JR伯備線・芸備線の旅(芸備線の存廃問題)と沿線の食-トーストセット・藤戸まんぢゅう・むらすずめ・千屋牛焼肉丼・野方汁・広島バターモチ・きんつば-
日帰りで楽しむJR芸備線の旅プラン
JR芸備線は、岡山県新見市の備中神代(びっちゅうこうじろ)駅から広島市の広島駅までの区間を走る地方交通線(ローカル線)です。
JR芸備線は、とりわけ東城駅(広島県庄原市)から備後落合駅(同県同市)までの利用者が少なく、深刻な赤字が続いています。
そこで、現在どういう状況になっているのか、実際に行って確かめてみることにしました。
ただ、実際に行くとなると、大きな問題が立ちはだかります。
利用者数が少ない原因の1つでもあるのですが、芸備線の、特に備中神代駅から備後落合駅の間は、列車の本数・乗り継ぎ列車が非常に少ないのです。
広島駅から芸備線で備中神代駅まで行き、その日のうちに再び芸備線で広島駅へ戻ってくることもできません。
そこで、私は広島駅から山陽新幹線と山陽本線を利用していったん岡山県側へ回り、備中神代駅を起点に広島駅まで一気に乗車するルートを考えました。
(山陽新幹線・山陽本線・伯備線・芸備線のルート)
(国土地理院地図を引用・一部加工)
広島駅から山陽新幹線「こだま」で三原駅へ行き、三原駅から山陽本線で倉敷駅へ行きます。
倉敷駅で伯備線に乗り換え、新見駅を目指します。
そして新見駅発の芸備線(備中神代駅までは伯備線経由)で備後落合駅へ行き、備後落合駅から列車を乗り継いで広島駅へ戻るというルートです。
それでは、今回の日帰り鉄道旅を御紹介します。
山陽新幹線・山陽本線(広島~三原~倉敷)
広島駅から山陽新幹線「こだま」に乗り、三原駅に到着しました。
(山陽新幹線・こだま・三原駅)
三原駅に隣接する「サンエトワール三原店」でモーニング(トーストセット)をいただきました。
(トーストセット(絹生))
トースト(食パン)の種類が「絹生・ホテル・絹蜜」の3種類から選べたので、私は「絹生」をいただきました。
その後、みどりの窓口へ行き、三原から倉敷・備中神代経由の広島行きっぷを購入しました。
通常、三原から広島へは山陽新幹線か山陽本線か呉線を利用することが想定されているため、今回のきっぷはかなり特殊で、みどりの窓口で駅員に応対していただきました。
※みどりの券売機でも購入不可
複数の駅員さんを困らせながらも何とかきっぷを購入でき、山陽本線の電車に乗車しました。
(山陽本線・三原駅)
227系電車500番台の電車です。
広島エリアでは広島カープをイメージさせる赤色のラインが入っているのですが、岡山・備後エリアの電車はピンク(桃)色のラインとなっています。
岡山の桃や桃太郎、福山のバラ、尾道の桜をイメージした色のようです。
(JR乗車券(三原から広島市内行き))
今回購入した特殊なきっぷがこちらです。
三原駅から広島駅までは片道70kmちょっとなのに、きっぷは「三原から広島市内」となっています。
「広島市内」は特定都市区内駅といい、主に広島市内エリアならどの駅からも乗り降りできる特例があるのですが、この特例は片道201km以上の場合に適用されます。
芸備線に乗ろうと、岡山県側から大回りするためにこうしたきっぷとなるのです。
ちなみに、芸備線区間(備中神代-広島間)の距離は約175km、今回の全区間の距離は約400kmにも及びます。
三原から途中、糸崎駅で電車を乗り換え、福山駅に到着しました。
(山陽本線・福山駅)
福山駅は三原駅と同様に、駅のすぐ近くにお城があります。
この駅でさらに電車を乗り換え、倉敷駅に到着しました。
(倉敷駅南口)
倉敷駅南口の先には、倉敷美観地区があります。
(倉敷駅北口)
一方、倉敷駅北口には、今は大型ショッピングセンターがありますが、その建築物にかつての「倉敷チボリ公園」の面影があります。
伯備線(倉敷~新見)
倉敷駅4番ホームに着きました。
(倉敷駅4番・5番ホーム・発車案内表示器)
ここから伯備線の普通列車で新見を目指します。
(倉敷駅・伯備線・普通列車・新見行)
車内で、倉敷駅売店で購入した倉敷の銘菓をいただきました。
(藤戸まんぢゅう(藤戸饅頭))
こちらは「藤戸まんぢゅう」です。
薄皮饅頭ですが、皮がとても薄く、ほぼ「あんこ(こしあん)」のかたまりです(笑)
同じ岡山県の銘菓「大手まんぢゅう」とよく似ています。
ほのかに酒粕の香りがする、あんこ好きにはたまらない饅頭です。
(むらすずめ)
こちらは「むらすずめ(むらすゞめ)」です。
どら焼きの皮をひっくり返し、焼き目のある方を内側にして「あんこ(つぶあん)」を包んだようなお菓子です。
豪渓(ごうけい)駅でホームに降り、「特急やくも」を見送りました。
(豪渓駅・特急やくも通過)
2024年4月にデビューした新型「特急やくも」です。
その後、列車は備中高梁駅に到着しました。
(備中高梁駅・2番ホーム・普通列車・新見行)
奥の建物は高梁市立図書館で、蔦屋書店が併設されています。
徳山駅(山口県周南市)に隣接する周南市立徳山駅前図書館などと同じ運営方式です。
さらに列車は走り、終点・新見駅に到着しました。
(新見駅・5番ホーム・普通列車・岡山行)
倉敷駅から1時間40分の鉄道旅でした。
(「ようこそ!新見へ」吉備之国くまなく旅し隊)
「くまなく」(制服を着たキャラクター)と「たびにゃん」(小さな猫のキャラクター)が迎えてくれました。
(新見駅)
ランチタイムになったので、新見駅で途中下車し、昼食をいただくこととしました。
千屋牛焼肉丼と野方汁
新見駅から歩いてすぐの場所に郷土料理店「伯備」があります。
(味の庄「伯備」)
鯖寿司、川魚料理、ジビエ料理、山菜料理など、郷土料理や地場の食材を使った各種料理を提供されているお店です。
数多くの料理の中で、私は「千屋牛焼肉丼」を注文しました。
「千屋牛(ちやぎゅう)」は、「日本最古の蔓牛(つるうし)」、「日本三名蔓」、「和牛の中の和牛」と呼ばれる新見が誇る黒毛和牛です。
私は過去に車で新見を訪問した際、「和牛レストラン ふゆさと」で初めて千屋牛をいただき、その美味しさに感動しました。
(千屋牛焼肉丼)
贅沢に分厚くカットされた千屋牛の焼肉をごはんの上にのせた丼です。
肉がやわらかく、噛みしめると脂の甘みとコク、肉汁の旨みが口の中いっぱいに広がりました。
「この調子ならもう一品いける」と思った私は、追加で「野方汁(のかたじる)」を注文しました。
(野方汁)
豆腐、ねぎ、大根、人参、ごぼう、竹輪など具だくさんで、上品な味噌仕立ての汁です。
「たかきび」の団子が入った団子汁です。
「たかきび」は、「モロコシ」や「コウリャン」とも呼ばれる雑穀です。
「野方汁」の名称は、この「たかきび」が「野方(のかた・のがた)」(この地方の方言で「高原地帯」のこと)でたくさん収穫でき、その「たかきび」で団子を作り、汁に入れて団子汁にしたことに由来します。
「たかきび団子」は、たかきび粉に水を加え、耳たぶぐらいの柔らかさの生地を作り、その生地を火が通りやすいように平たくして茹でたものです。
(野方汁(たかきび団子))
「野方汁」は、具だくさんの「けんちん汁」に「たかきび団子」が入っているイメージです。
「たかきび団子」は多少ザラザラ・ネチネチしていますが、その素朴で野趣あふれる食感・味に魅力を感じました。
岡山は「きびだんご」だけでなく「たかきびだんご」も「でーれーうみゃーで!(とても美味しいよ!)」。
伯備線・芸備線(新見~備中神代~備後落合)
腹ごしらえしたところで、いよいよ芸備線の旅の始まりです。
(新見駅前)
新見駅から芸備線の普通列車・備後落合行に乗車しました。
(新見駅 芸備線・普通列車・備後落合行と姫新線・普通列車・津山行)
写真左のオレンジ色と赤色のラインが入った列車が芸備線、写真右の空色と青色のラインが入った列車が姫新線(きしんせん)です。
(新見駅 芸備線・普通列車・備後落合行)
この列車に乗って備後落合(広島県庄原市)を目指しました。
「1両編成で赤字路線なので乗客も少ないだろう」と思いつつ乗ってみると…発車時刻が近づくにつれ20人が30人、30人が40人と、乗客がどんどん増え、ついには座席に座れない人も出ました。
新見から備後落合で乗り継いで三次まで続く列車が1日たった2本しかないこと、芸備線(の存廃)がニュースになっていること、夏休み期間で「青春18きっぷ」で乗車する人が多かったことが主な原因だと思います。
遠方からお越しの方もたくさんおられました。
熱心に写真を撮る人、ひたすら動画撮影する人、鉄道話で盛り上がるグループ、ひたすら時刻表を読む人…乗客のほとんどが「鉄道ファン(マニア)」と見受けられました。
東城駅(広島県庄原市)を過ぎると、列車はどんどん山の中へ入っていきました。
途中、車両に枝葉が何度も当たり、まるで木々に囲まれた緑のトンネルの中を走行しているようでした。
この区間こそ、JR西日本の営業係数ワーストの区間で、100円稼ぐために1万円以上のコストがかかっているのですが、車内の混雑ぶりを見ると、そんな感じには見受けられませんでした。
約1時間半後、列車は備後落合駅に到着しました。
(備後落合駅ホーム・芸備線乗り換え(三次行と新見行))
写真左がこれから乗車する列車(三次行)、写真右がこれまで乗ってきた列車(折り返し運転で新見行)です。
(備後落合駅ホーム・木次線)
しばらくすると、備後落合駅のホームに木次線の列車も入ってきました。
この木次線も営業係数がとても悪く、それもあってか、この日は鉄道ファンを中心にたくさんの乗客がおられました。
乗り継ぎの関係もあって備後落合駅は大勢の客で賑わっていましたが、この状況はおそらくこのわずかな時間だけだと思います。
(備後落合駅玄関)
かつては備北地域の基幹駅として大変賑わったようですが、今は無人駅となっています。
芸備線(備後落合~三次~広島)
備後落合駅でしばらく過ごした後、芸備線普通列車の三次行に乗車しました。
(備後落合駅ホームと芸備線・普通列車・三次行)
列車を乗り換えましたが、乗客はこれまでのメンバーとほぼ同じでした。
車窓から景色を眺めると、ちらほらと民家も見えるようになりました。
1時間20分後、列車は終点・三次駅に到着しました。
次の列車まで少し時間があったので、三次駅でも途中下車し、駅周辺を散策しました。
(三次市交通観光センター)
三次駅を降りてすぐの場所にある、三次市交通観光センターです。
この施設の売店で、備北地域のお菓子を購入しました。
(和泉光和堂「広島バターモチ」・松屋「きんつば」)
和泉光和堂(広島県庄原市)の「広島バターモチ」と松屋(広島県三次市)の「きんつば」です。
「広島バターモチ」は、バターの風味が豊かな餅菓子です。
和泉光和堂は銘菓「乳団子」のお店として有名なのですが、そのお菓子のレシピがハワイで暮らす庄原出身の移民にも伝授され、各家庭でバターやココナッツを使った独自の焼菓子として作られたのがこの「広島バターモチ」です。
松屋の「きんつば」は、お店のイチオシ商品と紹介されていたので購入しました。
大粒の大納言小豆が使われた、すっきりした甘さのきんつばでした。
再び三次駅に戻りました。
(三次駅ホーム・福塩線・府中行と芸備線・広島行)
写真左(手前)が福塩線・府中行(三次駅折り返し)、写真右(奥)が芸備線・広島行の列車です。
私は芸備線普通列車・広島行に乗車しました。
新見駅からずっとお見かけする方もおられました。
途中から雨が降り始め、外の景色が見えづらくなったのですが、私の隣に座る親子のマニアックな鉄道会話(運転席に流れる「2両停車、所定停目2(しょていていもく2※)」の意味などを話し合っていました)を聞きながら、鉄道旅を楽しみました。
※所定の停止位置目標は「2(2両列車用)」という意味
広島市内に入ると徐々に街が広がり、乗降客も増えてきました。
そして約1時間40分後、終点・広島駅に到着しました。
(広島駅・8番ホーム・芸備線・普通列車)
同じ芸備線でも、広島市近郊と郊外では乗降客数がかなり異なることを実感しました。
まとめ
距離にして約400km、時間にして約11時間の鉄道旅を楽しみました。
実際に芸備線の列車に乗ってわかったことは、
・列車の本数が極端に少なく、また乗り継ぎ用の列車もほとんど考慮されていないため、気軽に利用することができない。
・いくら列車の乗客が多くても、芸備線沿線(特に深刻な赤字が続く区間)で実際に乗り降りする客(生活の移動手段として利用する客)がいないと意味がない。
ということです。
芸備線の危機的状況を打開するためには、列車の本数を増やす、乗り継ぎ・折り返しの列車も配慮する、イベント列車を走らせる、あるいは…廃線にするという方法が考えられますが、いずれにせよ、今のままでは沿線住民・地方自治体にとっても、JR西日本にとっても、良い結果はもたらさないように思います。
芸備線は利用客が少ないとは言え、地域の貴重なインフラであることには間違いなく、廃線されたらそれでおしまいとなる可能性が高いため、存廃については慎重に議論が進められることを願っています。
<関連サイト>
「サンエトワール」(「サンエトワール三原店」広島県三原市城町1-1-1 三原駅前 ほか)
「藤戸饅頭」(岡山県倉敷市藤戸町藤戸48)
「橘香堂」(岡山県倉敷市阿知二丁目19-28)
「伯備」(岡山県新見市西方469-1)
「千屋牛」(千屋牛振興会)
「和牛レストラン ふゆさと」(岡山県新見市千屋実1428-1)
「和泉光和堂」(広島県庄原市中本町一丁目3-5)
「松屋」(広島県三次市十日市中4-6-1)
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