幻の高級魚・アコウ(キジハタ)の魅力 -広島県尾道市「尾道あこう祭り」のあこう煮付御膳・おこぜ唐揚げ-
アコウ(キジハタ)について
「アコウ(キジハタ)」と呼ばれる魚を御存知でしょうか。
「冬のフグ、夏のアコウ」と評される高級魚で、全国的に水揚げ量が少ないため、「幻の高級魚」と呼ばれています。
釣りの対象魚としても人気の魚で、広島県でも尾道市の「しまなみ海道」エリアなどで釣ることができるようです。
茶褐色で、赤色やオレンジ色の斑点があり、見た目はカサゴ(ホゴメバル)やアイナメに似ています。
私は過去に一度だけ、尾道の食堂でアコウの煮付けを食べたことがあります。
その食堂は、棚に陳列されているおかずの中から食べたいものを取るセルフサービスのお店だったのですが、アコウのことを知らなかった私は「アイナメの煮付けだ」と思ってそのおかず皿を選び、いただきました。
「脂がのって、とても美味しいアイナメだったな」と満足しつつ、帰りにレジで精算すると、予想をはるかに上回る金額を請求され、驚きました。
そしてその時初めて、お店の方からこの煮魚がアコウであったことを教えていただきました。
これが私のアコウとの出会いです。
尾道あこう祭り
尾道で「尾道あこう祭り」が開催されています。(令和5年9月1日~30日)
(尾道あこう祭りチラシ(開催案内))
黒色と金色をベースにした、高級感のあるチラシです。
尾道のアコウを広く知ってもらうことを目的に、尾道の飲食店16店舗でアコウ料理が提供されるイベントです。
あこうの煮付けのほか、雑炊、アクアパッツァ、洗い(刺身)、ほうろく焼き、釜めし、キノコと貝のソース(パスタ)、活き造りと様々な料理が御用意されています。
事前予約しても食べられない可能性がある魚
「尾道あこう祭り」でアコウ料理を食べようと決意し、2日前の夜、お店に予約の電話をしました。
するとお店の方から「アコウが入荷できるかどうか、漁によって決まるのですが、今日はお店が休みなので、当日になってみないとわかりません。それでもよろしいですか」とお話がありました。
まずは、知らなかったとは言え、お店が休みの日に電話してしまったことをお詫びしました。
私の頭の中で、(遠く尾道まで行ってでも、アコウが味わえない可能性もあるのか…それでも賭けてみる価値があるだろうか…)と一瞬考え込みましたが、お店の方の誠意を感じ、「この方ならきっとアコウの入荷に一生懸命動いてくださる。それでもなかったなら、それを快く受け入れよう。あってもなくても尾道へ行こう」と思い、予約をお願いしました。
漁で水揚げがあるかどうかに左右されるとは、やはりアコウは幻の魚なのだと実感しました。
尾道水道と尾道の街並み
予約当日。広島のアコウ浪士は覚悟を決め、尾道へ向かいました。
(向島行き渡船と尾道水道)
写真手前は尾道と向島を結ぶ渡船、写真奥が尾道大橋です。
穏やかな港町の様子は、いつも心を癒してくれます。
尾道の路地も散策しました。
(尾道の路地(テーラーアダムと千光寺))
レトロな看板の先には千光寺の赤い本堂が見えました。
(尾道の路地(ひねもすのたり))
路地では、カラフルな旗や赤い鳥居が一層映えて見えました。
尾道は海だけでなく、路地も魅力です。
尾道「青柳」の「あこう煮付御膳」
予約時刻を迎えたので、お店を訪問しました。
(「青柳」店舗)
尾道市土堂海岸通りにあるお食事処「青柳」です。
(「青柳」と「尾道あこう祭り」ポスター)
店頭には「尾道あこう祭り」のポスターも掲示されていました。
お店に入り、予約した名前を告げると、奥におられたお店の方が笑顔で「アコウ入っております」とおっしゃいました。
目の前がパッと明るくなり、「それは良かったです」とお応えしながらテーブル席に着きました。
「あこう煮付御膳」が出来上がるのを待つ間に、食事券の応募用紙を持ってきていただきました。
(尾道あこう祭り・食事券応募用紙)
「尾道あこう祭り」でアコウ料理を食事された方の中から抽選で20名に2,000円のクーポン券が当たるという企画です。
しばらくして、待望の「あこう煮付御膳」が運ばれてきました。
(あこう煮付御膳)
思わず「おおっ」と声が出るほど大きなアコウでした。
ご飯、味噌汁、小鉢3種(レンコン・ゴボウ・人参のきんぴら、厚焼き卵、青菜とミョウガの酢の物)、漬物がセットになっていました。
(あこう煮付け)
見てください、このボリューム、そして美味しそうな色つや!
今日はやっと1尾だけ入荷できたとのことで、とても貴重な一皿となりました。
あこうの煮付けをいただきました。
とても新鮮で、その証拠に身がまだ骨にぎゅっとくっついていました。
たっぷりと脂がのった白身は、弾力があってプリプリでした。
見た目からはメバルやアイナメの煮付けをイメージしますが、脂の含有量が全然違います。
上品で旨味が凝縮された白身は、鯛やフグに勝るとも劣らない味でした。
私は魚の煮付けが大好物で、行く先々のお店で「猫にあげるエサがなくなった」と言われるほど、頭から尻尾まで身をきれいに食べ尽くしてしまいます。
(あこうの骨)
今回もこんな感じで食べ尽くしました(笑)
お店の方が頃合いを見計らって、デザートを運んで来られました。
(わらび餅)
ただ、この時点では、ご飯と味噌汁はまだ半分程度残していました。
なぜなら、もう1品注文するつもりでいたからです(笑)
尾道「青柳」の「おこぜ唐揚げ」
このお店の看板料理であり、アコウより前から尾道の地魚として有名な「オコゼ」の唐揚げを追加注文しました。
しばらくして、揚げたてアツアツの「おこぜ唐揚げ」が運ばれてきました。
(おこぜ唐揚げ)
オコゼの頭をぶつ切りにし、唐揚げにした一品です。
魚の頭を丸ごと唐揚げにして提供されるとは、よほどの自信を持っておられる証拠です。
いただきました。
鰻のような、ねっとりとしてたっぷりと脂がのった白身でした。
(おこぜの身)
淡白なメバルの唐揚げをイメージしていた私は、衝撃的な体験でした。
アコウが無理だった場合、オコゼの料理をいただこうと思っていたのですが、オコゼの唐揚げも注文して正解でした。
まとめ
食事を終え、帰り際にお店の方にお礼とアコウとオコゼをいただいた感想をお伝えしました。
アコウが漁の水揚げに左右され、「あこう祭り」の時でさえも安定的に提供できないことも学びました。
私が「予約を受けておられても、お客さんに提供できない時はつらいですね」とお話しすると、お店の方も「そうなんです。明日もお二人御予約いただいてますが、今日は漁がないので…多分入荷できないでしょう…」とおっしゃってました。
東京や大阪などの大都市では世界各国・全国各地から食材が集まり、様々な料理を味わうことができます。
でも、今回御紹介したアコウやオコゼのように、その地方へ行かないと味わえない新鮮な食材や料理、そして感動があることも事実で、それが地方の強みだと言えます。
お近くの新鮮な地魚を御賞味ください。
そして機会があれば、美味しいアコウやオコゼの料理が味わえる尾道へもお越しください。
<関連サイト>
「尾道季節の地魚の店」(尾道季節の地魚の店連絡協議会)
「青柳」(広島県尾道市土堂2-8-15)
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