉」)
Photo_20250216061401

 液状のカカオニブに、白い粉を混ぜ合わせています。

 この粉は、会場では説明されなかったのですが、佐藤先生から「BOB」だと伺いました。

 「BOB」は、ベヘン酸とオレイン酸で作られたパウダー状の油脂で、ココアバターをⅤ型の結晶にするために用いられます。

 この「魔法の粉」のおかげで、子供たちの手を汚すことなく、口どけのよいチョコレートが短時間で完成しました。

 ちなみに、こうした「魔法の種」・「魔法の粉」でテンパリングする方法は、「シードテンパリング法」(シード(seed)は「種」、転じて「種結晶」という意味)と呼ばれています。


まとめ

 講演会終了後,佐藤先生に御挨拶をし、会場を後にしました。

 少し休憩しようと、帰りがけに喫茶店に寄りました。

 私の定番はホットコーヒーなのですが、この日は久しぶりにココアが飲みたくなり、注文しました。

(ココア)
Photo_20250216061801

 この日は寒波が訪れ、雪が降っていたこともあり、温かいココアが体や傷口に浸みわたり、良い香りに包まれて幸せな気持ちになりました。

 カカオポリフェノールには、実際に傷を治してくれる効果もあるようです。

(チョコレートに含まれるカカオポリフェノールの健康効果)
Photo_20250216071101
 NHK「あしたが変わるトリセツショー」の「チョコレート取扱説明書」の一部を引用

 モテる男なら、傷も早く治るのでしょうが…(笑)


<関連サイト>
 「広島市植物公園」(広島市佐伯区倉重三丁目495番地)

<関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「チョコレートの研究」を御参照ください。

<参考文献>
 NHKテレビ・NHKウェブサイト「あしたが変わるトリセツショー「チョコレート」のトリセツ」
 佐藤清隆「チョコレートを極める12章」幸書房

2025年2月 2日 (日)

あずきの研究20 -津和野あんこ旅ウォーク(津和野町観光協会・日本あんこ協会「源氏巻食べ歩きツアー」)-

日本あんこ協会と津和野町観光協会の「津和野あんこ旅ウォーク」

 当ブログの読者様から、「日本あんこ協会」という協会があることを教えていただきました。

 小豆好き、あんこ好きの私は、早速御紹介いただいた「日本あんこ協会」のウェブサイトを拝見しました。

 すると、そのサイトの新着情報に「島根県津和野町で開催されるあんこ系スタンプラリーイベント「津和野あんこ旅2024」に監修協力致します。」という記事がありました。

(津和野あんこ旅)
Photo_20250202115901

 その記事をクリックし、さらに詳しく見てみると、2024年11月23日・24日の両日、「津和野あんこ旅2024」の関連イベントとして、各店の「源氏巻(げんじまき)」を食べながら津和野の街を歩く「あんこ旅ウォーク」が開催されることがわかりました。

(津和野あんこ旅ウォークチラシ)
Photo_20250202131401

 日本あんこ協会の「にしい会長」と一緒に、あんこの解説などを交えながら、各店舗の源氏巻を食べ歩きができるイベントです。

 「あんこ好きの私としては、ぜひ参加し、日本あんこ協会会長にもお会いしたい」と思い、即断即決で津和野町観光協会のサイトから参加申込みをしました。


「津和野あんこ旅ウォーク」オリエンテーション

 2024年11月23日、広島市内から車で島根県津和野町へ向かいました。

 集合場所の津和野町観光協会(津和野駅構内)に着くと、「津和野あんこ旅ウォーク」のコーナーがありました。

(津和野町観光協会・津和野あんこ旅ウォーク案内)
Photo_20250202131601

 受付を済ませ、スタート地点となる駅前広場へ向かいました。

 駅前広場には、実物の蒸気機関車が展示されていました。

(蒸気機関車D51 194(津和野のデゴイチ))
Photo_20250202131701

 蒸気機関車「D51(デゴイチ)」の194号機で、「津和野のデゴイチ」と呼ばれています。

 この蒸気機関車で私が注目したのはこちらです。

(蒸気機関車のヘッドマーク(津和野あんこ旅))
Photo_20250202131801

 何とヘッドマークまで「津和野あんこ旅」のデザインになっています。

 津和野町観光協会の公式キャラクター「源氏まき子」ちゃんが描かれたヘッドマークです。

 これを見て、ますますテンションが上がりました。

 ほどなく集合時刻を迎え、イベント参加者をはじめ、にしい会長、津和野観光協会・津和野町商工会の皆さんが勢ぞろいしました。

 また、プロレスラーで無類のあんこ好きの日高郁人さんも特別参加されました。

 にしい会長は、蒸気機関車のヘッドマークと同じ「源氏巻の被り物」をし、日本あんこ協会のたすきをかけての登場です。

 この姿を見て、私と波長が合うことが一発でわかりました(笑)

 「源氏巻食べ歩きツアー」のオリエンテーションとして、メンバー紹介と源氏巻の説明がなされました。

 続いて参加メンバーへ、試食した源氏巻の味を記録・分析するためのシート「源氏巻分析シート」とボールペン・バインダーが配られました。

(源氏巻分析シート(日本あんこ協会))
Photo_20250202132301

 店名(記入済み)、全体的な甘さ(控えめ~甘め 5段階)、生地の質感(しっとり~軽やか 5段階)、あんこの糖度(度数)、生地の厚み(mm・記入済み)、重さ(長さ3cmでの重さ・記入済み)、メモ(感想・気付き)の各項目を記録し、後で比較・分析できるようにまとめられたシートです。

 そして、「まめ茶」のペットボトルをいただきました。

(津和野まめ茶)
Photo_20250202132501

 「まめ茶」は「カワラケツメイ」というマメ科の植物から作られるお茶で、津和野・山口近郊で栽培されています。

 ノンカフェインで、独特な香ばしさと味が楽しめるお茶です。

 これから甘い源氏巻をたくさん食べるので、その際の口直し・水分補給用に用意されたものです。

 このお茶、源氏巻(和菓子)との相性が抜群ですので、津和野へお越しの際は源氏巻と一緒にぜひお飲みください。


津和野町の花「つわぶき」・源氏巻の名称と形の由来

 オリエンテーションを終え、いざ「源氏巻食べ歩きツアー」の開始です。

 メンバー揃って津和野の街中を歩きました。

 にしい会長のコスチューム効果もあり、行き交う人々からの注目度はナンバーワンです。

 途中、津和野町観光協会の職員さんから「つわぶき」の花を御紹介いただきました。

(津和野町の花「つわぶき」)
Photo_20250202132801

 「つわぶき」は秋に黄色い花を咲かせるキク科の植物です。

 津和野の語源は「つわぶきの生い茂る野」に由来しているいう説もあるそうです。

 あわせて、「源氏巻」の名前の由来も教えていただきました。

 源氏巻の名称は、
 「幕末、藩の御用菓子司が藩主にあんこを詰めたお菓子を献上し、このお菓子の命名をお願いしたところ、藩主のお姫様が紫色のあんこに感動し、源氏物語の「若紫」の歌を詠んだことにちなんだ」
という説が広く知られているそうです。

 ちなみに、源氏巻の形については、
 「江戸・元禄時代の津和野藩主が、高家の吉良上野介義央(きらこうずけのすけ よしひさ)に勅使の接待方法について教えを請うが、教えてもらえなかったため、小判をカステラのような生地に包んで吉良に献上したところ、教えてもらうことができた」
 そして、
 「こうした津和野藩主の対応が功を奏して藩が救われたことから、のちに小判の代わりにあんこを包み、めでたいお菓子として津和野で受け継がれてきた」
という説が広く知られているようです。

 この話が本当なら、「忠臣蔵」に登場する吉良上野介は、赤穂藩主だけでなく、津和野藩主にまで意地悪をしていたことになりますね…

 曇り空で、時折小雨が降る中、一行は源氏巻のお店を目指しました。


源氏巻食べ歩きツアー

【「山本風味堂」の源氏巻】

 最初のお店「山本風味堂(やまもとふうみどう)」に到着しました。

(山本風味堂)
Photo_20250202133301

 街の雰囲気に馴染んだ、味のあるお店です。

 お店に入ると、お店の方が出来たての源氏巻を用意してくださいました。

(山本風味堂の源氏巻)
Photo_20250202133401

 生地の厚みは4mm、幅3cmあたりの重さは22gです。

 早速いただいてみると…皮がパリッとしてとても軽く、中のこしあんはやわらかくてアツアツでした。

 私は頭の中で、
「こっ、これは!!」
「今まで食べた源氏巻とは全然違う」
「姫路の「あずきミュージアム」で焼きたての御座候を食べた時の感動と同じだ」
と有頂天になりました。

 焼きたての源氏巻は、陳列されている源氏巻と全く違うと言っても過言ではありません。

 にしい会長から「この源氏巻のあんこの糖度は59度です。この甘さを覚えていただき、後のお店の糖度を記入してください」とアドバイスがありました。

 私は、甘さは「5・強い甘さ」、生地の質感は「5・軽やか」、メモには「皮は薄くあっさり、こしあんはかなり甘い」と記入しました。


【「藤村山陰堂」の源氏巻】

 2軒目に「藤村山陰堂(ふじむらやまかげどう)」を訪問しました。

(藤村山陰堂)
Photo_20250202133701

 源氏巻のほか、「やまかげ(山陰)」と呼ばれる白あんのどら焼きに似たお菓子も有名です。

 「やまかげ」は予約販売が中心で、午前中には売り切れてしまうほどの人気だそうです。

(藤村山陰堂の源氏巻)
Photo_20250202133901

 生地の厚みは2mm、幅3cmあたりの重さは29.5gです。

 甘さは「3・中間の甘さ」、生地の質感は「1・しっとり」、糖度55度(正解は51度)、メモには「皮が薄く、しっとりとしている。こしあんがきめ細かく上品」と記入しました。


【「峰月堂」の源氏巻】

 3軒目に「峰月堂(ほうげつどう)」を訪問しました。

(峰月堂)
Photo_20250202134201

 お店に入ると、銘菓「紺珠(かんじゅ)」や、レモンケーキなども販売されていました。

(峰月堂の源氏巻)
Photo_20250202134401

 生地の厚みは3.5mm、幅3cmあたりの重さは21gです。

 源氏巻のあんこは「こしあん」が多いのですが、この源氏巻は「つぶあん」です。

 甘さは「4・やや強い甘さ」、生地の質感は「2・ややしっとり」、糖度50度(正解は59度)、メモには「こしあんに近いつぶあん。小豆の香りがする。皮がもっちりしっかりしている」と記入しました。


※峰月堂のレモンケーキ、紺珠、豆大福も購入しましたので、御紹介します。

(峰月堂のレモンケーキ・紺珠・豆大福(包装))
Photo_20250202223401

 写真上がレモンケーキ、右下が紺珠、左下が豆大福です。

(峰月堂のレモンケーキ・紺珠・豆大福)
Photo_20250202223501

 包装を開けると、こんな感じです。

(峰月堂のレモンケーキ・紺珠・豆大福(中身))
Photo_20250202223502

 
 「レモンケーキ」は横約7cm、幅約5cm、高さ約4cm。レモンチョコがパリッとして、ケーキの底までたっぷりとコーティングされています。ケーキ生地はきめ細やかでサクッとした食感です。口に含んだ瞬間、さわやかで強いレモン風味が感じられました。

 「紺珠」は直径約4cm、高さ約3.5cm。山芋入りの生地で作られた上用饅頭です。こしあんの中には、刻んだ甘栗が入っています。

 「豆大福」は豆入りのやわらかいお餅に、あっさりしたあんこがたっぷり入った一品です。

 紺珠の人気は言うまでもありませんが、特筆すべきはレモンケーキと豆大福で、これだけを買いに津和野へ行ってもいいくらい、魅力的な美味しさでした。


【「山田竹風軒」の源氏巻】

 4軒目に「山田竹風軒(やまだちくふうけん)」を訪問しました。

(山田竹風軒本町店)
Photo_20250202134601

 こちらのお店の源氏巻は、デパートの全国銘菓コーナーや東京のアンテナショップなどにも展開されています。

 店舗では「源氏巻アイス」も販売されています。

(山田竹風軒の源氏巻(菓子皿))
Photo_20250202134901

 1本の源氏巻を試食用に5等分し、菓子皿で提供していただきました。

(山田竹風軒の源氏巻)
Photo_20250202135001

 皮に厚みがあり、きめ細かなこしあんが包まれています。

 生地の厚みは4.5mm、幅3cmあたりの重さは21.5gです。

 甘さは「3・中間の甘さ」、生地の質感は「1・しっとり」、糖度52度(正解は57度)、メモには「厚い生地で弾力感がある。甘く上品なこしあん。どら焼きのイメージ」と記入しました。


【華泉酒造】

 次に「華泉酒造(かせんしゅぞう)」に伺い、限定特別企画「津和野の地酒と源氏巻のペアリング体験」をしました。

(華泉酒造)
Photo_20250202135101

 江戸中期(1730年)創業で、日本酒の仕込み水には、秀峰青野山の伏流水(井戸水)が使われています。

 今回御用意いただいたお酒は「純米大吟醸 黒狐(くろぎつね)」で、フルーティですっきりした味わいのお酒です。

 藤村山陰堂の源氏巻とのペアリングを体験しました。

 私は、津和野へ車で伺ったので、源氏巻のみいただきました。


【「倉益開正堂」の源氏巻】

 5軒目に「倉益開正堂(くらますかいせいどう)」を訪問しました。

(倉益開正堂)
Photo_20250202135401

 源氏巻はこしあんのほか、つぶあんや抹茶あんも販売されています。

(倉益開正堂の源氏巻(こしあん・つぶあん))
Photo_20250202135501

 写真上がこしあん、下がつぶあんです。

(倉益開正堂の源氏巻(抹茶あん))
Photo_20250202135502

 こちらは抹茶あんです。

 3種類すべてを試食させていただきました。

 生地の厚みは2.5mm、幅3cmあたりの重さは24gです。

 甘さは「4・やや強い甘さ」、生地の質感は「2・ややしっとり」、糖度60度(正解も60度)、メモには「あんこの甘みをしっかり感じる。つぶあんは小豆の粒々感あり。抹茶あんはしっかりと抹茶の香りを感じる」と記入しました。


【「沙羅の木」の源氏巻】

 6軒目に「沙羅の木(さらのき)」を訪問しました。

 お店の前では、地元のお祭りが行われていました。

(祭りのお神輿)
Photo_20250202135901

 「わっしょい、わっしょい」

 見ている方もテンションが上がります。

(沙羅の木(津和野観光会館・ことぶきや))
Photo_20250202135902

 「沙羅の木」は、お土産店のほか、食事や喫茶のお店もあり、津和野の観光拠点の1つとなっています。

 お店に入ると、メンバーに1つずつ源氏巻が手渡されました。

(沙羅の木の源氏巻(抹茶あん))
Photo_20250202140001

 こちらは抹茶あんです。

(沙羅の木の源氏巻(こしあん))
Photo_20250202140101

 こちらはこしあんです。

 抹茶あんに続いてこしあんの源氏巻、ボールペンと記録シートとバインダー、そして傘と、手に持つものがいっぱいで、やむなくこしあんの源氏巻は記録シートにのせて撮影しました。

 生地の厚みは2.5mm、幅3cmあたりの重さは27.5gです。

 甘さは「3・中間の甘さ」、生地の質感は「3・バランスのとれた生地」、糖度55度(正解は60度)、メモには「皮は標準でやわらかく食べやすい。あんこはすっきりした甘さ」と記入しました。

(源氏巻製造機)
Photo_20250202140301

 源氏巻の製造工程も見学しました。

 こちらのお店には珍しい「白あん」の源氏巻もあります。


【日本あんこ協会 にしい会長による紙芝居・あんこの話】

 津和野の街を歩いていると、鯉をよく見かけます。

(津和野の鯉)
Photo_20250202141201

 津和野藩の藩校「養老館」に着き、ここで少し休憩となりました。

 日本あんこ協会・にしい会長が用意された紙芝居で、津和野とあんこの歴史を学びました。

(日本あんこ協会にしい会長による紙芝居)
Photo_20250202141301

 紙芝居で、津和野出身の森鷗外(もりおうがい 小説家・軍医)があんこ入りの饅頭を割り、ごはんの上にのせて、お茶をかけて「饅頭茶漬け」にして食べていたというお話を御紹介いただきました。

 詳しくは日本あんこ協会のサイト「森鷗外と饅頭茶漬け~偉人とあんこ-Vol.4~」を御覧ください。


【「三松堂本店」の源氏巻】

 7軒目に「三松堂本店(さんしょうどうほんてん)」を訪問しました。

(三松堂本店)
Photo_20250202141701

 源氏巻のほか、「こいの里」という小豆菓子でも有名なお店です。

(三松堂本店の源氏巻(菓子皿))
Photo_20250202141801

 源氏巻を2切れずつ、気合いの入った朱塗りの菓子皿で用意していただきました。

(三松堂本店の源氏巻)
Photo_20250202141901

 見るからにさらりとした上品なこしあんが包まれています。

 そして注目したいのは、生地の巻き方です。源氏巻を裏返してみると…

(三松堂本店の源氏巻(裏))
Photo_20250202142001

 このように生地が重ねられていないのです。

 生地の巻き方1つとっても、各お店で違い・こだわりがあることがわかりました。

 生地の厚みは3.5mm、幅3cmあたりの重さは22gです。

 甘さは「2・やや控えめの甘さ」、生地の質感は「1・しっとり」、糖度54度(正解は55度)、メモには「生地に厚みがあり、しっとりしている。餅生地のようなモチモチ感もある。あんこの甘さは控えめ」と記入しました。

 店長の阿部さんが応対してくださり、甘さ控えめで、パサつきを防ぐ意味からも賞味期限を短く設定されていることや、源氏巻の味と伝統を未来に紡ぐため、クラウドファンディングで「出張源氏巻手焼き体験」などの活動をされているお話などを伺いました。

 私はメモに「店長が面白い」と追加しました(笑)


【「宗家」の源氏巻】

 8軒目に「宗家(そうけ)」を訪問しました。

(宗家)
Photo_20250202142201

 手焼きの源氏巻が味わえるお店です。

(源氏巻を切る様子(宗家))
Photo_20250202142301

 源氏巻は1本16cm前後の長さで売られていますが、これは三等分した長さで、出来上がり直後は50cm近くあることを知りました。

 注文すればロング巻きも販売していただけるようです。

 サブウェイのサンドイッチみたいですね(笑)

(宗家の源氏巻)
Photo_20250202142302

 生地が薄く、あんこに照りがあります。

 生地の厚みは2mm、幅3cmあたりの重さは24gです。

 甘さは「5・強い甘さ」、生地の質感は「5・軽やか」、糖度62度(正解は71度)、メモには「生地は薄くパリッとして固め。瓦せんべいのような甘い生地。あんこがしっとりとして、とても甘い」と記入しました。

 あんこの中にキャラメル状に煮詰めた砂糖を追加することで、あんこの照りと甘味を強めておられるそうです。


【「村田一貫堂」の源氏巻】

 9軒目に「村田一貫堂(むらたいっかんどう)」を訪問しました。

(村田一貫堂)
Photo_20250202142601

 伝統を受け継ぎ、手焼きの源氏巻を提供されているお店です。

(村田一貫堂の源氏巻)
Photo_20250202142602

 生地の厚みは2.5mm、幅3cmあたりの重さは22gです。

 甘さは「2・やや控えめな甘さ」、生地の質感は「1・しっとり」、糖度50度(正解は65度)、メモには「ほどよい厚みがあり、しっかりした食感の生地。あんこの甘さは控えめで適度な塩気もある」と記入しました。

 この分析で、私があんこの糖度を大きく間違えてしまったことを申し添えておきます。

 このお店のあんこ糖度65度で、他の源氏巻に比べて甘さが強いのですが、私は甘さ控えめと判断を誤りました。

 これは直前に食べた、甘みの強い「宗家」の源氏巻と(無意識に)比較してしまったからだと思います。

 甘みが強く、しっかりした生地の源氏巻です。

 お店の前で、津和野駅を出発するSLやまぐち号の汽笛が聞こえました。

 しばらく待っていると、すぐ目の前でSLやまぐち号を見ることができました。

(「村田一貫堂」から眺めたSLやまぐち号)
Photo_20250202142901

 2024年最後のSLやまぐち号が新山口へ向けて走っていきました。


「源氏巻すと養成コース修了証」授与式

 源氏巻のお店を9軒巡り、1つ1つの源氏巻を分析してきました。

 全行程が終了し、再び津和野藩の藩校「養老館」に集まりました。

 寒さが増した11月下旬、時折小雨の降る中、約2時間半延々と歩いて、無事9軒の源氏巻を味わうことができました。

 日本あんこ協会・にしい会長から、参加メンバー1人1人に「源氏巻すと養成コース修了証」が授与されました。

(源氏巻すと養成コース修了証(表))
Photo_20250202143401

 源氏巻の被り物のイラストと日付入りの修了証です。

(源氏巻すと養成コース修了証(裏))
Photo_20250202143501

 「貴殿は、津和野あんこ旅ウォーク2024において、津和野町が誇るローカルあんこ銘菓「源氏巻」を全店で完食し、各々のお店で違う味やこだわりへの理解を深められました。」
 「貴殿が源氏巻すと養成コースの全課程を修了され、晴れて源氏巻のスペシャリスト「源氏巻すと(英語表記:Genjimakist)」となられたことを、ここに証します。津和野町観光協会・日本あんこ協会」

 喜びと達成感もひとしおです。

 あわせて、記念に日本あんこ協会が発行する「アンコワネット」のシールもいただきました。

(アンコワネット「あんこを食べればいいじゃない」(日本あんこ協会))
Photo_20250202143601

 あんこ好きが愛してやまない、アンコワネット様のお言葉です(笑)

 これからは、私のプロフィールに「源氏巻すと」、尊敬する人物は「アンコワネット」と書くことにしましょう。

 最後に、にしい会長とあんこのお話で盛り上がり、一緒に記念撮影もしました。


まとめ

 今回の「津和野あんこ旅ウォーク」を通じて学んだことがあります。

 それは、「どの商品が美味しいか(好みか)は、すべてのお店の商品を食べてみないとわからない」ということです。

 一定のエリアに同じ商品が売られているお店が並んでいると、人気があるお店、雰囲気が良さそうなお店、入りやすそうなお店などを選んでしまいがちですが、自分が本当に美味しいと思えるお店、好みのお店は全く別に存在している可能性もあるのです。

 そうしたミスマッチをできるだけなくすためには、こうした食べ歩きツアーが役に立ちますし、観光協会や商業組合などが一度に試食できる機会を設けるのも一法だと思いました。

 試食したら買わないといけないと思いがちな私は、今回の食べ歩きツアーがとても役に立ちました。


 約半日、津和野の街と源氏巻、そしてあんこの世界を楽しむことができました。

 この場をお借りして、お世話になった日本あんこ協会・にしい会長、津和野町観光協会や商工会の皆様、参加メンバーの皆様に深くお礼申し上げます。


<関連サイト>
 「日本あんこ協会」(東京都豊島区南池袋1丁目16-15 ダイヤゲート池袋5F)
 「津和野町観光協会・ゆ~にしんさい」(島根県鹿足郡津和野町後田イ66-1)

<関連記事>
 「島根県津和野町の「黒いいなり寿司」-割子そば・いなりずし・おみやげいなり-

2025年1月19日 (日)

関東の「長命寺桜もち」と長命寺 -東京都墨田区向島-

長命寺桜餅と道明寺桜餅

 和菓子の桜餅は、小麦粉の生地で作られた関東風の「長命寺桜餅(ちょうめいじさくらもち)」と、もち米(道明寺粉)で作られた関西風の「道明寺桜餅(どうみょうじさくらもち)」の2種類に分類できます。

 桜の香りがする生地であんこを包み、桜の葉でくるんだお菓子と言えば共通しているのですが、小麦粉で作られたクレープ状の生地と、もち米で作られたもち生地とでは、見た目や食感はかなり異なるお菓子となります。

 今回は関東風の桜餅をテーマに、東京都墨田区向島の「長命寺桜もち」と長命寺を御紹介します。

 当ブログの関連記事(文末の<関連記事>参照)と合わせてお読みいただければ、関東風桜餅と関西風桜餅の違いがわかり、それぞれの発祥地を旅した気分になっていただけるかと思います。


桜の名所・隅田川と東京スカイツリー

 江戸時代、8代将軍の徳川吉宗が隅田川の土手に100本の桜を植樹し、隅田川は花見の名所となりました。

 台東区側から隅田川に架かる歩行者専用橋「桜橋」を渡って、墨田区向島へ向かいました。

(桜橋から眺めた東京スカイツリー)
Photo_20250118153301

 桜橋では、間近に東京スカイツリーを眺めることが出来ました。


長命寺桜もちと正岡子規

 桜橋を渡って、隅田川の上流方向にしばらく歩いたところに、「長命寺桜もち」のお店と長命寺があります。

 「長命寺桜もち」のお店の手前に、「正岡子規仮寓(かぐう)の地」の碑がありました。

(「正岡子規仮寓の地」の碑)
Photo_20250118153401

 俳人の正岡子規は、大学予備門の学生時代、長命寺桜もち「山本や」の2階を3か月ほど借り、自ら月香楼と名付けて滞在し、次の句を詠んだそうです。

 「花の香を 若葉にこめて かぐはしき 桜の餅 家つとにせよ」

 「家つと」は家に持ち帰るお土産という意味で、全体で「とても良い香りがする桜葉に包まれた桜餅をぜひお土産に」といった感じの意味になります。

 お店の2階に住まわせてもらっている以上、正岡子規も積極的にお店の宣伝をする必要があったのでしょう。

 これに関連し、長命寺のウェブサイト「長命寺と桜もち」には、次のような紹介文があります。

 「明治二十年頃には「お陸さん」という娘が美人で名高く、正岡子規が当家の二階に下宿していたのもその頃である。子規とお陸さんとの恋物語もあったとかいわれる。」

 当家とは「長命寺桜もち」の山本家のことです。

 正岡子規が長命寺桜もちの2階に下宿した一番の理由は、隅田川の自然や桜の魅力か、桜もちか、それともお陸さんか…真相は桜もちの葉のごとく謎に包まれています。


長命寺桜もちを味わう

 長命寺桜もちのお店に着きました。

(長命寺桜もち店舗)
Photo_20250118154001

 「桜毛ち」と書かれた立派なのれんをくぐり、お店に入りました。

 店内を見渡すと、桜もちの購入だけでなく、お店でいただくこともできるとわかったので、「召し上がり」(喫茶・イートイン)をお願いしました。

 テーブル席に座り、しばらくすると、煎茶と一緒に桜もちが運ばれてきました。

(召し上がり(煎茶付))
Photo_20250118154201

 桜もちは紙で包んだ状態で提供されます。

 桜もちを取り出してみました。

(長命寺桜もち(葉で包まれた状態))
Photo_20250118154901

 塩漬けされた桜の葉が、くるんだ状態ではなく、桜もちにそのまま貼り付ける感じで3枚も使用されています。

 静岡県松崎町の「大島桜」の葉が使われています。

 「大島桜」の葉は、ほかの桜と比べて大きく、桜独特の甘い香りがあることが特長です。

 葉っぱをめくって、めくって、めくって、やっと桜もちと出会えました。

(長命寺桜もち)
Photo_20250118155401

 小麦粉の生地を薄いクレープのように焼き、あんこ(こしあん)を巻いた桜もちです。

 桜餅の生地は、関東風(小麦粉生地)と関西風(餅生地)いずれも、ピンク色(桜色)と白色(無着色)のものがありますが、こちらのお店では白い生地で仕上げられています。

 この桜もちをいただく際、ふと考え込んでしまいました。

 「桜の葉は桜もちと一緒に食べるべきか、外して食べた方がよいか…」

 子どもの頃は桜の葉を外して食べていましたが、桜の葉も食べられることを知ってからは「何となく」桜餅と一緒に食べるようになりました。

 それに、今回のように大きな桜の葉を贅沢に3枚も使われていると、貧乏性の私は、これらの葉をすべて残すことがもったいないように思われました。

 そこで、桜の葉を外すことなく、そのまま桜もちと一緒にいただきました。

 最初に桜の甘くさわやかな香りを強烈に感じました。

 さらに噛み進めると、パリパリという音とともに、中の桜もちに到達し、桜の葉のしょっぱさとあんこの甘さが口の中いっぱいに広がりました。

 さらりとして上品な甘さのこしあんと、それを包むもっちりとした生地、そして甘く香り高い桜の葉のハーモニーが素晴らしく、満開の桜が目に浮かぶようでした。

 熱く濃いめの緑茶と一緒にいただくと、心がほっと和みました。

 正岡子規がこのお店の桜もちを宣伝したくなる気持ちもわかりました。

 会計の際、お店の方に「桜の葉がたくさん巻かれていましたが、一緒に食べた方がいいのでしょうか」とお尋ねしました。

 すると、お店の方から「外して召し上がることをおすすめしています」というお返事があったので、びっくりしました。

 私が「ええっ、桜の葉が3枚も巻かれていたので、てっきり一緒に食べるものかと…」とお話しすると、お店の方は「桜の葉をすべて外して召し上がる方、1枚で召し上がる方、2枚で召し上がる方…皆さんお好みの食べ方があるようです。ただ、3枚だと塩辛いと思います。」とおっしゃっていました。

 確かに若干しょっぱかったことは否めませんが、桜の葉と一緒に食べるのが「通(ツウ)の食べ方」、「大人の食べ方」だと信じていた私は少なからずショックを受けました。

 「長命寺桜もち」の桜の葉は香り付けと餅の乾燥を防ぐためのもので、半年以上塩漬けにしているのでしょっぱく、ごわごわしているとのことでした。

 「今度来た時は桜の葉1枚で食べてみよう」と思いましたが、おそらく残した桜の葉も後でペロンと食べてしまうことでしょう(笑)


長命寺と長命寺桜もち

 長命寺桜もちとお茶をいただいた後、お店のすぐ近くの長命寺を散策しました。

 長命寺は天台宗のお寺です。

(長命寺山門と言問幼稚園)
Photo_20250118161001

 お寺の中に言問(こととい)幼稚園が併設されています。

(長命寺)
Photo_20250118161101

 もともとは「常泉寺」という名のお寺でしたが、江戸幕府3代将軍・徳川家光がこの地に鷹狩りに来られた際、腹痛を起こし、住職の加持した庭中の般若水(井戸水)で薬をのんだら痛みが止まったので、以後「長命寺」と呼ばれるようになったそうです。

(長命水(井戸跡))
Photo_20250118161102

 現在、この地で長命寺桜もちを味わえるのは、3代将軍・徳川家光が鷹狩りをし、8代将軍・徳川吉宗が桜を植樹し、正岡子規が滞在したおかげなのかもしれませんね。


<関連サイト>
 「長命寺桜もち」(東京都墨田区向島5-1-14)

<関連記事>
 「関東の和菓子と関西の和菓子 -和菓子の比較検証-
 「菅原道真ゆかりの地(大阪府藤井寺市道明寺)で道明寺粉と道明寺桜餅について学ぶ

2024年12月29日 (日)

侍MANEKI珈琲(兵庫県姫路市)のアーモンドトーストとバックハウスイリエ(兵庫県尼崎市)のクリームパン

侍MANEKI珈琲のアーモンドトースト

 兵庫県姫路市を訪問しました。

 JR姫路駅で有名なのが「まねき食品」の「えきそば」です。

(まねきのえきそば(ディスプレイケース))
Photo_20241226225501

 この「えきそば」の特徴は、「そば」という名称で、和風のそばつゆなのですが、麺に黄色い中華めん(かんすい入りのラーメンのような麺)が使われていることです。

 最初に食べた時は少し違和感を感じたのですが、食べる回数が増えるにつれ、姫路駅へ寄った時は必ず食べたいと思うほどになりました。

 地元の熱烈なファンの中には、姫路駅の入場券を買って、この「えきそば」を食べに来られる強者(つわもの)までいらっしゃるようです。

 そして忘れてはならないのが、「まねき食品」は日本で初めて「幕の内弁当」を販売された会社だということです。

 そんな「まねき食品」が、2022年4月23日に、JR姫路駅構内2階(新幹線コンコース)に喫茶店「侍MANEKI珈琲」をオープンされました。

(侍MANEKI珈琲・店舗)
Photo_20241226225801

 朝、新幹線でJR姫路駅へ到着した際にお店を見つけた私は、「なるほど、まねき食品さんはカフェ事業も展開されたのか」と思ったのですが、お店の入口の電子看板に目が釘付けになりました。

(トーストモーニングセットの電子看板)
Photo_20241226225901

 「このお店で姫路の名物・アーモンドトーストが味わえるんだ!」

 そうと知ったからには、素通りすることはできず、お店に入りました。

 朝7時から11時の時間帯は、ドリンク料金にプラス150円で「トーストモーニングセット」をいただくことができます。

 お店の入口で注文・精算し、セルフで席へ運ぶ方式かと思っていましたが、テーブル席へ案内され、席に着いてから注文する喫茶店方式でした。

 モーニングセットを注文する際、厚切りトーストに塗るものとして「姫路名物・自家製アーモンドバター」か「マーガリン」か「いちごジャム」を選ぶことができます。

 私は迷うことなくアーモンドバターを注文しました。

 また、ドリンクはホットコーヒーを注文しました。

 すると、お店の方がコーヒーを淹れ、食パンにアーモンドバターを塗ってこんがりとトーストしてくださいました。

 しばらくして、席にトーストモーニングセットが提供されました。

(トーストモーニングセット(コーヒー・アーモンドトースト・ゆで卵))
Photo_20241226231701

 ホットコーヒー、厚切りトースト(アーモンドトースト)、そしてゆで卵のセットです。

 コーヒーは、「トアルコトラジャ(インドネシア・スラウェシ島・トラジャ地方のコーヒー豆)」が使用されています。

 コクと深みがありながら、ストレートでも飲みやすく、フルーティーな風味を感じました。

(アーモンドトースト・ゆで卵)
Photo_20241227194901

 ゆで卵は、兵庫県市川町の「タズミの卵」が使われています。

 そして姫路名物のアーモンドトーストです。

 関西では、厚切りの食パンが好まれる傾向にありますが、期待どおりの厚切りで、アーモンドバターがたっぷり塗られていました。

 姫路のアーモンドトーストは、アーモンドバターを贅沢に厚塗りし、表面がふつふつとなるぐらいこんがりと焼くことで美味しくなるのですが、まさにその仕上がりのアーモンドトーストでした。

 粗目に砕いたクラッシュアーモンドのザクザク感・ゴロゴロ感が楽しめる、ほどよい甘さのアーモンドバターです。

 ちなみに、このお店のアーモンドバターは、「侍MANEKI珈琲特製ザクゴロアーモンドバター」として、通信販売もされているようですので、御興味を持たれた方は御利用ください。


back haus IRIE(バックハウスイリエ)のクリームパン

 阪急三宮駅から阪急電車に乗って、園田駅にやってきました。

 園田駅から北へ向かって徒歩約10分の場所に「back haus IRIE(バックハウスイリエ)」園田本店があります。

(back haus IRIE(バックハウスイリエ)園田本店)
Photo_20241227195601

 カスタードクリームパンで有名な老舗ベーカリーで、現在はフィナンシェなどの洋菓子で有名な「アンリシャルパンティエ」と同じシュゼットグループのお店です。

 クリームパンは、これまで年間100万個を売り上げた記録をお持ちの人気店です。

 お店に入ると、焼きたてのクリームパンが「ばんじゅう(プラスチック製運搬ケース)」に入った状態で販売されていました。

 クリームパンを購入しようとレジで順番を待っていたところ、店内に「園田本店限定商品 絞りたてたっぷりクリームパン」の広告が目に留まりました。

 こちらも気になり、私に順番が回ってきた際、お店の方に「クリームパン」と「絞りたてたっぷりクリームパン」との違いについて伺いました。

 するとお店の方から、
「「クリームパン」はオリジナル商品で、ただいまアツアツの焼きたてを販売しております」
「「絞りたてたっぷりクリームパン」はこのお店でしか売ってない商品で、カスタードクリームが加熱されていない(パンを焼き上げた後にクリームを注入する)ため、冷やした状態で販売しております」
「絞りたてたっぷりクリームパンのカスタードクリームの量はクリームパンの1.5倍です」
と御説明いただきました。

 オリジナルのクリームパンと本店限定のクリームパン、どちらも食べてみたくなり、両方購入しました。

 再び園田駅まで戻り、2種類のパンを確認しました。

(バックハウスイリエのクリームパン(別包装))
Photo_20241227200401

 クリームパンはまだ焼きたてで温かく、逆に絞りたてたっぷりクリームパンは冷たかったので、別々に包装していただいたのですが、こうした対応にお店の方のクリームパンへの愛情が感じられました。

 マチ付きビニール袋の底には、クリームパンの形が崩れないように厚紙まで敷かれていました。

(「クリームパン」と「絞りたてたっぷりクリームパン」)
Photo_20241227200701

 今思えば、焼きたてのクリームパンをすぐに食べてみるべきでした…。

 自宅に帰り、「クリームパン」と「絞りたてたっぷりクリームパン」をいただきました。

 まずはバックハウスイリエの看板商品「クリームパン」から御紹介します。

(バックハウスイリエのクリームパン)
Photo_20241227200702

 艶やかなパンの上に、スライスアーモンドがのせられています。

(バックハウスイリエのクリームパン(中身))
Photo_20241227200801

 中にはカスタードクリームがたっぷりと入っていました。

 あんこの代わりにカスタードクリームが入った薄皮まんじゅうのようです。

 いただいてみると、パンはふんわりとしてとてもやわらかく、甘い香りがしました。

 そしてカスタードクリームの味ですが、この味はズバリ「カスタードプリン」です(笑)

 しっかりと卵の味がするカスタードプリンがパンにたっぷりと詰められているイメージです。

 人気の理由が理解できました。

 続いて「園田本店限定商品 絞りたてたっぷりクリームパン」を御紹介します。

(絞りたてたっぷりクリームパン)
Photo_20241227201001

 オリジナルのクリームパンに比べて、中に詰められているカスタードクリームの量が多い分、パンの山が高くなっています。

 パン自体も、オリジナルのクリームパンと比べて生地がしっかりしている(弾力がある)ものとなっています。

(絞りたてたっぷりクリームパン(中身))
Photo_20241227201101

 別名「飲めるクリームパン」とも呼ばれるだけあって、カスタードクリームの量がすごいことになっていました。

 オリジナルのクリームパンもカスタードクリームたっぷりなのですが、その1.5倍ともなると、ずっしりと重量感があり、厚みも大きく異なります。

 こちらのカスタードクリームも、やはりカスタードプリンの味なのですが(笑)、パンと一緒に加熱されてない分、くちどけがよく、より生のカスタードクリーム感がありました。

 ちなみに、オリジナルの「クリームパン」が260円(税抜)、「絞りたてたっぷりクリームパン」が280円(税抜)でした。(※)
 ※2024年12月時点の価格

 わずか20円程度の差でカスタードクリームの量が1.5倍とはお得感があります。

 絶大な人気を誇る「クリームパン」と園田本店限定の「絞りたてたっぷりクリームパン」、どちらも魅力的なクリームパンです。


<関連サイト>
 「まねき食品」(兵庫県姫路市北条953)
 「侍MANEKI珈琲(インスタグラム)」(兵庫県姫路市南駅前町125 JR姫路駅構内2F)
 「トアルコトラジャ」(キーコーヒー)
 「back haus IRIE(バックハウスイリエ)」(園田本店:兵庫県尼崎市東園田町2-48-2 ほか)
 「back haus IRIE(バックハウスイリエ)(インスタグラム)」(園田本店:兵庫県尼崎市東園田町2-48-2 ほか)

<関連記事>
 「姫路の食文化探訪 -姫路のカフェ・喫茶店でアーモンドトーストを味わう-

2024年12月22日 (日)

あずきの研究19 -「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」の特長と人気の理由を探る-

「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」とは

 宮城県に全国的に有名な「おはぎ」があります。

 仙台市太白区の「秋保(あきう)温泉」にあるスーパーマーケット「主婦の店 さいち」で販売されている「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」です。

 テレビや雑誌で紹介されたことがきっかけで、朝から行列ができるほどの人気商品となりました。

 私は2017年3月に仙台駅を訪問した際、「さいちのおはぎ」の販売コーナーを見かけたことがありますが、人気商品ですでに売り切れており、現物を見る機会はありませんでした。

 宮城県内外のお客さんだけでなく、全国のスーパーマーケット関係者や製あん業者も「主婦の店 さいち」へ視察に来られるほどの人気ぶりです。


「宮城県の物産と観光展」と「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」

 この人気おはぎが、2024年11月から12月にかけての3日間、広島市内のデパートで開催された「宮城県の物産と観光展」で特別販売されました。

 仙台と広島を空路で結ぶIBEX(アイベックス)エアラインズの全面協力で、仙台のお店から広島まで空輸で運ばれてくる「空飛ぶおはぎ」として話題になりました。

 ただ、このおはぎを購入するにはとてもハードルが高く、販売日は2024年11月24日(日)・28日(木)・12月1日(日)の3日間のみ、お一人様1パック限り、朝10時の開店時に購入引換券(有効期限は当日17時まで)が配布され、同日13時から販売開始、「あずき」は各日限定240パック、「ごま」と「きなこ」は各日限定40パックという条件をクリアする必要がありました。

 デパートに1日2回も足を運ぶことは大変なので、私は当初から購入を諦めました。

 そんな中、販売最終日(12月1日)の夕方に奇跡が起きたのです。

 「宮城県の物産と観光展」の会場へ行ってみると、「さいちのおはぎ」が山積みされていて、何と一般客(購入引換券を持ってない客)にも販売されていたのです。

 しかもお店の方から「何パック購入されますか」と聞かれるほどでした。

 こうした現象は、次のいくつかの理由が重なって発生したものと思われます。
 ①購入引換券を交付した枚数以上の「おはぎ」が用意された。
 ②購入までのハードルが高いため、お客さんが購入引換券での購入を敬遠された。
 ③消費期限が当日のため、売り切る必要があった。
 ④広島では「さいちのおはぎ」の知名度が意外と低かった。

 いずれにせよ、私は奇跡的に「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」を1パック購入することができました。


「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」の紹介

 「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」を御紹介します。

(さいちのおはぎ(秋保おはぎ)パック)
Photo_20241222101801

 ボリューム満点のおはぎが2個詰められています。

 原材料はシンプルに「もち米(宮城県産)、うるち米、小豆、砂糖、食塩」のみです。

 おはぎを取り出してみましょう。

(さいちのおはぎ(秋保おはぎ))
1_20241222102001

 色濃い粒あんがまとまりきらないほど、たっぷりとまぶされています。

 長さ約9cm、幅約6.5cm、高さ約4cmで、一般的なおはぎと比べて大きく、ずっしりと重量感もあります。

(さいちのおはぎ(秋保おはぎ))
2_20241222102101

 このフォルム(形状)とボリューム感、あんこ好きにはたまりません。

(さいちのおはぎ(秋保おはぎ)とその中身)
Photo_20241222102201

 おはぎを半分に切った様子です。

 包丁で半分に切るのが難しいほど、ねばりのあるもち米が使われています。

(さいちのおはぎ(秋保おはぎ)中身)
Photo_20241222102301

 あんこだけでなく、中の餅(ごはん)もたっぷり詰められていることがわかります。


「さいちのおはぎ(秋保おはぎ)」が人気の理由

 「さいちのおはぎ」をいただきました。

 人気の理由は、食べたら一発でわかりました。

 いただいた感想も含めて、人気の理由をまとめてみます。

【「さいちのおはぎ」が人気の理由】
 ①小豆を炊いて作った手作りのあんこだけが持つ、小豆本来の味・風味が感じられる。
 ②あんこの甘さが控えめで、その分、小豆の風味が生かされている。
 ③餅(ごはん)に、ほどよい甘みと強いねばりがある。
 ④あんこも餅(ごはん)も値段(2個351円(※))の割にボリュームがある。
  ※2024年12月現在の物産展での販売価格(税込)

 自分で小豆を炊いて「あんこ」を作った経験のある方ならよく御理解いただけると思いますが、手作り・作りたてのあんこが持つ小豆の風味やそれを食べた時の感動は、市販のあんこではなかなか味わえません。

 その風味や感動が「さいちのおはぎ」なら味わえる、それが人気の最大の理由です。

 つまり、何か企業秘密があるわけでなく、「さいち(佐市)」では「おはぎを小豆ともち米から手作りする」・「作りたてを提供する」という当たり前のことがなされているだけのことなのです。

 なので、おはぎを自分ですべて手作りすれば「さいちのおはぎ」に近い味は出せるでしょう。

 「さいちのおはぎ」の人気は、「おはぎを一から作る余裕がない、だけど手作りの感動を味わいたい」と思う人がいかに多いかを物語っているとも言えます。

 あと、ボリューム満点で、出し惜しみされてないことも人気の理由の1つでしょう。

 「お客さんに対してケチったら、その分だけお客さんからもケチられる」ものだからです。

 「美味しいおはぎを、腹いっぱい食べていただきたい」その純粋で素直な気持ちが消費者にも伝わり、感動を呼ぶからこそ、「さいちのおはぎ」は人気なのです。


<関連サイト>
 「主婦の店 さいち」(仙台市太白区秋保町湯元字薬師27)

<関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「あずきの研究」を御参照ください。
 「宮城県仙台市 「賣茶翁」のみちのくせんべいと「立ちそば処 杜」の鶏から揚げそば

<参考文献>
 芝崎本実「あんこのことがすべてわかる本」誠文堂新光社

2024年12月 1日 (日)

ドライブインの魅力3 -山口県岩国市「ドライブインあけみ」のマヨカツ丼と貝汁-

 大阪市北区から北九州市門司区に至る国道2号は、西日本の交通の大動脈で、ドライブインも多く存在します。

 今回は、そんなドライブインの1つ、山口県岩国市周東町(しゅうとうちょう)の「ドライブインあけみ」を御紹介します。


欽明館自動販売機コーナー

 広島市から自動車でお店を目指しました。

 広島県側から岩国市玖珂町へ向かう際にショートカットのルートとなる山口県道15号(欽明路道路・きんめいじどうろ)を走っていると、欽明路のドライブイン「欽明館自動販売機コーナー」がありました。

(欽明館自動販売機コーナー)
Photo_20241201132501

 自動販売機がずらりと並び、昔からドライバーやライダーの憩いの場となっています。

 ここは、レトロ自動販売機があることでも有名なスポットです。

(チューインガム・キャンディ自動販売機)
Photo_20241201132701

 すでに販売を終了したガムもありますが、この自動販売機は展示品で、そもそも稼働してないようです。

(うどん・そば・ラーメン自動販売機)
Photo_20241201132801

 そしてこちらは、うどん・そば・ラーメンの自動販売機です。

 うどん・そばだけでなく、ラーメンまで用意されている自動販売機は珍しいです。

 この自動販売機は現役で、このうどん・そば・ラーメンを目当てに欽明館を訪問される方も多くいらっしゃいます。

 私もこのお店のそばやラーメンを味わったことがあるのですが、今回は間近に迫ったドライブインでの食事があるため、やむなく、またの機会にいただくこととしました。


周防大島と宮本常一記念館

 岩国市玖珂町を過ぎ、同市周東町に入った国道2号沿いに「ドライブインあけみ」があります。

(ドライブインあけみ・開店前)
Photo_20241201134001

 朝8時半ごろ訪問したところ、まだ営業されていませんでした。

 グルメサイトの情報が最新の状況に追い付いてないことはよくあることです。

 気持ちを切り替え、昼前の開店まで近隣をドライブすることにしました。

 向かったのは瀬戸内海の周防大島です。

(大島大橋)
Photo_20241201134101

 周防大島から眺めた大島大橋です。

 山口県の県道のガードレールはオレンジ色(夏みかん色)で、瀬戸内海の風景にうまく溶け込んでいます。

 島内を快適にドライブし、宮本常一記念館に到着しました。

(宮本常一記念館(全景))
Photo_20241201134301

 宮本常一さん(1907年~1981年)は、カメラ片手に全国を「歩く・見る・聞く」民俗学を実践された民俗学者です。

 カメラ片手に全国を旅し、現地の生活や文化を研究されたことに私も共感するところがあり、「塩の道」や「忘れられた日本人」などの本も読みました。

(宮本常一記念館(エントランス))
Photo_20241201134501

 館内には、その地に住む人々の生活や文化がわかる写真、民具、図書、関係資料などが展示されており、宮本常一さんへの理解を深めることができました。


「ドライブインあけみ」のマヨカツ丼と貝汁

 周防大島町のドライブを楽しんだ後、再び岩国市周東町の「ドライブインあけみ」を訪問しました。

(ドライブインあけみ・営業中)
Photo_20241201135001

 到着がお昼の12時近くとなり、駐車場も賑やかになっていました。

(ドライブインあけみ・店舗)
Photo_20241201135201

 広々とした建物や駐車場は、ドライブインならではの光景です。

 日本酒「獺祭(だっさい)」の旗も掲げられていますが、旭酒造の「獺祭」は、ここ岩国市周東町で製造されています。

 お店に入ると、大勢のお客さんがおられました。

 食券を購入する前金制かなと思いましたが、席で注文する方式でした。

 メニュー表を見て、何を注文するか吟味しました。

(ドライブインあけみ・メニュー表)
Photo_20241201135401

 料理のジャンル別に色分けされており、ピンク色が鉄板系(肉)、黄色が魚系、赤色が丼系、オレンジ色が揚げ物系、緑色が炒め物系となっています。

 ごはんは、追加料金で大盛や特盛にしてもらうことが可能です。

 また、定食や丼物についているみそ汁は、プラス220円で貝汁かブタ汁(豚汁)に変更することが可能です。

(定食・料理のイラスト)
Photo_20241201135801

 また、それぞれの定食・料理には手書きのイラストもあり、初めての人でもイメージしやすい工夫がなされています。

(ドライブインあけみ・お礼メッセージ)
Photo_20241201135901

 お店からのお礼メッセージも手作り感満載です。

 昭和37年創業の長年愛されているドライブインです。

 私はお店の人気メニューの1つ「マヨカツ丼」を注文しました。

 そして、マヨカツ丼に付くみそ汁を「貝汁(かいじる)」に変更していただくようお願いしました。

 その際、お店の方から「揚げ物なので少しお時間をいただきます」とお話があったのですが、むしろきちんと揚げ立てを提供していただける証拠だと好感を持ちました。

 このお店はごはんの盛りが半端ないことでも有名なので、料理を待つ間、周囲のお客さんが召し上がっているごはんの量を観察しました。

 その際、「てんこ盛りまではいかないけど、意外と普通盛りだな」と思ったのですが、お客さんの注文内容と実際の盛りを確認するうちに、私が普通盛りだと思っていた量が、実はごはん「小」であることがわかりました。

 普通に(何も言わずに)注文したら大盛のごはんが提供されるので、常連のお客さん達はそれを知っていて、ほとんどの人が「ごはん少なめで」と注文されているのです。

 このお店は、一般的な普通盛りが「小」、大盛が「普通」という設定で、それ以上の「大盛」や「特盛」レベルになると、かなりの量になるので、メニュー表にもあるように「自信のある方限定」となります。

 このことを知らずに注文すると、大変なことになります。

 私が注文したマヨカツ丼も大盛にするかどうか迷いましたが、(あまりたくさん食べられない私は)大盛にしなくてよかったと安堵しました。

 しばらくして、マヨカツ丼と貝汁が提供されました。

(マヨカツ丼と貝汁)
Photo_20241201141201

 「来た来た、やったー!」

 マヨカツ丼も貝汁も丼サイズで、予想どおりボリューム満点です。

 これでも普通盛りなのですが、こうした盛りのよさはドライブインならではのお楽しみです。

 それではマヨカツ丼をじっくり観察してみましょう。

(マヨカツ丼)
Photo_20241201141301

 大盛ごはんの上に、大きくて厚みがあるロースカツがどっかーんと盛られ、そのロースカツにはとんかつソースがたっぷりとかけられ、さらに目玉焼きまでのせられています。

 目玉焼きをずらして、ロースカツを確認しました。

(マヨカツ丼(ロースカツ))
Photo_20241201141501

 ロースカツだけでもお腹いっぱいになりそうなビッグサイズです。

(マヨカツ丼(千切りキャベツと辛子マヨソース))
Photo_20241201141502

 次にロースカツをずらすと、千切りキャベツと辛子マヨネーズソースの層がありました。

 この下には、掘っても掘っても食べ切れないほどのごはんが盛られています。

 甘めのとんかつソースと辛子マヨネーズソースがロースカツとよく合い、ごはんが進みました。

 途中で休憩するほどの量がありましたが(笑)、美味しく完食しました。

 そして「貝汁」もいただきました。

 「貝汁」とは「あさりのみそ汁」のことですが、山口県内のドライブインにはこの「貝汁」が提供されているお店が多く、人気メニューの1つとなっています。

(貝汁)
Photo_20241201142001

 貝汁も大きな丼で提供されました。

 汁の中には、あさりがたっぷりと入っていました。

 貝汁が人気なのは、あさりがメインではないかと思えるほどあさりをたくさん食べられるからです。

 今回もあさりの殻入れを入れるための小皿が用意されていました。

 あさりの滋味深いエキスが溶け込んだ、美味しいみそ汁でした。


まとめ

 飲食店で大事なことは、料理もサービスもケチらないことで、ケチれば結局お客さんからもケチられることになります。

 これは値段にかかわらず、大衆店から高級店まで共通して言えることだと思います。

 「ドライブインあけみ」は、安くて美味しくてボリューム満点の食事を提供されており、なおかつサービスも行き届いているお店なので、こうしたお店の姿勢が、長年、地元の人々やドライバー・ライダーに愛されている理由なのだろうなと思いました。

 単品でカレーライスやカツカレーを注文されるお客さんも多く見かけましたが、これまたとても大きな皿にカレーとライスが山盛りで、カツも大きくてとても魅力的でした。

 また訪問する機会があれば、今度はカツカレーに挑戦したいと思います。


<関連サイト>
 「ドライブインあけみ」(山口県岩国市周東町下久原大柿1653)
 「旭酒造(獺祭)」(山口県岩国市周東町獺越2167-4)

<関連記事>
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「ドライブインの魅力」を御参照ください。
 「懐かしのうどん・そば・ラーメン自動販売機1 -広島県三次市「福原酒店」の天ぷらそば・自動販売機のうどん・そばの魅力-
 「懐かしのうどん・そば・ラーメン自動販売機2 -島根県浜田市「ドライブイン日本海」の天ぷらうどん・日清食品カップヌードルの自動販売機-

2024年11月24日 (日)

チョコレートの新しい潮流6 -ごぼうを使ったチョコレート風味のお菓子「GOVOCE(ゴボーチェ)」-

 今回は、カカオ豆を一切使用せず、「ごぼう」で作られたチョコレート風味のお菓子を御紹介します。


あじかんの「GOVOCE(ゴボーチェ)」

 焙煎ごぼうで作られたチョコレートそっくりのお菓子は「GOVOCE(ゴボーチェ)」と言います。

 広島市西区に本社のある「あじかん」の新商品です。

 「あじかん」は、卵焼き、巻き寿司の具材、きんぴらごぼうなど和惣菜などを中心にした総菜を製造する総菜メーカーです。

 同社は「ごぼう」の健康効果に着目し、ごぼう茶などの健康栄養食品にも力を入れておられます。

 こうした同社の食品製造のノウハウや研究開発実績から誕生したお菓子が「GOVOCE(ゴボーチェ)」です。

 ちなみに、この「GOVOCE(ゴボーチェ)」という名称は、「GOBOU(ごぼう)」と、デザートを意味するイタリア語の「DOLCE(ドルチェ)」、声を意味するイタリア語の「VOCE(ヴォーチェ)」を掛け合わせたものです。

(ゴボーチェ(包装))
Photo_20241124113701

 パッケージにごぼうの輪切りとゴボーチェが描かれています。

 キャッチコピーは、「ごぼう生まれの新スイーツ」・「香ばしく ほろ甘いビター」です。

 「ほろ苦い」ではなく「ほろ甘いビター」と表現されているのが面白く、どんな味なのかワクワクします。

 袋を開けると、個包装のゴボーチェが入っていました。

(ゴボーチェ(個包装))
Photo_20241124114201

 個包装なので、持ち歩きに便利で、いつでも気軽に食べることが出来ます。


ゴボーチェの香り・味

 個包装からゴボーチェを取り出してみました。

(ゴボーチェ)
Photo_20241124114401

 見た目は「正方形の薄い板チョコレート」そのものです。

 一辺が約3cmで、厚さは約4mmです。

 パッと見では、誰もがチョコレートだと思うことでしょう。

 鼻を近づけてみると、焼きごぼうの香りがしました。

 いただきました。

 食感と口溶けは、チョコレートそのものです。

 風味は、カカオに近いですが、焙煎ごぼうの香りが勝っています。

 味は、焙煎ごぼうが使われているので本来ならばかなり苦いはずですが、それを植物油脂と砂糖でマイルドに仕上げられているため、「苦みが効いたカラメルの味」、「インスタントコーヒーをごくわずかな水(お湯)で溶き、少量の砂糖を加えた味」に近いと思いました。

 まとめると、
「ほんのりとごぼうの風味がする、力強い苦みと深いコク、その後にじんわりと甘みを感じるチョコレート風のお菓子で、チョコレートと全く一緒と言うには無理があるが、チョコレート感覚でいただける、美味しくて魅力に満ちたお菓子に仕上げられている」
というのが私の感想です。

 そういう意味では、いなご豆を使ってチョコレート風味に仕上げた「キャロブチップス(キャロブチョコレート)」との共通点もあるお菓子だと思いました。


ゴボーチェ開発・商品化までの道のり

 ゴボーチェのパッケージの裏側には、説明書きがあります。

(ゴボーチェの説明書き)
Photo_20241124115701

 焙煎ごぼうが細分化・液体化されてチョコレート風味のお菓子になっていく様子が図示されています。

 ゴボーチェは、商品開発の失敗から生まれた商品です。

 あじかんが当初研究されていたのは「バターの代替品」で、同社の代表商品「ごぼう茶」とココナッツオイルを混ぜてみたら、偶然にもチョコレートに似ていることに気付かれたのだそうです。

 その後、ごぼうを使ったチョコレート風味菓子の研究が進められた結果、次のことが判明しました。

①チョコレートと焙煎ごぼう茶の香り成分は類似点が多い。
(チョコレート特有の10種類の成分(チョコ香・ココア香・ローストナッツ香・バニラ香など)のうち8種類が同じ成分であることが判明)

②チョコレートの滑らかさを出すためには、人間の舌がざらつきを感じない0.02mmまで原料を微粒子化する必要がある。
(チョコレート研究者・広島大学 上野 聡 教授の協力)

(砂糖・ごぼうの微粒子化)
Photo_20241124115901
(あじかんウェブサイト「MELBURDとGOVOCE」の一部を引用)

 食物繊維が多く含まれるごぼうをパウダー状にまで加工するのは大変なことです。

 約2年間試行錯誤された結果、ごぼうからチョコレートに似た新素材が出来ました。

 この新素材は「MELBURD(メルバード)」と名付けられ、新商品として「GOVOCE(ゴボーチェ)」が販売されることとなったのです。
 ※「Melting(とろける)」・「Mellow(芳醇な)」と「Burdock(バードック、ごぼう)」を組み合わせた名称


ゴボーチェの特長

 「ごぼう茶」には食物繊維やポリフェノールが豊富に含まれていますが、ごぼうを使った「ゴボーチェ」にもチョコレートと同程度のポリフェノールと、チョコレートの約4倍の食物繊維が含まれているそうです。

 またノンカフェインなので、カフェイン摂取を気にされる方も安心して食べることが出来ます。

 あじかんでは、こうした特長を生かし、チョコレート風味の新素材として、お菓子メーカーとコラボレーションすることも検討されています。


まとめ

 カカオ原産国で干ばつや洪水の被害、未知のウイルス病のまん延などが発生し、カカオの国際価格が高騰している現状において、日本国内で生産可能な「ごぼう」を使ったチョコレート風味の新素材は、今後、お菓子を中心に様々な展開が期待できそうです。


<関連サイト>
 「あじかん」(広島市西区商工センター七丁目3番9号)
 「MELBURDとGOVOCE(メルバードとゴボーチェ)」(あじかん)

<関連記事>
 「キャロブ(いなご豆)チップス -チョコレートと何が同じで何が違うのか-
 「食文化関連記事一覧表・索引」の「食文化事例研究」にある「チョコレートの研究」を御参照ください。

<参考文献>
 「チョコレートに革命!ごぼう茶が原料でカカオ不使用(広島)」(テレビ新広島「そ~だったのかカンパニー」)

より以前の記事一覧

最近のコメント

最近の記事

最近のトラックバック

2025年7月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ